マランツ、B&Wの新スピーカー「800 Diamond」を4月発売

-下位の805までダイヤモンドツイータ。センター用も


800 Diamond

4月より順次発売

標準価格(1本):29万4,000円~189万円

 マランツ コンシューマー マーケティングは、Bowers & Wilkins(B&W)のスピーカー800シリーズをリニューアル。全モデルにダイヤモンド・ドーム・ツイータを搭載した「800 Diamond」シリーズとして4月より順次発売する。

解説はB&WのDr.John Dibbが行なった
 最上位の「800」やブックシェルフの「805」などに加え、センタースピーカー2機種も用意。合計7機種の展開となる。加えて、これらのシリーズとの組み合わせを想定したサブウーファ「DB1」の投入も検討されているが、詳細や発売日、価格などは一切未定となっている。

 今回発表された製品には、ローズナット、チェリー、プレミアム・ピアノ・ブラック・フィニッシュの3種類の仕上げを用意。従来のブラックアッシュが無くなり、ピアノ・ブラックに変更された。各モデル、各仕上げの価格は下表の通り。


製品名種類価格(1本)
チェリー・ウッド
ローズナット
ピアノ・ブラック
800 Diamond3ウェイ4スピーカー
フロア型
1,785,000円1,890,000円
802 Diamond3ウェイ4スピーカー
フロア型
1,008,000円1,050,000円
803 Diamond3ウェイ5スピーカー
トールボーイ
714,000円756,000円
804 Diamond3ウェイ4スピーカー
トールボーイ
546,000円577,500円
805 Diamond2ウェイ2スピーカー
ブックシェルフ
294,000円315,000円
HTM2 Diamond3ウェイ4スピーカー
センター
651,000円693,000円
HTM4 Diamond2ウェイ2スピーカー
センター
367,500円399,000円
DB1サブウーファ未定未定


■ ダイヤモンド・ドーム・ツイータを全モデルに

 「800 Diamond」シリーズの特徴は、最も低価格な「805 Diamond」に至るまで、ダイヤモンド・ドーム・ツイータを採用した事。ダイヤモンドは非常に硬く、軽い素材であり、振動板として理想的なものだが高価であるため、従来は低価格なモデルではアルミドームが使われていた。今回、全ての機種にダイヤモンド・ドーム・ツイータが導入された事で、パフォーマンスや音質のキャラクターの統一がさらに高まり、シアターシステムでのマルチチャンネル使用でもより高いパフォーマンスが発揮できるという。

最上位の800 Diamond802 Diamond805 Diamond
800のツイータ部805のツイータ部。上位から下位までダイヤモンド・ドーム・ツイータを採用したツイータのハウジングは下位モデルでもプラスチックからメタルに変わった

803 Diamond
チェリー・ウッド仕上げ
804 Diamond
ローズナット仕上げ
HTM2 Diamond
ローズナット仕上げ
HTM4 Diamond
ピアノ・ブラック仕上げ
802の使用イメージこちらは805の使用イメージ

 ツイータには従来と同様、ノーチラス・チューブが装着されているが、内部もブラッシュアップ。従来は1つだった磁気回路のマグネットを、合計4個に増加。具体的にはボトムプレートの裏側と、トッププレート、ポールピースの上に新たに追加。ユニットのギャップ部分の磁束密度を上げるための工夫で、1つの磁石を大きくしても外に漏れる磁束が増えるだけで、ギャップ部分の密度が高まらない。そこで、磁束の向きが異なる磁石を効果的に配置することで、外に漏れる磁束を押さえ込み、磁路の中に閉じ込め、ギャップの磁束密度を向上させた。

 なお、通常のスピーカーは、組み上げ&接着した後で鉄のパーツを磁化させているが、異なる磁束方向のマグネットが組み合わされているため、既にマグネットになったパーツを組み合わせる必要があり、「反発磁界の中で正確にはめ込むのは大変な作業」(Dr.John Dibb)だという。

ツイータのマグネットを4個に従来の回路(左)と新回路(右)の比較断面図。矢印が描かれている部分がマグネット。左上にある部分がギャップ。右の断面図の方がギャップ部分の磁束密度が上がり、色が紫色になっている事がわかる

15kHzでの指向性を示した図。緑のラインが従来、赤が新ツイータ。0度が正面の指向性を表している。30度の部分を観ると、従来ツイータは30dB程度落ちているが、赤いラインはほとんど落ちていない
 エッジ部分の素材も見直し、エッジから放射される音とドーム振動板自身から放射される音との位相関係を改善。これにより、高い周波数における指向特性が大幅に改善された。偏差2dB以内での指向性は、全モデルで水平方向60度以上、垂直方向10度以上。



■ その他の強化ポイント

800のミッドレンジ。フェージングプラグがシルバーになった
 ミッドレンジはB&Wのスピーカーではお馴染みのケブラー振動板を採用。従来のユニットと基本的な仕様は同じだが、ボトムヨークの磁石部分に違いがあり、従来はポールピースと平らなヨークを別のパーツとして作り、結合して使用していたが、新ユニットでは一体型でプレスして作っている。そのため、分子の並びの断裂が無く、よりスムーズな磁力の流れが得られるという。また、デザイン面では中央のフェージングプラグの色が、ブラックからアルミ色に変更された。

 ウーファの振動板はロハセル発泡コアを、カーボンファイバー・スキンでサンドイッチしたコーンを使用。これも従来ユニットと基本は同じだが、駆動回路部に、新たにネオジウムマグネットを採用。さらに、マグネットを2つ搭載し、対称配置としている。これにより、振幅が大きくてマグネットから外れる瞬間でも磁束の漏れ方が均一になり、ストロークがリニアになり、結果として再生音の歪が低減されたという。これに合わせ、コイルの巻きが大きく、ボビンも長く、強度がアップしている。


800のウーファ部ネオジウムマグネットを2個
対称に配置している
磁束を表した断面図

 なお、805と、805のセンター版と言えるHTM4のウーファは従来のユニットと同じウォーブン・ケブラー・コーンFSTだが、新しいツイータや筐体に合わせ、チューニングされているという。

 全モデルでネットワークも改良。クロスオーバーには、従来と同様に独ムンドルフのコンデンサを使っているが、そのグレードがアップ。「M-Cap Supreme Silver/gold/oil」と、最後に“oil”が付いた。これは、内部にオイルを充填させることで、微細な内部振動を抑えるというもので、パーツ単体で市場価格25,000円もする高級パーツだという(goldまでだと2万円)。

新ターミナル部
 スピーカーターミナルも改良。これまではWBT製のターミナルポスト(真鍮製)を使っていたが、これをB&W独自でOFC(無酸素銅)のものを作成。リンクケーブルもOFCとし、真鍮よりも導電性能が向上したという。

 基本的なデザインは従来モデルと同じだが、細かい部分にデザイン的なアクセントを追加。ツイータのグリル、ダクト、ユニットのトリムとターミナルトレイにシルバーリングを配した。また、CMシリーズと同様に、サランネットをマグネット装着式とした。これは各モデルの音質が向上した結果、従来よりもさらにネットの有無で音質変化が大きくわかるようになったためで、音質で優れる“ネット無し”を基本として使って欲しいというメッセージを込めて、ネットの無い状態で凹凸が無いデザインになるよう、マグネット装着式が採用されたという。

 各モデルの詳しい仕様は、末尾の表にまとめている。


805のバッフル。サランネット用の穴が無く、つるっとしているサランネットを付けたところマグネットで装着する


■ 「市場に喝を入れる製品に」

 新シリーズには、800シリーズでお馴染みの15インチシングルウーファを備えた「801」がラインナップされず、802の上が800になっているが、これは「最上位の800を選ぶ人が多い」という事と、「今回の802で、801の領域もカバーできるという自信の現れ」だという。

高山敬史代表取締役
 発表会で登壇した高山敬史代表取締役は、リーマン・ショック以降の、市場推移を紹介しながら厳しい状態が続いているオーディオ業界の現状を説明。その上で、マランツの2010年1月~2月の総出荷個数は昨年と比べ93%となったが、売り上げは103%と増収になった事を紹介。「デフレ経済下でお客様は減ったが、平均出荷単価は上がっている。高額ながら旧800シリーズはカスタムインストレーション向け物件の予約も含めて、円高の追い風もあるが完売状態。マランツの旗艦プリメインPM-11S2も好調」などの要素を挙げ、「そろそろ節約疲れではないかと考えている。趣味製品については、“欲しい物は絶対欲しい”という流れが出てきている兆しがある」と、消費者の気持ちを予想した。

 その上で、新しい800シリーズの使命として「卓越したパフォーマンス」などに加え、市場的には「ハイエンドスピーカーの首位製品として市場を活性化させ、単品コンポーネント市場に喝を入れる製品になって欲しい」と期待を込めた。


製品名800
Diamond
802
Diamond
803
Diamond
804
Diamond
805
Diamond
HTM2
Diamond
HTM4
Diamond
種類3ウェイ4スピーカー
フロア型
3ウェイ4スピーカー
フロア型
3ウェイ5スピーカー
トールボーイ
3ウェイ4スピーカー
トールボーイ
2ウェイ2スピーカー
ブックシェルフ
3ウェイ4スピーカー
センター
2ウェイ2スピーカー
センター
ツイータ25mm径
ダイヤモンド・ドーム×1
ミッドレンジ150mm径
ウォーブン・ケブラー・コーンFST×1
165mm径
ロハセル・コーン×1
150mm径
ウォーブン・
ケブラー・コーンFST×1
165mm径
ウォーブン・
ケブラー・コーンFST×1
ウーファ250mm径
ロハセル・コーン×2
200mm径
ロハセル・コーン×2
180mm径
ロハセル・コーン×3
165mm径
ロハセル・コーン×2
180mm径
ロハセル・コーン×2
再生周波数
帯域
25Hz~33kHz27Hz~33kHz28Hz~33kHz30Hz~33kHz42Hz~33kHz35Hz~33kHz42Hz~33kHz
感度(2.83V/1m)90dB88dB90dB88dB
インピーダンス8Ω(最低3.1Ω)8Ω(最低3.5Ω)8Ω(最低3Ω)8Ω(最低4.7Ω)8Ω(最低3.1Ω)8Ω(最低4.7Ω)
クロスオーバー
周波数
350Hz/4kHz4kHz350Hz/4kHz4kHz
推奨アンプ
出力
50W~1,000W
(8Ωノンクリッピング)
50W~500W
(8Ωノンクリッピング)
50W~200W
(8Ωノンクリッピング)
50W~120W
(8Ωノンクリッピング)
50W~300W
(8Ωノンクリッピング)
50W~120W
(8Ωノンクリッピング)
外形寸法
(幅×奥行×高さ)
450×645
×1,180mm
368×563
×1,135mm
306×457
×1,164mm
238×351
×1,020mm
238×351
×418mm
841×387
×329mm
486×287
×279mm
重量102kg72kg41kg27kg12kg31kg12.5kg



(2010年 3月 17日)

[AV Watch編集部 山崎健太郎]