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アニメはすでに「BDが基本」?
-ソニーPCLに聞く「国内向けBDオーサリング」の現状


左から事業本部メディア事業部デジタルメディア部 尾林統括部長、コンプレッショニストの村井氏、事業本部メディア事業部JN技術室の横田氏

 日本国内でも、この春からようやく、映像ソフトの「BDシフト」が始まっている。特に目立つのが、アニメーションを中心とした国内コンテンツである。日本のセル・コンテンツ市場の中でも、特に購買意欲の高いユーザーが多いジャンルだけに、移行速度も速い。

 今回は、国内向けBDソフトの多くでオーサリングを手がけるソニーPCLに、BDオーサリングの現状を聞いた。なお、ソニーPCLには、2006年9月に、初期のBDタイトルのオーサリングについて、「イノセンス」を中心に取材を行なっている。その記事と比較しながら読んでもらうと、より理解が深まるだろう。



■ 1月から急速に「BD移行」が進む。DVDとの同時発売も普通に

 「今年の1月から、国内のコンテンツホルダ、特にアニメ業界の方が、BDの導入を検討する動きが強くなりました。“どう作っていけばいいか”といったお問い合わせも増えています。“DVDとBDを同時発売したい”という要望も強い」

 ソニーPCLでオーサリング事業を統括する、事業本部メディア事業部デジタルメディア部の尾林俊司統括部長は、アニメ業界のBD移行が本格化していると話す。

 ソニーPCLは、映像制作を手がけるソニーの子会社だが、BDやDVDのオーサリングスタジオとしても高いシェアを持つ。特に多いのが国内で製造されたコンテンツ、それもアニメーションだ。ソニーグループとの関係から、海外映画の日本語版も制作しているが、業務全体の「8割が国内コンテンツ」(尾林氏)。その多くがアニメーションである。

 「昨年度は、100から150ほどのタイトルを手がけさせていただきましたが、今年はその倍から1.5倍の量を計画しています」と尾林氏は話す。ということは、少なくとも200以上のタイトルが、ソニーPCLの手を経て、市場に出て行くことになる。

圧縮作業を行うエンコードルーム。左側がMPEG-4 AVC用、右側がMPEG-2用

 現在ソニーPCLには、BD向けの作業ラインが、エンコードの工程で、MPEG-2用、MPEG-4 AVC用にそれぞれ1ラインづつ、オーサリング作業そのもので4ラインが存在するという。これを「需要の高まりにあわせて増やしていくことになる」(尾林氏)という。

 「アニメーション業界は、まず新しいものにチャレンジする姿勢が強い。我々だけでなく、他のオーサリングスタジオも、積極的にBDに取り組んでいます。それが現状です」と、増産の見通しを語る。

 他方で、BDへの移行について、現場では次のような意見もある。同社でBDオーサリング関連の技術面を担当する、事業本部メディア事業部JN技術室の横田一樹氏はこう話す。

 「オーサリングする側もコンテンツホルダー側も、DVDの時は、制限が多くてお互いに不満が多かったんです。“もう少し楽ならもっと色々出来るのにね”と。やきもきしていたところが、BDになって出来るようになったことで、そこにチャレンジしよう、ということが多いんです」

 他方で、BDの制作はDVDのそれに比べ、工程も作業量も多く、まだまだ時間がかかる。特に「イノセンス」を作った頃は、様々な苦労があったようだ。

 初期には、あらゆることが手探りだった。「“イノセンス”を作っていた頃には、7.1chの新しいオーディオを受けられるアンプすらありませんでした。ですから、各所にそれらを準備するところから始めなければならなかった。また、規格のディテールにもわからない部分があったので、各社に問い合わせがたいへんで……」。尾林氏はそう話す。

 だが、あれから2年が経過し、BD制作のノウハウが蓄積されてきたことで、制作の時間はかなり短縮されてきた。

 「コンテンツホルダー側の“このような仕様でやりたい”という要望に対し、どのレベルまで答えられるのか、という見極めに時間がかかっていたんです。規格そのものもそうですし、オーサリング用ソフトにしても、可能性を見極めて、どこまで出来るかを知らねばなりませんでした。結局、経験を得たことで、現在は当初に比べ、3割くらいの工程短縮が図られたのではないかと考えています」と横田氏は説明する。

 ここから解説していく作業工程は、その最新のノウハウに基づくものである。


■ 8割がAVCで制作。20コアのPCでソフトウエアエンコード

 BDの最大の特徴は、いうまでもなく「高画質」、「高音質」であることだ。オーサリングの作業は、BDにどのようなスペックで映像と音声を収録するかを決めることから始まる。

 この工程は、コンテンツホルダーとオーサリングスタジオ、そして、彼らの仲立ちをして、ディスク制作をプロデュースする「スーパーバイザー」の間で行なわれる。

 当初は、「BDではどのようなことができるのか」が周知されていなかったため、スペック確定のためのミーティングに長い時間を必要としていたが、現在は「特にスーパーバイザーの方の理解がレベルアップしたため、スムーズに作業が進むようになった」(尾林氏)という。映像についても音声についても、どのコーデックを利用するのがいいのか、といったことはこの段階で話し合われる。また、ディスクのメニューをどのようなものにすべきか、といったことも同時に決められる。

 マスターとなる映像や音声そのものの作成は、オーサリング部隊とは別に、マスタリングの部隊が行なう。SD素材のアップコンバートなども、当然その際に行なわれる。オーサリング作業は、それらを「エンコード」するところから始まる。

 特に重要なのは映像のエンコードだ。エンコード作業を担当するのは、「コンプレッショニスト」と呼ばれる専門家である。ソニーPCLでBD向けタイトルのコンプレッショニストを務める村井政明氏は、「現在、担当するパッケージソフトの8割がMPEG-4 AVCによるもの」と話す。2年前、イノセンスをマスタリングした時にはMPEG-2が使われていた。だが現在はMPEG-4 AVCが主流だ。とはいえ、一般に思われているように、「AVCの方が画質的に有利だからMPEG-2から移行した」わけではないようだ。

 「本当に際の部分、一部のシーンだけを比較するならばAVCの方がいい、という部分がありますが、通常の見た目であれば差はないと思います。24pのソースで、30Mbps以上であるならば、MPEG-2もAVCもさほど変わらないんです」

 では、なぜAVCでエンコードすることが多くなっているのか? それは「コンテンツホルダーからの要望。もう黙っていてもAVC、という感じになってきた」(横田氏)からだ。

 「MPEG-2なら38Mbps、AVCなら30Mbps。これで、ほぼ両者互角といえます。我々は、MPEG-2もハイビットレートならばまだまだ使える、と思っているのですが、もうAVCはブランド化していますから。DVDでも使われているMPEG-2に比べ、より新しく、“次世代メディア”らしいからでしょう」と尾林氏も話す。なお音声に関しては、TrueHDを中心としたロスレス音声への興味は高いものの、AVCほど目立った「コーデックのブランド化」は起こっていないようだ。

 MPEG-2の場合には、高画質にリアルタイムエンコードできるエンコードチップが開発されており、PC用の拡張ボードが組み込まれた、1台のPCで作業を完結できた。

 だがAVCはそうではない。村井氏がエンコードに使っているのは、4コアCPUであるCore2Quadを搭載したPCを、5台クラスタ化したもの。すなわち、都合CPU 20コアでソフトウエアによりエンコードしていることになる。まず非圧縮のデータを1台のPCで取り込み、それをクラスタ化したエンコーディング用のPC群にまわしてエンコードを行なう、という流れである。

MPEG-4 AVC用のエンコード環境。作業用モニタの下にあるのは、ソース映像を取り込んだり、各種設定を行なったりするためのPC。エンコード用PCはネットワークにつながった別室にある エンコード時のCPU利用状況。ずらりと20コア分のリストが並ぶ。ほぼすべてCPUの能力をフルに使っている MPEG-2用のエンコード環境

 20コアあっても、エンコード中はそれぞれのコアがほぼフル回転している。1チップで市販ソフトレベルのエンコードができるMPEG-2とでは、まだまだ大きな差がある。

AVCのエンコード設定を行なうソフトウエア。ビットレートの状況を確認し、細かなパラメータを変更し、ネットワーク上のエンコードサーバーに送る

 「現状では、20コアくらいでおおよそリアルタイムでエンコードできます。もちろん、分割数を増やし、PCの台数を増やせば、より高速にエンコードが可能となります」と村井氏は話す。

 実際には、エンコードを行なう前に、映像をそれぞれのコアにどう振り分けるのか、分散ポイントを決めるプリプロセスを経て、その情報に従い、各コアがエンコード作業を行なうことになる。その分の作業が必要なので、ワンチップでリアルタイムエンコードできるMPEG-2に比べ、作業時間が長くなる。

 どのコアにどのパートが割り当てられるのか、また、各シーンにどれだけのビットレートを割り当てるかといったことは、操作用のフロントエンドPCから、専用ソフトを使ってコントロールする。ちなみに、ソニーPCLで使われているエンコーダは、MPEG-2もAVCもソニー製である。

 コンプレッショニストの仕事は、非常に地道なものだ。エンコードした映像をモニターでチェックして、圧縮ノイズなどで破綻している部分をみつけ、前後の状態を勘案しながらビットレートを調整、再びエンコードを行なって、出来る限り美しい映像に仕上げるというものである。

 「フィルターをかけてしまえば解決できることも多いのですが、そうすると、シーンチェンジの際などに違和感が出ます。そうならないよう、自然にさらっと映像を見ていただけるようにするのが我々の仕事。“フィルムの感覚そのまま”と言われたら我々の勝ちです。特にアニメの場合には、コマ送りで見る方も少なくありません。伝統的に、キャラクターの顔や特定のポーズなど、絶対にノイズを出してはならないとされる部分も多いので、気を遣いますね」と話す。

 ただし、出来る限り高画質に圧縮する、という、コンプレッショニストの仕事そのものは、「MPEG-2でもAVCでも変わらない」と村井氏は話す。

 では一番の違いはなんだろう?村井氏は「AVCなら、部分的にエンコードのやり直しができること」と説明する。

 「MPEG-2では、圧縮の破綻が見つかった場合、全体を再エンコードし直す必要があります。それに対しAVCでは、必要な部分だけを再エンコードできるので、作業効率があがります。すでに述べたように、エンコードそのものはAVCの方が長くかかるのですが、作業をトータルで見れば、MPEG-2もAVCもトントン、というところです」(村井氏)

 技術的にはMPEG-2でも、GOPを「Closed GOP」にしていれば部分再エンコードできる。だがそうすると画質が落ちてしまうため、市販ソフト用のエンコードでは、多くの場合、部分再エンコードができない「Open GOP」を採用している。AVCは技術が新しい分だけ、画質を犠牲にせず、部分エンコードができるようになっているわけだ。


■ 「全部が見える」液晶に配慮。「あら探しモード」でノイズを発見

 ただし、BD世代のエンコード作業では、コーデックの種類以外に大きな違いもある。それが「視聴環境」の変化だ。

 「ブラウン管から液晶、しかもフルスペックのものになって、全部が見えるようになったことで、スタートラインが上がっています。さらに、ソースが高い解像度をもっており、それを再現するということを考えると、作業量はDVDの時代の倍以上です」と村井氏は語る。

 「全部見える」とは、俗にいう「オーバースキャン領域」のことだ。CRTの時代には、映像の外縁部の表示が乱れやすかったため、CRTのテレビでは映像部の外縁部を切り落としていた。ここを「オーバースキャン領域」という。現在も制作側では、画面外周部10%より内側を、セーフティエリアとして構図を考えるのが一般的だ。

 だが液晶やプラズマの場合には、CRTのテレビと違いオーバースキャン領域を用意する必然性がない。テレビ側でオーバースキャン領域の有無を選択可能な機種も多いが、市販ソフトの一部には、いまだわざと映像をセーフティエリア内に納めるようにしているものもある。それらはオーバースキャンを切ると、「額縁状態」に見えてしまうため、評判がよろしくない。そこで現在は、オーバースキャン領域まで全域を収録するタイトルが増えている。

 「エンコードする際にも、画面端まできっちりきれいにしなければいけません。DVDの時にも大変でしたが、BDではさらに大変になった印象です」と村井氏は話す。

 そしてもう一つ、液晶ならではの問題がある。それは、CRT以上に液晶は「圧縮ノイズが目立つ」ということだ。

 「液晶テレビは、バックライトを立てることで、黒が黒ではなく、浮いた黒に見えます。それに従い、ブラウン管では黒に沈んで見えなくなるはずのノイズが、液晶テレビでは見えてしまいます。制作意図を無視したノイズが出てしまうので、それを目立たなくするのが大変なんです」(村井氏)。

 エンコード作業中は、CRTを使ったマスターモニターと、一般的な液晶テレビの両方でチェックが行なわれる。

 「マスターモニターは色再現・明るさ再現のチェックに使います。しかしメインは民生の液晶でどう見えるか、ということです。我々は一般消費者をターゲットにして作業を行なっていますから、当然メジャーな液晶にあわせたチューニングが必要になるのです」。

 村井氏はそう説明する。特に一般家庭では、派手でメリハリの強い色調となる、俗に言う「ダイナミックモード」で映像を見ている人が多い。そういったモードでは、CRT以上にノイズが目立ちやすくなるため、修正が必要となるのだ。

 そこで村井氏は、作業用の液晶テレビに、特別な設定を行なう。ダイナミックモードからさらにコントラストとバックライトの明るさを上げ、黒が浮き上がって見えるようにしてチェックしているのだ。これを村井氏は、「あら探しモード」と呼んでいる。

 そしてもちろん最後には正常な色調の設定に戻し、マスターモニターとも見比べた上で、ようやくエンコード作業が終了することになる。

コンプレッションルームでは、マスターモニターと液晶テレビ「ブラビア」が並んでいる。メインは液晶テレビだ 「あら探しモード」にするときは、リモコンで設定を手動で変更する。この設定はチェック用であり、普段映像を見るのは「決してオススメしない」(村井氏)とのこと



■ 「256色の制限」を嫌ってBD-Jを採用
  オンライン機能はまだ「検討段階」

 次に来るのが、メニューなどのオーサリング作業である。現在ソニーPCLでは、映像ソフトの他、ゲームなどの特典ディスクも含め、様々なBDタイトルのオーサリングが行なわれている。

 横田氏は、オーサリングに関して特に多いのが「インタラクティビティ面での強化に関する要望だ」と話す。

 「ウェブで見慣れているせいか、タイトルなどでFlash感覚のアニメーションを使いたい、という要望が多いんです。DVDの際には、極論すれば止まっている絵しか出せなかったのですが、映像を動かせるようになれば、その分遊び心を演出できますし」。

 そのせいか、DVDの初期に比べ、BDのタイトルは初期から凝った作りのタイトルが多い印象がある。横田氏は「DVDでの体験があるためか、BDの場合には、やりたいことが明確になっており、当初から高度なものを望むコンテンツホルダーさんが多いようです」と説明する。

 BDの場合には、DVDから発展した、スクリプトベースのメニュー構築形式である「HDMV」と、Javaベースのインタラクティブシステムである「BD-J」の2種類がある。現状、採用が多いのは前者であるが、横田氏によれば、「最近は、BD-Jへの要望が高まっている」という。

 BD-Jというと、我々はどうしてもゲーム的な、大規模なアプリケーションを考えがちだが、「コンテンツホルダー側から、ゲーム的なものをやりたい、という声は聞こえてきていない」と横田氏は話す。ではなににBD-Jを使うのか? ヒントは「Flash」だ。

 「限りなくFlashに近いものを作っていくには、BD-Jでなくてはならないことが多いんです。HDMVでは制限が多く、アニメーション効果などが、どうしても抑え気味になってしまいます。BD-Jがいいというよりは、BD-Jなら制約がないから使う、という形で選択されることが増えています」。

 例えばこんな制限がある。意外に思えるかも知れないが、実はHDMVの場合には、メニュー項目の中で使える色数は256色に制限されている。そのため現在は、メニュー構築時に減色ツールを使い、違和感のない範囲で256色に抑えている。まるで一昔前のウェブのようだ。

 だが、アニメタイトルのトップメニューなどでは、美しく遊び心のあるものを作るため、フルカラー・フルモーションのアニメーションで表現したい、というクリエイターも多いのだという。そうなると、HDMVではなくBD-Jの出番となる。

 すでに述べたように、同社には4つのオーサリング作業ラインがある。使われているのは、Sonic Solutions製のオーサリングソフト「Sonic Scenarist」。市販タイトル作成用としては、大きなシェアを持つ標準的なソフトである。

Scenaristによるオーサリング作業を行なう様子。工程そのものはDVDのそれに似ているが、メニューの色あいやデザインなどをより慎重に、こまかく調整するという

 HDMVのタイトルの多くはこのソフトでオーサリングされ、それに、BD-Jのソフトを加える形で制作されていく。

 「DVDやHDMVでは、スクリプトを使った“オーサリング”の範疇で済んでいたのですが、BD-JはJavaですから、コーディングやプログラミングの領域となります。しかも、BD-JはJavaといっても、ピュアJavaというよりBDに特化したJava。映像に連携した物作りが必要になるため、普通のJavaが得意な企業では、手がけるのが難しいんです。そこで、いまは自社で開発をしています。現状ではゲームなどよりも、“より次世代メディア感を演出すること”に使うのが一般的です」と横田氏は説明する。

 BD-Jの次にくるのは、オンライン機能を使ったBD-Live。こちらについては、まだ「開発途上」だという。

 「問題なのは、技術ではないんです。それ以上に“なにをすべきか”が問題。掲示板がいいのか、単純なダウンロードがいいのか、映像に対してコメントを貼れればいいのか……色々要望はあるでしょう。ただ、ネットにただつなげばいいならパソコンでやればいい。リビングで見るにはどんなものが求められるかを考えている最中です。現状では“BD-Liveで可能なこと”を洗い出し、コンテンツホルダー側とディスカッションできるようにする環境を整えているとこです」(横田氏)。

 尾林氏も「アニメのコンテンツホルダーはまず映像ありき。その後に、プラスアルファとして、特典や関連したメニューやライブサービス、という順番」と語る。

 おそらく今後しばらくは、「いかにもアプリケーション的」なBD-Jは少なく、「よりクオリティの高いメニュー制作手段」として、BD-Jが使われることになるのだろう。これは、ウェブ黎明期にJavaが生まれた直後、アプリケーション構築用というよりも「アニメーションツール」として使われたことを思い出させる。


■ 7.1ch環境でのチェックを経て出荷へ
  BDは伸びるが「DVDのライン」も閉じず

 エンコードとメニューのオーサリング、そして音声の組み込みを経て、タイトルは「試写」、「クオリティチェック」の段階に進む。オーサリングスタジオ内には、リファレンスとなるプレイヤーとモニター、そして7.1chの音声を視聴できる環境が整えられている。リファレンス・プレイヤーは、ソニーグループらしく、PS3とソニーのBDレコーダーだが、もちろん動作や画質確認のため、主要メーカーのBD機器が用意され、チェック出来るようになっている。

オーサリングスタジオ内にある視聴ルーム。液晶テレビやプロジェクタ、7.1ch音響システムを使い、できあがったディスクをチェックし、完成度を高めていく

 BDの発売数そのものが増え、BDとDVDの同時発売タイトルも増加中であることから、現場は常に忙しいという。尾林氏も「AVCのエンコードラインを中心に投資を行ない、需要の増大に対応したい」としている。

 他方で、「かといって、DVDのラインを閉じることはありません。DVDもドラマやお笑いなど、様々な作品への底堅いニーズが多い。BDとDVDがいつトランジションするのかを予想するのは、かなり難しいです」とも、尾林氏は語る。

 BDは好調だが、基盤となるDVDの市場もなかなか変わらない。市販ソフトを頻繁に買う人と、そうでない人の間で、しばらくは「購入するメディアが違う」という状況が生まれる可能性もありそうだ。

□ソニーPCLのホームページ
http://www.pcl.sony.co.jp/
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【2006年9月16日】ソニーPCL、BDビデオのオーサリング環境を公開
-製作中ソフトの2/3が2層。「イノセンス」はMPEG-2/37.5Mbps
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20060915/spcl.htm
【Blu-ray発売日一覧】
http://av.watch.impress.co.jp/docs/bdhdship/

(2008年5月8日)


= 西田宗千佳 =  1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、月刊宝島、週刊朝日、週刊東洋経済、PCfan(毎日コミュニケーションズ)、家電情報サイト「教えて!家電」(ALBELT社)などに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。

[Reported by 西田宗千佳]



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AV Watch編集部

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