手元にバージョンアップの案内の封筒が届いたという人も多いと思うが、BHAの「B's Recoder GOLD」が4年ぶりにメジャーバージョンアップして、「B's Recoder GOLD 5」が登場した。なぜか、私の手元には、同じ案内が4通も同日に届いていたが、このパンフレットを見てみると、ミュージックオーサリングソフト「B's Menuet Ver1.00」が同時リリースされるとある。
そして、これには「話題のmp3PROに対応」との記述がある。以前、「nero5.5」特別限定版に搭載されたmp3PRO機能について検証したが、B's Menuetのmp3PRO機能はneroと比較してどう違うのか? さっそく入手して試してみた。
■ 3本のソフトで構成
パンフレットによるとB's Menuet(ビーズ・メヌエット)は、「音楽再生・編集・録音CD作成機能を搭載したデジタルオーディオ・オールインワンパーフェクトツール」。つまり、B'sシリーズとして、CDライティングソフトの1つではあるが、単なるライティングソフトではない。
価格は店頭販売価格が6,800円だが、従来のB's Recoder GOLDの登録ユーザーには優待販売で4,000円で手に入れることができる。また、クレジットカードのみの対応だがダウンロード販売であれば3,500円となっている。
その機能は、以下の5つで構成される。
しかし、B's Menuet自体がこの5つの機能を備えているわけではないようだ。実際にインストールしてみるとわかるが、このソフトは以下の3つのアプリケーションから成り立っている。
まずは、それぞれの機能概要を簡単に紹介しよう
■ B's Menuet
本体であるこのアプリケーションは、いわゆるMP3ツールであり、再生およびエンコード(=レコーディング)機能がある。起動すると、古いテレビのようなプレーヤー画面が表示され、MP3ファイルの再生が可能となっている。もちろん、スキン機能も持っているので、さまざまなデザインの画面を選択して利用できる。
基本プレーヤー画面 | プレーヤー画面のスキンサンプル |
しかし、B's Menuetは単にMP3に対応しているだけでなく、音楽CDやWAVファイルの演奏はもちろんのこと、WMA、AIFF、TwinVQそしてmp3PROも再生可能。そしてCDからリッピングし、各種フォーマットにエンコードすることは当然として、各フォーマット間で相互にコンバートを行なうこともできる。さらに、アナログソースからレコーディングし、MP3などにリアルタイムエンコードすることも可能になっている。
また同類のソフトと同じように、グラフィックイコライザ機能を搭載したり、CDDBにも対応している。
グラフィックイコライザ | CDDBに対応 |
オリジナルビジュアライザーという機能も搭載されており、曲のリズムにあわせて3Dグラフィック画面が動くようになっている。また、ちょっと面白いのがWinAmpの再生プラグインおよび録音プラグインに対応していること。WinAmpのプラグインはずいぶんいろいろなものが存在しているので、これらが利用できるというのは嬉しいところだ。
そして、B'sシリーズとしては、やはりCD-Rへのライティング機能もサポートしており、MP3やmp3PRO、WMAなどのデータを元にオーディオCDを焼くことができる。この際、トラック間の無音部分の設定したり、クロスフェードを用いて各曲をつなげていくことなども可能となっている。
オリジナルビジュアライザー | CD-Rへのライティング |
■ B's Wave Editor
「B's Wave Editor」は波形エディタ。パンフレットには、ノーマライズ機能、スペクトラムアナライザ機能、フェードイン/フェードアウト機能、トランスポージング機能、タイムコンプレッション機能、ダイナミックプロセッサ機能を搭載。さらに、ディレイ、フランジャー、コラース、リバーブなどのエフェクト機能、そしてノイズリダクション機能も搭載していると書いてある。
非常に面白そうだったのだが……、今回使用したβ版は、私の環境ではなぜか動作させることができなかった。BHAのホームページを見ると、アップデータが上がっていて、これをインストールすれば動作するように書いてあるのだが、どうしてもインストールすることができなかった。また、機会があれば、ノイズリダクション機能などをチェックしてみたい。
■ B's Cover Designer
最後のB's Cover Designerは、CDラベルデザインソフト。B's Menuetとも連動するようになっており、ブックレット(フロント/リア)、インレイ、CDレーベルそれぞれのデザインをし、印刷まで可能。
もちろん、テンプレートも色々用意されているので、その中から選ぶだけで簡単にデザインすることもできる。
B's Cover Designer | テンプレート |
■ mp3PROの品質
以上が、B's Menuetの概要だが、気になるのはmp3PROの品質がどんなものかということだろう。昨年mp3PROが発表されて以来、mp3PROという用語自体はある程度知られるようになるとともに、マニアには注目されているようだ。しかし、現実には、ほとんど普及していない。
ソフトも以前紹介したneroが対応していた程度で、対応したソフトをほとんど見たことがない。そんな状況の中で、mp3PRO機能を搭載して登場したのがB's Menuet。MP3のエンコーダはFraunhofer IISとのことだが、さっそくいつものサンプルデータを元にエンコードしてみた。
方法としては、予め変換するデータを用意してプレイリストを作成した上で、録音ボタンを押すだけ。これを押すと、ウィザードが起動するので、これに従っていけば簡単にエンコード作業が済んでしまう。この画面を見てもわかるように、録音ボタンを押して行なえるのは、MP3やmp3PROだけでなく、各種形式にエンコードしたり、オーディオCDを焼くこともできるようになっている。
早速、mp3PROを選択して、オプションボタンをクリックすると、mp3PROの設定画面が現れた。この画面、どこかで見た記憶があるなと思い、以前nero5.5 特別限定版の記事を見てみれば、まったく同じ画面だった。
ウィザード画面 | mp3PROの設定画面 |
Enable mp3PROというチェックボックスをオンにするとビットレートが表示され、プルダウンメニューを見てみると、24kbps~96kbpsまでの選択肢が現れる点も同じである。さらにExpertボタンを押してみても、デフォルトで「強いステレオレコーディングを許可する」と「、ダウンミックスの許可」にチェックが入っている点も同様だ。
ビットレートメニュー | 「Expert」セッティング |
ここまで見ると、結果はある程度予想されるが、いつものように、TINGARAの夜間飛行という曲の45秒と、1kHzのサイン波、20Hzから22.5kHzに120秒で連続的に変化していくスイープ信号について、まずはデフォルトの設定、つまり80kbpsで「速い」というモードにで実験し、周波数分析を掛けてみた。
その結果およびオリジナルデータ、そしてnero5.5で行ったデータは以下の通りである。neroの結果と比較して、微妙な差こそあれ、ほとんど同じであることがわかるだろう。
1kHzのサイン波 | スイープ信号 (20Hz~22.5kHz) |
|
「B's Menuet」 mp3PRO 80kbps |
「夜間飛行」/TINGARA | ||
オリジナルデータ | mp3PRO 80kbps | |
「B's Menuet」 | 「Nero5.5」 | |
(C)TINGARA
「夜間飛行」(作詞:名嘉睦稔 作曲:名嘉睦稔、TINGARA)
□TINGARAのホームページ
http://www.tingara.com/
つまり、B's Menuetとnero5.5のmp3PRO機能はほぼ同じもののようだ。ほかのビットレートでも試してみたが、結果は同様であった。
これで、今回の検証は終了としてもいいのだが、せっかくだから、オプションを少しだけ変更してみた。「強いステレオレコーディングを許可する」つまりジョイントステレオがオンになっているのをオフにした。さらに、モノラル化という点でも気になる「ダウンミックスの許可」についてもオフにして実験してみた。なお、それ以外の条件は変更せずに行なった結果は、以下の通りである。
「夜間飛行」/TINGARA | |
「B's Menuet」mp3PRO 80kbps | |
ジョイントステレオ:オン | ジョイントステレオ:オフ |
グラフでは、デフォルトの設定と微妙な差が出ているが、聞いた感覚だとほとんど違いがわからなかった。ジョイントステレオについては人によって意見が分かれるところだが、mp3PROのこのエンコーダに関していえば、それほど大きな意味はもたないようである。
以上、ごく簡単にB's Menuetについてその機能を見てみるとともに、mp3PROの実力について検証した。結局、mp3PROエンコーダ自体は、nero5.5特別限定版と同じものだったが、mp3PROを試してみたいという人にとっては、安くて便利なソフトであるといえそうだ。
□BHAのホームページ
http://www.bha.co.jp/
□製品情報
http://www.bha.co.jp/products/menuet.html
□関連記事
【4月9日】BHA、mp3PRO対応の音楽統合ソフト「B's Menuet」
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20020409/bha.htm
【2001年11月12日】【DAL】第34回:MP3の新規格「MP3PRO」を検証する Part2
~ 「nero5.5 特別限定版」でフルスペックの実力をチェック ~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20011112/dal34.htm
【2001年9月17日】プロジー、mp3PROエンコーダを追加した「nero5.5」特別限定版
-DVD-R/RWライティングにも対応
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20010917/prog.htm
【2001年6月25日】【DAL】第16回:MP3の新規格「MP3PRO」を検証する
~ 互換性はあるし、確かに音はいい!! ~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20010625/dal16.htm
(2002年5月13日)
[Text by 藤本健]
= 藤本健 = | ライター兼エディター。某大手出版社に勤務しつつ、MIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase VST for Windows」、「サウンドブラスターLive!音楽的活用マニュアル」(いずれもリットーミュージック)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。 |
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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp