ソニー、強力ノイズカット搭載のPCM対応ICレコーダ

-2ウェイマイク搭載「ICD-SX813」など。FM録音も


デジタルノイズキャンセリングとS-Master、2ウェイマイクを備えた「ICD-SX813」

 ソニーは、リニアPCM録音に対応した、2ウェイマイク搭載の上位SXシリーズに新モデルを投入。4GBメモリを内蔵し、デジタルノイズキャンセリングとS-Masterを備えた「ICD-SX813」と、4GBメモリのシンプルモデル「ICD-SX713」をラインナップ。価格はオープンで、予想価格は「ICD-SX813」が23,000円前後、「ICD-SX713」が20,000円前後の見込み。

 また、下位モデルのUXシリーズの内蔵メモリ4GBタイプ「ICD-UX513F」と、2GB「ICD-UX512」を10月21日に発売する。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は4GBが13,000円前後、2GBが10,000円前後の見込み。

 カラーバリエーションは、UX512がシルバー、ホワイト、ピンク、ブルー。SX813がブラックのみ。SX713はシルバーとボルドーレッドの2色。UX513Fがシャンパンゴールド、ブラック、レッド。



■ 全機種共通の特徴

 全機種の特徴として、内蔵メモリに加えてmicroSD/SDHCと、メモリースティック マイクロ(M2)の両方に対応したメモリーカードスロットを装備する。

ソニーが8日に開催したディーラーコンベンション2010での説明パネル
 さらに、録音したファイルを再生する際に、ノイズを従来よりも大幅に低減する「強力ノイズカット」機能を装備。会議室での録音などで収録されがちなプロジェクタのファンノイズを80%カットするなど、ノイズを強力に除去しつつも、人の声をあまり変化させないという。

 既存の機種にも再生時のノイズカットは付いているが、低域と高域をフィルタで切るような処理が多く、少しレベルダウンしたような音になる事が多い。新技術は、全帯域からノイズ部分のみを引き算するように低減。音の自然さを保ちながら、不要なノイズを減らしているのが特徴だという。

 さらに、本体を手で触った時などに録音されるタッチノイズを低減。本体を触ったり、叩いたりした時の音をタッチノイズとして低減するチューニングを行なっているという。なお、SXシリーズとUXシリーズでは筐体が異なるため、それぞれ効果が出やすいよう、個別にチューニングしているという。これらの機能は再生時に適用するもので、元の録音ファイルは変更されない。

 新モデルに付属するPC用ソフト「Sound Organizer」にもノイズ低減再生機能を搭載しており、本体と同等のノイズ低減ができるという。「Sound Organizer」では、見やすいUIと、高いユーザビリティーを実現したとしており、録音した音声をCDにライティングしたり、編集、ノイズカット再生も可能。基本機能をステップごとにアニメーションで説明するガイドも備えている。

 

 マイクは「Sマイク・システム」と名付けられており、従来機種のマイクをさらに改善。遠くの音や小さな音をより自然に、聞きやすく録音するため、高感度・低ノイズのマイクシステムを新開発している。これにより、SN比が改善。UXシリーズでは従来より約1/2に、SXでは1/5のノイズレベルとなっている。




■ SXシリーズ

SX713のシルバーと、SX813のブラック
 ビジネスから生楽器の録音まで対応できるモデルと位置付けられ、単一指向性の「Sマイク・システム」を搭載する。マイクを向けた方向から集中的に集音する。マイク部分が可動式になっており、特定の話し手の音声を明瞭にとらえる「インタビューポジション」のほか、全体の音声を自然な音質でとらえる「ミーティングポジション」の2つが切り替えられる。


特定の話し手の音声を明瞭にとらえる「インタビューポジション」のほか、全体の音声を自然な音質でとらえる「ミーティングポジション」の2つが切り替えられる。写真は左がミーティングポジション、右がインタビューポジション

 さらに、UXシリーズには備えていない、MFO(周波数特性最適化)と2基のADコンバータも採用。MFOはシーンに応じて内蔵マイクの周波数特性を最適化するもので、従来機種よりもフラットな周波数特性を実現したという。さらに、2基のADコンバータで切り替え処理をすることで、小さな音から大きな音まで、歪の少ない録音が行なえるという。

 これにおり、ダイナミックレンジとSN比が向上。加えて、録音音声が自然に聴こえる「インテリジェントAGC(オートゲインコントロール)」も実現。原音に忠実な録音レベルを保ちながら、録音レベルを平均化することで、より臨場感のある録音ができるという。

 さらに、SX813のみ、デジタルノイズキャンセリング機能も内蔵。再生時に利用するもので、ウォークマンなどに採用されているものと同じ。周囲の騒音を低減した再生が可能。使用環境に合わせて「電車・バス」、「航空機」、「室内」の3モードから選択できる。イヤフォン出力に加え、16mm径のスピーカーも備えている。

 さらにSX813はフルデジタルアンプの「S-Master」も搭載。音声信号をフルデジタル処理することで、音の歪をおさえ、ボリュームコントロール時のデータ消失を防ぎ、ジッタも除去するという。オーディオ基板をシステム基板から独立させ、音質の決め手となる最終段ドライバーの電源用平滑コンデンサに、超低ESR(等価直列抵抗)の誘電性高分子コンデンサを採用している。

左側面背面右側面

 録音モードはリニアPCM 16bit/44.1kHzとMP3で、MP3は8/48/128/192/320kbpsから選択可能。「ICD-SX813」と「ICD-SX713」のどちらも、microSD/SDHCとメモリースティック マイクロ(M2)に両対応したスロットを装備。内蔵メモリとメモリーカードにクロスメモリー録音が可能で、どちらかの残量が録音途中で無くなっても、自動的にもう一方のメモリに切替えて録音を継続できる。

 さらに「プリレコーディング機能」をONにした状態で、録音を一時停止しておくと、常に5秒間分の音をメモリーに保存。RECボタンを押した瞬間から5秒前にさかのぼって録音を開始できる。

 視認性の高い大型ディスプレイや、操作がしやすい十字キーを装備。録音した日付でファイルを探せる「カレンダーサーチ」や、あらじめ登録された「会議」や「打ち合わせ」などの名称から選んでフォルダ名がつけられる「簡易フォルダー名称登録」機能なども使用できる。

 UXシリーズ新モデルに搭載された、シーンセレクトやトラックマーク機能なども搭載。新PC用ソフト「Sound Organizer」も付属する。付属品はイヤフォン、USBケーブル、キャリングポーチ、スタンド。前モデルに付属したウインドスクリーンは付属しない。

 外形寸法は137.8×32.4×16mm(縦×横×厚さ)。電池を含む重量は約92g。電源は単4電池2本で、ニッケル水素充電池が2本付属する。充電はUSB経由で行なえる。




■ UXシリーズ

ICD-UX513Fのシャンパンゴールドモデル

 UXシリーズはビジネス用途をメインに、語学や講義の録音、お稽古事の録音など、幅広い用途を想定したモデル。本体にUSB端子を備え、ケーブルを使わずにPCとダイレクト接続できる。リニアPCMで、16bit/44.1kHz録音に対応。内蔵メモリ4GBの「ICD-UX513F」のみFMチューナも備えている。

 従来のUXシリーズはリニアPCM録音に非対応だったが、新モデルからリニアPCMとMP3の録音に対応。MP3は8/48/128/192kbpsからビットレートを選択可能。さらに、システムLSIの省電力化により、スタミナが強化。従来は録音時間が約14.5時間だったが、新モデルでは約29時間の録音が可能。マイクは「Sマイク・システム」となり、全指向性マイクとなっている。

 録音モードや感度、リミッターの有無、シンクロ録音の有無など、各設定をプリセットし、「会議」や「ボイスメモ」、「インタビュー」など、録音シーンを選ぶだけで設定を一括で呼び出せる「シーンセレクト」機能も利用可能。トラックマーク機能は任意の場所にマーキングでき、1ファイルに最大98件設定可能。

 ディスプレイも大型化され、視認性が向上。再生対応はリニアPCM/MP3/WMA/LPECに加え、AACの再生にも対応する。DRM付きファイルには非対応。


左側面右側面上部にステレオマイク入力、イヤフォン出力を備えている

 「ICD-UX513F」はFMチューナも備え、ラジオの録音も可能。最長約6時間受信ができる。イヤフォン出力に加え、16mm径のスピーカーも備えている。

 再生対応はリニアPCM/MP3/WMA/AAC。DRM付きファイルには非対応。MP3での録音可能時間は25時間。

 外形寸法は102×36.6×14.6mm(縦×横×厚さ)。電池を含む重量は約59g。電源は単4電池1本で、単4ニッケル水素充電池が付属。USBから充電できる。そのほかにも、イヤフォン、USBケーブル、キャリングポーチなどが付属する。




■ 強力ノイズカットを体験してみた

同じくディーラーコンベンション2010に展示された、店頭用デモ例。ヘッドフォンを使い、店先でも強力ノイズカットが体験できるという
 新製品最大の特徴でもある「強力ノイズカット」のデモを体験することができた。録音環境は通常の会議室で、プロジェクタのファンノイズが絶えず聴こえている状態で、人の会話を録音。そのデータを再生し、強力ノイズカットの効果を確かめてみた。

 OFFでの再生では、「ガーッ」というファンノイズが常に音にかぶさり、声がよく聞き取れない。これに、従来モデルのノイズカットをかけるとファンノイズは小さくなるものの、声も変化し、位相が狂ったような不自然な音になる。また、ファンノイズは完全に消えず、「フィー」という高い音が若干残り、それが会議室に反響するため、全体の明瞭度は低い。

 強力ノイズカットをONにすると、ファンノイズが低域から高域まで激減。さらに、部屋の反響音まで消え、人の声だけが綺麗に残る。残った声そのものも自然で、言葉が聞き取りやすい。最も大きな効果を感じたのは部屋の“反響音の激減”で、会議室から、絨毯を敷き詰めた応接間のようなデッドな部屋に空間が移動したような変化だ。おそらく、大ホールでの講演などを録音しても、反響音が低減されることで、より聞きやすい再生ができるだろう。

 また、タッチノイズ低減機能も効果が高い。本体をさわった「カッ」、「ゴソッ」というような音が入った録音に、強力ノイズカットをかけて再生すると、スピーカーで聞く限り、それらのノイズがほとんど聞き取れなくなった。



(2010年 9月 21日)

[AV Watch編集部 山崎健太郎]