小寺信良の週刊 Electric Zooma!

第1212回

Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語

レバー握るだけで脚が勝手に伸びる! 三脚の新解釈「SmallRig x Potato Jet TRIBEX SE」を購入

購入した 「SmallRig x Potato Jet TRIBEX SE」

重いカメラがしんどくなってきた

本コラムでは様々なタイプのカメラをレビューしている。昨今はアクションカメラなど小型カメラも増えているが、ミラーレスデジタル一眼はまだまだ人気だし、昨今はシネマカメラもリーズナブルになってきている。

こうしたカメラ記事用に、メーカーさんがワイドから標準、標準から望遠のズームレンズなどもお借りするわけだが、大型レンズでは全体の重量がかなり重くなる。まあ重いといっても2~3kgなので、40~50代の頃は平気だったのだが、年齢的にそれを三脚に付けて現場でセットするのがだんだん辛くなってきた。

現在はカーボン三段のビデオ三脚を使っているが、足を伸ばす際に一旦三脚をカメラごと片手で持ち上げておいて、逆の手で3本の足を自分で繰り出す必要がある。軽量化のためにカーボン脚を使っているが、軽いのが災いして自重では脚が伸びていかないのだ。

この方法論だと、いつかカメラやレンズを落としたり、三脚ごと倒したりしてしまうのではないか。お借りするカメラとレンズのセットは価格は様々だが、高いものだとトータルで40万円~100万円程度はする。壊したら大変だ。

もうちょっと楽に展開できる三脚はないかとずっと探していたのだが、SmallRigから面白い三脚が出ていることを知った。「SmallRig x Potato Jet TRIBEX SE」は、脚部にあるレバーを握るだけで、3本の脚が勝手に伸びて展開できるという。動画撮影用のフルードヘッド付きで、公式サイトの直販価格は66,890円。

発売は昨年6月だが、日本ではほとんどレビューされたことがないようだ。実際に購入して、使ってみることにした。

「X-クラッチ油圧テクノロジー」とは

SmallRigは、カメラ用リグやスマホグリップなどの周辺機器からスタートした中国メーカーで、次第に三脚やレンズアクセサリーなど、カメラ周辺機器全般を製品化するようになった。展示会などではブースを展開しているのを見かけるが、実機を常設展示しているショップはほぼないのではないだろうか。よって製品は展示会で確認するか、買ってみるまでわからないということが多い。

今回購入した「SmallRig x Potato Jet TRIBEX SE」(以下TRIBEX SE)は、既発売の「SmallRig x Potato Jet TRIBEX 油圧カーボン三脚キット」(139,890円)の脚部をアルミ製に変更し、価格を下げたものである。

TRIBEX 油圧カーボン三脚キットの重量はトータル3.8kgなので、アルミ脚だともっと重くなるはずだ。だがTRIBEX SEはトータル3.7kgと、ほぼ同じ重量に抑えてきた。ヘッドを小型軽量のものに変更することで、重量を同じにしたということのようだ。

ヘッドを小型軽量化し、上位モデルと同じ重量に抑えた

三脚のタイプとしては、三脚の上にさらにセンターポールで高さを稼げる構造になっており、いわゆる写真用三脚と同様の構図だ。この構造をビデオ用に応用したという点では、Manfrottoと同じである。実際マウントプレートもManfrotto互換と説明されている。

脚の開き具合は3段階でロックがある

では最大のポイントである「X-クラッチ油圧テクノロジー」を見てみよう。操作のためのレバーは脚部の根元につけられており、普段はレバーが閉じた状態で格納されている。

独特の 「X-クラッチ油圧テクノロジー」を搭載

使用するにはまずこのレバーを水平方向に立ち上げ、折りたたまれているレバーを開く。三脚を持ち上げておいてこのレバーを握ると、ロックが外れて自重で脚部が伸びる。脚は3段だが、まず太い方から先に伸びて、そこが伸びきると先の細い方が伸びるという構造になっている。三脚の強度を考えれば、妥当な順序だ。

昨今は3段脚でもシングルロック機構を備えるものが多い。従来のように伸びる箇所ごとにロックがあるのではなく、1本の足は1箇所のロックを外すだけで3段が伸びるという機構だ。

だがシングルロックでも脚は3本あるので、3箇所のロックを外すことには変わりない。だが「X-クラッチ油圧テクノロジー」なら1箇所レバーを握るだけで3本×2箇所のロックがいっぺんに外れるので、セッティングが早いというわけだ。

三脚の足を開いた状態でレバーを握ることで、高さが一定ではない場所での設置が一瞬で終わる。これまでは一旦足を揃えた状態で脚を繰り出し、セッティングしてからそれぞれの足の長さを調整して水平を取るという作業が必要であった。屋外など足場が悪い場所でのセッティングは、だいぶ効率が違ってくるというわけだ。

一方で足を収納する際は、足を開いたままレバーを握っても短くはならない。脚がそれ以上開かないようロックされているので、開いたまま短くしたければ、さらに開脚しなければならない。収納する際は、一旦すべての足を閉じる必要がある。ただこれは通常の三脚も同じなので、欠点というわけでもない。

細かい配慮が行き届いた設計

脚部の構造が分かったところで、ヘッド部分を含む他の部分を見てみよう。プレートは先ほども述べたようにManfrotto互換の一般的なアルカスイス方式なので、他社のプレートもつけられる。また受け部の方にはStandardとRS2/RS3の切り替えボタンがある。RS2/RS3に切り替えると、DJIのジンバルRonin RS2/RS3のプレートがそのまま付くようだ。

プレートは一般的な 一般的なアルカスイス方式

ただこのモードに切り替えると、プレートのスライドストッパーが効かなくなるので、Manfrotto互換のプレートはスポッと抜けてしまうので、注意が必要である。

パン棒は、スクリューを回すことで伸縮できるようになっている。昨今は短い方が好まれるとも聞くが、長短どちらにも対応できるようになっている。

チルト動作のカウンターバランスは、4kg固定だ。よって4kg以下のカメラでは、手を離すと油圧により水平に戻る。上位モデルTRIBEXのヘッドはダイヤルでカウンターバランスやトルクが調整できるので、大幅にコストダウンされたヘッドということになる。

センターポールはネジを緩めることで20cmほど引き上げられるが、穴とポール部の根元のところが凹凸で噛み合わせないと、一番下まで降りないようになっている。カメラの重みでダーンと下がってきたときに、この噛み合わせのズレがあることで指の挟み込みを抑止するわけだ。ただこれを過信するのも危険だ。偶然凸凹がかみ合って一番下まで一気に下がることもある。あくまでも予備的な機能だと考えるべきだろう。

指はさみ防止機構もある

またセンターポールの下側に、フックが付けられており、ここに荷物などを吊るしておくことができる。モデルさんを使っての撮影の場合、モデルさんのバッグなどを預かっておく必要があるが、これまでは大きなS字フックを持ち歩いて、三脚のどこかのネジのところに引っ掛けるなどしていた。今後はそうした心配がいらなくなる。また中央部に重量が加わることで、三脚としても安定する。

センターポールの下にフックがある

TRIBEX SEには備品として、スマホ用のクリップも付属している。本三脚でも使えるが、若干大仰になる。アームなど何らかのアクセサリを併用して、臨時で2カメとかで撮影する時に使ってくれということだろう。

付属のスマホ用クリップ

これまでと使い方が大きく異なる

では実際の撮影に投入してみよう。脚部の展開は、一時的にカメラと三脚を持ち上げておいてレバーを握るという動作が必要になる。ヘッド部のどこかとレバーの2箇所を握ることになるので、これまでの片手持ちで三脚とカメラ重量を持ち上げるよりもかなり楽ができる。またこの時、水準器の気泡に注意しておけば、同時に水平も取れることになる。

実は購入したときに、三脚の開きがかなり堅かった。これじゃ使いづらいだろうと思って付属の六角レンチで少し緩めたのだが、そうすると三脚を開いて持ち上げた時に、自重で閉じてしまう。三脚を開いてから脚を伸ばすと、少し閉じてしまうので、伸ばしたあとまた開き直しになってしまう。それを防ぐために、堅めに調整してあったようだ。

収納する際は、これまでは下の段のロックを外すためにいちいちしゃがみこまないといけなかったが、TRIBEX SEではその場でレバーを握り、伸縮に合わせて腰を曲げるだけで済むので、これはかなり楽だ。

脚部の伸縮の様子

X-クラッチのレバーは、そのままだと開きっぱなしだが、根元の小さなレバーを回すとロックを外すことなくレバーだけ閉じることができる。こうしておけば撮影中に邪魔にならないし、移動の時は三脚全体を持ち上げるグリップにもなるという仕掛けだ。

普通のビデオ三脚と大きく異なるのが、水平の取り方だ。ビデオ三脚では中型以上になるとボールレベラーという機構を持つようになる。これは半球状のヘッドと受け口の組み合わせになっており、ネジを緩めることで水平を微調整できる。三脚の脚の長さのバランスで水平を取る必要がないので、設置が早い。

一方TRIBEX SEにはこのボールレベラー機能がなく、脚の長さで水平を取る必要がある。基本的には持ち上げて足を繰り出した段階でだいたい水平になるように勝手に長さが決まるという構造なので、大きく傾くことはない。

水平の微調整は、三脚を少し持ち上げてレバーを握り、足の長さで調整することになる。一瞬全体を持ち上げることになるので、あまりにも重いカメラの場合はちょっとしんどい。また全体のロックが一瞬外れるので、再度ロックする前に三脚を持ち上げている力を緩めると、少し高さが下がることになる。このあたりはちょっと融通が利かないところだ。多くの三脚が脚1本ずつのロック機構を持つ理由は、1本だけ緩めて水平を取るため、ということだろう。

油圧フルードヘッドは、ネジを緩めてもかなり粘りが強い。ゆっくりした動きにはちょうどいいが、スポーツ撮影のように速くカメラを振るような用途は難しいだろう。そもそもスポーツ撮りの場合は、位置が決まったらほとんど場所移動はないので、重い三脚でも問題ない。

油圧ヘッドの動きは粘りが強い

各固定ねじをロックしてパン棒を揺らしてみたが、ねじれ方向の体勢はちょっと弱い。脚部のねじれはあまりないが、センターポールを伸ばすとねじれに弱くなる。

センターポールがねじれに対して弱い

TRIBEX SEは、ローアングル撮影にも対応する。脚部は3段に開くので、めいっぱい広げればかなり下がる。このままだとセンターポールが邪魔になるが、このセンターポールはネジを緩めることで途中から分離できるようになっている。ネジは六角だが、六角レンチがヘッド部に収納されているので、それを使って外せばいい。

センターポールがあるとここまでしか下げられない
センターポールを外すことができる
センターポールを外せばかなり下げられる

ただここまで開脚すると、脚の長さを調整して水平を取るということができなくなる。ボールレベラーなしでこういう機構を用意しても、実用的なのかは疑問が残る。

総論

TRIBEX SEにより、当初の目的であった「片手で三脚を持ち上げて脚を出すのがしんどい」という問題は解決できた。ただこれまで使っていたカーボン三脚は総重量が3kgであり、実質ちょっと重くなったのは痛し痒しである。

機能が簡易的な油圧式フルードヘッドは、正直賛否あるだろう。筆者が普段行なっているサンプル撮影程度なら実用上問題ない。またカメラ固定でほぼ自撮りのインフルエンサーにも十分だろう。

ビデオ撮影としてパンやチルトを多用する人には、いくら軽量化のためとはいえ、機能として簡易的すぎると感じるだろう。ただこのヘッドは底部のネジを外して交換できる。内部は3/8-16のネジなので、このネジ穴で取り付けられるヘッドに交換可能だ。

底部のネジを外せばヘッド交換も可能

三脚としては機動性が高いことから、海や野山などのフィールドを転々と移動しながら撮影するといった用途には向く。多少ねじれ方向に弱いところもあるが、多少のブレは編集時でもスタビライズできるので、対応はできる。

撮影と編集を自分でやるタイプのクリエイターには、コスパのいい三脚である。ただ水平の取り方が特殊なので、水平を取るまでちょっと手間がかかる。展開収納・場所移動は簡単だが、そのメリットは水平取りの面倒で相殺されるのではないかという気がする。

個人的には、これで撮影時の膝や腰の負担が減ることを期待している。

小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「小寺・西田のマンデーランチビュッフェ」( http://yakan-hiko.com/kodera.html )も好評配信中。