第30回:カッコイイとは、こういうことさ |
怒涛のように発売されつづけるDVDタイトル。本当に購入価値のあるDVDはどれなのか? 「週刊 買っとけDVD!!」では、編集スタッフ各自が実際に購入したDVDタイトルを、思い入れたっぷりに紹介します。ご購入の参考にされるも良し、無駄遣いの反面教師とするも良し。「DVD発売日一覧」とともに、皆様のAVライフの一助となれば幸いです。 |
紅の豚 | |
(c)二馬力・TNNG/1992 |
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価格:4,700円 発売日:2002年3月29日 品番:VWDZ-8022 仕様:片面2層2枚 収録時間:約93分(Disc1本編) 約93分(Disc2本編) 画面サイズ:16:9(スクィーズ) 音声:Disc1 1.日本語(ドルビーデジタル2.0ch) 2.英語(ドルビーデジタル2.0ch) 3.フランス語(ドルビーデジタル2.0ch) Disc2 1.日本語(ドルビーデジタル2.0ch) 字幕:Disc1 日本語/英語/フランス語 制作:スタジオジブリ 発売元:ブエナ ビスタ ホーム エンターテインメント |
宮崎駿といえば、個々の作品に個人的な好き嫌いはあるだろうが、日本を代表するアニメーション作家といって差し支えないだろう。さらに、2001年7月に公開された「千と千尋の神隠し」は、第52回ベルリン国際映画祭の金熊賞を受賞し、世界的にも評価が高まっている。
DVD市場でも、スタジオジブリの作品は、リリースするたびに上位に名を連ねている。今回紹介する「紅の豚」も、その例に漏れず、初登場で2位にランクインした。
■ 30分程度の短編の予定だった
「紅の豚」は、原作・脚本・監督を宮崎駿、音楽を久石譲が務めており、宮崎アニメの黄金の布陣。'96年に劇場公開され、宮崎駿監督としては「魔女の宅急便」以来3年ぶりの新作だった。なお、加藤登紀子がエンディングテーマを作詞・作曲・歌唱、さらにヒロインとして声優も担当しており、その点でも豪華。
元々企画そのものは、「おもひでぽろぽろ」で疲れたスタッフへのリハビリという位置づけで、30分程度の短編アニメーションだったという。しかし、制作中に構想が膨らみ、原画の作業に入った時点で70分を越え、完成作品は93分になった。
舞台は'20年代末のアドリア海。食い詰めた飛行機乗りは空賊となって暴れまわり、彼らを相手にした賞金稼ぎが功を競った。その中で最も名を上げいてたのが一匹の豚。紅の豚と呼ばれる、ポルコ・ロッソだった―。
新たな戦争に世界中がおびえていた時代に、「カッコよく生きた」一人の“ブタ”を描いてた航空活劇である。
特典映像の中で、鈴木敏夫プロデューサが語っているが、ポルコ・ロッソはまさに、宮崎自身であり、お腹の出っ張りが気になりだした中年男性の象徴でもある。キャッチコピーである「カッコイイとは、こういうことさ」は、今までがむしゃらに頑張ってきたオジサンたちへのエールのようにも思える。
このことからもこの作品が、宮崎作品の中で対象年齢がかなり高いことがわかるろう。だからこそ、子供のときに見た人でも、大人になってから改めて見直すと新たな発見があると思う。
■ DVDとしてどうか
DVDは、本編1枚と、特典1枚の2枚組み。本編Discには映像はスクイーズで、音声は日本語、英語、フランス語の3カ国語、字幕も同じ3カ国語を収録と充実している。さらに、フランス語の音声では、ポルコ・ロッソの声をジャン・レノがあてている。ただし、新収録というわけではなく、'95年フランス公開された際に制作されたもの。とはいえ、日本にも多いジャン・レノのファンにとっても嬉しい趣向だろう。また字幕は、効果音なども文字として入っているなど、音声を全く聞いていなくてもストーリーが理解できるように配慮されている。
本編ディスクの平均ビットレートは8.91Mbpsと、MPEG-2が苦手とする(MPEG-2に限らず非可逆圧縮全般が苦手とするが)アニメということもあって、かなり高め。一方、音声は3カ国語ともドルビーデジタル2.0chだが、ビットレートは日本語が448kbps、英語384kbps、フランス語192kbpsと差が結構ある。実際に聞いても、差があるように思う。
画質は、ビットレートも高いこともあって、ある程度の水準を保っている。しかし、これはある程度の画面サイズ(32型以下程度)での話し。というのも、一般的なテレビで見ることを想定してか、かなり輪郭強調がされている。そのため、一般的なテレビで見る分には、カッキリした綺麗な画面というように見えるのだが、プロジェクタなどで80インチ、100インチと引き伸ばすと、輪郭強調が効きすぎて擬似輪郭や、クロマズレが見えてしまう。画質の面では、「普通のテレビ」で見た方が楽しめるかもしれない。
「紅の豚」の本編Discのビットレート |
「ジブリがいっぱい COLLECTION」シリーズの最大の特典といえば、すでにお馴染みとなったアングル機能を使った、絵コンテと本編の切り替え機能。絵コンテが本編とリンクして全編収められており、自由に切り替えて鑑賞する事ができる。確かに面白い機能で、ファンにとっては嬉しい。
しかし、ほとんどのDVDプレーヤーでは、アングル切り替えに数秒単位の時間がかかってしまう。そのため、頻繁に切り替えながら見るのは難しい。絵コンテを表示しているときには、画面の端に本編をPinPで表示してくれると、もっと楽しみやすくなると思う。
■ さて、買いか?
2枚組みで4,700円。アニメ作品としては高くはない。むしろ安いともいえるかもしれない。しかし、他のDVDが安くなりすぎた。ハリウッド製映画のDVDがこの半額程度で販売されていることを考えると、購入するかどうか、迷う値段である。
絵コンテが本編とリンクして全編収められているは嬉しいが、それ以外の映像特典は4種類の劇場予告編(約7分30秒)、制作当時に鈴木敏夫プロデューサのインタビュー(約3分20秒)、2002年夏公開予定の最新作「猫の恩返し」、「ギブリ・エピソード2」の特報(約2分)と、2枚組みとしてはちょっと寂しい。
そして、個人的に気になっているのが、ジャケットデザイン。「ジブリがいっぱい COLLECTION」シリーズ全体に言えるのだが、シリーズで統一感を出すためか、上部1/3以上にベタ塗りの帯と、ジブリがいっぱい COLLECTIONのロゴが入る。そのため、デザインの自由度がなくなり、かっこ悪くなっている。これは、なんとかならないものだろうか? 海外で出ているジブリ作品は、ジャケットデザインが優れたものが多いのだが……。
最後に小技を。このDVDはディスクを入れると、本編が始まるタイプだが、最初に注意書きが30秒も流れる。さらに、この注意書きの間は早送りも、チャプタスキップも禁止、メニューにすら飛ばせない。これは、かなりいらいらする。しかし、注意書きが表示されている時にストップを押して、再び再生を開始すると、本編から再生が始まる。このタイプのDVDタイトルのほとんどでは、この技(というほどでもないが)が使えるので、日頃うっとうしいと思っている方は、お試しを。
●このDVDについて |
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[購入済み] 188票 40% | [買いたくなった] 157票 34% | [買う気はない] 120票 26% |
□ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテインメントのホームページ
http://club.buenavista.co.jp/
□製品情報
http://www.ntv.co.jp/ghibli/info_y2/index.html#buta
□関連記事
【1月31日】ブエナ、「紅の豚」DVDの仕様を変更して3月29日に発売延期
―ジャン・レノによるフランス語音声を追加
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20020131/buena.htm
【1月7日】ブエナ、「紅の豚」DVDを3月8日に2枚組み4,700円で発売
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20020107/buena.htm
(2002年4月8日)
[furukawa@impress.co.jp]
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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp