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マランツ、最上位機の技術投入しながら、11.4chで50万円台のAVプリ「AV 30」。音質レビュー付き
2026年2月20日 09:00
マランツは、11.4chのAVプリアンプ「AV 30」を3月3日に発売する。価格は594,000円。最上位の15.4ch AVプリ「AV 10」の技術を多く投入しながら、11.4chとすることで、半額近い価格を実現しているのが特徴。カラーはブラックのみ。なお、AV 30はプレミアムモデルを手掛ける白河工場で生産される。
AV 30のプリアンプ回路には、AV 10やHi-Fiコンポーネントで培ってきた技術を投入。心臓部には、超ハイスルーレートのマランツオリジナル・ディスクリート高速アンプモジュール「HDAM-SA2」を盛り込んだ。
AMP 10でも採用されたコンプリメンタリー低ノイズトランジスターなどのハイグレードパーツも採用した。オペアンプを使わず、ディスクリートでこだわりのパーツを選ぶ事で、サウンドマスターが目指す音の世界を実現したという。
なお、AV 10ではこのHDAM-SA2を、各チャンネルに対して、独立した1枚の基板で構成し、その基板を19枚搭載している。AV 30では、コストを抑えるために、11.4chのHDAM-SA2回路を、左右チャンネルで分離、2枚の基板に配置して搭載。左右チャンネル間のクロストークを排除し、立体感のある空間表現力を実現している。
全てのアナログ入力信号は、HDAM-SA2を組み合わせた入力バッファーで受ける設計とすることで、後段の回路の影響を最小限に抑えた、純度を高いアナログ信号処理を実現している。
11.4chのサラウンド音声信号や、Audyssey MultEQ XT32、Dirac Liveによる音場補正、4系統のサブウーファーに対するバスマネジメントなどの処理を同時に行なうために、フラッグシップのAV 10と同じ、1基で2,000 MIPS(AV8805A比125%)の処理能力を備える最新のデュアルコアDSPを搭載する。
DA変換回路は、HDMIなどのデジタル回路からもアナログオーディオ回路からも独立した専用基板にレイアウトし、回路間の干渉を最小化。パーツの配置、信号経路も最適化した。
電源回路は、電源トランスの巻線からD/A変換回路専用とし、他のデジタル回路からの干渉を排除。DACチップ内部のアナログ回路専用にAV 10でも採用されたディスクリート構成のレギュレーター回路を搭載することで、超低ノイズを実現している。
D/A変換を高精度で行なうために、AV 10同様に音質面で有利な電流出力型のDACチップを搭載。11.4ch分のD/A変換のために、8ch対応DACチップを2基備える。電流出力型DACにすることで、DACからの電流出力を受けるI/V変換回路、およびそこでの使用パーツを独自に設計・選択でき、音質担当エンジニアとサウンドマスターによる入念なサウンドチューニングを施した。
高精度な水晶発振器によってクロックを再生成することで、デジタル音声入力に含まれるジッターを効果的に低減。ジッターリダクション回路をDAC至近に配置することで、極めてジッターが少ない状態でD/A変換ができる。
Dolby Atmos、DTS:Xに対応。最大11.4chのプロセッシングができ、7.4.4 chおよび5.4.6 chまでのシステムを構築できる。IMAX EnhancedやAuro-3Dにも対応。MPEG-H 3D Audio(360 Reality Audio)もサポートする。なお、AV 10が対応しているDTS:XProはサポートしない。
バーチャル3DサラウンドテクノロジーDolby Atmos Height Virtualizer、DTS Virtual:Xにも対応。5.1ch、7.1chなどの環境でも、高さ方向を含むあらゆる方向からのサウンドに包み込まれるイマーシブオーディオ体験が可能という。
アナログオーディオ回路用に専用の電源トランスとディスクリート構成の整流回路/平滑回路を搭載、デジタル回路との相互干渉の排除と、優れたリップルノイズ除去率を実現した。さらにDACやプリアンプ回路、HDAMなど、回路ごとにトランスの巻き線を分け、回路間の干渉も徹底的に排除した。
ブロックコンデンサーは、AV 30専用に開発されたカスタムコンデンサーで、6,800μF ×2のものを搭載。電源トランスにアルミ製のケースとケイ素鋼板によるシールドを追加することで、漏洩磁束を抑え、高品位な電源供給を実現。
筐体は、AV 10やAMP 10と同一構造のフロントパネルを採用する。強化したフロントとシャーシの結合は筐体剛性の強化に寄与し、繊細な電気回路に悪影響を与える振動を効果的に抑制。メインシャーシには、メイントランスと電源基板を支えるベースプレートを追加した複層構造となっている。トランスの重量を効果的にフットに分散し、同時に電気部品と各基板を強固に保持し音質向上に寄与している。
ノイズ対策には、AV 10の開発で培われたノウハウを投入。DSPやネットワーク、USBなどのデジタル回路への電源供給には専用のトランスを使用し、アナログ回路との相互干渉を排除。デジタル電源回路の動作周波数を通常の約3倍に高速化してスイッチングノイズを再生音に影響の及ばない可聴帯域外へシフトさせた。
同じ筐体にデジタル/アナログが混在するAVレシーバーでは、デジタルノイズの抑制が大事となり、特にDACの信号ラインや、物理的に近接する箇所のノイズ対策にはAV 10の開発ノウハウを存分に投入し、高速動作するデバイスは、信号ラインが最短になるよう最適に配置。DSPやHDMI入出力デバイスのように激しい消費電流の変動が生じるデバイスには直近にレギュレーターを配置している。
11.4chすべての出力端子を同一グレードとし、チャンネル間のクオリティ差を排除。バランスXLR出力、およびアンバランスRCA出力の両方に金メッキ端子を採用した。
独立した4系統のサブウーファープリアウトも搭載。出力端子はバランスとアンバランスの両方があり、4台のサブウーファーの音量レベルとリスニングポジションまでの距離は個別に設定できる。
専用マイクによるオートセットアップ機能「Audyssey MultEQ XT32」を備える。「Audyssey MultEQ Editor」アプリで、細かな調整も可能。
HDMI入力は7系統、出力は2系統が8K/60Hz、および4K/120Hz映像信号のパススルーに対応する。ゾーン出力を含む7入力/3出力すべてのHDMI端子がHDCP 2.3に対応。HDR信号のパススルーも可能。
ネットワークオーディオのプラットフォーム「HEOS」を搭載。ネットワーク音楽再生に加え、Amazon Music HDやQobuz、Spotifyなどの音楽ストリーミングサービスも再生可能。
Roon Readyにも対応する。
HDMIは入力×7、出力×3。映像入力端子はコンポーネント×1、コンポジット×2。音声入力端子はアンバランス(RCA)×6、Phono(MM)×1、光デジタル×2、同軸デジタル×2。
音声出力端子は11.4chバランス(XLR)プリアウト×1、11.4chアンバランス(RCA)プリアウト×1、ゾーンプリアウト×2、ヘッドフォン×1を備える。
消費電力は80W。最大外形寸法は442×414×189mm(幅×奥行き×高さ/アンテナを寝かせた場合)で、質量は11.1kg。
音を聴いてみる
フロアが5ch、天井が6ch、サブウーファ×2基という11.2ch環境で、AV 30と、パワーアンプはAMP 10と組み合わせてUHD BDを試聴した。なお、海外では「AMP 30」というミドルクラスの薄型6ch AVパワーアンプも発売されるが、日本のマーケットにはあまりマッチしないとして、日本では導入されない。
「グレイテスト・ショーマン」冒頭の「The Greatest Show」を再生すると、「ダンダン」という足踏みが響いた段階で、「ああ、これはセパレートの音だ」と実感する。圧倒的に広大な音場に、鋭い足踏みが鮮烈に響く。歌声やコーラスがこちらへと押し寄せるパワフルさはAMP 10によるものだが、AV 30により、その背後に広がる空間が奥行きたっぷりに描写される。そのため、歌声の音像がより立体的に感じられる。
この超広大な音場に、情報量の多い微細な音がハイスピードに展開する感覚は、以前、AV 10とAMP 10を試聴した時に感じた音を非常に近い。“AVアンプの音”という世界を超えて、2chハイエンドHi-Fiアンプを11ch化したという感覚で、クラシック音楽の映画などを再生すると、弦楽器の弦が震える質感や、ホールに張り詰める緊張感すら伝わるような、描写の丁寧さがある。
一方で、ブラッド・ピットの映画「F1(R)/エフワン」冒頭のデイトナ24時間のレースシーンでは、音場の広さを活かし、レース会場に置かれたスピーカーから流れるアナウンサーの声がグッと前に出つつ、その背後にエンジン音が広がり、そのさらに奥に観客の歓声が展開。そして頭上で花火が広がるという、音像の奥行き、上下感も細かく聴き取れる。
唸るようなエンジン音に包まれ、激しく車体をぶつける大迫力のシーンの中でも、コースを外れたマシンが巻き上げた砂や土の「ジャラジャラ、ボタボタ」という微かな音も聴き取れるように描写する。広さと近さ、クリアさと迫力、一見すると相反しそうな要素を両立できるAVプリだと感じる。
それでいて、AV 10の半額近い価格を実現しているAV 30は、クオリティだけでなく、コストパフォーマンス面でも注目のアンプだ。AV 10が気になりつつ、「価格的に手が出ない」とか「15chまでは不要だな……」と感じていた人への、救世主がAV 30と言えそうだ。
















