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第23回:「AW2816」が自宅にやってきた!!

~レコーディングからCD制作までできるワークステーション~



 今、レコーディングスタジオなどでも話題になっている、YAMAHAのデジタル・オーディオ・ワークステーション(DAW)「AW2816」。その、完全デジタルミキサー、HDDレコーダー、CD-R/RWドライブを装備したAW2816が、自宅に3週間ほどやってくることになった。

 そこで、今週から3回に渡り、AW2816について、その機能と使い勝手を紹介する。


■ 意外とデカイ!!

 最近、レコーディングや、DTM関連の雑誌で特集が組まれるなど、話題になっているYAMAHAの「AW2816」。昨年発売されたAW4416の下位バージョンとして登場したもので、私もAW2816の内覧会や記者発表会で、これは凄そうという印象を持っていた。

 そうした中、次のDigital Audio Laboratoryのネタは何にしようか、と担当編集と打ち合わせをしていたところ、担当編集者から「YAMAHAのAW2816なんかはどうですかね?ちょっと借りてみましょうか?」という話が出た。

 もちろん私個人的には願ったり叶ったり。AV Watchでこんなネタを突っ込んでどれだけの読者が興味を持つのかな? なんて疑問を多少は持ちつつも二つ返事でOKした。

 実は、動画配信を行なっているimpress TVの「MUSIC Bee」という番組でもAW2816が取り上げてられており、使い終わたったら、それを私の自宅に送ってくれるということになっていた。が、結局、一旦YAMAHAのほうに戻ってしまい、お盆休み前の8月10日に宅配便でやってきた。

 そう、先週はお盆休みということで、Digital Audio Laboratoryも3月にスタートして以来、初のお休み。やはり毎週の連載となると、なかなかプレッシャーが強く、お休みとなると本当に解放感は大きいものだ。が、「その休みの間に、使っておいてくださいね」ということでAW2816が届いたわけである。まあ、これに関しては私も完全に趣味・遊びということで割り切って触らせてもらったので、楽しかったのだが……。

 そうこうしていると、専用のケースに収められてやってきた。自宅に届いて見た最初の感想は、とにかくデカイ、ということ。記者発表会場で見たときは非常にコンパクトなシステムという印象だったのだが、やはり会場と自宅では存在感が違う。

 AW2816はAW4416の弟分として登場し、記者発表においてもAW4416と比べるとグッとコンパクトと説明されていたこともあって、とても小さく思えたのだが……。

 これを仕事部屋兼スタジオとなっている7畳の部屋に持ってきてしまっては、スペースがなくなる。とういことで、しばらく玄関に置いておいたら、邪魔だと家族に怒られる始末。じゃあ、使ってみるかと部屋に持ってきて床に置いてみた。

 そこで、2、3年前に購入したRolandの「VS-880」という似たコンセプトの機材と比べてみると、やはり一回り大きい。価格的にはそれほど大きな差はなかったように思うが、これが技術の進歩(?)ということなのかもしれない。

 当然大きいだけにその性能はずっと優れているはず。その凄さは操作パネルや接続端子を見ても伝わってくる。だんだんと楽しみになってきた。


■ AW2816はオールインワンコンセプトのレコーディング機材

 AW2816がいったい何者なのか、まったく知らないという方も結構いると思うので、ここでその概要を簡単に紹介しておこう。

 まずAW2816は、一般にデジタル・オーディオ・ワークステーション(DAW)と呼ばれているもので、これ1台でレコーディングから編集、ミキシング、マスタリング、そしてCD作成までを可能にしたオールインワンシステムだ。

 DAW市場にはこれまでRolandやTASCAM、FOSTEX、KORGといったメーカーが製品を投入していたが、昨年9月になってYAMAHAもAW4416をリリース。今年7月に、その下位モデルとしてAW2816を発売したのだ。

 プレスリリースを元に、このAW2816の特徴を列挙すると以下のようになる。

 ちょっとわかりづらい面もあるかもしれないが、システム図で表すと図1のようになっている。

【図1】

 ところで、AW2816の「2816」とは何を意味しているのだろうか? 実はこれ、28chのフルデジタルミキサーで+16トラック(+ステレオトラック)の24bitHDDレコーダであることを指している。28chとはいうが、フェーダーを見ると8つとステレオ出力用のフェーダーしかない。どういうことだろうか?

 これは、内蔵のHDDレコーダーのモニタ出力16ch+任意の12chとなっているそうだ。任意の12chとはMIC/LINE1~8、DIGITAL STEREO IN、OPTION SLOT IN 1~8、2系統のエフェクト(それぞれステレオ)、メトロノームの計23系統のうちの12chということ。ちなみに上位機種となるAW4416は、44chのミキサーであり、任意の28chということになっている。

 気になる価格だが、AW2816本体はオープンプライス。また、本体にはレコーディング用のHDDやCD-R/RWドライブは入っていないのだが、これらを装備したセットの実売価格が20万円前後。

 このオプション類については、次回以降に紹介するが、HDD自体はIDE接続の2.5インチドライブで、CD-R/RWドライブはATAPI接続の内蔵ドライブ。何でもつながるというわけではないが、AW2816のサイトで、接続可能なドライブが確認できるようになっている。


■ モータードライブフェーダーで完全な自動ミックス再生

 さて、そのAW2816を、私の小さい仕事机には乗せることができなかったので、床に置いたまま動かしてみた。やはり、なんといっても使ってみたかったのがモータードライブフェーダーだ。モータードライブフェーダーとは、レベル調整をするためのフェーダーがモーター駆動になっていて、自動的に動作するというもの。

 最近のレコーディングスタジオでは、ほとんどのところに導入されるようになったが、こいつが自宅で使えるというのには、ちょっとしたワクワク感がある。60mmのストロークは、操作するのに十分なサイズ。とりあえず、モーターが動かない状態でフェーダーを動かしたところ、変な抵抗感もなく、非常にスムーズに動く。

 まずは、その動きを見てみたかったので、デモとして入っていた曲を演奏させてみたところ、確かに9本あるフェーダーが勝手に動き出してくれた。MIXING LAYERという切り替えボタンを使って1~8トラックと9~16トラックを切り替えることによって、8本のフェーダーが別の動きをしてくれることもわかる。

 そして、液晶には各トラックの状況が表示されており、これを頼りにベースをミュートしたり、スネアをミュートしたりといったこともできる。また、動いているフェーダーを触ると、最初の設定とは違う音量で鳴っていることも確認できる。

 肝心の音のほうも、非常にクリアでかつ迫力あるサウンドだ。最初はヘッドフォンで聴いていたが、その後、AW2816のデジタル(S/PDIFコアキシャル)出力をモニタアンプに接続して聴いてみた結果、極めていい音。確かにプロのレコーディングスタジオで使用できるというだけのことはある。


■ 入出力端子はオールマイティー

 前段で、デジタル出力を使ったと書いたが、リアパネルを見てみると、AW2816のミキサーとしての凄さがさらに見えてくる。

 簡単に紹介すると、MIC/LINE INPUTとあるのが8系統の入力端子。1chと2chのみフォーンジャクとともにキャノン(XLR)端子が用意されている。また、このキャノン端子にはダイナミックマイクとともに高性能なコンデンサマイクを接続することも可能。コンデンサマイクを使用するときは、右上にあるPHANTOMスイッチをONにして48Vを供給することができる。1ch~8chのフォーン端子はいずれもバランス型の端子となっているが、8chのみはハイインピーダンスのアンバランス型の端子もあるので、ギターなどを直接接続する際にはこれを用いることになる。

 その入力の下には各出力端子が並んでいる。右側にある赤と白のRCA端子は通常のステレオ出力で、-10dBVとなっているから、一般のオーディオ機器にそのまま接続してもOKだ。また、その隣にはL/Rのモニタ出力、そしてその左には、独立した4つの出力が用意されているのがわかる。

 左側にいくと、PHONESとあるのがヘッドフォン出力、その下にあるのはオプションを接続するためのフットスイッチ、そしてその左は、先ほど私が利用したといったS/PDIFコアキシャルの入出力だ。

 民生用のオーディオ機器ではなく、やはりプロを意識した設計であるだけにオプティカルの入出力はない。さらに隣にはSCSI端子、その下にあるのはMIDI端子がある。これはMIDI音源の演奏用というわけではなく、フェーダーの動きの情報や、テンポ情報、同期情報などをやりとりするためのものだ。

 そして、一番左にあるTO HOST端子も、それとほぼ同じもので、MIDIケーブルを用いずPCやMacintoshのシリアル端子と直接接続してコントロールするためのものである。

 とりあえず、今回はAW2816とご対面した、ファーストインンプレッション的な部分を書いてみたが、いかがだっただろうか?

 次回からは、実際にレコーディングしたり、ミキシングの作業を行ない、それをCDに焼いてみたいと思う。

□ヤマハのホームページ
http://www.yamaha.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.yamaha.co.jp/news/01061201.html
□製品情報
http://www.aw2816.com/

(2001年8月20日)

[Text by 藤本健]


= 藤本健 = ライター兼エディター。某大手出版社に勤務しつつ、MIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase VST for Windows」、「サウンドブラスターLive!音楽的活用マニュアル」(いずれもリットーミュージック)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。


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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp

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