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ソニー、平井社長が4つの“4K世界初”アピール
CESプレスカンファレンスレポート
(2013/1/8 20:12)
ソニーは、2013 Internatinal CES開幕の前日となる7日(現地時間)、同社ブース内に報道関係者を集めてのプレスカンファレンスを開催した。
平井社長兼CEO、主力3事業の成果を振り返る
プレスカンファレンス開幕5分前、会場ではデジカメ、スマートフォン、ビデオカメラなどをバラバラのパーツから組み立てる映像が公開。
この映像が流れる中、登壇したソニーの社長兼CEOの平井一夫氏は、「この映像は実際のエンジニアが組み立てているもので、ソニーのデザイン性の先進性、技術力の高さを視覚的に証明するものである。場合によっては、こうした先進デザインと先進技術は他社にマネされる場合もある(笑)」と軽快にジョークを飛ばしたあと、本題を切り出した。
エレクトロニクス製品は、今や、全ての部位を自社で開発しているメーカーは無いに等しく、平井氏もそれを認めた上で、「それでもなお、ソニー製品は他社製品とは異なる魅力を持っている」と主張。液晶テレビを例に出し、他社製品と同一解像度、同一画面サイズの同一メーカー製液晶パネルを採用していても、映像エンジンのプロセッサ、そこで動作するアルゴリズムの違いで、ソニーだけの高画質製品が実現されると力強く語った。
平井氏は、自身が社長兼CEOに就任するにあたって、ソニーの「デジタルイメージング」、「ゲーミング」、「モバイル」という3つの事業に活力を与えて成長させると宣言したことを振り返り、直近の成果を振り返る。
デジタルイメージングでは、DSC-RX1、DSC-RX100、NEX-VG900といったデジタルカメラやビデオカメラが高く評価されたこと。ゲーミングでは薄型&軽量化した新型PlayStation 3のリリース、PS Vitaのソフトウェアラインナップの充実化といった成功を訴え、モバイルに関してはソニーエリクソンをソニーブランドに統一したことで、ソニー・Xperiaのブランド力が全世界に認知され、浸透してきたと述べる。
さらに平井氏は、そうした状況下でハイエンドスマートフォンを発表できることを誇らしく思う、と述べ、「Xperia Z」を発表した。
Xperia Zは5型のフルHDディスプレイ、1.5GHzクアッドコアプロセッサ、「Exmor RS for mobile」ブランドの1,310万画素CMOS撮像素子を使ったカメラを搭載する。
NFCベースのワンタッチ機能の優位性をアピール
続いて、ソニーエレクトロニクス 社長兼COOのPhil Molyneux氏が登壇。
Xperia Zを対応機器の一例として引き合いに出し、NFC(Near Field Communication/近距離無線通信技術)を活用したソニーの「ワンタッチ機能」を紹介した。
家電製品のワイヤレス接続は非常に便利だが、「ワイヤレスで接続する」という機能を実現するまでのペアリング設定などが難しい。有線接続の「線で繋ぐ」という行為がわかりやすいのとは対照的だ。
そこで、NFCを用い、接続したいもの同士をタッチさせるだけで無線接続を可能にするのが「ワンタッチ機能」になる。Molyneux氏は、直近で発売された製品や、近日発売予定のNFC搭載ワンタッチ機能対応のソニー製品を並べ、これらが全てXperia Zとワンタッチで繋がることをアピールした。
ステージで、ワンタッチで繋がる機器として紹介されたのは、ポータブルスピーカー「SRS-BTV5」、ワイヤレスヘッドフォン「MDR-1RBT」、テレビ用のサウンドバー「HT-CT6600」、パーソナルコンテンツステーション「LLS-201」。
2013年のTV製品戦略、復活したTRILUMINOS技術?
Molynuex氏は、続いてテレビ製品関連のプレゼンへと移行。
まず紹介されたのは、映像コンテンツの関連情報をテレビの電子番組表だけでなく、NetflixやMusic Unlimited、Video Unlimited、YouTubeに対しても縦断検索できる「TV SideView」だ。
見たい映像コンテンツや、その関連情報をソニー製のスマートフォンやタブレットから検索して、その検索結果から見たいコンテンツをすぐさまBRAVIAで視聴できるというのが、サービスの概要となる。
Molynuex氏は次に、広色域再現ソリューションとして「TRILUMINOS Display(トリルミナスディスプレイ)」を紹介。これを、2013年のBRAVIAシリーズに採用していくことを表明した。
TRILUMINOSは、2004年頃に発表されたハイエンド製品ブランド「QUALIA」シリーズのうち、液晶テレビ「KDX-46Q005/KDX-40Q005」に採用されたRGB-LEDバックライト技術の名称だったが、今回、このブランドが復活したことになる。
ただし、今回のTRILUMINOSはRGB-LEDバックライトの技術名ではなく、広色域ソリューションとして広義なブランド名として活用されるという。
実際、TRILUMINOSブランド製品としては、テレビ製品以外の、デジタルカメラ・サイバーショットシリーズ、ビデオカメラのハンディカムシリーズ、そしてVAIOやタブレット、スマートフォンまでが含まれることが発表されている。
ソニーによる“4つ”の“4K”関連世界初
続いてテーマは「4K」(欧米圏ではULTRA HD)。Molynuex氏は、既に映画産業では実用化されている業務用4Kビデオカメラの技術を民生向けに展開する戦略を発表。そのプロジェクトの最初の成果物として、民生向け4KビデオカメラのプロトタイプをCESに参考出品することを明らかにした。
4Kテレビは現状、超解像技術を使ってフルHDから4Kにアップスキャンして映像を表示する事が前提となっているが、ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント(SPE)がグループ企業であるアドバンテージを活かし、リアル4Kコンテンツの提供に取り組んでいくことも表明。
手始めとして、「アメイジング・スパイダーマン」、「トータルリコール2012」など、SPE作品を4Kリマスターし、フルHDで収録したBlu-rayを今春より発売。さらに、ソニーとディスカバリー、IMAXが共同で設立した4Kコンテンツ制作スタジオ3net studiosのリアル4Kコンテンツを初めとして、様々な映画スタジオのリアル4Kコンテンツを今夏よりストリーミング配信していく計画を発表した。
現状では、ソニーの4Kテレビは84型の「KD-84X9000」(北米ではXBR-84X900)のみだが、4Kワールドをより多くの人に楽しんで貰えるようにと、4KBRAVIAに65型の「XBR-65X900A」、55型の「XBR-55X900A」が追加されることが発表された。これら2モデルには、磁性流体(Magnetic Fluid)ユニットベースの大型スピーカがビルトインされ、音質面でも最高性能が与えられているという。この2機種は、北米で今春の発売予定。日本でも同時期に発表されるとみられている。
また、4Kワールドを、映像制作現場からユーザーが視聴する環境まで、一貫してプロデュースできる唯一のメーカーであることを強調。現状でも、世界1万3,000箇所のデジタルシアターで4Kシネマプロジェクタ「SRX-R515P」ベースの4K映画上映が行なわれていることを示し、4Kを身近な存在にしているのはソニーであることを主張した。
最後に平井氏は、「4Kワールドは“未来のもの”ではなく、ソニーによって現在のエンターテインメントとしてもたらされる」と宣言。
これら、「世界初の民生向け4Kビデオカメラ」、「世界初の民生向け4Kコンテンツ体験」、「世界初の4Kストリーミングサービス」に続く、4つ目の「4K関連の世界初」として、「世界最大の56型の4K有機ELテレビ」のプロトタイプを発表した。
なお、ステージ上のプレゼンテーションでは突発的なトラブルによりうまく動作できなかったが、ブース内での展示では問題なく動作していた。ソニー関係者によれば、パネルはブース内展示に用いられたものと同一だが、ステージに上げられたプロトタイプはテレビ製品風に仕立て上げられた、間際に作り上げたものだったそうだ。
4Kにかける意気込みを強く感じさせるプレスカンファレンス。平井氏は最後に「今後も、ユーザーの新しい体験を提供するためにソニーは業界の先端を走り続け、家電業界の活性化にも貢献していく」と締めくくった。