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第31回:ハッキングもアクションも痛快!
「ソードフィッシュ 特別版」

 怒涛のように発売されつづけるDVDタイトル。本当に購入価値のあるDVDはどれなのか? 「週刊 買っとけDVD!!」では、編集スタッフ各自が実際に購入したDVDタイトルを、思い入れたっぷりに紹介します。ご購入の参考にされるも良し、無駄遣いの反面教師とするも良し。「DVD発売日一覧」とともに、皆様のAVライフの一助となれば幸いです。


■ とりあえず買ってみたDVD

ソードフィッシュ 特別版
価格:2,500円
発売日:2002年4月5日
品番:DL-21322
仕様:片面2層
収録時間:約99分(本編)
     約30分(特典)
画面サイズ:16:9シネマスコープ(スクィーズ)
音声:1.英語(ドルビーデジタル5.1ch)
    2.日本語(ドルビーデジタル5.1ch)
    3.英語音声解説
字幕:1.日本語
    2.英語
    3.音声解説用字幕
発売元:ワーナー・ホーム・ビデオ

 公開時にテレビCMを見て「あ、いいかも」と思いつつ、結局見に行かない作品は結構あるもので、そんな作品を気軽に購入できるのがDVDのいいところ。特にワーナーの作品は、新作でもほとんどが2,500円という低価格。店頭で目にしたときに思わず手が出てしまう、という事態も多い。

 この「ソードフィッシュ」も、自分にとってはそんな作品だった。当然、映画の内容についての知識もほとんどなく、印象に残っているのはCMで流れたブレットタイム撮影(通称マシンガン撮影)の映像程度。ブレッドタイム撮影が多用された「マトリックス」は、自分の好きな作品の1つで、多少気にはなっていたが、忘れたまま公開が終了。DVDの発売も特にチェックしていたわけではなく、店頭で見かけて発売に気づいた、という典型的な「とりあえず買い」パターンで購入したものだ。

 それほど期待してはいなかった作品であったが、本編を見てみて「かなりお得なお買い物」をしたと感じた。


■ ミスディレクションを狙ったストーリー展開

 冒頭は喫茶店らしきのどかな店内でトラボルタ演じるガブリエルの映画論から始まる。映画論を語り終えて、店の外に出ようとすると、そこには完全武装の警官隊が包囲網を築いている。突然雰囲気が異なるシーンに出くわして、多少混乱してしまった。

 劇中でガブリエルは伝説の魔術師フーディニーを引き合いに出して「ミスディレクション(錯覚)」について言及するが、映画本編の展開も「ミスディレクション」を狙った構成になっている。本編は時系列を意図的に狂わせていて、最初のシーンの謎が後になって明かされる、ということもしばしば。「メメント」に多少似ているようにも感じる。

 が、時系列が飛ぶシーンはそれほど多くはなく、ストーリーの大筋は簡単に理解できる。「ソードフィッシュ」というタイトルの由来は、「イギリスの雷撃機?」と思っていたが、本作品ではDEA(麻薬取締局)の秘密作戦の名称として使われている。

 その作戦の副産物として稼がれた96億ドルの闇資金を、ハッキング(クラッキング)して掠め取ろうというのがストーリーの大筋。当然、コンピュータの描写も多くなる。フィンランドからやってきたハッカーの名前が「トーバルス」(Linuxの主な開発者フィンランド出身のリーナス・トーバルス氏に掛けていると思われる)だったりと、コンピュータ関連がお好きな方には思わずにやりとする部分もあった。

 とはいいつつも、60秒で128bitの暗号を破る手法が「なんとなくコードがわかる」だったりするのはご都合主義が過ぎるかも。ハッキングを扱った映画では、「エネミー・オブ・アメリカ」などがサスペンス映画として秀逸だと思う。しかし、その「60秒ハッキング」シーンはかなりのスピード感があり、「サスペンス映画」ではなくて「アクション映画」という見方をすれば面白くなる。

 実際、その後の展開はアクション映画そのもの。そのほかにも、銃撃戦にカーチェイス、「階段落ち」ならぬ「崖落ち」まであり、アクション映画としては見せ場たっぷり。とてもハッキングを扱った映画とは思えない。初見であったが、十分に満足することができた。

 ところどころで時系列を狂わせながら、謎が徐々に解明されていくストーリー展開もまた面白い。本編中にはいくつかの謎が配されているが、そのほとんどは1回目の視聴から理解できて、フラストレーションも感じない。ただ、所々で理解できない部分もあり、さらに深く理解するためには何度も視聴する必要がありそうだ。

 もっとも魅力的だと感じたのは、ジョン・トラボルタ演じるガブリエル。彼の役柄は「パルプ・フィクション」以降悪役が多いが、この映画でもやっぱり悪役。しかし、ただの悪役ではなく、裏には秘密を抱えているのが今までにないところ。トラボルタ独特のオーラがぴたりとハマるキャラクターになっていると思う。

 豪華なキャストといえば、日本では今夏に公開予定の「チョコレート」でアカデミー主演女優賞を受賞したハル・ベリーも出演。グラマーなボディとキュートなマスクで華を添えている。ストーリー上でも重要な役柄なので登場シーンも多く、「目の保養」になるシーンも楽しめた。「X-MEN」のストーム役など、ほかのアクション映画にも出演しているが、アカデミー賞受賞後のこれからも、ぜひこんな役柄で出演して欲しいものだ。

 そして、DVDならではなのがエンディング。特典映像には、別バージョンのエンディング2種類も収録されている。なんでも公開時のエンディングは当初の脚本と異なっていたのだとか。特典では当初の脚本どおりに撮られたバージョンと、公開時のエンディングになる前のバージョンが収められている。

 特典では監督のコメンタリを付けたトラックもあり、監督の解説を聞くと別バージョンが撮られた理由がなるほど納得できた。私も劇場公開版の方がしっくりくるエンディングだと思う。


■ 画質、サラウンド感、そして価格も大満足

 パッケージは写真だとわかりにくいが、シルバーのラメが入った台紙上に、モノトーンの登場人物を配して、イエローの「SWORDFISH」ロゴがアクセントとなったもの。モノトーンのミステリアスな雰囲気に、シルバーのギラつきが追加されてなかなか印象的だ。

 ディスクもシルバーを基調に、パッケージと同じくモノトーンの人物写真を配したピクチャーディスク仕様。パッケージ、ディスクともに満足できる仕様だと思う。

 さて、本編の画質はというと、本編も99分と短めで、特典映像もそれほど多くはないため、ビットレートも高めに設定されているようだ。実際に映像を見てみても、特に問題になるようなことはナシ。輪郭もシャープで、通常のシーンであれば色見も自然に感じられる。ブロックノイズが気になるシーンも見当たらなかった。

 ただ、意図的に赤が濃いシーンがあったり、ノイズが発生したりと、一瞬「機器の故障か?」と思わせる、AVファンにとってはありがたくない演出もあったりする。私も思わず接続を確かめてしまったが、演出なのでご安心を。

 アクション映画だけに、5.1chのサラウンド感もなかなかのもの。特に面白かったのが、冒頭のブレッドタイム撮影の爆発シーンや、カーチェイスしながらマシンガンを撃ちあうシーン。音がブンブンと移動して、5.1chの移動感を堪能できた。ただ、爆発シーンなど、サブウーファの活躍するシーンも多いので、視聴する際には周りの迷惑にならない時間帯を選ばないといけないが……。

 音声は日本語吹き替えトラックも5.1chで収録。さらに、ドミニク・セナ監督によるコメンタリトラックもあり、劇場公開からのファンにもDVDを購入させるだけの内容になっていると言えるだろう。

 別バージョンエンディング以外の特典映像は、本編メイキングと特撮メイキング、予告編にキャスト/スタッフの静止画解説、というオーソドックスな内容。収録時間も合計で30分程度と短めだが、特撮メイキング「The Effects in Focus」では、ブレッドタイム撮影などの撮影の様子がわかり、興味を引かれる内容になっていると思う。

 そして、DVD-ROM特典も収録。対応OSはWindows 98以降で、これはパスワードを入力しないと見ることができない。とはいえ、パスワードは「本編を元にしたクイズの答え」という形式で、ほとんどは簡単な問題となっている。パスワードもカタカナ、漢字なので「スペルがわからなくて見られない」ということもない。

 しかし、かなり深いところまで本編を見ないとわからない問題もあり、自分はまだその全てを見ることができていない。特典映像は全部で10本。出演者、監督のインタビュー映像が中心で、ミュージッククリップや静止画も収録されていて、時間は全部で17分。オマケ的要素が大きいが、本編をよくよく理解しないと見られない映像があり、視聴へのモチベーションを高めてくれる特典と言えそうだ。

 ワーナーのDVDを購入するたびに思うが、これだけの内容で2,500円というのはやはり安い。しかも、最近始まった再販キャンペーン「スーパー・ハリウッド・プライス シリーズVol.1」では、過去に発売された30タイトルをさらに安い1,500円でリリース。自分も「メンフィス・ベル」など、タイミングを逃がしていた作品を4本ほど購入してしまった。ワーナー、やはり恐るべし。

●このDVDについて
 購入済み
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 買う気はない

     

前回の前回の紅の豚のアンケート結果
総投票数649票
[購入済み]
334票
51%
[買いたくなった]
179票
28%
[買う気はない]
136票
21%

□ワーナー・ホーム・ビデオのホームページ
http://www.warnervideo.co.jp/
□製品情報
http://www.warnervideo.co.jp/newdvd/academy.html

(2002年4月12日)

[furukawa@impress.co.jp]


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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp

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