春のヘッドフォン祭2009【タイムロード/完実電気編】
-ULTRASONE「Edition8」や3ウェイ「UM3X」など
東京・中野にあるAV機器の専門店フジヤエービックのデジタルスタイルショップが主催する「春のヘッドフォン祭2009」が5月9日の土曜日、中野サンプラザにて開催された。入場料は無料。
チラシに描かれた今回のイベントのヘッドフォン娘 |
「ヘッドフォン祭」は、そんな同店が取り扱う製品や、各社の新製品が体験できるイベントとして開催されているもの。15階の全ルームを貸し切り、普段あまり聞くことのできない国内外の高級ヘッドフォンが多数試聴できるイベントとなっている。
■ タイムロード
会場で最も注目を集めていたのはゼンハイザーが同日に発表したHD800だが、タイムロードが出品した、ULTRASONEのハイエンドヘッドフォン「Edition8」も、それに負けない注目モデル。試聴機の前には長い列ができていた。
2008年11月の「秋のヘッドフォン祭」で発表されたもので、5月中旬からいよいよ発売される。価格は15~16万円程度。editionシリーズでは初めて、生産数が限定されていない。
Edition8のパッケージ | ハウジングは楕円形で縦長。レアメタルのルテニウムを使っている | エチオピアンシープスキンレザーを使ったパッド。装着感も良好だ |
屋外での利用も想定し、従来のEditionシリーズと比べると小ぶりなハウジングが特徴。付属ケーブルが3mと長かった従来のeditionシリーズと比べ、1.2mと取り回しを良くし、4mの延長コードが付属する仕様に変更。ドライバは40mm型で、専用に開発されたトリプル・バスチューブコントロールド・チタンドライバーを採用。ヘッドフォン特有の頭内定位や圧迫感を低減する「S-Logic Plus」や、特殊なシールドを施すことで電磁波の影響を低減するという「ULE」技術も採用している。
ハウジングは密閉型で、従来の円形から縦長の楕円形に変わった。ハウジングにはレアメタル(希少金属)のルテニウムを使用し、表面は鏡面仕上げとなっている。再生周波数帯域は6Hz~42kHz。インピーダンスは30Ω。音圧レベルは96dB。コードを除く重量は260g。
最終試聴機の音質は、コンパクトな外観からは想像できないほど、ゆったりとした、余裕を感じさせる再生音。再生音のバランスは極めてニュートラルだが、強いて特徴を挙げると、1音1音のコントラストが高く、細かいニュアンスが明瞭に聴き取れる。だが、モニターライクな、乾いた再生音とは間逆で、ヴァイオリンの高域や女性ヴォーカルが非常にしなやかで、艶っぽい。どちらかというと音楽をダイナミックに聴かせるHFIシリーズの音を様々な面で大幅にグレードアップさせた音という印象を受けた。
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■ Mixwave
イヤフォンの注目モデルは、Mixwaveのブースに展示された「UM3X」。イベント前日に発表されたばかりで、今回が初公開となる。民生向けとして初めて3ウェイのバランスドアーマチュアユニットを採用した「Westone3」(直販54,800円)と同じく、3ウェイユニットを採用。5月中旬発売で、価格はオープンプライス。店頭予想価格は5万円前後の見込みだ。
「Westone3」とは別ラインのUMシリーズ(UM1/UM2)の上位モデルであり、同じ3ウェイだが、内蔵するユニットは「Westone3」のものとは異なる。使用者の耳穴の型をとり、ジャストフィットする形状のハウジングを作る、フルカスタムイヤフォン「ES3X」と同じユニットを採用しているのが特徴で、型とり代などを含めて約14万円する「ES3X」に対し、価格を5万円台に抑えている。
UM3X | フルカスタムのES3X。UM3Xの3ウェイユニットは、このモデルと同じものを使っている | カスタムイヤーピースのUM56 |
Westone3 |
また、付属のイヤーピースを使わず、カスタムのイヤーピースをオーダーし、「UM3X」と組み合わせて使用することも可能。カスタムイヤーピースは「UM56」という名称で、作成費用は3~4万円程度(型とり代込)。「UM3X」と組み合わせるとセミカスタムと呼べるイヤフォンが完成するが、それでも価格は8万円程度に収まる。なお、イヤーピースの「UM56」は「Westone3」を含む、他のイヤフォンにも装着可能だという。
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http://av.watch.impress.co.jp/docs/news/20090508_168201.html
【2008年11月26日】ミックスウェーブ、初の3ウェイカナル型イヤフォン
-3基のアーマチュア内蔵。直販55,000円
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20081126/mixwave.htm
■ 完実電気
完実電気のブースでは、取扱を開始したモンスターケーブルの現行モデル、新製品を一堂に展示した。新モデルはヒップホップアーティストで、プロデューサーでもあるDr.Dreと、産業デザイナーのRobert Brunnerがコラボレーションして生み出した「Monster Beats by Dr.Dre」シリーズが展示されている。
ヘッドフォンの「MH BEATS PI OE」は、アクティブタイプのノイズキャンセリングヘッドフォン。オーバーヘッドアームから滑らかに続くハウジングデザインが特徴で、力強い低域表現が特徴だという。密閉型でインピーダンスは40Ω。音圧感度は110dB。再生周波数帯域は20Hz~20kHz。コードは1.3m。電源は単4電池を使用する。なお、スルー出力はできないため、常時アクティブノイズキャンセルはONにしている必要がある。
MH BEATS PI OE。スタンドはこのイベント用に作られたもので付属しない | ブラックとレッドを配したカラーリングが特徴 | アームと一体化したようなハウジングデザイン |
航空機アダプタだけでなく、iPhone 3G用のマイク付きケーブルも同梱。キャリングケースなども同梱する。近日発売で、価格はオープン。店頭予想価格は44,000円前後の見込み。
イヤーパッド部 | ケーブルもレッド | iPhone 3G用のマイク付きケーブルも付属する |
同シリーズのカナル型「MH BEATS IE」は同じくオープンプライスで、実売15,000円前後の見込み。ヘッドフォンと同様に低域を重視したキャラクターで、インピーダンスは32Ω。再生周波数帯域は10Hz~22kHz。コード長は1.2mで、平型。ソフトイヤーピースをS/M/Lの3サイズ同梱するほか、トリプルフランジタイプのピースもS/Lの2サイズ付属する。
MH BEATS IE | ケーブルは平型 | トリプルフランジのピースも付属する |
Dr.Dreタイプではないカナル型イヤフォン「Turbine」もラインナップ。実売は19,800円前後の見込み。8cm径のダイナミック型ユニットを採用。その名の通り、タービンのようなハウジングデザインが特徴。また、ケーブルには正確な信号伝送を実現するという導体「Micro Stand」を採用。モンスター社の特許技術「Flux Tube」も採用し、磁気を持つチューブ状ケーブルを加えることで、より自然な再生音を実現したという。インピーダンスは18Ω。再生周波数帯域は10Hz~24kHz。コード長は1.2m。
Turbine | Etymotic Researchの新モデル「HF5」も展示された |
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-メタル筐体「Turbine」と、Dr.Dreの「Beats Tour」
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20090114/ces20.htm
同社ブースではイヤフォン/ヘッドフォン以外の新製品も展示。PS Audioの製品でCDトランスポートの「Perfect Wave Transporter」、DACのPerfect Wave DAC」で、年内の発売を予定。価格は未定だが、同シリーズのオーディオ用クリーン電源「Power Plant Premier」は399,000円であるため、高級モデルになる見込みだ。
特徴は、CDトランスポートとDACの接続にHDMIを使用していること。伝送にはI2Sを使用しており、デジタル音声信号とクロックを別に伝送し、ジッタ低減を図っている。なお、どちらも同軸/光デジタル端子も備えているため、両モデル以外の組み合わせにも対応できる。
上段がCDトランスポートの「Perfect Wave Transporter」、下段がDACのPerfect Wave DAC」 | ドライブはDVD-Rなどの読み込みにも対応。ただし、DVDビデオ/オーディオには非対応 | HDMIケーブルで接続すると、より高品質な伝送が行なえる |
トランスポート側は、さらにジッタを低減するため、内部に64MBのメモリを内蔵。CD読み込み時にバッファさせている。また、ドライブとしてはDVDの読み込みにも対応し、DVD-Rに書き込んだリニアPCMファイルも読み込み可能。ただし、DVDオーディオには非対応で、映像系回路も無いためDVDビデオも再生はできない。LAN端子も備え、楽曲の情報やアルバム画像も表示できるという。
■ その他
ヒビノインターサウンドのブースでは、Shureのカナル型(耳栓型)イヤフォン新モデルのシルエットを公開した。なお、5月11日に発表された「SE115」はダイナミック型で、発売日は6月12日。1万円程度で販売される見込み。
C.E.Cのブースでは、業務用モニターとして開発されたダイナミック型ヘッドフォン「HP-53」のバランス接続タイプを参考展示。HP-53は14,000円程度で販売されているコストパフォーマンスの高いモデルだが、バランスタイプも3万円程度に抑えられる見込みで、バランス接続ヘッドフォンとして非常に低価格なモデルとなる。6月下旬の発売を予定している。
(2009年 5月 11日)
[AV Watch編集部 山崎健太郎]