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「高畑勲展」開幕。爆笑問題・太田、高畑監督は「名前を知る前から自分の中にいた人」
2025年6月27日 11:48
高畑勲の生誕90周年と、その人生に大きな影響を与えた太平洋戦争の終戦から80年が経過することを受けて、展示イベント「高畑勲展 ̶日本のアニメーションを作った男。」が、6月27日から9月15日まで、東京・虎ノ門の麻布台ヒルズ ギャラリーで開催される。開幕に先駆けて、6月26日にはオープニングセレモニーが行なわれ、来賓として高畑監督の夫人・かよ子氏と長男・耕介氏、スペシャルゲストの太田光(爆笑問題)とスペシャルサポーターの岩井俊二監督が登壇した。
オープニングセレモニーでは、開催を記念して耕介氏が挨拶。「アニメーターではない監督の足跡をたどる展示企画は珍しいようです。父の作品は見た目も変化に富み、個性的で甘さ控えめで爽快感を味わえるとは限らないけれど、味わい深く今も色あせない輝きを持っています」とイベント開催の感想を語った。
「本企画は父の生前に始まり、作品の制作背景、思想、影響を受けた芸術を取り上げる構想でした。父の死でそれは叶いませんでしたが、時系列で見る回顧展となりました。世界各地での開催となったのは私たち家族にとっても驚きであり、喜びでもあります」
高畑監督の大ファンで、対談経験もあるという太田は、高畑監督の人柄について「優しかった」と話す一方、「アニメーションの人間の動き方や表情に対するこだわりの強さを見ると、作品や自分に対して厳しい人だったと思う。会話では穏やかだけど、内面には仕事に対する妥協を許さない厳しさがあった」と回想した。
高畑監督と遠縁にあたる岩井監督は、進路に悩んでいた大学時代に初めて対面したという。「自分の好きなものを好きに作っていくのが、いかに大変なことかを2時間くらい叱るように話してくれました。僕にとっては唯一、映像の先輩がかけてくれた言葉。その言葉を座右の銘のように大切にしてきました」と明かす。
お気に入りの高畑作品について問われると、太田は「後年、『ホーホケキョ となりの山田くん』('99)でやりたかったことを『かぐや姫の物語』('13)でやりたかった、と聞いて感動しました」とコメント。
岩井監督は、東映動画(現・東映アニメーション)時代の『太陽の王子 ホルスの大冒険』('68)をピックアップ。「高校時代に愛好家が開いた上映会で初めて観て、あまりにも凄すぎて『なんだ、この完成度は!?』と衝撃を受けた」と振り返った。
さらに「ふたりにとって、高畑勲の存在とは?」と聞かれた太田は、「名前を意識したのは大人になってからだけれど、それ以前に作品を通して自分の中に体験としてある原点。すでに名前を知る前から自分の中にいた人」と表現。
岩井監督も「ずっとその背中を追いかけて、高畑イズムを信じていれば間違えることはないと思える存在。高畑さん自身を学びきるのには、まだまだ足りない。どんな“モノ作り”をして来られたのかを何度も探求したい存在。我々世代にとっては歩みを共にして来られた素晴らしい映像作家です」とリスペクトを示している。
最後に太田は、展示イベントのポスターに「火垂るの墓」のイラストがあしらわれているのを受け、「高畑さんは戦争体験をした中で、単に戦争反対という言葉の中にこの作品を閉じ込めてほしくないという思いがあったのではないか。高畑さんの『戦争反対の映画ではない』という言葉は重い。今我々に改めて問い直されているような気がする」と感想を述べた。
展示イベントでは、高畑監督が手掛けた「火垂るの墓」や「平成狸合戦ぽんぽこ」「アルプスの少女ハイジ」のセル画・背景画などが初公開される。また監督・プロデューサーとして活躍する庵野秀明氏が、かつて「火垂るの墓」に原画スタッフとして参加して描いた「重巡洋艦摩耶」のレイアウトが発見され、これを基に描かれたハーモニーセルも初公開される。
会場所在地は東京都港区虎ノ門5-8-1 麻布台ヒルズ ガーデンプラザA MB階。開館時間は10時~20時(最終入館19時30分)だが、6月27日~7月18日までの火曜・日曜は10時~17時(最終入館16時30分)。チケットは一般2,000円から。