鳥居一豊の「良作×良品」

最安直下型LED。43型4K「43J10X」でパーソナルシアター

「オール・ユー・ニード・イズ・キル」のゲーム的臨場感を満喫

 今回取り上げるのは、東芝の「43J10X」(実売約23万円)。40型クラスの4Kテレビは、東芝が今夏に発売した「40J9X」を皮切りにいくつかのメーカーも追従。一般的な家庭で使い勝手の良いサイズで、4Kテレビとしても値頃感も十分に高く、注目が集まっている。

43J10X

 こうした40型クラスの4Kテレビで僕が注目するのが、ワンルームでの一人暮らしや個室でのプライベート用として使うというもの。もちろん、リビング用としても十分使えるサイズだが、現在の薄型テレビはベゼルの細枠化などの省スペース設計が進んでいることもあり、個室でも置き場所に困ることはほとんどない。

 4Kテレビは高精細で画素が細かいため、フルHDテレビよりも最適な視聴距離は近い(フルHDテレビの3H程度に対し、4Kテレビは1.5〜2H)。リビングなどの広いスペースで今までどおりのテレビの距離で4Kテレビを見ても、距離が遠すぎて肝心の高精細さが目で識別しづらくなる(そのため、4Kテレビはより大きな画面サイズを選ぶことを推奨)。その点、もともとスペースにはあまり余裕がないパーソナルスペースならば、40型クラスでもサイズは十分に大きいし、視聴距離が短くなるので高精細なディテールまでしっかりと楽しめる。パーソナル用として考えると、良いことづくしなのだ。

 ちなみに、REGZA J10Xシリーズは、49型や55型のサイズもラインナップされている。パーソナル用ではなくリビングの大画面テレビとして使いたい人には、そちらも検討の対象となるだろう。

全面直下LED+IPSパネルを採用。タイムシフトマシン連携など発展性も優れる

 まずは簡単に43J10Xの概要を紹介していこう。画面解像は3,840×2,160ドットの4Kで、広色域にも対応した直下型LEDバックライトの採用や、「レグザエンジンCEVO 4K」を搭載。こうした高画質機能については、上位モデルであるZ10Xシリーズと同様だ。

 大きな違いは、J10Xでは地デジ6chの全録機能「タイムシフトマシン」と、4Kチューナが省かれていること。これに加えて、J10Xシリーズでは液晶にIPSパネルを組み合わせている(Z10XシリーズはVA型)。VA型の方が正面からのコントラスト性能は優れるが、視野角ではIPS型の方が有利。例えば、ふだんは机の上などに置いて使っているが、ときにはベッドで横になったままテレビを見たいということもあるだろう。そういういろいろな場所からテレビを見るような場合、視野角の広いIPS型の方が視聴位置による映像の見え方の変化(コントラスト感の低下、色が薄くなるなど)が少なくなるというわけだ。

 テレビ好きにとって実に頼もしい機能である「タイムシフトマシン」は備えないが、2番組同時録画+裏番組視聴が可能な通常のUSB HDDの増設によるテレビ録画機能は備える。しかも、J10Xシリーズでは、新機能として「タイムシフトリンク」が加わっている。これは、同社のタイムシフトマシン搭載のBDレコーダとの連携機能。テレビ側からの操作でBDレコーダでのタイムシフトマシン録画を自由に操作できる。

レグザサーバー連携のタイムシフトリンクに対応
設定メニューの「接続機器設定」-「タイムシフトリンク設定」。43J10Xと対応レコーダをネットワーク接続し、連携設定を行なえば、レコーダのタイムシフトマシン番組を43J10Xから操作できる

 タイムシフトリンクの最大の強みはZ10Xとほぼ同じインターフェースで自在な番組検索などができること。「4K過去番組表」をはじめとして、ジャンルや扱う題材が近いもの、好みに合ったものなど、さまざまな項目で番組をピックアップしてくれる「ざんまいスマートアクセス」なども利用可能だ。

 つまり、J10Xシリーズにタイムシフトマシン搭載のBDレコーダを追加すれば、録画機能的にはほぼZ10Xと同等になるというわけだ。最初からタイムシフトマシンが必要であれば、Z10Xの方が安あがりだが、後から同等の機能を追加できるというのは長く使う上で安心感がある。

 また、HEVCデコーダーも内蔵し、「ひかりTV 4K」などの4K動画配信サービスなどに対応。録画した番組の検索やSNS連携などが行なえるクラウドサービス「TimeOn」などにも対応している。

 さっそく東芝からお借りした43J10Xを自宅に設置した。横幅は97.2cm、重量も14kgと成人の男性ならば一人でも十分に持ち上げられるし、万一の転倒や落下などに注意して慎重に行えば、組み立てなども一人で可能だ。

 2003年頃に初めて買った薄型テレビは同じ43型だったが、プラズマテレビだったこともあり、一人では到底組み立てなどできなかった。その当時の印象に比べるとかなりのコンパクトさだ。感覚としてはちょっと前の32型モデルなどと同レベルだ。

43J10Xを正面から見たところ。ベゼルが細いこともあり、43型とは思えないくらいコンパクト。スタンドもシンプルなフォルムとなっており、画面以外の存在感を極力抑えている
1mほどの距離で視聴した場合のサイズ感のイメージ。こんな近距離でも画素はほぼ識別できない
一人で持ち運ぶのも比較的容易。組み立て時は周囲の家具や壁にぶつけたり、転倒や落下に注意しよう
ノートPCやヘッドホンを置いてサイズ感を比較。パーソナルルームに置いたとしても決して大げさなサイズでないとわかるはず
薄型でスリムなデザインにまとめられたスタンド部分。電源表示などのコンパネと一体化されている。スリムだが強度は十分でぐらつきも皆無

 組み立て後は薄型テレビ用のラックに設置し、BDレコーダなどと接続を行なった。スマートなデザインのスタンドは強度も十分。2点で支持する構造のためスイーベルなどは行なえないが、グラつくこともなく安心感がある。スタンド部分も低くなっているので地震などにも強くなっていると思うが、万一のための転倒対策はしておいた方がいいだろう。

 接続端子類は背面と側面にある。合計4つのHDMI入力端子は入力4を除いてHDMI 2.0準拠でフル規格の4K/60p信号の入力に対応するが、4Kチューナーなどと接続するためのHDCP2.2対応の端子は側面にあるHDMI3入力のみとなる。このほか、録画用のUSB端子や高解像度静止画の再生などにも対応したSDメモリースロットなどがある。

背面の接続端子。アンテナ入力、ビデオ入力、LAN端子などがある。USB端子は録画用のUSB HDD専用。HDMI入力は1がARCに対応する
側面の接続端子。上から汎用のUSB端子、SDXC対応のメモリースロット、2系統のHDMI端子がある。HDCP2.2対応のHDMI入力3は一番下だ
43J10Xを横から見たところ。直下型LEDバックライト採用ながらもディスプレイ部の厚みは76mmと十分薄い。省スペース性は十分だ。
薄型デザインのリモコン。十字キーやダイレクト選局用の12キーなど、ボタンに角度がつけてあり、操作がしやすいように配慮されている
リモコンの上部のボタン。タイムシフトリンク用のボタンを備えるほか、クラウドサービスと連動する「シーン検索」などのボタンも用意されている

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(C)2014 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

 43J10Xに組み合わせる良作は「オール・ユー・ニード・イズ・キル」。日本のライトノベルが原作で、しかも主演がトム・クルーズということで大きな話題となった作品。これが本作の定番的な宣伝文句だが、映画としての面白さ、設定のユニークさなどを含め、期待以上の面白さだった。

 物語は突如として現れた正体不明の敵に対し、偶然にも敵が持つ「時間を巻き戻す」能力を手に入れた主人公のケイジ少佐が、ひたすら戦死を繰り返しながら勝利を目指すことになる。

BD再生時の入力信号の情報。BDレコーダからの出力は、色信号の復元だけをした4:4:4 36bit出力の1080/24p

 本作は3D版も発売されているが、J10Xは3D表示には対応していないので、視聴は2Dで行なっている。43Z10Xの4Kアップコンバートの実力を確かめるということもあり、BDレコーダ側の出力は1080/24pとしている。

 まずは、部屋の明るさに合わせて基本的な画質調整を行なう。ベースとなる映像メニューは映画プロとした。部屋の環境は全暗だ。43J10Xは直下型LEDバックライトを映像に合わせて分割して点灯させるエリア駆動も行なっているので、一般的な明るさの環境では十分なコントラスト感のある映像が楽しめる。しかし、全暗の環境となるとやや黒の締まりに不足を感じる。黒浮きを感じるほどではないのだが、暗いシーンでの映像の緊迫感が薄れやすい。

 よほどの映画好きでもないと、全暗の環境で映画を見る人は決して多くはないと思うので、あまり気にする必要はないと思うが、販売が継続している40J9Xは、40型とほぼ同サイズで液晶パネルはVA型。機能的な進化や画質面での熟成という差はあるが、コントラスト感を重視するならば、40J9Xを検討するのもいいだろう。

映像設定のトップ画面。映像メニューは「映画プロ」、コンテンツモードは「シネマ:4KマスターBD」を選択。映画コンテンツに合わせ、もっとも解像感の高い映像を再現する設定だ
コンテンツモードには、ビデオ、シネマ、アニメ、サッカー/ゴルフ、写真があり、それぞれがいくつかの項目に細分化されている。映画では、BD向けのもののほかネイティブ4K入力時に選べるモードもある

 まずは部屋の明るさに合わせて、黒レベルや色合いなどを合わせた状態で視聴を開始した。視聴距離は1m弱で、約53cmの画面の高さからすると1.5〜2Hほどの距離としているが、このくらいの距離だと視野の中で画面が占めるスペースは十分に大きく、しかも細かなディテールまでしっかり視認できる。迫力ある映像をかぶりつきで見ている感じだ。

 その初出撃は、半ば無理矢理に近い状態で機動スーツを着せられ、武装の安全装置の解除方法も教えてもらえないまま戦場に放り込まれるという有様。本作ではすでにフランスやドイツが敵に制圧されており、人類側はイギリスからドーバー海峡を越えてヨーロッパに乗り込むわけだが、武装も敵も違っているとはいえ、ムードはまさにノルマンディー上陸作戦そのもの。しかもその作戦は未来を知っている敵にバレており、まさに阿鼻叫喚の地獄絵図となっている。

 映像は実に鮮明で、粒子感の残るややザラっとした質感も含めてディテール豊かに描かれる。撃墜され四散するヘリの細々とした破片に、飛び散る細かい砂などが、はっきりと視認できる。感心したのは色乗りの良さで、金属製の機動スーツや武装もリアルな重みを感じるし、なによりもケイジ少佐らの肌の質感が生々しい。

 CGを駆使した最新の映像を4Kテレビで見る場合、ポイントとなるのはディテール感とノイズ感のバランスだ。僕自身高解像指向が強いので、超解像の効き具合を調整する「レゾリューションプラス」設定などでは、効果を強めてしまいがちだが、そうするとディテール感というよりもノイズ感が強調され、見づらくなったり、いかにもCGを使ったという感じに嘘くさい映像になってしまいがちだ。

 このあたり、映画プロとコンテンツモード「シネマ:4KマスターBD」の組み合わせはなかなか良好で、「レゾリューションプラス」設定を調整しなくても、適正なディテール感と粒子感があり、しかも見づらさを感じないものになっていた。

 このほか、コントラスト感調整では「LEDエリアコントロール」や、撮影時や制作時に白飛びを抑えて圧縮されている輝度のピーク感を復元する「ハイダイナミックレンジ復元」などがある。このあたりも基本的には初期設定のままで問題ないが、好みに合わせて調整を行なうといいだろう。どちらも、暗部の再現性や画面全体の輝度が変化するので、ここを調整した場合は、再度明るさやコントラスト、色合いなども確認しておくようにすれば万全だ。

視聴時の映像調整の結果。基本的には部屋の環境に合わせた調整の後、映像を見ながらコントラスト感や色乗りを微調整している
「精細感・ノイズ調整」の設定メニュー。映像のディテール感の調整を行なう。各種NRが変更できないのは、1080p画質モードで「ピュアダイレクト」を選んでいるため
「コントラスト感調整」の設定メニュー。「LEDエリアコントロール」を多少加減したほか、ほぼ初期設定のままでとなっている
「プロ調整」にある「1080p画質モード」の画面。4:4:4 36bitの映像信号をダイレクトに受け取り、純度の高い映像再現が行える

 本作の大きな特徴である「死んだらリセット」という設定は、いわゆる「ループ物」と呼ばれるジャンルに該当するが、同じ場面を何度も繰り返すわけだから見せ方に工夫をこらさないと退屈してしまう。そのあたりは実によくできていて、同じシチュエーションながら展開が次々と変わっていく見せ方は見事だ。前回助け損なった兵士を今度は助けたら逆に自分がやられてしまったとか、一難去ってまた一難の連続でまったく退屈させない。

 前は成功したはずの場面であっさり失敗するとか、戦場もののシューティングゲームをやっている人ならば、何度も覚えのある場面などもあり、自分がプレイしているような気分にさえなる。実際にゲームをプレイしているのと違い、受動的に映像を見ているだけではなかなか味わえない感情移入度だ。

 東芝の画作りは、昔も今も忠実志向を貫いているが、ここ最近の直下型LEDバックライトの採用で大きく飛躍したと思う。自然で美しい描写だが、ちょっとおとなしい雰囲気の映像が、力強い輝度パワーと、豊かな色を手に入れて、かなりパワフルな映像になっている。元気がいいとか、パワフルというと、ちょっとギラついた派手な映像を連想しがちだが、そこをきちんと手綱を引いているのが東芝の上手さだ。色は濃厚だが決して派手すぎずあくまでも自然。光の輝きも金属のギラリとした輝きから、雲間に差し込む陽光のような優しい光まで、実に表情豊かだ。激しい戦闘をリアルに、かつダイナミックに描く映像を見ていると、ついつい「この映像で自分もゲームとしてプレイしてみたくなるなぁ」と思ってしまう。

低音はさすがに不足するものの、内蔵スピーカーの出来もまずまず

 この作品の面白いところは、ゲーム的なテイストの強い序盤から、中盤、そしてクライマックスと大きく物語の流れが変化していくこと。数々の難関をなんとかクリアしたものの、実はそれすらも敵の手の内にあると判明する。つまり、まったく別の方向からの攻略が必要であると気付くわけだ。こうした展開の変化に応じて、ケイジ少佐の内面やともに戦うヒロインとの関係性にも変化が生じ、ストーリーが深みを増していく。

 内蔵スピーカーでも視聴を行なってみた。43J10Xの内蔵スピーカーは、スマートな見た目に合わせ、スピーカーは存在感が目立たない下向き配置。下に向かって音が放射されるため、音質的に有利とは言えない。

 しかし、本機では「レグザパワーオーディオシステム」と呼ばれる音響システムを搭載し、可能な限りの音質の向上を図っている。スピーカーユニットは高能率&高耐入力スピーカーと、ラビリンス構造を持ったバスレフ型BOXを組み合わせることで、特性を向上。パワーアンプ出力も総合出力30Wとしたほか、「レグザサウンドイコライザープロ」により、低音域の分解能を従来の74バンドから501バンドにまで細分化。より細かく周波数特性を補正することでフラットに伸びる低音の再現を可能にしている。

「音声メニュー」には、ダイナミック、標準、映画プロの3つのモードを用意。視聴では「映画プロ」を選択している
イコライザーの調整画面。5つの周波数帯ごとにレベルを調整できる。調整値は「映画プロ」のもの
サウンドの選択画面では、音楽モノ向けの「ライブサラウンド」、映画用の「シネマサラウンド」、「オフ」が選択できる

 その音は声がしっかりと明瞭で、細かな音の再現もなかなかのもの。バトルシーンでの爆発音などは重低音が不足しがちに感じるが、個々の音が鮮明に再現できるため、思ったよりも物足りなさは少ない。低音から高音までクセがなく素直な音質なのも好ましかった。サラウンドモードをオンにすると横への広がりは出るが、さすがに後方の音までは厳しい。ただし、変に広がり感や空間感を強調したぼやけた音にならず、声の鮮明さなどはしっかりと保たれていたのは立派だ。

 音量的にもかなりの大音量まで、パワー不足を感じることなく鳴らせるが、大音量になるほど低音が物足りなく感じる。むしろほどほどの音量でバランスの良い音質を味わう方が適した使い方と感じた。テレビ視聴などは十分に満足できるし、音楽番組なども素直な音質で楽しめた。

4K放送や4Kゲームも試してみた

 ここからは、せっかくの4Kテレビでもあるので、ネイティブ4Kコンテンツを見た印象を軽く紹介しよう。4Kチューナのソニー「FMP-X7」から、Channel 4Kでようやく再放送された「アリスコンサートツアー2013 It's a Time ファイナル in 武道館」。映像の一部はプレビューを集めた番組で見ていたのだが、映像の質の高さがひとめでわかるものだっただけに放送を楽しみにしていたのだ。

Channel 4Kの放送を入力したときの詳細。3,840×2,160の60pで、4:2:0 24bit。これはチューナーの出力制限などではなく、4K放送の規格通りの出力だ

 武道館で行なわれたコンサートは、ステージを照らすライトも眩しく輝くなど、どちらかというとテレビの音楽番組的なメリハリのくっきりとした映像だ。フルHDだとどことなく単調な見え方に感じがちなのだが、4K収録となると映像の緻密さが増すことでリアル感が倍増する。会場に足を運んで自分の目で見ているような生々しさが出ているのだ。

 そんな力強いライトの輝きを、43J10Xはかなりリアルに再現した。それと同時に、光の当たらない薄暗い客席も驚くほどしっかりと映し出す。暗部の沈み込みや黒の締まりは多少不足する部分もあるが、それを補ってあまりあるほどに明部の階調感や力強い光が描かれ、実にパワフルな映像になる。

 アリスのコンサートなのに客席ばかりを見ているのも変な話だが、暗部で少々目立つ細かなノイズのざわつきもうまく収まっており、チラつきが目についてしまうことがない。実はこうしたノイズ感の抑制は、43J10Xの大きな進化ポイントでもある。4K解像度での緻密なディテールは、信号としては高周波に分布するノイズと極めて近いため、ディテールを高めればノイズが増えるということにつながる。そのあたりのノイズ検出が非常に巧みになり、ディテールを高めつつもノイズ感は少なくなっている。

 そのため、映像の緻密さがさらに高まってきている。4Kテレビとしては画面サイズが小さめということもあるが、にじり寄るような近接視聴でノイズ感の少ない鮮明なディテールが目に映ると、ぎゅっと凝縮された映像に感じられる。ステージで演奏するアリスやバンドメンバーも、額の汗や年齢を重ねた肌の皺などがリアルに再現される。使い込まれた楽器も実物を直接見ているかのようだ。

 ちなみに、地デジ放送での4Kアップコンバート表示も確認してみたが、地デジで目に付きやすいブロックノイズやモスキートノイズもうまく抑えられており、落ち着いて見られる映像に仕上がっていた。

 BDソフトやChannel 4Kを見た後だと、さすがに解像感がやや甘くなったと感じるが、43型で近接視聴というシチュエーションを考えると、無理に解像感を欲張ってノイジーな画質になるよりも、多少ソフトでも見やすい方が目への負担も少ないと感じた。

 つづいては4Kゲームだ。PCでの4K映像出力については、まだまだハイエンドクラスながらもHDMI 2.0対応のビデオカードも登場するなど、急速に4K環境の整備が進んできている(まだまだ価格は高価だが)。

 43J10Xには、「4Kゲーム・ターボ」もしっかり備えており、720pや1080pはもちろん、4K/60pでの信号入力でも、約0.6フレーム(約10Sec)の低遅延を実現している。

 筆者も夏頃にGeForce GTX TITAN Blackの3waySLI動作で4K/60p出力の環境を実現しており、43J10Xで4Kゲームを試してみた。ゲームは発売されたばかりの「コール・オブ・デューティ アドバンスド・ウォーフェア」。GeForce GTX TITAN Blackの場合、HDMI端子が1.4a準拠のため、4K/60pの出力が4:2:0 24bitに制限される問題があるが、レンダリングなどのグラフィック設定はほぼ最高品質で問題なくプレイできた。

PCで4K出力時の詳細。こちらも4:2:0 24bit出力となっているが、これはビデオカードのHDMI端子が1.4a準拠で制限がかかっているため

 「オール・ユー・ニード・イズ・キル」で、自分もプレイヤーとして参加したいと思っていたが、いきなり実現した。近未来を舞台にしたゲームのため、デザインなどに違いはあるが、パワードスーツ的な装備を使うシチュエーションも近いものがある。なによりも、4K解像度での表示も意識したテクスチャー素材などが盛り込まれていることもあり、ゲームとは思えない映像が出てきたのには驚いた。厳密に見比べれば、映画ほどのリアリティには及ばないものの、ちょっと前のフルCGアニメーションに匹敵するような映像がそのまま動く。これにはちょっと感動した。

 人間の肌や瞳、髪の毛などの描写は実写には及ばないレベルとはいえ、肌の質感や皺などもリアルに再現されており、表情豊かにアニメーションする。43J10Xはそんなリアルを超えた映像を緻密に再現しただけでなく、遅延によるストレスもほぼ感じさせず快適なプレイが楽しめた。

映像メニュー。モニターD93とモニターD65の末尾[Dxx]は色温度を示しており、D93が9300ケルビン、D65が6500ケルビン相当

 僕はネットワーク対戦をするような腕ではないが、それでも敵を発見してから実際に弾丸が撃たれるまでのもたつきが明らかに少ないと感じるし、特にムービー中にボタン操作のアクションが要求されるような場面でも、映像を見てから落ち着いて操作して十分間に合った(年齢による反射神経の衰えを疑っていたが、今のところはまだ表示遅延のせいにできそうだ)。

 4K解像度でのゲームは、ハードウェアなどのコスト負担も大きいので、まだ決して一般的なものとは言いにくいが、4Kになると、いよいよゲームの映像が、映画などに迫るリアルさになると実感した。

 43J10XはPCモニターというにはちょっと大きいが、フルHDモニターを複数枚使うマルチディスプレイ環境を使っている人にはなかなか魅力的と言える。モニターとしての能力も、低遅延なゲームモードだけでなく、より忠実度の高い映像を表示する「モニターD93/D65」も備えているので、写真や動画の表示も十分にこなせるだろう。

緻密でリアルな映像で、多彩な4Kコンテンツを満喫しよう

 43J10Xは従来のテレビ放送やBDソフトを優れた映像とバランスの良い音で楽しめるだけでなく、これからの4Kコンテンツもその魅力を存分に味わえる実力を備えたモデルだ。自分もそうだが、実際に使っているとだんだんと視聴距離が近くなってくる。緻密な映像を存分に味わいたくなるのだ。

 取材ではほんの数日使っただけではあるが、画面にかぶりつくような距離での視聴やゲームでも目が痛くなるようなことはまったくなかった。特に映画やゲームをするのが大好きという人ならば、本機の魅力はよくわかってもらえると思う。

 コンパクトなサイズを活かすなら、自分だけのプライベートルームに置いても快適だし、これまでリビングで32型や37型を使っていた人であれば、43型にサイズアップしてもスッキリ収まる。しかも、ずっと高精細かつ高画質になるはずだ。

(協力:東芝ライフスタイル)

鳥居一豊

1968年東京生まれの千葉育ち。AV系の専門誌で編集スタッフとして勤務後、フリーのAVライターとして独立。薄型テレビやBDレコーダからヘッドホンやAVアンプ、スピーカーまでAV系のジャンル全般をカバーする。モノ情報誌「GetNavi」(学研パブリッシング)や「特選街」(マキノ出版)、AV専門誌「HiVi」(ステレオサウンド社)のほか、Web系情報サイト「ASCII.jp」などで、AV機器の製品紹介記事や取材記事を執筆。最近、シアター専用の防音室を備える新居への引越が完了し、オーディオ&ビジュアルのための環境がさらに充実した。待望の大型スピーカー(B&W MATRIX801S3)を導入し、幸せな日々を過ごしている(システムに関してはまだまだ発展途上だが)。映画やアニメを愛好し、週に40〜60本程度の番組を録画する生活は相変わらず。深夜でもかなりの大音量で映画を見られるので、むしろ悪化している。