第29回:実は微妙に進化していたCG恐竜たち |
怒涛のように発売されつづけるDVDタイトル。本当に購入価値のあるDVDはどれなのか? 「週刊 買っとけDVD!!」では、編集スタッフ各自が実際に購入したDVDタイトルを、思い入れたっぷりに紹介します。ご購入の参考にされるも良し、無駄遣いの反面教師とするも良し。「DVD発売日一覧」とともに、皆様のAVライフの一助となれば幸いです。 |
ジュラシック・パーク トリロジー | |
価格:9,980円 発売日:2002年2月8日 品番:BP-121 仕様:片面2層3枚+片面1層1枚 収録時間:約126分(Disc1本編) 約129分(Disc2本編) 約93分(Disc3本編) 画面サイズ:16:9ビスタサイズ(各本編) 音声:Disc1/2 1.英語(ドルビーデジタル5.1ch) 2.日本語(ドルビーデジタル5.1ch) Disc3 1.英語(DTS ES) 2.英語(ドルビーデジタル5.1ch) 3.日本語(ドルビーデジタル5.1ch) 販売元:ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント |
「ジュラシック・パーク トリロジー」は、いわずと知れたCG恐竜アクション映画「ジュラシック・パーク」シリーズを3作まとめたDVDボックスだ。内容は、すでに発売済みの「ジュラシック・パーク コレクターズエディション」と「ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク」に、最新作の「ジュラシック・パーク III」を加えた構成。さらに、トリロジーだけの特典として、「ジュラシック・パークの裏側」というボーナスディスクが付いてくる。まさに「ジュラシックづくし」といった内容だ。
価格は9,980円。ボーナスディスクを含めた1枚当たりの価格は2,495円、含めなかった場合は1本が約3,327円になる。単品を買うとそれぞれ3,800円になので、シリーズをまだ購入してなかった人には価格面でもうれしい企画に違いない。
実際、販売元のソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント株式会社は、発売直後に同製品の完売を発表し、追加限定生産の実施をアナウンス。そういえば、最近はDVDプレーヤーの新規ユーザーの増加に合わせ、旧作品の再販キャンペーンが花盛りだ。新作に加え、旧作2本をセットにしたこのトリロジーもその一環といえる。「ジュラシック・パーク」という強力なタイトルを購入するタイミングを計っていた人も多かったことだろう。
かくいう私も初回販売で入手できなかったクチ。3月の再出荷を機に、ようやく手に入れることができた。帯に入った「体感!! ジュラシック・ワールド」のコピーがちょっとかっこ悪いものの、外箱のつくりはゴージャスで、所有欲を満たしてくれる。ボックスものの醍醐味の1つだろう。
なお、「ジュラシック・パーク」、「ロストワールド」は、どちらも出荷済みの単品パッケージと同じものが入っている。これに「III」とボーナスディスクが加わるのだが、すでにジュラシック・パークシリーズを持っている人にとっては、トリロジーだけに付属するボーナスディスクが気になるところだろう。
ボーナスディスの中身は、これまでDVDには収録されなかった映像特典を3タイトル毎にまとめたものになっている。「ジュラシック・パーク」は、「撮影現場でのスティーブン・スピルバーグ監督」、「絵コンテとアニマティクス」、「ハリケーン上陸」、「ILMによる視覚効果」の4本。アニマティクスは、有名なティラノサウルスとの遭遇シーンだ。「ロストワールド」からは、「メイキング・ドキュメンタリー」、「原作者マイケル・クライトン」、「ILMによる視覚効果」、「ILMからスピルバーグ監督へ感謝を込めて(コンピーのダンス)」の4本。「III」は「特殊効果」、「サウンドと音楽」、「アート・オブ・ジュラシック・パーク III」、「ジュラシック・パーク・ザ・ライド」となっている。
すべてDVD初収録の映像だが、原作小説に思い入れのある私としては「原作者マイケル・クライトン」が楽しめた。「ロストワールド」の本編ディスクにも彼へのインタビュー映像が収録されているのだが、ここでは中国で発見された恐竜に、自分の名前がついたことを報告する彼の姿が収められていた。また、「III」の「サウンドと音楽」も本編ディスクの特典にはない切り口だ。本編ディスクの方は映像面の解説が多いのだが、こちらではプロの音作りの妙技をじっくりと楽しめる。
■ 「III」の品質に感動、恐竜よりティアの悲鳴が怖い?
作品自体の解説は必要ないだろう。'93年に公開されたスティーブン・スピルバーグ監督の「ジュラシック・パーク」は、生き物(といっても本物を見た人はだれもいないが)のリアルなCG化に初めて成功した作品として名高い。
DVDマーケットの比較的初期の作品とあってか、びっくりするほど画質が良いわけではない。圧縮ノイズも頻繁に散見される。とはいえ、気になるのはほんの一部のシーンだけで、全般的には中の上といったところだろう。恐竜の皮膚の質感などは細かく描写されているし、空や人物の顔に出る擬似輪郭もそれほど気にならないレベルに抑えられている。
DVD bit rate viewer 1.4で見たところ、平均ビットレートは4.96Mbpsだった。最近のディスクに比べると、かなり低め。これは、特典に多くを割いたためだろう。約50分のメイキングを筆頭に、アニマティクス、絵コンテ集と、12種類もの特典が収録されている。面白かったのは、製作会議の風景を収めた映像。恐竜のミニチュアを前に次々とアイデアを語るスピルバーグは、まるで少年のようだった。
一方、音の方はかなりすごかった。音声仕様は448kbpsのドルビーデジタル5.1chだが、有名な足音のシーンではLEFをたっぷり楽しめるし、5chの全周囲で響き渡るティラノサウルスの咆哮には、登場人物よろしく縮み上がってしまった。何か出てきそうなジャングルの雰囲気も、サラウンドだと怖いくらいに臨場感がある。
「ジュラシック・パーク」のビットレート |
2作目の「ロストワールド」だが、こちらもブロックノイズが目立つ。輪郭が荒いシーンも多く、「ジュラシック・パーク」より画質で気になる点が多かった。また、フィルムの傷らしきノイズも結構多い。ただし、ドルビーデジタルよる5.1chサラウンドによる臨場感は大きくパワーアップ。パーカッションが前面に出たBGMもクリアで、ティラノサウルスの咆哮も切れと厚みが増している。2歳ぐらい若返ったようだ。お約束の足音も、階下が気になるほどの迫力。ちなみに、音声ビットレートは、「ジュラシックシック・パーク」と同じく448kbps。
平均ビットレートは4.94MB。「ジュラシック・パーク」とほぼ同じレベルだが、特典が14種類と増えている。数が増えただけでなく、内容も充実。ILMについての詳細な紹介もあり、アクション映画ファンならかなり満足できるだろう。ただし「ジュラシック・パーク」と「ロストワールド」の両方に入っている「恐竜百科」が、まったく同じ内容だった。この手の特典は大好きなので、これには大きく気落ちしてしまった。
「ロストワールド/ジュラシック・パーク」のビットレート |
さて、最新作の「III」は2001年夏公開の作品だ。同シーズンの興行収入では「A.I.」、「パール・ハーバー」に次ぐ3位を獲得。劇場では未見だが、JALの機内上映で見る機会があった。ストーリーは、とにかく恐竜から逃げまくるだけの進行に、別れた夫婦が災難の中で互いを認め合うという「きずな取り戻し系」のヒューマンドラマを絡めたもの。「ディープ・インパクト」や「天使のくれた時間」のティア・レオーニ出演作という点も、個人的にはポイントが高い。
画質はすばらしいの一言。レベルの高い最近のDVDビデオの中でも、トップクラスの実力といっていい。全体的に暗いシーンが多いのだが、ノイズはほとんど気にならなかった。全体的なフォーカスもきりっとしており、階調や彩度も自然。平均ビットレートを見ると、6.35Mbpsと高い数値が出た。もっとも、本編自体が約93分と短いので、妥当な結果ではある。
音声の目玉はDTS ESによる収録だ。ビットレートは768kbpsだが、低音の切れがものすごい。最初、「前2作と比べて低音が薄いかも」と感じていたのだが、ヘッドフォンで確認したところ、相当低い音が出ていた。このため、安物のサブウーファがついていけなかったのだろう。もっと本格的なサブウーファで聴いて見たいものだ。もちろん、他の帯域も鋭く、包囲感や移動感もしっかりと堪能できる。こと音に関しては、これまで見た中では「グラディエイター」、「スターウォーズ エピソード I」に次ぐ感動を味わえた。
「ジュラシック・パーク III」のビットレート |
もちろん、人によっては「恐竜の鳴き声より耳障りだ」という、悪名高い「ティア・レオーニの悲鳴」もたっぷり入っている。なお、ドルビーデジタルも5.1chで収録されており、こちらのビットレートは448kbpsだった。コメンタリーは、スタン・ウィンストンほかの特殊効果チームの対談。アニマトロニクスチームとCGチームのトークバトルが熱い。
■ 「まだの人」にはお買い得感あり
3作品を通して見ると、最近のDVDビデオのクオリティがいかに向上したかが良くわかる。前2作がひどいわけではなく、当時はこれくらいの画質でも「何とDVDとは高画質なものよ、DVD最高!」と喜んでいたのである。
また、画質だけでなく、CG技術も1作目と3作目では相当違う。変な話、「III」におけるCG恐竜は、CGであることを忘れるほどの存在感があるのだ。皮膚の質感や目の動きなど、どれをとっても今までにないリアルさ。「実は本物が存在してるのでは? こっそりどこかで飼われているのでは?」との疑念に一瞬とらわれてしまった。
さて、このトリロジーだが、「ジュラシック・パーク」シリーズをまだ買ってなかった人にはお買い得感あるパッケージだろう。なんとなく地味な「III」も、決して駄作ではないので安心して欲しい。むしろシナリオの穴もなく、アクション作品としては近年めずらしいほどのまじめな良作だ。また、3作を通して見ることで、特殊効果やDVDビデオの進歩がしっかりと確認できる。
前2作を購入済みの人は、「III」だけでも買いだろう。特に機材にこだわるAVファンにはおすすめしたい。大画面とDTS ES環境を整えたくなること必至である。まあ、いつの日か「III」を見て「あの頃はこれ見てびっくりしてたんだよなあ」と、感無量になる日が来るかもしれないが。
●このDVDについて |
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□SPEのホームページ
http://www.spe.co.jp/
□製品情報
http://www.spe.co.jp/video/dvd/200201/bp-121.html
□「ジュラシック・パーク トリロジー」アンコール生産のお知らせ
http://www.spe.co.jp/video/news/20020214.html
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―次回出荷は3月上旬、追加分で生産を終了
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20020214/spe.htm
【2001年11月13日】SPE、シリーズ3作セット「ジュラシック・パーク トリロジー」
―「ジュラシック・パーク III」単体も3,800円で同時発売
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20011113/spe.htm
(2002年3月29日)
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