第32回:1stルパンは復活するか? |
怒涛のように発売されつづけるDVDタイトル。本当に購入価値のあるDVDはどれなのか? 「週刊 買っとけDVD!!」では、編集スタッフ各自が実際に購入したDVDタイトルを、思い入れたっぷりに紹介します。ご購入の参考にされるも良し、無駄遣いの反面教師とするも良し。「DVD発売日一覧」とともに、皆様のAVライフの一助となれば幸いです。 |
ルパン三世「生きていた魔術師」 | |
(c)モンキー・パンチ/TMS・NTV |
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価格:8,500円 発売日:2002年4月3日 品番:VPBV-11436 仕様:片面2層 収録時間:48分(本編)+30分(映像特典) 画面サイズ:4:3 音声:1.ドルビーデジタル5.1ch 2.DTS 3~6.音声マルチストリーム 字幕:日本語 映像特典:1.シークレットエンディング 2.アートギャラリー 3.インタビュー(音声のみ) 4.スライドショー その他の特典:サウンドトラックCD CD-ROM(オリジナルゲーム) 発売元:VAP |
ルパン三世の新作「生きていた魔術師」は、ルパンのアニメ化30周年の記念作。発売日には50代のおじ様が購入する姿も見られ、ルパンの根強い人気と幅広い年代層での知名度が伺える。かくいう私も大のルパンファン。すかさず初回限定生産DVDを買った。
「ヤツは天下の大泥棒ルパン三世ですぞ!」とは銭形警部の口癖。ルパンが今までに盗んだ物は数知れず、名作「カリオストロの城」では王女クラリスの心まで盗んでしまった。その原点「ルパン三世 1stシリーズ(旧シリーズ)」が放送されたのは、'71年10月のこと。当時私はまだ生まれていなかったが、なぜかチャーリー・コーセーの歌声と、荒野をバイクでひた走る不二子のシルエットだけはよく覚えている。おそらく小さいころに何度となく再放送を見ていて、強烈に印象付けられていたのだろう。
結局TVシリーズとしては「ルパン三世 2ndシリーズ(新シリーズ)」が'77年に、「ルパン三世 3rdシリーズ(PART III)」が'84年に放送され、さらに30年間のうちに多くの劇場映画、TVスペシャルが作られている。その間、制作陣やコンセプトの違いから、ルパンが着るジャケットの色やキャラクターのテイストが変化したのはご存知のとおり。
■ 今となっては異色な1stシリーズ
個人的にはルパンのジャケットは赤。理由は3年間続いた2ndシリーズ(赤ジャケット)の再放送を見ていたことや、ほとんどのTVスペシャルが赤ジャケットを着ていたからだと思う。そして大野雄二が手掛けた「ルパン三世のテーマ」も、赤ルパンのイメージにピッタリだった。このテーマ曲の出来が素晴らしく、数多くのリミックスや企画アルバムのリリースをみても、その人気の根強さを感じる。、各キャラクターへの思い入れは、人それぞれ違うと思うが、私の場合は改めて1stシリーズのルパンを見るまではそれほど深いものではなかった。
実は数ヶ月前に、1stシリーズの全話を有料チャンネルで見る機会があったのだが、荒々しい画像、少ない音楽や効果音、やけにサバサバした不二子などなど、かなりの違和感があった。しかし、すぐに話の中に引き込まれ、荒いと感じていた音や画はいつのまにか迫力に変わり、エンディングまで釘付け状態。とにかくハードボイルドで、ストーリ展開のテンポの良さや、個性の立ったキャラクター同士の掛け合いは、非常にスリリングなものだった。
コンピュータを使った現代のクリアなアニメに慣れている目に、インパクトを与えることは間違いない。特に五ェ門が去るとき、決まって尺八の一吹きがあるのだが、当時の効果音はやけに男くさく、なんとも渋いのである。
■ ルパン、緑ジャケットを着る
今回取り上げるDVD「生きていた魔術師」も、1stシリーズをモチーフとしているわけで、このDVDを見るにはそれなりに1stシリーズの知識があった方が楽しめる。と、思っていた。
DVDの宣伝クリップには、久しぶりに緑ジャケットを着たルパンが登場し、しかも敵役が1stシリーズに1度だけ登場したパイカル(白乾児)だということを知って、当時のようなハードボイルドなルパンを想像したファンも多いのではないだろうか。最近のルパンはどうしても「ふぅじこちゃ~ん」的な、(それはそれでいいのだが)どこか角の取れた印象だったので、また渋いルパンが見られると期待せずにはいられなかった。さらに、山下毅雄のサウンドで生まれた1stシリーズを、大野雄二が味付けするという企画も、素晴らしいと感じたのである。
しかし、そんな期待は裏切られた。ストーリーは簡単に言ってしまえば、天球の水晶を巡って、ルパンとパイカルが戦うというもの。映像の質感は今風のアニメなのだが、CG合成に不自然な箇所が多く、効果音も安っぽさが否めない。ぶっちゃけた話少々拍子抜け。結局全体を通してみても、1stシリーズらしさは感じられない。少なくとも私は、パイカルが登場する必然性や、ルパンが緑ジャケットを着た理由を見つけられなかった。
それと今回の銭形は物静かで、結構老けた印象だった。まぁ渋いといえば渋いのだが、ちょっと重たい感じがするので、やはりルパン逮捕に全てをかける元気な「とっつぁん」であって欲しいところ。
DVDの映像特典として、最後まで話が進むと3種類のシークレットエンディングの中から任意のものを選択して見ることができる。エンディングを数種類用意するのは最近の流行だが、どれを見てもあまり印象が変わるものではなかった。というより前段の流れからスムーズに繋がって見えないのは私だけだろうか? お気に入りのラストが見つかるかどうかは、自分の目で確かめて欲しい。
また、音声マルチストリームによって、ルパンや不二子など主要キャラクターの声をミュートすることができる。「字幕を見つつアフレコ参加ができる」としているが、ポストルパンの声優を狙っているちびっこには受けるかもしれない。
■ アニメ化30周年を記念する特典の数々、声優陣のインタビューは必聴
ルパン三世といえばやはり声に特徴があり、「山田康夫なくしてルパンはなかった」と言いたくなるぐらい。また、銭形や次元の声にも独特のトーンがあり、キャラクターの性格が声に表われている。結局、'87年のOVA「風魔一族の陰謀」を除いて30年間変わらず声をあてたのは、納谷悟朗(銭形警部)と、小林清志(次元大介)の2名だけだが、独自の峰不二子を築いた増山江威子や、井上真樹夫の石川五ェ門など、とにかくルパン三世と共に歩んできた方々への敬意は尽きない。
【お詫びと訂正】
記事初出し時に、納谷悟朗氏と、小林清志氏が、全作の銭形警部と次元大介の声優を務めているとの記述がありましたが、'87年のOVA「風魔一族の陰謀」のみ異なっておりました。お詫びして訂正いたします。
実はこのDVDには、特典としてモンキー・パンチや声優陣のインタビューが収められているのだが、彼らの素の声を初めて聞く人も多いのではないだろうか。過去を振り返り未来を語るコメントを聞けるのは、かなり貴重なことだと思われる。いろいろ言われる栗田貫一のルパンだが、DVDの中ではそれなりに頑張っていたように思うし、ファンのためにも是非努力を続けてもらいたいと思う。
パッケージは非常に凝ったもので、9面見開きピクチャーパックという折りたたみ式のケース。風呂敷包みを解くが如く、開いていくとミニポスターサイズの書き下ろしイラストが現われる。3枚のDISCトレイも、パッケージに貼り付けられており、わりとうまく収まっている。中身の様子はVAPのホームページに画像があるので、各自ご覧頂きたい。一応、ハードケース付きでプレミア感は高いのだが、光沢素材なので指紋でベタベタにならないよう気を使ってしまった。
本編が収められているDVDには、先ほど解説した特典の他に美術ボードや「五ェ門の修行七番勝負」というスライドショーがあった。スライドショーの方は意味、内容ともにわかりづらかったが、キャラクタデザインや背景画の設定が見られる美術ボードは、なかなか楽しめるものだった。
また、同梱の大野雄二の書き下ろしを含むサントラCDの新曲は、映像を意識してかデジタルチックなものに生楽器を組み合わせたものが中心である。少々音の軽さが気になったが、やはりテーマ曲とエンディングテーマは秀逸だ。なんならニューリミックスでも入れくれれば嬉しかったのだが。
もう1枚CD-ROMも付属していて、本編をモチーフとしたオリジナルゲーム。遊ぶにはQuickTime 5以上が必要だが、CD-ROMにも入っているので準備は簡単だ。QuickTime VRで360°の3D空間を探検しながら、事件を解決していくという構成になっている。本編ではあまり出番のなかった銭形警部だが、ゲームの中で主人公となり、捜査を行なっていく。なんと銭形の台詞には、納谷悟朗の吹き替えが付いている。ゲーム音痴の私は残念ながらクリアできていないのだが、おそらくすべての台詞を吹き替えているものと思われる。
さて、こうした内容のDVDが8,500円。決して安くはないが、コレクターとしての所有欲は満たされるのではないだろうか。もちろん、もっと本編が面白く、価格も6,980円程度ならいうことはないのだが……。
●このDVDについて |
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(2002年4月19日)
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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp