ニコ動のライヴハウス、「ニコファーレ」先行公開

-全面LEDモニターを3Dキャラが駆ける次世代会場


360度と天井もLEDモニターに覆われた、ニコファーレの内部

 ドワンゴとニワンゴは、共同事業としてサービス提供している「ニコニコ動画(原宿)」で活用するライヴハウスとして、東京・六本木に「ニコファーレ」という施設を7月18日に開設する。そのオープンに先立ち、12日にマスコミ向けの発表会が行なわれた。

 「ニコファーレ」という名前でモジられているように、ニコファーレがある六本木のセントラム六本木ビルは、かつて「六本木ヴェルファーレ」があった跡地。ニコファーレは同ビルの地下1階に位置している。

 収容人数はスタンディングで最大380人、着席の場合は160人。可動式ステージを採用し、大人数のパフォーマンスにも対応できるという。


ニコファーレがあるセントラム六本木ビルニコファーレの入り口。宮崎駿氏、鈴木敏夫氏からのお祝いの花も飾られていたライヴハウスの入り口もLEDでライトアップ

 観客を入れたライヴ形式での生放送を中心に、発表会や展示会など、様々なイベントを中継するための施設となる。最大の特徴は、フロアの前後左右だけでなく、天井も含めて全てLEDを使ったモニターで構成されている事。使われているLED総数は約144万個。ここに海、空、草原などの自然風景から、宇宙空間やSF映画のような映像を表示する事で、地下のライヴハウスにいるとは思えない開放感を演出したり、イベント内容に合わせた空間を創造できる。

合計144万個という膨大な数のLEDを使っている正面のLEDモニター天井にもLEDが埋めこまれている
LEDに桜を表示したところ。周囲が全て桜の木に覆われるため、桜並木の中にいるような気分になる

 さらに、ニコニコ動画の代名詞である投稿コメントも活用。会場でのイベントの模様は生配信されるが、それを観ている視聴者が書きこんだコメントが、LEDモニターに表示され、来場者を360度囲むように流れていく。そのコメントに出演者が反応するといった、会場とネット視聴者のシームレスなコミュニケーションが実現できる。

コメントをLEDに表示したところ。発表会の模様を見ているユーザーのコメントが、数秒のタイムラグはあるものの、ほぼリアルタイムで表示されるドワンゴの夏野剛取締役が「拍手してください」とネットユーザーに呼びかけると、拍手を表す「888888」(パチパチパチパチ)というコメントが壁を覆う

 また、最新のAR技術も導入。ステージ上にAR用の各種センサーを配置しており、例えばステージ上にバーチャルキャラクターを登場させ、現実のダンサーが踊る中央で、バーチャルキャラクターが歌うといったステージも展開可能。ネット経由の視聴者は会場の映像にリアルタイム合成されたキャラクターの映像を観られる。一方で、来場者から見ると正面のステージ上にキャラクターは存在しないが、左右のLEDモニターにネット視聴者が観ている合成後の映像を表示する事ができるほか、2D映像にはなるが、正面ステージのLEDにキャラクターを表示する事も可能。

 また、キャラクターは左右のLEDモニターにも移動できるため、あたかも生身のアーティストが、ライヴでやっているように、両サイドの通路を歩きながら奥の席にいる観客に会いに行く……といった演出も可能。

会場の配信映像にエフェクトを重ねる事も可能。会場の天井が無くなり、ビルが表示され、エヴァンゲリオン旧劇場版のような演出がデモとして表示されたバーチャルキャラクターとのバトルも可能。夏野氏はライトセーバーのようなものを持ってドラゴンと戦っているこちらが現実のステージ上の夏野氏。当然だがライトセーバーの光る刃の部分もドラゴンも存在しない
ギタリストの演奏をリアルで見たところ横の壁と配信映像には、ギターに稲妻のエフェクトがかけられ、ニコファーレの旗もついているヴォーカロイドキャラクターのMegpoid(メグッポイド)が登場!!
映像の中にMegpoidは存在しているが、実際のステージには存在しないカメラで撮影するとMegpoidの姿がリアルタイムで合成される
Megpoidは観客左右のLEDモニターにも自由に移動可能歌のライヴだけでなく、討論イベントなどにも活用可能。田原総一朗を中心とした討論配信のデモも行なわれた

 バーチャルキャラクターだけでなく、ステージを彩る演出としてARを活用する事も可能。ギタリストのギターから電撃が走ったり、ダンサーがドラゴンボールの“カメハメ波”のようなポーズをすると客席に向かって光の波動が飛んだり、客席が赤い水で満たされたり……といった演出もリアルタイムで合成できる。コメントも同様で、現実のニコファーレは壁面に流れるだけだが、ネット経由の映像では、会場の空中にコメントを飛ばす事ができ、斜めに横切ったり、台風の渦のように中央を回転したり……といった、自由な動きにも対応できる。

 さらに、ネット経由で視聴しているユーザーが、ニコファーレの会場に参加する事も可能。ユーザーがアバターとして指定している画像を、雛壇のように両サイドのLEDモニターに表示するもので、ステージで歌うアーティストが、ネットの向こう側に多くの観客がいる事を実感しながらパフォーマンスが行なえるようになっている。


ネット経由で視聴しているユーザーが、アバター画像としてニコファーレの会場に参加する事も可能。左の壁に雛壇のように表示されている発表会では、設備を活用した様々な演出を取り入れ、歌やダンスのパフォーマンスが披露された
1人の女性ダンサーがLEDモニター上で分身し、一緒に踊るというデモも


■ネットチケットをコンビニでも販売

 ネット経由でイベントを視聴する場合、通常のニコニコ動画の画面とは異なり、ニコファーレ仕様のデザインとなったページが表示されるのが特徴。映像は通常のニコニコ動画が4:3だが、ニコファーレの配信は16:9となる。

 さらにマルチアングル機能も実装。最大5つまでのアングル(カメラ)が用意され、ユーザーはリアルタイムに、好きなアングルを選択する事ができる。

 また、生配信視聴中に書きこむコメント表現の新バリエーションとして、蛍光色で光る「サイリウムコメント」も有料で販売される。

イベントのお祝いにデジタルフラワーを贈る事もできる
 有料イベントの場合、ネット上で視聴権「ネットチケット」が購入できるほか、7月16日からは、新たに全国のコンビニ店頭でも購入できるようになる。販売委託先はチケットぴあで、全国230店舗のぴあ直営店、もしくはセブンイレブン、サークルKサンクスで購入可能。チケットにはURLとシリアルコードが書かれており、それをPCなどで入力する事で、イベント配信が観られるようになる。

 また、イベント開催にあたり、お祝いの花をニコファーレに贈る事ができる。このお祝いの花もデジタル化されたデジタルフラワーになっているのがユニークな点で、会場のLEDに名前などと共に表示される。購入・注文はフラワーギフトの日比谷花壇が担当。専用の電話とFAX番号、Webの窓口が用意され、注文できる。




■様々なイベントが予定

 7月18日のこけら落とし公演「nicofarreオープニングイベント -THE FIRST NIGHT-」では、東方神起、AKB48、及びニコニコ動画「歌ってみた」、「踊ってみた」カテゴリの人気ユーザー総勢約30人がライヴステージを披露。この模様は「ニコニコ生放送」で無料配信される。

 さらに、「コクリコ坂から 公開記念 手嶌葵 360度ライヴ in nicofarre」、「a-nation Charge & Go! ウイダーinゼリー THE PREMIUM NIGHT in nicofarre」、「歌会360度LIVE」といったイベントを予定。 音楽イベントに限らず、8月には、「千原ジュニアの企画ジュニア」、「ニコニコ寄席」といったお笑いイベントや、「夏だ! お盆だ! ニコファーレだ! 360度ホラー映画祭り 3本立て」といった映画イベントなどを予定している。

 各イベントの日程、チケット価格などの詳細はニコファーレのページに記載されている。



■「リアルとバーチャルの垣根を低くする」

ベルファーレを手掛けた緒方仁子さん
ドワンゴの夏野剛取締役

 発表会には、ベルファーレを手掛けた緒方仁子さんが、ニコファーレの名誉支配人として登場。ベルファーレの思い出を振り返った後、ニコファーレの特徴について「アナログだったベルファーレから、まさにデジタルに進化したという感じ。ベルファーレでは集客に毎回頭を悩ませていましたが、ニコファーレはこの会場から、世界の大勢の人に向けて発信できる」と魅力をアピールした。

 施設の紹介は、ドワンゴの夏野剛取締役が担当。ARのデモでは、スター・ウォーズのライトセーバーのような光る剣を手に、ドラゴンと戦うというダイナミックな紹介も行なった。

 夏野氏は「ニコファーレ」を作るキッカケについて、「1年前には無かった計画なのですが、現在ジブリで何故か見習いをしている会長(川上量生氏)が思いついた事。最初は皆“せっかく(ニコニコ動画が)黒字になったのに、また何かやるの?”と思っていたのですが、作ったら凄いものが出来ました」と説明。

 夏野氏によれば、ニコニコ動画のID登録者数は2,253万人、プレミアム会員数は132万人、モバイルID登録者数は663万人に到達。世代的には「50代になると1%や2%の割合になってしまうのですが、20代では国民の70%がIDを持っている事になります。若者には知られているけれど、オジサンにはほとんど知られていない。けれど、今回の震災や政治家の皆さんが出演されたりしている事で、その状況も変化しており、国民全体に知られるサービスになっていく」という。

 また、ニコニコ動画の新サービスを紹介するためにスタートしたオフラインイベントの「ニコニコ大会議」が各地で盛況となり、リアルチケットが14,000枚、ネットチケットが51,600枚販売された事も紹介。「この成功で、“(イベントでの)ネット課金が成立する”という自信を持ちました。そうなると、ネットライヴ専用のライヴハウスが必要になる」と語り、ニコファーレの重要性を強調した。

 夏野氏はニコファーレのコンセプトとして「リアルとバーチャルの垣根を低くするもの」と説明。「この会場で、出演者と近い距離で楽しむのも良いのですが、ネットで観るとまったく違った世界が展開します。マジで感動します。物凄くお金がかかっていて、恥ずかしくて幾らかかったのかお答えできません(笑)。黒字の見通し立っていませんが、それでもいいんです!! ベルファーレは新しいことを発信していきましたが、ニコファーレも新しいことを世界に向けて今年から発信していきます」と意気込みを語った。


ニコファーレ内には控え室やロッカールーム、シャワー室など様々な設備を完備。ロッカールームには大きな鏡を設け、コスプレーヤーにも配慮したというニコファーレの中は、映画「トロン」を連想させるSFチックな内装になっている男子トイレもSFチック。向い合って用を足す面白い(?)レイアウトだ

(2011年 7月 12日)

[AV Watch編集部 山崎健太郎]