パナソニック、第1四半期決算でテレビセット黒字化
-五輪需要は「成果見えない」。全社連結は黒字に
パナソニックの河井英明常務取締役 |
パナソニックは、2012年度第1四半期(2012年4~6月)連結業績を発表。テレビのセット事業が黒字化したことを明らかにした。
テレビのセット事業およびパネル事業において、第1四半期だけで250億円の改善を達成。パナソニックの河井英明常務取締役は、「販売台数、販売金額は厳しいものの、構造改革効果や原価モノづくり改革が進んだ。パネル事業も非テレビ分野での受注が進んでおり、第4四半期のパネル事業の黒字化に向けて、収益最優先で事業を進める」などとした。
第1四半期では、黒字化したのはセット事業だけで、パネル事業をあわせたテレビ事業全体では赤字となっている。
テレビ/パネル事業の状況 |
第1四半期の全社売上高は前年同期比6.0%減の1兆8,145億円、営業利益は692.3%増の386億円、税引前純利益は前年の174億円の赤字から黒字転換し378億円。当期純利益は前年の303億円の赤字から、128億円の黒字に転換した。
河井英明常務取締役は、「売上高は国内デジタルAV商品の需要低迷の影響を受けて減収となったが、営業利益は構造改革効果に加え、固定費圧縮などの経営体質の強化により増益。税引前利益と純利益は、2010年度第3四半期以来の黒字転換となった。足下の業績はよくなっている実感がある。収益重視の方針に舵を切っており、課題事業をはじめとした改善を進めている。全体として経営体質が強くなっている」と総括した。
地域別の売上高は、国内が5%減の9,221億円、米州が2%増の2,440億円、欧州が15%減の1,682億円、中国が7%減の2,527億円、アジアが10%減の2,275億円となった。
「国内はデジタルAV商品の低迷が影響。米州はオートモーティブおよびAV商品が比較的順調に推移。欧州はデジカメ、エアコン、ソーラーの販売が減少、中国は光ピックアップやデバイスの販売が減少した。またアジアでは白物は堅調だが、AV商品が低調だった」などとした。
第1四半期連結業績 | 地域別販売概況 | 四半期別業績推移 |
AVCネットワークス |
セグメント別では、AVCネットワークスの売上高が前年同期比20%減の3,597億円、営業利益が前年同期の38億円の赤字から、74億円に黒字転換した。
「ノートパソコンなどの売上高は前年を上回ったが、国内の薄型テレビやBDレコーダなどの売上高が大幅に減少し減収。一方で、営業利益では固定費削減や構造改革効果などにより前年から大きく改善した」という。
テレビセットおよびテレビパネルの出荷台数は307万台(前年同期は453万台)。液晶テレビの売上高は前年同期比10%減の923億円、プラズマテレビが47%減の424億円。
デジタルカメラは22%減の346億円。BDレコーダおよびプレーヤーが62%減の130億円となった。
「オリンピック需要は、日本も海外も成果が見えないのが実態。欧州がデザイン性の高さが評価され、薄型テレビの動きが見えている程度。日本では薄型テレビが前年のアナログ停波前の需要の反動が大きく、BDレコーダも伸びていない」などとした。
アプライアンス |
アプライアンスの売上高は3%増の4,314億円、営業利益は7%増の374億円。コンプレッサーやモーターの売上高が前年実績を下回ったが、冷蔵庫や洗濯機などの売上高が伸張した。エアコンは売上高が1%減の1,025億円、洗濯機・乾燥機が16%増の359億円、冷蔵庫が21%増の397億円となった。「洗濯機、冷蔵庫、エアコンの白物3商品が、海外において2桁成長を遂げており、今後の成長性、収益性においてもこれら3商品が牽引していく」などとした。
システムコミュニケーションズは売上高が9%減の1,645億円、営業損失は前年同期から16億円改善したもののマイナス83億円の赤字。
河井英明常務取締役 |
「携帯電話が期待通りには伸びていない。第1四半期の携帯電話は前年同期比2%減の60万台。そのうちスマートフォンは16万台。携帯電話は金額では5~6%増加しているが、スマートフォンを出した分だけ成長している。携帯電話事業全体としては赤字である。スマートフォンはいい商品を出して、評価を得ているが、全体として厳しい事業。事業の強化策を考えたい」などと語った。
エコソリューションズは売上高が前年並の3,552億円、営業利益が37%減の39億円。オートモーティブシステムズの売上高が71%増の1,907億円、営業利益は前年同期の37億円の赤字から、42億円に黒字転換。デバイスの売上高が7%減の3,382億円、営業利益は前年同期の27億円の赤字から、73億円に黒字転換。エナジーは売上高が2%減の1,426億円、営業利益は前年同期の75億円の赤字から1億円の黒字に転換。その他事業では、売上高が29%減の3,435億円、営業利益が6%増の41億円となった。
なお、2012年度の連結業績見通しは5月公表値を据え置き、売上高で8兆1,000億円、営業利益は2,600億円、税引前純利益は1,600億円。当期純利益でも500億円へと黒字転換を見込む。
システムコミュニケーションズ | ヘルスケア、MS社の実績 | エコソリューションズ |
オートモーティブシステムズ社 | デバイス | 半導体事業の状況 |
その他 | エナジー |
同社では、「収益性重視」、「キャッシュフロー経営の徹底」、「財務基盤の建て直し」の3点を、今後目指す経営と位置づけ、「ドメインからビジネスユニット単位へ踏み込んだリソースシフトやリスク管理を行ない、速やかにキャッシュにつなげていく。グローバルの経営環境は慎重に見なくてはならないが、収益力にこだわった経営をしていくことには変わりはない」などとした。
一方、東京電力の電力料金値上げの影響については、「パナソニック全体で年間400~500億円程度の電力使用料金となっているが、製造拠点の多くが関西地区であり、値上げの影響は数億円程度に留まる。関西電力には安定的な電力供給を求めたい」などとした。
(2012年 7月 31日)
[Reported by 大河原 克行]