■ 皆さんおぼえていますか?
「ドルビーデジタルEX」、「DTS-ES」、「ドルビープロロジック II」、「DTS-Neo 6」など、なんだかサラウンドフォーマット乱立の昨今ですが、皆様ちゃんと覚えていらっしゃるのでしょうか? 「ドルビーデジタル」、「DTS」位まではちゃんとわかっていたけれど、もうついていけないという人も多いのでは……。
そんな困った状況にまた拍車をかけるべく新フォーマットがWPC EXPOで発表された、「ドルビー・バーチャル・スピーカー」というフォーマット。基本的には、2本のスピーカーで擬似的に5.1ch環境を作り出すというもので、平たく言えば「ドルビーヘッドフォン」のスピーカー版といったところ。 ということで、早速そのドルビー・バーチャル・スピーカー(DVS)を搭載した、PC用DVD再生ソフト「WinDVD DVS」がインタービデオからリリースされた。 製品の発売は12月6日。今回利用したのはRC2版だが、DVSのほかにもDivX再生の対応や、シャープの開発による「Movie EffectorII」なる高画質化技術などの新機能を搭載しているので、さくっとテストしてみた。 ■ DVSは3モードを装備。かなり効果的かも
ドルビー・バーチャル・スピーカーを簡単に説明すると、DVDビデオなどのディスクリート5.1chを2本のスピーカーでシミュレートする技術。DVDビデオのほか、音楽CDやMP3ファイルなどの2chソースでも適用可能という。 2chソースの再生時には、1度ドルビープロロジック IIで5.1ch化した後、2chに戻してスピーカーで再生する。再生モードには、「標準モード」のほか、スピーカー間が狭い場合などにも効果が感じられるという「ワイドモード1」と、よりサラウンド感を高めた「ワイドモード2」が用意される。
それでは、早速、視聴してみることに。とりあえず、自宅PCにケンウッド製ソーテックブランドのUSB対応コンポ「VH-7PC」を接続してテスト。視聴距離は1m弱といったところ。 こうしたバーチャル系は、頭のエージングというか、しばらく見て、耳(頭?)が慣れてくるまで、サラウンド感を感じられないものが結構あったりする。「慣れるまでが面倒くさいんだよなー」とか思いつつ、標準モードに設定して、ブラックホーク・ダウンを再生。WinDVD DVSは、DTSに対応していないので、ドルビーデジタルに設定して、ヘリの移動シーンにチャプタを飛ばしてみると…… 「おお! ちゃんとサラウンドしてる」。5.1chとは言わないが、前方160度ぐらいに音の広がりを体験できる。 そのまま、しばらく見ていると後ろのほうからも聞こえてきた。うーん結構いいかも。前方220度ぐらいから音が鳴っているという感じで、ディスクリートの5.1ch環境のような明瞭な定位感はないけれど、斜め後ろから音が鳴っている感じは十分出ている。 同じシーンでワイド1を視聴。標準よりさらに後方で音が聞こえるようになったように思える。標準より、やや音が遠くなった感はあるが、音場としてはこちらのほうがバランスがいいかも。チャンネルセパレーションも標準モードよりいい具合で、筆者の自宅のセッティングではこれが最適だと思う。 続いてワイド2では、さらにサラウンド感が高くなる。音もかなり後方まで回り込んでいて、ワイド1より大きい劇場で見ているような感じ。このモードでDVSをOFFにすると、さすがに、音やセリフの解像感が低くなっているのが良くわかるが、大ホール的なリヴァーブ感が強くなるので、DVDを見るのであれば悪くない。銃撃戦のシーンなんかだとちょっと誇張しすぎな気もしたが、シーンに応じて使い分けると面白そうだ。 どのモードも、状況に応じて使い分けると結構面白く、個人的には期待以上に楽しめた。 また、音楽CDを再生してみると、標準モードだと今ひとつサラウンド感が得られなかったが、ワイト1/2ではかなりの効果が得られた。もともと2chソースなので、5.1ch収録のDVDに比べるとサラウンド感は少ないが、変に音域を持ち上げたりすることないので、比較的自然な印象。ワイド2では、ホールで演奏しているようなリバーブ感が出るが、定位も大きく崩れないので、ライブ盤などでは雰囲気が出て、結構楽しめる。 なお、視聴距離は、今回テストした環境だと、60cm~150cmぐらいの間に限られるようだ。2mを超えると、後方からの音は全然聞こえなくなってしまう。そういう意味では、PCで作業をするような環境か、それより数10cm~1m程度離れて視聴するというのが正しいスタンスだと思う。
ついでに、会社のデスクトップPCでもクリエイティブメディアのTravelSoundを接続してテストしてみた。写真のとおりの小型スピーカーで、左右のスピーカーの間もほとんどなく出力も2Wと、バーチャルサラウンドに適したスピーカーとは言えないと思うが、それでも左右のサラウンド感はかなり変化する。さすがに後方から音が出ている感覚はほとんどなく、チャンネルセパレーションも曖昧な感じだが、お手軽にサラウンド感を得るためには、なかなか使える印象だ。 このWinDVD DVSのほかに、サイバーリンクも「PowerDVD XP DVS」の発売を予告している。今後DVD再生ソフトの標準的な機能になっていくことが大いに期待できる、ぜひそうなって欲しいフォーマットだと思う。 ドルビーラボラトリーによれば、当初は、パソコン向けのDVD再生ソフトから提供開始し、将来的には専用DSPにより、テレビ、DVDプレーヤー、STBなど民生機でも展開していくということ。もうすこし視聴距離に柔軟性がもてれば、応用範囲も広がると思う。DVDプレーヤーなどに組み込まれていくことで、スペースが確保できないなどでホームシアターを構築できない人でも、擬似的にではあるが、お手軽に5.1ch環境を体験できるようになるわけで、今後の普及を期待したいところ。なんだかんだで、現在、5.1ch環境持っている人って少ないですから。 ■ Movie Effector IIやDivX対応などの新機能も搭載
また、WinDVD DVSでは、シャープが開発した、液晶画面でもクリアな映像を可能にする「Movie Effector II」も搭載した。ニュースリリースによれば、「特に色が沈みがちな液晶ディスプレイで効果を発揮し、人物の肌色などを明るく健康的な色調に変える」という。 適用範囲を「フルスクリーン」と「ハーフスクリーン」から選択でき、ハーフスクリーンでは画面の半分だけにMovie Effector IIを適用し、効果の度合いを確認することができるという。 早速試してみると……。あれ? 全然変わんない。と思ったら、ビデオカードのハードウェアアクセラレーション使用のチェックをONにしていました。OFFにしたらしっかりくっきりと差が確認できる。コントラストと色温度を上げたような設定になるので、筆者のデスクトップPCの暗い液晶などでは、かなり綺麗に見える。もともとかなり明るいSyncMaster 172Tだと、ちょっと明るすぎて違和感を覚えることもあったが、ノートPCや数年前の液晶ディスプレイで見る人には意味があるのでは。
また、新たにDivXの再生や24bit/96KHzのリニアPCMオーディオをサポートした。試しにDivXでキャプチャしたファイルをドラッグアンドドロップで再生すると。はい再生できました。ただし、0.5~2.0倍速までの再生速度をコントロールするタイムストレッチ機能や、Movie Effector IIなどは利用できなかった。 そのほかにも、リピート再生時間をセットし、スタート点を設定するとその部分をリピートする「LanguageMate」機能を搭載。この機能はDivXでも使えるが、個人的にはあまり必要ないかも……。 ■ 民生機器へのDVS展開にも期待
何はともあれ、ドルビー・バーチャル・スピーカーのパフォーマンスを真っ先に試してみたい人はチェックしてみるといいと思う。もっとも、既にOEM向けなどでも出荷開始されているとのことで、今後のPCやDVDにバンドルされるDVD再生ソフトは、ほぼDVS対応となるだろう。ということで、PCのリプレースやアップグレードなどをするとそのままDVS対応となるだろうから、急いで導入する必要はないかもしれない。 ともあれ、お手軽サラウンドフォーマットとしては、「SRSサラウンド」や「バーチャルドルビーデジタル」などよりパフォーマンスが高い。視聴距離が長くできれば、PC以外の民生機器での展開も期待できそうで、そうなった時が本当にこのフォーマットが真価を発揮するのだと思う。
□インタービデオジャパンのホームページ (2002年12月6日)
[ AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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