ミニレビュー
安くて高音質! 5千円程度で買える人気イヤフォンを聴く【RHA S500】
2016年6月23日 09:30
ナイコムが昨年10月から発売しているのが、英RHAのイヤフォン「S500」だ。アルミを使った小さなシンプルなデザインのハウジングは「お、高そうだな」と思わせる気品を漂わせているが、価格は5,900円とリーズナブルだ。
RHAは、イギリスのグラスゴーに本拠があるヘッドフォン・イヤフォン専業メーカーだ。高価なモデルも展開しているが、いずれも金属筐体を使ったクールなデザインの製品が多い。
大きな特徴は3年の製品保証がついている事。持ち歩いて使うイヤフォンは壊れやすい製品でもあるため、長期保証の安心感に魅力を感じる人も多いだろう。逆に「丁寧かつ堅牢な製品作り」がモットーという同社の姿勢を示す制度と言えるかもしれない。
S500は5,900円と、さほど高価ではないが、ハウジングには軽量アルミニウム合金を使っている。実物を手にすると、サイズが小さい事が凝縮感を産んでいる。表面はヘアライン加工。ロゴもシンプルで上品だ。何も知らずに値段を聞かれたら、「1万円以上はするんじゃない?」と答えてしまいそうだ。
ハウジングの設計には、「ウルトラコンパクト・ノイズアイソレーション設計」を導入。ユニットはダイナミック型だが、この筐体に搭載できる小型の「マイクロダイナミックドライバ」で、「140.1モデル」と名付けられている。細かなディテールまで再現できる能力があるそうだ。再生周波数帯域は16Hz～22kHz。インピーダンスは16Ω。感度は100dB。
ケーブルには2つの素材を使用しており、耳へと繋がる分岐部上部はTPE仕上げ、プレーヤーに繋がる分岐部下部は絡みにくいファブリック仕上げとなっている。長さは1.35m。着脱はできない。入力端子はステレオミニで、金メッキ仕上げだ。
重量は12g。シリコン製のイヤーピースに加え、ダブルフランジタイプも同梱。衣服に固定するためのクリップなども付属する。
音を聴いてみる
ハイレゾプレーヤーの「AK Jr」と接続。「藤田恵美/camomile Best Audio」の「Best OF My Love」を再生してみる。
まず印象に残るのが全体のバランスだ。どちらかというと低域寄りで、肉厚な中低域が「ヴォン」と吹き付けてくる。
では、低音がモコモコと膨らむ音なのかというと、これが真逆だ。低音は確かにドッシリと存在するが、その上にある中域はスカッとクリア、高域は切れこむようにシャープだ。
これだけ低域が豊富なのに、それが高域の抜けを邪魔していないのは凄い。金属筐体と、ウルトラコンパクト・ノイズアイソレーション設計による不要振動対策が効果を発揮しているのだろう。迫力がありつつも、タイトにして欲しい部分はしっかり締めている。
注意深く聴いていると、高域に、筐体の響きからだと思われる金属質な硬い音が少しプラスされている。これが独特の清涼感を演出しており、実際の分解能よりも、さらにサウンドがシャープになったような印象を与える。
“清々しさの演出”であり、原音に忠実な音かと聞かれると若干違うのではとも思うが、聴いていると気持ちが良いのは確かで、抗いがたい魅力がある。単に高域がシャープなだけのイヤフォンより、涼やかで、凛とした響きが乗っていた方が、ドラマチックなサウンドに聴こえる場合もあるのだ。
音場もさほど広くはないが、高域のクールな響きによって、閉塞感は感じない。
膨らみと押し出しがパワフルな低域は、迫力はあるものの、分解能という面では価格相応だと感じる。「茅原実里/この世界は僕らを待っていた」のベースラインも、もう少し明瞭さと、沈み込みの深さが欲しいところだ。
ドラムのシンバルや、金管楽器などは、金属質な響きとマッチしてとても魅力的な音だ。一方で、アコースティックな楽器や、人の声も、硬めでシャープなサウンドになる。このあたりは、音の自然さを追求するか、シャープさを追求するか、好みがわかれるところだろう。
よりシャープな音を楽しみたいという人は、プレーヤー側のイコライザで、中低域の張り出しを少し下げると、良いだろう。
“外観から想像する期待”を裏切らないイヤフォンだ。同時に、このサイズからは想像できないタップリの低音も味わえるため、パワフルなサウンドが好みだという人にもマッチするだろう。
軽量でハウジングも小さいので、装着感も良好だ。大きくて重いイヤフォンが耳に入るのが苦手という人にも魅力的だろう。低価格だが、高級感のある、それでいてパワフルなサウンドのイヤフォンが欲しいという人にマッチするモデルだ。
| RHA S500 |
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