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第339回:E-muが無償公開したソフトシンセ「Proteus VX」
〜 豊富な音色で、VSTプラグインとしても利用可能 〜



 先日、Creative Technology傘下にあるE-mu SystemsからProteus VXというソフトシンセが無償で公開された。スタンドアロンで利用できるソフトであるとともに、VSTプラグインとしても利用可能なWindows版のソフトだが、標準で1,024音色も備える音源であり、音色的にも結構使える音が多数収録されている。これがタダで使えるとなると、かなり嬉しい音源であるが、実際どんなものなのか試してみた。


■ 単体で利用できるソフトシンセのLite版

 E-mu Systems製品は国内ではクリエイティブメディアから発売されているのだが、最近あまり新しい動きはない。その一方で、海外では活発に新製品も登場しているようで、同社サイトを見てみると、国内ではリリースされていない製品が数多くある。そんな中、先日Emulator X3という64bitストリーミングに対応するとともにマルチコアに対応したソフトサンプラーがリリースされた。そして、それにあわせてProteus VXが無償でリリースされ、同社サイトから誰でも簡単にダウンロードできるようになっている。

Emulator X3 Proteus VXが無償ダウンロード可能

 これは国内でも発売されているUSB 2.0のオーディオインターフェイス「E-MU 0404 USB」などにもバンドルされているソフトシンセであり、名前からもわかるとおり、往年の名機といわれるProteusの系統を引く、ソフトシンセだ。位置づけ的には同社のソフトシンセであるProteus X2のLite版と言える。

 このProteus X2も以前はProteusXという製品名でソフトシンセとPCIのオーディオインターフェイス「E-MU 0404」がセットで発売されていた。現在発売されている「Proteus X2 Add-Onパック」、「Proteus X2 Upgradeパック」も「Creative Professional E-MU製品がコンピュータにインストールされていなければ起動できない。それゆえ、Lite版であるProteus VXもあくまでもハードウェアありきで動作するソフトシンセと勘違いしていたが、実はそうではなかったようだ。

ダウンロード画面

 そこで無償で公開されたProteus VXをさっそくダウンロードしてみた。ダウンロードするためにはE-muのニュースレターの会員に登録する必要があるが、単にメールアドレスを登録するだけで簡単。ファイル容量的には65.1MB。ブロードバンド環境にあれば、数分でダウンロードできるはずだ。

 ダウンロードページを見ると「ほとんどのVista環境で動作するが、公式に対応している動作環境はWindows XPである」という旨のことが書かれている。筆者もVista SP1が登場して以来、基本的にはVistaを中心に使うようになったので、とりあえずVistaにインストールしてみた。

 英語版のサイトからダウンロードしたので、当然すべて英語のソフトというつもりでいたが、インストーラを起動させた瞬間に飛び出してきたのが日本語で、ちょっと驚いた。ドキュメントに登場してくる日付を見ると2007年、2006年などとなっているので、それこそ以前使ったE-MU 0404 USBにバンドルされていたものと同じソフトのような気もする。あとで調べてみたところ、やはりまったく同じもののようで、Bulid番号も2.0.1.0112とピッタリ一致した。

インストールウィザードは日本語表示 E-MU 0404 USBにバンドルされていたバージョンと同じだった

起動時のエラー表示

 さっそくスタンドアロンで起動してみたところ、エラーが表示される。オーディオインターフェイスの設定がされていないことが理由なようで、そのまま無視して起動したら、再度別のエラー表示がされる。これも一旦無視して、Preferencesからオーディオインターフェイスを設定してみた。あえてここではE-muのオーディオインターフェイスではなく、Rolandのオーディオインターフェイスを選んでみたところ、あっさり何の問題もなく設定できた。もちろんASIOドライバで動作してくれるから、レイテンシーの問題も気にならない。

 が、オーディオインターフェイスはうまくいっても2つ目に出た「Proteus X Composer v2.0.1.exbが無効である」というエラーは解消されない。このファイルは1,024音色という音色データが入ったファイルなのだが、これが読み込めないことにはどうにも動かない。直接ファイル指定して読み込もうとしても同じエラーが出るし、一度アンインストールするなどしてみたが、それでもダメ。なぜだろう……と考えていたが、ファイルが\Progoram Files内にあるので、管理者権限でProteus VXを起動してみたところ、あっさり読み込んでくれた。Vistaは権限管理が厳格になっているので、この点で注意が必要だ。

エラーを無視して続けると、別のエラーが 管理者権限でProteus VXを起動すると読み込めた



■ 16のチャンネルに音色を設定可能

 改めてPreferencesでMIDIキーボードの入力ポートを設定して、キーボードを弾いてみると、すぐに音が出た。1,024音色もあるので、さまざまな音を鳴らしてみるだけでもかなり遊べる。画面左側に表示される音色一覧から選んでもいいし、シンセサイザのパネルの上にあるTYPEというボタンを押すと楽器のカテゴリが表示されるため、Guitar、Leadなどと選んで、Presetの上下ボタンをクリックするとそのカテゴリ内で音色を選択できるようになる。

MIDI入力設定画面 楽器のカテゴリからも音色を選べる

 1つの音色を選択すると画面が切り替わり、パラメータが細かく表示される。また最初の画面で、上に表示されているタブを「SINGLE」から「1-16」に切り替えると、各MIDIチャンネルに何の音色が割り振られているかを表示する画面に切り替わる。そう、この画面を利用すれば、16チャンネルそれぞれに別の音色を割り当てていくことができるのだ。この状態で画面右上のボタンが「Multi Mode」になっていれば全チャンネルが鳴るマルチティンバーとして機能するし、「Poly Mode」なら受信したMIDIチャンネルのチャンネルだけが鳴り、「Omni Mode」ならオムニオンとしてどのチャンネルであっても表示されている画面のチャンネルが鳴るようになる。

音色のパラメータ設定画面 16チャンネルそれぞれに別の音色を割り当てられる 画面右上のボタンが「Multi Mode」になっていれば、全チャンネルが鳴るマルチティンバーとして機能

 音色をいじってみようと思ってパラメータを見るとCutoffFrequencyとかResonanceといった設定は見当たらない。変わりにFILTER OVERRIDEというグラフがあり、フィルタ設定はここで行なうようだ。ただ、グラフをマウスでいじって自由に設定できる、というのではなくプリセットが用意されており、そこから選ぶのみだ。また、それ以外のパラメータを見ると、Tone、Presence、Shape、Image、Attack、Dcy/Relなどなど、Attackなどのエンベロープ関係はともかく、あまり見かけないパラメータが多いが、適当にいじってみると、だいたいのコツはつかめてくる。ただし、オールマイティーに何でもパラメータがそろっているわけではないので、1から音を作るというのではなく、ある程度音が変えられるという認識でいたほうがよさそうだ。

 また、これらパラメータにはCTRL A、CTRL B、……と表示されているが、フィジカルコントローラからコントロール・チェンジのメッセージを通じてコントロールできるようになっている。これを利用するためには、MIDIの設定で、IntelliEditでフィジカルコントローラのMIDI入力を設定するとともに、コントロール・チェンジを割り当てていけばいいのだ。

フィルタ設定はプリセットから選ぶ フィジカルコントローラのMIDI入力設定画面 コントロール・チェンジを割り当てる

 一方、マルチポートの出力を持つオーディオインターフェイスを使っていれば、メイン出力先を設定するとともに、計3つのAUXポートの設定もできるようになっている。各AUXはエフェクトをかませたり、各音色から直接出力することができるようになっている。また、エフェクトは何でもあるというほどではないが、一通りのものはそろっている。これらを設定するだけでも、結構いろいろな音作りは可能だ。

メイン出力先の設定画面 3つのAUXポートを設定できる エフェクトも一通りは利用できる



■ VSTプラグインとしても利用できる

インストール時は、VSTプラグインをインストールするフォルダをデフォルトのままにしていた

 ところで、このProteus VXはVSTでも利用できるということだったので、Cubase4で試してみた。確かにインストールする際に、プラグインをインストールするフォルダについてたずねてきたが、その際はデフォルトのまま進めていった。そのため、デフォルトの状態では認識されないため、Cubase4側の「プラグイン情報」の設定でパスを追加した結果、起動させることができた。あとは、基本的に、一般のVSTプラグインと同様に使うことができ、音を鳴らすことができた。


Cubase4の「プラグイン情報」設定でパスを追加すると起動できた 一般のVSTプラグインと同様に使用できた

プラグインで動作させる場合は、Preferencesの項目で「VST Buses」が1となっている。これを増やすとルーティングが可能

 なお、プラグインで動作させる場合は、Preferencesの項目が多少変わる。さほど設定する項目があるわけではないが、「VST Buses」がデフォルトで1となっているので、これを増やしておくことで、さまざまなルーティングが可能になる。

 このように、スタンドアロンとしてもVSTプラグインとしても利用できるProteus VX。何でもできるシンセサイザというわけではないが、使える音色が多くあることから、かなり便利な音源として使えそうだ。またこの1,024音色に限らず、国内でも数多く販売されている音色ライブラリを使うことができる。

 さらに、そのライブラリのサイトであるDigital Sound Factoryでは試供品として「Digital Sound Factory E-MU X Examples」という77MBのライブラリが無償ダウンロードできるようになっている。こちらは114音色が入っているが、サンプリングデータが大きいだけに、結構リッチな音色も多い。これもぜひ使ってみてほしい。


□E-mu Systemsのホームページ
http://www.emu.com/
□「Proteus VX」のページ
http://www.emu.com/promo/proteusvx/welcome.asp
□製品情報(Emulator X3)
http://www.emu.com/products/product.asp?category=501&subcategory=168&product=17681

(2008年8月25日)


= 藤本健 = リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。
著書に「コンプリートDTMガイドブック」(リットーミュージック)、「できる初音ミク&鏡音リン・レン 」(インプレスジャパン)、「MASTER OF SONAR」(BNN新社)などがある。また、アサヒコムでオーディオステーションの連載。All Aboutでは、DTM・デジタルレコーディング担当ガイドも務めている。

[Text by 藤本健]


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