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第28回:特典映像テンコ盛り、キラー・ラビットもあるよ
「モンティ・パイソン・アンド・ザ・ホーリー・グレイル」

 怒涛のように発売されつづけるDVDタイトル。本当に購入価値のあるDVDはどれなのか? 「週刊 買っとけDVD!!」では、編集スタッフ各自が実際に購入したDVDタイトルを、思い入れたっぷりに紹介します。ご購入の参考にされるも良し、無駄遣いの反面教師とするも良し。「DVD発売日一覧」とともに、皆様のAVライフの一助となれば幸いです。


■ 待望のDVD化が実現

MONTY PYTHON AND THE HOLY GRAIL
価格:5,800円
発売日:2002年3月21日
品番:UIBE-1008/9
仕様:片面2層2枚組み
収録時間:約90分(本編)
      約96分(特典)
画面サイズ:16:9ビスタサイズ(一部特典4:3)
字幕:1.英語台本
    2.日本語
    3.日本語(吹き替え用)
    4.英語(シェイクスピア)
    5.日本語(コメンタリ1)
    6.日本語(コメンタリ2)
音声:1.英語(オリジナル、ドルビーデジタル5.1ch)
    2.英語(オリジナル、ドルビーデジタルモノラル)
    3.日本語(吹き替え、ドルビーデジタルモノラル)
    4.英語(コメンタリ1、ドルビーデジタル2ch)
    5.英語(コメンタリ2、ドルビーデジタル2ch)
発売元:ユニバーサル ミュージック
販売元:ビクターエンタテインメント

 今回はモンティ・パイソンである。'70年代に活躍し、現在でも人気の高いコメディグループであるが、実は自分、リアルタイムでは見ていない。モンティ・パイソンに触れたのはつい最近。それもTVシリーズのコントの再編集が中心の「ザ・ベスト・オブ・モンティ・パイソン」だけ。正直に言えば、あまりモンティ・パイソンに興味はなかった。

 このたび初のDVD化となった「モンティ・パイソン・アンド・ザ・ホーリー・グレイル」は、2001年にアメリカでDVD化。日本版もこのUS版を元にしている。しかし、制作上のトラブルから発売延期を繰り返し、3月21日にようやく発売となった。

 自分が注目したのは監督。実はパイソンズ時代のテリー・ギリアムと、テリー・ジョーンズが共同監督を務めているのだ。自分の場合、「テリー・ギリアム初の(共同)監督作」を入手するのが目的。近所のビデオレンタル店には同作がなく、見ることができなかった。しかし、このDVDを見て「テリー・ギリアム」ではなく、「モンティ・パイソン」の魅力が理解できたように思う。


■ 「バカ」と「正確さ」が徹底されたアーサー王伝説

 さて、初めての視聴となったわけだが、告白させていただくと、映画としては特別に面白いとは感じなかった。「空飛ぶモンティ・パイソン」のTVシリーズでコントを量産していたとは言え、両監督はこの映画が監督デビュー作。「コントを繋ぎ合わせて90分の映画を作った」という印象が強く、1本の映画という印象が薄いのだ。

 そのコントにしても、リアルタイムでは楽しめなかった自分には、多少の「隔世の感」がある。なにせ初公開は四半世紀も前の'75年。「狙ったところはわかるけど……」と思うシーンもしばしば見受けられた。おまけに「低予算映画」だったようで、アラの目立つシーンもちらほらと。

 が、しかし。なぜか休日を1日潰して堪能してしまった。なんだかんだ言いつつも面白かったのである。なにより、全編を通して徹底される「バカ」がよろしい。

 舞台は中世のイングランド。王と12人の騎士たちが聖杯を求めて旅を続ける「アーサー王と円卓の騎士」という、イギリスの伝説が元になっている。王と騎士の物語だけに、馬で旅をするのが普通。

 王の初登場シーンは、霧けぶる丘陵に馬の蹄の音が響き、手綱を握った王の上半身が稜線に現われるところ。しかし、稜線から全身が表われると実は手綱を握ったフリをしてスキップしてるだけ。続く従者の手には、2つに割ったココナッツが握られ、「パカパカ」と蹄の音を響かせている。

 最初のシーンでは「ベタやねぇ」としか感じなかったが、その後の騎乗シーンもずっとこのまま。もちろん、円卓の騎士も従者のココナッツの音とともにスキップ、スキップである。王と騎士、そして従者の隊列だってココナッツの音とともにスキップ、スキップである。馬の通れない道を行くシーンでは、わざわざ馬を下りる仕草まで。ベタもここまで徹底されると笑えてしまう。

 その後の展開は、一事が万事この調子。しかし、衣装やセットなどは妙にヨーロッパ中世の雰囲気を出している。昔RPGを楽しんだ自分にとって、ヨーロッパ中世は興味のある分野。キラキラで格好の良いプレートメイル(板金鎧)などは登場せず、筒にスリットを入れただけの兜や、チェーンメイル(鎖帷子)など、不恰好ながら歴史的に正しい(と思われる)衣装を徹底して再現している。低予算なのに。

 コメンタリでは「学者から歴史に忠実だと言われた」とのコメントがあったが、自分の乏しい知識から見ても中世を再現していると思われた。また、中世の絵画をコラージュした(バカ)アニメも要所要所で見られ、全編を通して中世の雰囲気を出している。

 この「バカ」と「正確さ」の対比も面白いし、あまり映像化されることのない中世前期の衣装などの時代考証としても楽しめた。


■ こだわりの特典が満載

 このDVDで圧倒されたのは、収録特典の多さ。同梱のブックレット「ALL THE WORKS OF MONTY PYTHON」は72ページの大ボリューム。しかし、これはまだまだ序の口である。特典ディスクのDVDメニュー項目数は、総数で34。これだけの数の特典を収録したDVDを、自分は初めて手にした。

 特典映像は、公開時のトレーラー映像や、静止画写真、キャストの役柄の紹介などのいわゆる「定番もの」から、「ココナッツ」の使い方を食料省ココナッツ情報部門が解説する(という設定)の「Coconuts」コントや、'74年12月にBBCで放映されたメイキングなど、ファンやマニアにうれしい特典が満載である。

 メンバーが1人何役もこなしているので、キャストの役柄を解説する「The Cast」などはマニアックな視聴には必須。また、メンバー2人が2001年にロケ地を再訪する50分の「Quest for the Holy Grail Location」では、政府から「映画が城の品格に合わない」と撮影2週間前に断わられ、急遽個人所有のドゥーン城で撮影することになったエピソードなど、裏話が楽しめた。ちなみに、現在のドゥーン城売店には2つに割ったココナッツが常備されているそうだ。

 本編中の歌唱シーンを抽出した「Song Alone」は、英語の歌詞字幕付き。キャメロット城での宴会をミュージカルで表わした「Knights Of The Round Table」は、1日で50カットの撮影をこなしたという力作で、コメンタリでも監督が「もう考えたくない」とこぼしていたのが印象的だ。別項目になるが、この曲にレゴブロックで作った人形アニメを付けた「LEGO Knights」特典も面白かった。

 吟遊詩人がロビン卿を称える歌を独唱する「Sir Robin」はメロディが美しく(もちろんギャグも面白く)、修道僧の聖歌「Monks Chant」は振り付け指導つき。こだわりまくりである。でも、あの指導は日本版ジュエルケースではちょっと難しいわ。

 日本語吹き替えトラックに、その英語訳の字幕をつけた「Japanese Version」なる特典もなぜかある。どうも日本語吹き替えの妙は世界でも有名らしく、全世界でこの特典が収録されていたようだ。この特典では5分ほどのシーン2つが収められている。

 英語から翻訳した日本語を、また英語に直訳しているため、たまにヘンな訳にも出くわした。「聖なる杯」が「Holy SAKE Cup」になってるのがなんとも。そりゃ「杯」はそういう意味だけどさぁ。ちなみに、「盆栽」は「BONSAI」。日本語吹き替えキャストは広川太一郎などの実力派揃い。翻訳やアドリブもツボを心得たもので、「コメディ」だけに母国語のほうが理解しやすく、オリジナル音声よりも楽しめる。

 また、本編ディスク、特典ディスクともに、DVDメニューはテリー・ギリアムがストックしていたアニメーションアートを元にしたもの。本邦初公開となるものだろう。しかし、海外版のオリジナルに準じてるため、すべて英語メニューとなっているのが残念。慣れてしまえばいいのだけれども、最初は戸惑ってしまった。


■ 「キラー・ラビット」ってなに?

 特典ディスクの内容もすごいが、本編ディスクの字幕、音声トラックの収録数もすごい。上記のジャケット写真下のスペック欄を見ていただくとわかるが、トラックと字幕を列記するだけでもスペック欄が大幅に延長される充実ぶり。数にすると6字幕、5トラックが収録されている。

 ちなみに、コメンタリ1には監督の2人、コメンタリ2には存命のそれ以外のメンバーのコメントが収録されている。「冒頭スタッフロールの字幕はスウェーデン語」などの解説や思い出話、制作時の秘話まで飛び出し、マニアならずとも楽しめる内容となっている。

 字幕4の「シェイクスピア」は「なんで収録されてるの?」と当初は首をひねったが、本編にあわせて見てみるとなるほど納得。「ヘンリー四世」からの引用なのだが、オリジナルの英語音声と合わせてみると、バカなセリフに格調高いシェイクスピアが重なり、時にはセリフと同じ単語が出てくるのがおかしいのである。だた、英語で収録されているので全てを理解できないのが残念ではあるが……。

 また、公開直前にカットされた24秒も収録。まあ、特に必要ないからカットされたシーン故、特に面白いシーンではなかったが、日本語吹き替えトラックで該当シーンがいきなり英語になっていたことにびっくり。吹き替えの収録は'76年。吹き替えてなかったんでしょうなぁ。

 そして、「キラー・ラビット」なる機能が新しい。これは、本編再生中にウサギのアイコンが表われたシーンで決定ボタンを押すと、関連する絵コンテや制作費の表示が現われるというもの。発売延期の原因になっていたようだが、待たされたことを差し引いても、これは楽しめた。

 この種の特典は、通常は別ディスクや別トラックに収録されるものだが、本編にシンクロして参照できるのはやはり便利。低予算で作られた映画だけに、こまごました小道具の予算をこれでもかと表示するのもおかしい。ネコを踏みつけるシーンでは「ネコのレンタル料とダメージ料」なる解説がされていたが、踏みつけられるネコはどう見てもぬいぐるみ。ギャグの一部としても機能しており、所々で笑わせていただいた。

 ちなみにアイコンになっているウサギさん、本編中に登場するウサギさんが元ネタの様子。「キラー・ラビット」なる怖い名前になっている秘密は、ぜひとも本編を見て確認して欲しい。


■ マニアも一見さんも満足できるDVD

 オリジナル音声がモノラルのため、5.1chのトラックではセリフが各チャンネルに分散されている印象が強く、しかもわざとらしい移動などもあり、映画には没頭できなかった。とはいえ、DVDメニューは音の移動を楽しめたが。しかし、モノラル音声や、日本語吹き替え音声などは多少のノイズ感があるものの視聴には問題がなく、楽しめる。

 また、本編はオリジナルネガからダイレクトに収録したというが、やはり四半世紀前のフィルムだけあり、粒子感が粗く、ノイズが多い。また、スタッフロールでは、ゆらぎ、ジャギーが目立った。しかし、本編を通してみる分には問題ないレベル。新たに撮られた特典映像などはビデオソースのシャープさを保っているので、やはりオリジナルソースの保存状態に起因する部分が大きいのだろう。

 ともあれ、テンコ盛りの特典はマニアにも満足できるものだと思う。今回はじめての視聴となった自分でも、休日を1日潰して何度も視聴を繰り返すほど。一見さんでも十分に楽しめるだろう。価格は5,800円とDVDとしては高めの設定になっているが、これだけの特典を収録してこの価格ならばむしろ安いくらいだ。

 しかし、このDVDを見るとほかのモンティ・パイソン作品も欲しくなってくるのが難点かも。う~ん、「空飛ぶモンティ・パイソン」のDVDが1枚5,800円で全7巻か……。

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□ユニバーサル ミュージックのホームページ
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□製品情報
http://www.universal-music.co.jp/u-pop/artist/monty/monty_disco/monty_holy.html

(2002年3月22日)

[fujiwa-y@impress.co.jp]


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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp

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