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第338回:ヤマハのPCMレコーダ「POCKETRAK CX」の実力を検証
〜 録音設定に細かな工夫。Cubase AI4も付属 〜



 YAMAHAから8月下旬に発売される、リニアPCMレコーダ「POCKETRAK CX」は、三洋からのOEM供給製品であり、以前にも紹介した三洋の「ICR-PS1000M」のスペックを基本的には踏襲している。しかし、まったく同じ製品というわけではない。そこでYAMAHAならではの機能と、ICR-PS1000Mの記事では紹介しきれなかった機能についても改めチェックしてみた。


■ 2GBのmicroSDカードが付属

POCKETRAK CX

 POCKETRAK CXは、外形寸法129.5×46.5×17.5mm(縦×横×厚さ)で、電池込みの重さが92gという非常にコンパクトなリニアPCMレコーダ。デザイン、サイズともに三洋電機のICR-PS1000Mと同じで、マイクにはやはりX-Y型ステレオマイクが採用されている。

 最大の特徴は、ほかのリニアPCMレコーダと比較して非常にコンパクトであるということ。それと同時に単3電池1本で駆動し、バッテリ寿命が非常に長いという点だ。アルカリ電池の場合、リニアPCMでのレコーディングでは連続約22時間、MP3の場合では約54時間にもなる。エネループにも対応しており、設定をエネループに変更するとそれぞれ約21時間30分、約44時間となる。

エネループに正式対応

 ただし、リニアPCMのフォーマットは最高で16bit/48kHzまで。16bit/44.1kHzへの変更は可能だが、他社のリニアPCMレコーダで主流となっている、24bit/96kHzや24bit/48kHzには対応していない。またこのREC MODE切り替え画面で、MP3の320/192/128/64/32kbpsへの変更も可能となっている。

 記録メディアはmicroSDカードとなっており、標準で2GBのカードが添付されているのが、ICR-PS1000Mとの違いともなっている。もっとも最近はmicroSDカードもかなり安くなってきており、2GBも実売で1,000円を軽く切るようになっているので、それほどありがたみもないかもしれない。

 SDカード化するアダプタも付けておいてほしかったが、USB接続によってPCからはドライバなどは不要で、USBマスストレージとして認識されるので、特に必要となることはほとんどないだろう。さらに、HOLDスイッチをHOLDに切り替えると、USBからの電源供給でエネループを充電することができ、約22時間で満充電となる。USB接続すると、POCKETRAK CXのディスプレイには接続されている旨の表示がされ、レコーディングや再生など、POCKETRAK CXとしての操作はできなくなる。

2GBのmicroSDカードが付属する USB接続で、マスストレージとして認識される

 POCKETRAK CXとICR-PS1000Mの外見を比較してみると、POCKETRAK CXの方がちょっとスッキリしている印象がある。それはロゴのデザインのせいだけではない。ICR-PS1000Mの右下にあった指紋認証&タッチコントロールセンサーが省かれているからだ。このセンサーが必要となる使用シーンはかなり少ないので、YAMAHAブランドの製品として、省いて正解だろう

 ここまでの液晶画面を見て気がつくのは、ICR-PS1000Mのデフォルトの設定ではメニュー表示が日本語となっていたのに対し、POCKETRAK CXでは英語になっていることだ。POCKETRAK CXでは、メニュー設定を探しても、日本語モードといったものは用意されていないので、日本語表示が必要な場合は注意が必要だ


■ 音質を検証

 では、さっそくPOCKETRAK CXを手に持って、外の音を録ってみることにした。季節的には真夏で、近所では鳥の声などあまり聞こえず、鳴いているのはセミを中心に、虫だらけ。そこで、今回はいつも鳥の鳴き声を拾っている場所ではあるが、セミの鳴き声になっている。

 デフォルトでは、ピークリミッターがオン、ローカットフィルタ(ハイパスフィルタ)がオフという設定だったので、これで試してみたが、やはり、ICR-PS1000Mと同様、ピークリミッターがよくない。特に風切音を拾うと、リミッターはかかるものの、チリチリチリという感じの特有のノイズが入ってしまう。付属のウィンドスクリーンをつけることで、風切音を抑えることができ、チリチリする問題はひとまず抑えられる。ただ、この場合、そもそもリミッターを使う意味もあまりなさそうなので、ここではオフに設定しなおした。

デフォルトでは、ピークリミッターがオン、ローカットフィルタ(ハイパスフィルタ)がオフとなっている ウィンドスクリーンも付属する

グラフィックイコライザ

 また録音関連の設定では、そのほかに音を広げるためのSTEREO WIDEのオン/オフ設定、入力をマイクにするか、ラインにするかの設定があるが、これらはすべてオフにしておいた。また、録音待機状態において、MENUボタンを長押しするとグラフィックイコライザが表示される。実は、マイクの特性を補正し、原音に近づけるために録音の際に、このイコライザを通して録るようになっているのだ。

 デフォルトではRECOMMENDという若干低域を上げた設定になっているが、ほかにもSUPER BASS、BASS、MIDDLE、BASS&TREBLE、TREBLE、SUPER TREBLEという設定のほかユーザー設定も用意されている。ここではデフォルトのRECOMMENDの状態で録音を試してみた。

 録音の準備としては、ヘッドフォンをつけてモニタしながら、適正な入力音量にしていく必要がある。この設定は録音待機状態で十字カーソルキーの左右を押すことで調整するとともに、左サイドにあるMIC SENSボタンをHIGHにするかLOWにして感度を切り替えて使う必要もある。ICR-PS1000Mの場合、音量調整が30段階で、MIC SENSをLOWにして最大にするのと、MIC SENSをHIGHにして最小にするのがだいたい同じになるため約60段階の設定ができたのに対し、POCKETRAK CXでは仕様が少し異なっている。

 音量調整が40段階になり、MIC SENSがLOWで、入力音量が大きい場合と、MIC SENSがHIGHで入力音量が小さいときのある一定区間が重なっている。そのため、MIC SENSをHIGHにするかLOWにするか微妙な音量の場合でも無理なく音量調整ができるようになっており、使いやすさが向上している。

録音レベルは録音待機状態で十字カーソルキーの左右を押すこと調整(左)。MIC感度は左側面にHIGH/LOW切り替えがある(右)

 ここでは48kHzのサンプリングレートにおいてMIC SENSをHIGHに、入力レベルを20前後に設定した上で録音してみたが、予想以上にキレイな音で録ることができた。ミンミンゼミの大合唱の中、右奥で鳩がポッポーと鳴いているのが分かる。また後半においては左側の遠くの道をバイクが上る音などもキッチリと捉えている。これだけの音が録れていれば、大半の人にとっては十分すぎる性能といえるだろう。

 続いて音楽の録音も試してみた。例によってTINGARAのJUPITERを使わせてもらい、16bit/48kHzでレコーディングしてみた。POCKETRAK CXはカメラの三脚に固定し、MIC SENSをLOWに設定してレコーディングしている。聴いてみるとかなりキレイな音で録れているのが分かるはずだ。ただ、ICR-PS1000Mと比較して、違うかといわれると、ほとんど同等のように感じる。周波数特性のグラフを見る限りにおいても、ほとんど差はなく、かなりキレイに音を捉えていることが確認できる。

録音サンプル
蝉の音 楽曲(Jupiter)
sample_o.wav
(6.18MB)

【音声サンプル】
(7.52MB)
編集部注:録音ファイルは、16bit/48kHzで録音したWAVEファイルです。編集部では再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい。


■ 「Steinberg Cubase AI4」もバンドル

 最後に、POCKETRAK CXとICR-PS1000Mとの違いについて、もう少し触れておこう。前述のmicroSDカードが付属すること以外にも、2点付属品が追加されている。

 ひとつは三脚穴をマイクスタンドに取り付けるためのアダプタだ。これがあればスタジオなどでも便利に使えるはずだ。もうひとつがバンドルソフト。YAMAHA製品といことで、「Steinberg Cubase AI4」がバンドルされている。リニアPCMレコーダーとセットで使うソフトであれば、DAWよりも波形編集ソフト、つまりCubaseよりもWaveLabのほうが扱いやすかったようにも思うが、Cubaseであればオールマイティーにいろいろと利用できるので、Cubaseを使ってみたい人にとってはお買い得なセットになっているといえるだろう。

三脚穴をマイクスタンドに取り付けるアダプタが付属 「Steinberg Cubase AI4」も付属する


□ヤマハのホームページ
http://www.yamaha.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.yamaha.co.jp/news/2008/08061701.html
□製品情報
http://www.yamaha.co.jp/product/syndtm/p/rec/pocketrakcx/
□関連記事
【ポータブル高音質レコーダ製品一覧】
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20080228/pcmrec.htm
【4月28日】【DAL】三洋のコンパクトPCMレコーダ「ICR-PS1000M」
〜 ヤマハが協力したEQ搭載。16bitでも良好な音質 〜
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20080428/dal324.htm
【6月23日】【DAL】ヤマハがPCMレコーダやUSBオーディオなどを発表
〜 “Made in Japan”のSteinbergハード製品も 〜
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20080623/dal331.htm
【6月17日】ヤマハ、ポータブルPCMレコーダなど音楽制作向け新製品
−Cubase AI4付属。簡易ミキシング対応USBオーディオI/Fも
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20080617/yamaha.htm

(2008年8月18日)


= 藤本健 = リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。
著書に「コンプリートDTMガイドブック」(リットーミュージック)、「できる初音ミク&鏡音リン・レン 」(インプレスジャパン)、「MASTER OF SONAR」(BNN新社)などがある。また、アサヒコムでオーディオステーションの連載。All Aboutでは、DTM・デジタルレコーディング担当ガイドも務めている。

[Text by 藤本健]


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AV Watch編集部
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