【バックナンバーインデックス】

新発売のAV機器をいち早く紹介


HDDを内蔵したCD-R/RWレコーダ
ヤマハ「CDR-HD1000」
9月25日発売
標準価格/100,000円



■ 外観

正面 右側面
上面 背面


■ 主な特徴

 CD-R/RWレコーダと20GBのHDDを組み合わせたフルサイズのハイブリッドオーディオレコーダ。CD部からHDD部への録音のほか、HDD部からCD-R/RWへの書き出しも可能で、外部機器からのHDD、CD-R/RWレコーダへの記録も行なえる。CD-R/RWへの記録は音楽用CD-R/RWのみに対応し、データ用CD-R/RWは書き込み不可能となっている。また、CDからHDDへの録音時にはCD TEXTも自動的にコピーされる。

 記録フォーマットは非圧縮のリニアPCMのみ。HDDへは最大30時間(プレスCD約30枚分)の録音が行なえる。CDからHDDへの書き込みは最大10倍速、HDDからCD-R/RWへの書き出しは、CD-Rが最大8倍速、CD-RWで最大4倍速となる。入力サンプリングレートは32/44.1/196kHzに対応し、入力後は自動的に内部で44.1kHz/16bitに変換される。デジタル出力は常時44.1kHzとなっている。

CD-R/RWトレイ 入出力端子 正面右の操作部

CDからHDDへコピー中の状態

 CDからHDDへまるごとコピーするには、

  1. CDをトレイに入れて
  2. 本体右のCOPYボタンを押す
  3. 本体左の再生ボタンを押す
の3ステップで完了する。通常はこれでデジタル録音の10倍速書き込みとなる。2)と3)の間に書き込みスピードの設定を行なうことも可能。


 記録が終わると、その内容は「ディスク」(1回の連続した録音)→「トラック」(CD中の1曲)という階層に分かれて記録される。ディスクは最大999個まで設定でき、トラックは最大99曲まで保存可能。複数のディスクから任意のトラックを選び出し、「アルバム」と呼ぶ、いわゆるプレイリストを作成することもできる。アルバムの設定数は最大999個までとなっている。また、ディスク、アルバムといった1つ以上のトラックを持つ階層は「グループ」という名で管理され、グループごとのスキップやリピートを行なえる。

 なお、HDD再生時のみ「プレイスタイル」を設定することができる。これは、グループごとの再生設定を行なうもので、リピートやランダム再生を適用可能。また、「スタイルオール」を選択すると、HDD内のすべてのディスクやアルバムにランダムやリピートがかけられる。これにより、「HDD内のすべての曲をランダム再生する」といった再生方法が可能になる。

 ディスク、トラック、アルバムともにタイトルの入力が可能。タイトル名は英数字のみに対応し、リモコンまたは本体左上の「MULTI JOGノブ」で入力する。一度設定したトラックネームはアルバム登録時にも引き継がれる。

 また、MULTI JOGノブは、押し込むことで決定操作が行なえる。HDD再生時にはトラック間の移動になり、編集モードではメニュー間の移動などを行なう。また、タイトル入力時の文字の選択などもここで行なえる。

 また、HDD内の曲を再生中、曲に「ブックマーク」を付けることができる。複数の曲にブックマークを設定可能で、これらはグループとして保存される。保存できるブックマークグループは1つまでだが、ブックマークグループをそのまま新規アルバムとして設定できる。

 録音モードは「Manual(マニュアル)」、「Multi Sync.(マルチシンクロ)」、「All Synchro(全曲シンクロ録音)」、「Full Auto(フルオートシンクロ録音)」、「Auto Period(オートピリオド)」の4種類を選択可能。「Manual」はすべての操作を手動で行なうモード。「Multi Sync.」はソース側の再生と同期して指定した曲数を録音する。「All Synchro」は同期ながら全曲のコピーを、「Full Auto」は全曲コピー後にファイナライズを自動的に行なう。「Auto Period」は、指定した時間間隔でトラックマークをつけながら、指定したトータル時間分の録音を行なうモード。トラックマークは、10秒から30分までの間を30秒間隔で指定でき、FM放送などの録音内容をサーチするときに使用する。

 アルバム用の編集機能は、トラックの追加、コピー、リネーム、デリートなど。トラックに対してはリネーム、イレース、のほか、パートイレース、コンバイン、ディバイドなどが行なえる。また、トラックの先頭にフェードインを入れたり、末尾にフェードアウトを付加することもできる。

 なお、HDDに録音した曲には「SCMS(Serial Copy Management System)」が適用される。これはデジタル信号同士のコピーを1世代までに規制したもので、CDからHDDに録音した曲をCD-R/RWにデジタル記録すると、その曲はHDD内から削除される。また、HDDからデジタル録音したCD-Rを、再びHDDに録音することも不可。ただし、アナログで記録すれば、録音曲をHDD内に残すことが可能。

デジタル録音の結果
録音元録音先録音
CD(原盤)HDD可能
HDDCD-R1度だけ可能。HDD内の曲は削除
HDDからコピーしたCD-RHDD不可
一度CD-Rに録音した
(HDDから削除された)CD
HDD可能


■ 編集部のファーストインプレッション

 今回は、ソニーのモニタ用ヘッドフォン「MDR-CD900ST」をCDR-HD1000のヘッドフォン端子に接続し、CD、HDDそれぞれのメディアを視聴した。また、CD-R、HDD間の書き込みを行ない、動作スピードや操作性を検証している。

●視聴ソース


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物 欲
ゲージ
■物欲の考証
 「PCで聞く音楽」というものに多少なりとも幻滅していたところなので、いつになくわくわくしながら試聴した。慣れれば思ったより快適だ。曲名入力も携帯電話方式なので、それほど苦痛を感じないし。

 しかし、10万円という価格にちょっと腰が退けているところ。今後、ミニコンポなどにHDD内蔵型が出てくると思われるし、ライバルと目されるオンキヨーのMP3記録HDDレコーダも発売される。もう少し待ってみようと思案中。

 自由に編集できるプレイリスト、膨大な曲目からのランダムプレイ、CDDBによる曲名認識、オリジナルCDの作成などなど、PCによる音楽環境に一度慣れてしまうと通常のオーディオ機器では物足りなくなるもの。しかし、音が悪い、ファンがうるさい、重い作業を並行して行なうととPCが落ちるという具合に、弊害も多々ある。

 この両者の差を埋めるものとして本機に注目していたのだが、期待以上にオーディオ機器よりだったというのが率直な感想。まず、PCになれた身には、操作が煩雑でとっつきにくいと思う。情報の少ない小さなディスプレイのため、仕方がないといえば仕方がないのだが、初めて触る人が直感に操作するのは難しい。ひと通り慣れればそれほど問題ないのだが。また、1曲のみを検索して探すのは、とても骨が折れる。

 音は悪くない。10万円するプレーヤーとしては多少SNが悪いかな? と感じることもあったが、PC用のCD-Rドライブを使用した4~6万円台の単品CDレコーダもこれくらいのレベルだと思う。とはいえ、PCのCD-Rドライブで聞くよりは解像度が高く、音域も広く出ている。HDDの作動音や背面のファンノイズもほとんど存在を感じることはなかった。また、私の耳では、CDの曲とHDDへコピーした曲、HDDからCD-Rへコピーした曲の差はほとんど分からなかった。

 PCとの違いで一番ひっかかるところといえばSCMSの存在だろう。CD-RにコピーするたびにHDDから曲が消えていくこのシステム、否定的にとらえれば、レコーダとしての本機の価値をかなり下げている。しかし、HDDでの聴取が主体ならば、ことさら大きな問題ないのでは。私ならレンタルCDをガシガシとHDDに入れ、一杯になり次第、気に入らないものから消していくという使い方をする。

 SCMSが気に入らなければ、割り切ってアナログでコピーするのもひとつの手だ。これならHDDに曲は残る。少なくともMDよりは音の劣化はない。実際、アナログでコピーしたCD-Rを聞いてみたが、少し帯域が狭まり、弱音がぼやける程度で収まっている。ポータブルオーディオやカーオーディオなどの「ながら用CD」をつくるのなら、これで十分なのかもしれない。なんとなく納得いかないけども。

orimoto@impress.co.jp

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物 欲
ゲージ
■物欲の考証
 HDDへの録音といえば、やはりPC、というのが自分の第一認識。CDからHDDへのリッピングもできるし、CD-Rへの書き戻しも可能だ。冷却ファンの音がうるさい、ノイズが乗る、などの弊害はあるが、なによりもコストがかからず、それなりの録音ができて、しかも普段使っている慣れ親しんだ操作性、というメリットは大きい。

 このメリットと、価格、操作性を天秤にかけると、どうも物欲は喚起されない。どうしても低騒音、低ノイズなオーディオ機器でHDD録音、CD-R書き出しがしたいというニーズには応えられるとは思うし、そうしたニーズに応えられるようさまざまな工夫がされたよくできた機器だとは思うが、自分の第一認識を変えることはないようだ。

 CD-RとHDDドライブを内蔵したPCに近い印象を受ける異色のデッキであるが、オーディオ用機器として使用できるように随所に工夫がされているのに感心した。ボリューム状のジョグダイヤルは特に秀逸。押し込みで決定できるため、操作を短縮できる。

 ただ、PCでの操作に慣れてしまっている身としては、操作に難解さを感じてしまう。ディスプレイが小さいため、PCに比べて1度に表示できる情報が少ないことが主な原因だろう。もちろん、マウスとボタン操作の違いなど、インターフェイスの違いにも戸惑ったが、最大の違和感は表示情報の少なさ。多少オーディオ機器の趣とは異なるが、ドット表示型の液晶ディスプレイであればもっと使いやすいように感じた。

 「MDR-CD900ST」で聞いた限りでは、音質は良好。しかし、2回ほど音飛びが確認できたのが残念。とはいえ、HDDで録音した音は、PCMだけに劣化を感じられなかった。HDDも20GBとそこそこ大容量なので、「チェンジ時間の短いCDチェンジャ」といった使い方が想定される。

 CD-Rへの書き戻しは、デフォルトではアナログ録音になっていて、当初はHDDに曲が残り、「SCMSが利いていない?」と勘違いした。こちらもディスプレイの表示情報が少ないため、状態がわかりにくい。PC環境に馴染んでいると、操作に慣れるのには時間がかかりそうだが、操作性はオーディオ機器としてよく考えられているので、慣れてしまえばさほど問題はないと感じた。

fujiwa-y@impress.co.jp

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物 欲
ゲージ
■物欲の考証
 今までなかった製品なので、欲しい人は欲しいと思う。音質も、この価格帯でこの機能の製品としてはがんばっている。しかし、個人的には使用用途が見つけられない。

 CSや、FMラジオなどをこまめにエアチェックしている人には、適した機器だと思う。というか、チューナを内蔵したモデルがあったほうがいいかも。

 わかりやすいといえば、とてもわかりやすい機器。CDの音をそのまHDDに吸い上げ、CD-R/RWに書き戻すことができる、それも高速で。ただ、わかりやすい機能ではあるが、なんのために使うか考えるのは難しい。

 私なりに考えると、CSや、FMラジオなどをエアチェックしてどんどんHDDに蓄積して、マイベストを作ってCD-R/RWに書き出すという、タイムシフトバッファとして。あるいは、持っているCDをガンガンHDDにコピーして、BGMとしてランダム再生というところか。

 ただ、そこでネックになるがCD約30枚分という容量。MP3や、ATRAC3など圧縮フォーマットを使って300枚程度入れられるモードがあれば、用途も広がると思う。

 しかし、音質は、あえて圧縮しなかっただけあって良好。5万円クラスの単品CDプレーヤーレベルにはあるで、必要十分であると思う。HDDに録音した場合も、明らかな音質劣化は見られなかった。

 操作系も良くできていて、押し込める「MULTI JOGノブ」のおかげで、ほとんどの操作を本体のみで行なえる。最近の多機能のAV機器では珍しい。ただし、表示系は、FL管を使っている。デジタル機器ぽくマトリクス液晶にして、操作系をGUIにしてもよかったかも。

furukawa@impress.co.jp

【主な仕様】



□ヤマハのホームページ
http://www.yamaha.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.yamaha.co.jp/news/01082301.html
□関連記事
【8月23日】ヤマハ、20GBのHDDを内蔵した音楽用CD-R/RWレコーダ ―10倍速リッピング、8倍速書き出しに対応
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20010823/yamaha.htm

(2001年10月1日)


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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp

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