ミニレビュー

安くて高音質! 5千円程度で買える人気イヤフォンを聴く【SATOLEX DH298-A1】

 高い技術力を持ち、価格を抑えながら、なおかつハイレゾ対応にもこだわった製品展開をしているのがSATOLEXブランド。そのイヤフォンが「DH298-A1」だ。価格はハイレゾ対応ながら、なんと3,700円。今回の低価格イヤフォン特集では最安値のモデルとなる。

DH298-A1

SATOLEXとは?

 サトレックスは、スイッチやコネクタなどを手掛ける大手部品メーカーのホシデンの子会社で、ヘッドフォンのOEMなどを長年手がけている。そんな同社が、自社の製品として展開する際のブランドが「SATOLEX」だ。20年以上前にもオーディオ機器を手がけており、古くからのAVファンには聞き覚えのあるブランド名だろう。

 そんな“復活した”と言っていいSATOLEXブランドだが、復活後の展開はかなりアグレッシブだ。技術的に新しいDnoteを使ったデジタルヘッドフォン「DH291-D1」を投入。通常の方式のイヤフォン、ヘッドフォンも“ハイレゾ対応”にこだわり、なおかつ非常に低価格。確かな技術力と、自分たちで開発・製造・販売できるコスト面のメリットを活かし、気軽に購入できる価格ながら、高音質な製品を投入しているというわけだ。

DH298-A1

 今回取り上げる「DH298-A1」は、ハイレゾ対応のカナル型イヤフォン「Tubomi」シリーズの中の1機種。「DH298-A1」はハウジングに樹脂を使っているが、上位モデルとしてアルミハウジングの「DH299-A1」(9,200円)という製品もラインナップされている。

 「DH298-A1」は、9mm径のダイナミック型ユニットを搭載している。再生周波数帯域は20Hz~45kHz。音圧感度は104dB/mW。最大入力は100mW。インピーダンスは32Ω。

イヤーピースを外したところ

 筐体は小さな豆のような流線型だ。一見すると真っ黒だが、ケーブルの付け根部分に切り欠きがあり、その内側が赤く塗られている。キツイ赤ではないので、全体としては落ち着いたトーンのデザインだ。遠目だとそれほど安っぽくは見えないが、樹脂製なので触れると低価格なイヤフォンだなぁというチープさはある。

ケーブルの付け根部分は赤色

 ケーブルは約1.2m。ケーブルやプラグを含めた重量は10gと軽量だ。入力プラグはステレオミニで、金メッキ仕上げされたストレート型。イヤーピースはシリコン製で、XS/S/M/Lを同梱する。

音を聴いてみる

 ハイレゾプレーヤーの「AK Jr」と接続。「藤田恵美/camomile Best Audio」の「Best OF My Love」を再生してみる。

 低域がやや強めだが、全体としてのバランスは良好だ。音の抜けはさほど良くはなく、音場に音の余韻が広がっていく際に、その広がりが途中で壁にぶつかる印象がある。それゆえ、ボリュームを上げていくと密度タップリの中低音となり、迫力は増す。地下にある小さめのライブハウスで聴いているような感覚だ。

 驚くのは中高域だ。ボリュームを上げて、元気の良い中低域が全体を覆っても、その中にある中高域が驚くほどクリアに聴き取れる。輪郭が埋もれずにキッチリと描写されており、不明瞭な感じがしないのだ。音の数が多い「茅原実里/この世界は僕らを待っていた」を聴いても、ヴォーカルやギターが背後の低音に埋もれず、明瞭に見える。

 中低域にふくらみをプラスしているのは、樹脂製筐体の響きだろう。ただ、余分な振動を排除する処置は施されていると感じる。これにより、タイトさもある程度維持され、不明瞭なまでに低音がボワボワしないのだろう。ただ、低域を絞ればいいというものではない。

 9mmのドライバで、価格を抑えながら豊かな低音を演出するには、響きも効果的に使う……という手法なのかもしれない。

 ダイナミック型ユニットであるため、金属の振動板のような“音の硬さ”は感じられない。女性ヴォーカルやアコースティックギターなどの音色が自然だ。樹脂製の筐体も、響きに金属質な色がつかないと思えば、ナチュラルで良い。少し脱線するが、アルミハウジングを採用した上位モデルの「DH299-A1」(9,200円)では、ここに金属質でクールな響きが付与される。

 ハイレゾ楽曲を再生しても、高域の伸びや、ピアノの左手など、細かな音がよく見える。これも中高域の分解能が高いためだ。

 個人的な好みからすると、音場の広がり、中低域の抜けの良さがもう一声欲しいところだ。だが、3,700円という価格からすると、このくらいパワフルな方が試聴時に印象に残りやすいかもしれない。

 いずれにせよ、価格を考えるとサウンドパフォーマンスは良く、コストパフォーマンスに優れたモデルだ。高級感があまり無いのが気になるところだが、筐体が小さいため、イヤフォンとしてあまり目立たないという利点もある。ハイレゾイヤフォン入門モデルで、迫力のあるモデルを探している人にはマッチするだろう。

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SATOLEX
DH298-A1

山崎健太郎