【バックナンバーインデックス】



[週刊] デバイス・バイキング
とりあえず震えとけ!!
低音で振動するワイヤレスヘッドフォン
ソニー 「MDR-IF540RK」
発売日:11月10日
標準価格:12,000円
(購入価格:10,080円)

■ SDWにひっそりと出品されていた振動ヘッドフォン

MDR-IF540RK

 9月のSony Dream Worldで発表された赤外線伝送のワイヤレスヘッドフォン「MDR-IF540RK」。なんといっても特徴的なのは、低音にあわせてハウジングが振動する「バイブレーション機能」を搭載していること。

 ワイヤレスヘッドフォンは世の中に数あれど、振動するのは「IF540RK」が初めてだと思う。現地で体験したスタッフによると「すごい気持ちいい」ということなので、サクッと捕獲してみました。購入価格は税込みで10,080円(税抜き9,600円、10%のポイント還元あり)なので、やや高めかも。



■ ちょっと安物感のあるパッケージ

パッケージはブリスター

 パッケージはブリスターで、約1万円のヘッドフォンとしては、安物感が強い。本体は、オープンエアタイプのヘッドフォン「MDR-IF540R」と、充電機能を搭載したトランスミッタ部「TMR-IF540R」から構成され、専用のニッケル水素電池やステレオミニ-ステレオRCA変換プラグや接続コード、ACアダプタなどが同梱される。

 設置はいたって簡単で、ヘッドフォンの左ハウジング部に専用充電地を入れ、オーディオ機器とトランスミッタを接続するだけ。左ハウジングの下部には、充電用接点を搭載しており、ヘッドフォンをトランスミッタに設置すれば、充電が開始される。

 カタログスペックでは、充電時間が約16時間、連続使用時間は約26時間と、充電時間が長いのが気になった。しかし、1時間の充電で1時間45分の再生が行なえるので、満充電まで待たなくても、よほど連続して使わない限りは電池が切れて聞けないということはない。

 設置してみて気になったのは、ハウジングの充電用接点と、トランスミッタ側の接点をうまくあわせて置くのが難しい点。ちょっと聞いて、何気なくトランスミッタ上に置いた時などは、接点がうまく合わずそのまま放置してしまうことが何度かあった。上から差し込むようにして置いて、前後/左右に動かすと「カチッ」と音を立てて充電が開始されるのだが、コツをつかむまではトランスミッタに戻す際に、充電を示す「CHG」ランプを確認した方がよさそうだ。

 充電池が専用というのもやや気になるところだが、単4アルカリ電池やマンガン電池も利用できる。単4アルカリ電池で約45時間、単4マンガン電池で約20時間の連続使用が可能となる。

トランスミッタ正面 トランスミッタ背面 トランスミッタ側の充電用接点


■ 装着間は良好。ワイヤレス性能にはちょっと不満も

 ヘッドフォンは、左ハウジングに電池と充電端子を装備し、右ハウジングにボリュームやSRSヘッドフォンスイッチ、バイブレーションスイッチを装備している。左側に電池が入っているため、バランスが悪くなるかと思っていたが、実際に装着してみると違和感はない。本体重量は約285g(電池含む)。

ボリュームとSRSヘッドフォンスイッチ バイブレーションスイッチと振動調整ボリューム 電池は左ハウジングに内蔵する

アジャストバンドが電源スイッチ連動型となっている

 ヘッドフォンは締め付ける感じもなく、掛け心地は良好。ホールド感もなかなかいい。また、アジャストバンドの部分が電源スイッチ連動となっている。ビクターの「HP-W150SU」などでも採用している機構だが、プレーヤーが再生を開始していれば、装着するとすぐに音が鳴るので、なかなか便利。電源スイッチを切り忘れていざという時に使えないといった事態を防ぐためにも良くできた仕組みだと思う。

 と、準備も整ったことで、いよいよ視聴。とりあえず、バイブレーションをOFFにして普通に聞いてみる。音質的には、低域/高域ともに弱めで、中音域を素直に出すというキャラクタ。正直、普段使っているソニーのワイヤードヘッドフォン「MDR-CD480」の方がはるかにいい音に感じるが、あまり目立った色付けのない音なので、アナログワイヤレスであることを考えれば、まずまずといったところ。

 しかし、本体のボリュームを上げると、「シャー」というホワイトノイズが目立つ。アナログワイヤレスヘッドフォンの宿命とはいえ、本体のボリュームが「6」を超えたあたりから、ややノイズが目立ち始め、「8」を超えるとソースを問わずホワイトノイズが確認できるといった具合。ヘッドフォン側のボリュームは、6ぐらいに固定し、再生機器側でボリューム操作を行なった方がよさそうだ。

 また、ワイヤレス機能としては、トランスミッタの左右 各45度、最長7mまでの範囲をカバーしている。7mという到達距離は実用的だと思うが、左右45度だとかなり、遮蔽物の影響を受けやすく、ちょっと物足りなく感じる。


■ ソースを選ぶ「バイブレーション機能」

 それでは、最大の特徴といえる「バイブレーション機能」をONにして、とりあえずiPodに接続……。が、震えない。どうやら再生ボリュームが低かったようで、ヘッドフォンのボリュームを最大にすると、キました。震えております。頭蓋骨がくすぐられているような変な感触。しばらくは楽しいのだが、ちょっと使っているうちに気分が悪くなってきたかも……。慣れるまでは様子を見ながら、適度に間隔を空けて使ったほうがよさそう。

 また、様々なジャンルの曲をで試聴していくうちに、「なんでそこで振動する?」という事態が多発。100Hz以下の低域を検出すると振動するという仕組みのようで、ポップミュージックだと、大体ベースにあわせて振動する。バスドラのほうが低域が出ていそうなものだが、ベースの方がはるかに低域が出ているんだよな~ などと考えながら、振動に慣れてくると結構癖になっていく。

 なお、本体に振動を調節できるダイヤルも付いているが、振動の強弱調整というより、低域を検出する感度設定のようなので、ベストの振動に調整するのは難しい。もっとも、最適な振動を求め、いろいろなアルバムを試すのも楽しいところではあるが。

 一番相性がいいというか、振動が効果的に感じたのは、打ち込み系のキックが強くて、ベースがうねりまくるようなソース。グシャッと潰れた低域が直接、体を揺さぶるような感じで、コンサート会場やライブハウスなどの大型スピーカーに張り付いて、音楽を聴いたことがある人(あまりいないと思うが……)だと、ニュアンスがわかるかも。音楽としてどうかというよりは、音楽体験として面白いといった感じ。

 ポップスなどでは、バラードから突然リズムの強い曲に移行するとびっくりしてしまうこともあるが、それなりに使える印象。試しに、宇多田ヒカルの「DEEP RIVER」を、1曲目のSAKURAドロップスで振動を調整し、最後まで通して聞いたところ、震えてほしいところで、それなりに振動させて再生できた。

 ただし、楽器のニュアンスなどや奏者の力量などを大事にしたいときは、素直にバイブレーションをOFFにしておいたほうがよさそう。例えば、Weather Reportの「Live and Unreleased」を聞くと、振動までにタイムラグがあるので、そこでベース弾いていないだろ! といった状況に。とてもじゃないけれど聞く気が起きない。ソースにより、簡単にON/OFFできればいいのだが、ヘッドフォンの下部を探って操作しないといじれないのでちょっともどかしい。ワンタッチで振動のON/OFFできれば便利なのだが……。

 オーディオだけで判定するわけにはいかないので、ゲームでも試してみることに。とりあえず、「オペレーションフラッシュポイント」をやってみた。しかし、このゲームだと銃声や兵士の動作する音より、指揮官の命令のほうが音量的に大きいので、銃声にあわせて振動調整を行なうと、発砲したときより、指揮官の命令のほうが、より大きな振動を起こすという始末。あまり、このゲームには向いていないようです。音ゲーなどでは効果を発揮するのかも。

 DVDでも、スパイダーマンとブラックホーク・ダウンで試したが、やはり意味のないところで震えすぎ。ちょっとこれは使えないかと。

 ということで、ソースごとにうまく楽しめるものとそうでないものがあるというのが、バイブレーション機能に対する結論。相性のいいソースを見つけるのが楽しい、という倒錯した使い方でも十分楽しめるのだけれど……。

 また、サラウンド機能として米SRS Labsのバーチャルサラウンド技術「SRS ヘッドフォン」も搭載している。SRSヘッドフォンとバイブレーション機能の併用も可能。SRSヘッドフォンは、右ハウジングのボタンでON/OFFが可能だが、オーディオにかけると、奥行きや音場感は出るものの、定位感がなくなり、楽器やボーカルの輪郭がぼやけてしまう。ライブものなどでは臨場感を出したいときには効果的だが、こちらもソースを選ぶ機能だろう。

 逆に、DVD視聴時に見てみると、結構いい具合。スパイダーマンの橋脚で宙吊りになるシーンでも上下の音移動も感じられ、サラウンド感はかなり増加する。ただし、セリフの輪郭がやや甘くなるほか、小さい音の時にホワイトノイズが目立つようになるので、アクションの少ない映画には利用しないほうがいいかもしれない。


■ やや高めだが、振動機能は試してみる価値あり

 オーディオを聞く場合は、ソースを選んでしまうところが痛いのだが、はまったときの快感は唯一無二のものだ。ハウスやヒップホップなど、リズムの強い音楽が好きな人は試してみると面白いと思う。逆に、ジャズやクラシックなどで聞いても、おそらく微塵も面白くないと思うので、万人向けというわけではない。

 そうした意味では、ゲームやDVDでの利用で効果を発揮するSRSヘッドフォンに対応しているのは、結構重要に思える。特にDVDを見るために、ワイヤレスヘッドフォンが欲しい人には、いい選択肢といえそうだ。

 ちょっと問題となるのはやはり価格だろう。SRSヘッドフォンを搭載した、ビクターの「HP-W150SU」が8,000円台後半ぐらいなので、振動機能のプラスを考えれば、妥当といえなくもなさそうだが、「ちょっと振動させて遊びたい」といったユーザーにとって1万円というのはちょっと高価に思う。また、音質も1万円クラスのワイヤードヘッドフォンと比べたら、かなり劣っているので、DVDやオーディオ、ゲームなど、全てのヘッドフォンの用途をこれひとつにまとめたいというのにはちょっと向かない。しかし、触れてみるだけでも話のネタになるという意味では、やはり唯一無二のヘッドフォンだろう。


□ソニーのホームページ
http://www.sony.co.jp/
□製品情報
http://www.ecat.sony.co.jp/avacc/headphone/products/index.cfm?PD=10012
□関連記事
【9月11日】【Sony Dream Worldレポート その2】
低音で振動するワイヤレスヘッドフォンなど
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20020911/sony2.htm
【2月19日】【魁】バーチャルサラウンドヘッドフォン一挙2モデル
ビクター「HP-W150SU」、「HP-SU700」
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20020219/saki50.htm
【1月30日】ビクター、WOW回路を搭載したコードレスサラウンドヘッドホン
―SRS HEADPHONE回路内蔵ワイヤードヘッドホンも発売
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20020130/victor.htm

(2002年11月29日)

[ AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]


00
00  AV Watchホームページ  00
00


Copyright (c) 2002 Impress Corporation All rights reserved.