萌えとオーディオの融合、「Soundgirl -音響少女-」 発売記念イベント
-“大手を振って”アニメ/声優CDを再生できる場。その狙いとは?
Soundgirl -音響少女- |
(C)2009 Soundgirl製作委員会/融雪カンテラ (C)2009 音響少女 |
この試聴イベントは、美少女のイラストと共にピュアオーディオシステムの特徴や音質などを紹介する融雪カンテラ(サークル)の同人誌「Soundgirl -音響少女-」(B5サイズ/フルカラー56ページ/1,500円)の発売を記念し、同人誌の中で紹介しているシステムの音を実際に体験してもらおうというもの。
同人誌の詳細は既報の通りだが、文章をオーディオライターの岩井氏が執筆。イラストは「魔法遣いに大切なこと」のよしづきくみち氏や、「ぽてまよ」などで知られる漫画家・御形屋はるか氏など、実力派絵師10人が参加する豪華な内容。ケーブルによる音色の違いといったマニアックな内容を可愛い漫画で紹介するコーナーや、「トランスとは?」、「オーディオ機器の置き方は?」といった、初心者向けの内容まで、とっつきやすく解説されている。同人誌自体は「コミックとらのあな」の店頭で6月13日から発売されている。
コミックとらのあな、秋葉原本店の入口 | 会場の様子。4つの試聴システムを中心に、様々な機種が用意されている | 写真のように、製品の上に、その音をイメージしたイラストが展示されているのが特徴 |
■ “音のイメージ”を擬人化する
岩井喬氏(左)と、渡辺修氏(右) |
書籍とイベントの狙いについて、文章を執筆した、録音エンジニアでオーディオライターとしても活躍している岩井喬氏と、Soundgirl製作委員会の編集・製作代表 渡辺修氏にお話を伺った。
編集部:機器そのものではなく、“音のイメージ”をイラスト化したのは何故なのでしょうか?
Soundgirl -音響少女-の誌面サンプル。文章とイラストで製品の特徴や背景が紹介されている |
(C)2009 Soundgirl製作委員会/融雪カンテラ (C)2009 音響少女 |
渡辺修氏:そこで、システムの音のイメージを言葉だけでなく、よりわかりやすく表現する手段として、“音のイメージをイラスト化”することにしました。例えばtangentの「HiFi200+Clarity4」というシステム。量感があり、重厚で穏やかな再生音なんですが、その音をいぶきちさんのムッチリとした、ちょっと太めの女の子のキャラクターで表現しています。
このように、作家さんに製品のイラストを依頼する時に、その方の絵の特徴を踏まえ、マッチするだろうなという製品をお願いしました。
編集部:いわゆる“オーディオマニア”な方にイラストを頼んだということなんでしょうか?
渡辺修氏 |
編集部:イラスト化にあたって、“音のイメージをつかむ”事が重要になると思いますが。
岩井氏:作家さんには実際にシステムの音を体験して頂くために、試聴機を使って頂いたり、メーカーの試聴室に赴いて試聴して頂いたりしました。メーカーの開発者の方に、直接音のコンセプトなどをお伺いしたケースもあります。その過程については、別途イラスト解説も用意しています。
■ 試聴イベントと同人誌がセット
「Soundgirl -音響少女-」のもう1つの特徴は、試聴ソフトにクラシックやジャズなどに加え、アニメ/ゲーム系ソースや、声優のアルバムなどを多く使っていること。代表的なところでは、「Pure~AQUAPLUS LEGEND OF ACOUSTICS」やメロキュア「1st Priority」、May'n/中島愛「ライオン」、坂本真綾「かぜよみ」、水樹奈々「深愛」など、人気が高く、音質にも定評のあるソースが使われている。
オーディオ誌の試聴ではどうしても、再生機器の実力を試すため、ワイドレンジで音場描写が重要になるクラシックやジャズの定番ソースが使われる事が多い。だが、そうした音楽を普段あまり聴かない人には、“その製品がどんな音なのか”を、自分の体験に置き換えてイメージすることが難しい。
会場に用意された大量のアニメ、ゲーム、声優関連のソース。岩井氏や渡辺氏の私物だとか |
だが、量販店の店頭や、オーディオショップの試聴室で、アニメやゲームのCDを取り出すのが、なんとなく“気恥ずかしい”もの。そこで、18日から開催されている発売記念イベントでは、書籍の中で使われたようなジャンルのソースを大量に用意。“大手を振って”アニメや声優関連のCDを再生できる場所になっている。
最近人気のある作品から、録音品質に提供のあるディスク、懐かしのディスクまで、幅広く揃えられている |
編集部:同人誌の発売にあたり、今回の試聴イベントも平行して準備されていたと伺いました。
岩井喬氏 |
だからこそ、ただシステムを紹介する本を作るのではなく、企画書の段階からイベント開催を目指し、それを見込んでのスケジュールで本の制作を開始しました。今回のイベントでは、本の中で紹介した4つのシステムを中心に用意しています。
編集部:紹介する機器の選択基準はどんなところにあるのでしょう?
岩井氏:システムとしてまとまりの良い音が楽しめ、なおかつ発展性のあるモデルを中心に選んでいます。読者層的にPCとの親和性も重視しました。読み物としても面白いものにしたかったので、大量の製品を紹介するよりも、1つのシステムを深く掘り下げています。手軽な価格のものから、「NeoClassico」のような高級なモデルまで、価格的には幅を持たせてあります。
実際に会場に用意されている4つの試聴システムを紹介しよう。ラックスマンの真空管オーディオシステム「NeoClassico」(ネオクラシコ)。真空管プリメイン「SQ-N100」(18万9,000円)、CDプレーヤー「D-N100」(12万6,000円)、スピーカー「S-N100」(12万3,900円/ペア)。
ラックスマンの真空管オーディオシステム「NeoClassico」 |
ソニーの「System501」。プリメイン「TA-F501」(93,450円)、SACD/CDプレーヤー「SCD-X501」(93,450円)、スピーカー「SS-K10ED」(70,350円/ペア)。
ソニーの「System501」 |
tangentの「HiFi200+Clarity4」。プリメイン「AMP-200-EU」(120,750円)、CDプレーヤー「CDP-200-EU」(78,750円)、スピーカー「Clarity4」(84,000円/ペア)。
tangentの「HiFi200+Clarity4」 |
ケンウッド「K series」。プリメイン「R-K1000-N」(55,650円)、CDプレーヤー「DP-K1000-N」(40,950円)、スピーカー「LS-K1000」(55,650円/ペア)。
ケンウッド「K series」。small> |
ほかにも、ケンウッドの「Prodino」や、ビクターの「EX-AR3」などの小型システム、一体型のネットラジオ端末、tangent「QUATTRO MKII」なども用意されている。
水樹奈々のライヴDVDを再生中のビクターの「EX-AR3」 | 再生音のイラストはこちら。読んでる漫画は「ニッパーちゃん」(?) | ケンウッドの「Prodino」 |
城下工業オリジナル真空管プリメインアンプSOUND WARRIORを中心としたシステムも | 未発表のアンプも参考展示された。USB入力を備えているのが特徴だ | 一体型のネットラジオ端末、tangent「QUATTRO MKII」 |
「ヘッドフォン祭」のようなヘッドフォン/イヤフォン関連のイベントでは、iPodなどのポータブルオーディオ機器の普及と合わせ、参加者の年齢層も低く、独特の活気に満ちている。しかし、ピュアオーディオ系のイベントは依然として年齢層が高く、価格も含め、若い人からするとハードルが高く感じられるだろう。
しかし一方で、今回のイベントで紹介されているような、適度な価格でコンパクト、クオリティが高く、発展性も備えている機種も登場していきている。オーディオの魅力は実際に音を聴いて、感動しないと伝わりにくいもの。あらゆるものの萌え化、擬人化、美少女化が溢れているので、ともすれば「またか」と思われるかもしれないが、オーディオファン層の拡大に向けた“体験の場の提供”や“キッカケ”という意味からも、「Soundgirl -音響少女-」のアプローチは面白い試みと言えそうだ。
(2009年 6月 18日)
[AV Watch編集部 山崎健太郎]