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第73回:Rolandブランドが発表した新製品
~ Logic5とデジタルミキサーのセットなど ~


 Rolandは5日、デジタルミキサーやデジタル・グルーヴボックスなどの新製品を発表した。またそれに先駆けて記者発表会が開催され、デジタルミキサーとLogic5のセット製品やエフェクト、アンプ、音色ライブラリーなどが公開された。そこで、今回はこれらのうち主要3製品について紹介したい。


■ サンプラーとしても使えるシンセサイザー「MC-909」

 新製品発表会では、すでに大楽器祭でお披露目されていた製品が改めて発表されていたのだが、メインの製品は「SAMPLING GROOVEBOX MC-909」、「10CH DIGITAL LINE MIXER M-1000」の2つだ。

 まずMC-909は、その名前からも想像できるように'96年に発表された「Roland GROOVEBOX MC-303」や、'98年に発表された「MC-505」の流れをくむ製品。従来の製品がMIDIで完結していたのに対し、MC-909はオーディオ・サンプリング/リサンプリング機能や、強力なシーケンス機能とマスタリング機能を搭載し、MIDIとオーディオを融合させた統合的なワークステーションとなっている。

 筆者自身もMC-303は発売されてすぐに購入し、しばらく使っていたが、それから比較するととにかく大きいと感じたのが第一印象。しかし、実際に使ってみるとMC-303とは比べものにならないほどの高機能・高性能となっており、PCとの連携機能も充実している。

 GROOVEBOXについてご存知にない方に多いと思うので簡単に紹介すると、もともとMC-303はRolandのレトロマシンである「TR-808/909」(ドラムマシン)、「TB-303」(ベースマシン)をモチーフに、現在に蘇らせた製品。ステップシーケンスと呼ばれる簡単な操作でリズムやベースパートを作り上げるとともに、一般のシンセサイザー機能およびシーケンサ機能も搭載し、テクノ系、ハウス系、トランス系といった音楽を作り出すツールとなっている。

 そのコンセプトはそのままに、シンセサイザー機能やシーケンス機能を大幅に強化するとともに、オーディオ機能を搭載したのがMC-909だ。まずシンセ部分は693種類の波形を搭載した16パート。フィルターやエンベロープなどパネル上で自由にエディットできるし、演奏中にリアルタイムに動かすことも自由自在。これは、Rolandの主力シンセサイザーであるXVシリーズと同等のエンジンとなっているだけに、非常に高品位だ。また、XVシリーズ用にリリースされている音色拡張ユニット「SRXシリーズ」が利用できるので、音色を自由に追加することが可能。

MC-303直系の「MC-909」。オーディオ機能により、サンプラーとしても強力 パネル上で各種コントロールが行なえる 波形編集も大型液晶で可能

 しかもこのシンセ、単なるウェーブテーブルシンセというだけでなく、サンプラー機能も備えている。16MBメモリを内蔵しているので、ここにアナログ、デジタル(S/PDIF)からサンプリングした音を音色データとして扱うことができる。また、DIMMを装着できるので、最大272MBまで拡張可能となっている。もちろん、サンプリングした音にはタイムストレッチやピッチシフト、ウェーブエディットといったことが可能。波形のエディット作業などは、大型のLCDで行なえるため、PCのような感覚で扱うことができる。サンプラーと言ってしまうと、単なる音源のようだが、272MBもあれば最大51分ものレコーディングが可能。これは、レコーディングマシンといっても過言ではないだろう。

 一方、エフェクト機能も充実している。2系統のマルチエフェクトに加え、独立したリバーブ、コンプレッサなどを搭載しているほか、マスタリングエフェクトも用意されている。これは、3バンド・コンプレッサで、最終的に仕上がった曲をマスタリングするためのエフェクトとなっている。

 そしてもう1つ注目すべきは、PCとの連携機能。MC-909にはUSB端子が搭載されており、これを使ってPCとのデータのやり取りができる。具体的にはSMFデータとWAV/AIFFデータだが、特殊なソフトがいるわけではない。USBで接続するとPC側からはMC-909がドライブとして見え、ここにコピーすればいいだけだ。またMC-909ではスマートメディアも扱うことができる。スマートメディア部分もUSB経由でドライブとして認識する。


■ 複数のデジタル入力をミックスする「M-1000」

S/PDIFの多ch入力が可能なM-1000
 次に紹介するのは、10chのデジタルミキサー「M-1000」。ここ数年でS/PDIFが楽器やPC、レコーディング機器などの間で幅広く普及した。もともとはCDとMDを接続するなどオーディオ機器用のデジタル入出力端子というイメージが強かったが、いまやDTM関連の機材もその多くがS/PDIFの入出力を装備している。しかし、これだけ増えてくると、どうミキシングするかという問題が生じてくる。最近のDAWやデジタルミキサーなどもS/PDIFは備えているが、基本は1系統のみ。これでは複数のS/PDIFをミックスすることができない。

 プロ用機材であれば、S/PDIFに限らずさまざまなデジタルオーディオ機器間で完全に同期した上で連携させることができるが、Word Clock端子を装備していない民生機はそうもいかない。そのため、多くのユーザーはアナログでやりとりをしたり、場合によってはデジタルを一旦アナログに変換した上でミックスさせることも少なくないだろう。これをもう少しスマートにできないものだろうか?

 そんなニーズに応えてくれたのがM-1000なのだ。M-1000には4つのコアキシャル(うち1つはオプティカルとの切り替え可能)のS/PDIF入力端子が用意されており、それぞれをアナログ機材を接続する感覚で繋ぐことができる。この際、Word Clockによる同期はもちろん、サンプリングビット数やサンプリングレートに関しても考えなくてもOKとなっている。というのも、各入力にサンプリングレートコンバータが入っており、自動的に変換するとともに、強制的にクロックをロックしてしまうのだ。周波数は96kHz、48kHz、44.1kHzに対応しているので、大抵の機材でOKだろう。

 しかし、せっかくならPCとの連携も図ってみたいところ。そのためにUSB端子も用意されている。これを使うことによって、PCからの信号をデジタルの1系統として扱うことができるし、反対にM-1000のミキサーでまとめたサウンドをPC側でレコーディングすることも可能だ。また、ちょっと面白い使い方としては、USBからのオーディオ信号に同期する信号をWord Clock端子から出力することができる。こうすることにより、PCをWord Clockのマスター機材として扱うことができるわけだ。

 こうしたデジタル入出力に加え、アナログ端子も2ch用意されており、非常に便利に使うことができる。デジタル機材を多数持っている人なら、重宝しそうな一台だ。


■ ミキサー、Logic、インターフェイスカードのセット「Studio Package Pro」

 最後に紹介するのは、すでに9月から発売が開始されている「Studio Package Pro」。EDIROLブランドのミュージ郎とは一線を画するこの製品は、よりハイエンドよりのユーザーを狙ったパッケージであり、価格も14万~15万円程度と高価だ。

 Studio Package Proの具体的な中身は以下の3点になる。

  • STUDIO INTERFACE SI-24
  • emagic Logic RPC Pro
  • RPC-1 Interface Card
 順に説明していくと、まず「SI-24」は13本のムービーングフェーダーを装備したデジタルミキサーで、単体での発売はされていなかった完全な新製品。VM-3100Proというミキサーの後継ともいえる製品だ。SI-24には、8IN/8OUTの端子があり、すべて24bit/96kHzに対応。また、搭載したジョイスティックで5.1chサラウンドをエディットする機能もある。

 そして、このSI-24は単なるミキサーではなく、PCと接続し、レコーディングやプレイバックが可能となっている。PCとの接続に用いるのがRoland独自のバスである「R-BUS」。R-BUSはRolandのDAWなどさまざまな機材に搭載されているインターフェイスだが、それをPCで扱えるようにしたものがPCIバスに接続するインターフェイスカード「RPC-1」。もちろん、PCIバスだからWindowsマシンでもMacintoshでも利用可能となっている。

デジタルミキサーのSI-24 PCと接続するためのR-BUSを装備

 そして、このSI-24とRPC-1を存分に生かすためにバンドルされているソフトが「Logic RPC Pro」。これはLogic5をベースにしたソフトで、トラック数が24などとLogic5と比較すると多少機能が制限されている。ただし、Logic5へのアップグレードサービスというものが用意されており、emagicの販売代理店であるミディアを通じて購入できるようになっている。

 ここで気になるのがWindows版Logicについて。このStudio Package ProにバンドルされているLogic RPC Proは、Macintosh、WindowsのハイブリッドでありWindowsでも利用することができる。ただ、Appleによるemagicの買収により、9月30日をもってワールドワイドにおけるWindows版の製品が停止されており、それは日本も例外ではない。が、このアップグレードサービスのみは引き続き行われるので、心配はなさそうだ。

Logic5をベースにした「Logic RPC Pro」

 以上、今回のRoland新製品3つを簡単にまとめてみたがいかがだっただろうか? EDIROLとRolandとでブランドを分けてはいるが、気が付くとRoland製品もその多くがUSB端子を搭載するなど、昨今は違いが見えにくくなってきている。

 とはいえ、今回の製品群を見ると、デジタルレコーディング機材でもハイエンドユーザーを狙った製品はEDIROLではなくRolandブランドで行くという方針が改めて示されたように思う。今後、各社からどのような製品が出てくるのか楽しみなところだ。

□ローランドのホームページ
http://www.roland.co.jp/
□関連記事
【2001年9月10日】Rolandが発表したDTM新製品群の実力
~ EDIROLブランドで本格展開を開始 ~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20010910/dal26.htm

(2002年10月7日)


= 藤本健 = ライター兼エディター。某大手出版社に勤務しつつ、MIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase VST for Windows」、「サウンドブラスターLive!音楽的活用マニュアル」(いずれもリットーミュージック)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。

[Text by 藤本健]


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