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第65回:圧倒的戦闘シーンとエピソードを満載
10時間越えの戦争超大作「バンド・オブ・ブラザース」

怒涛のように発売されつづけるDVDタイトル。本当に購入価値のあるDVDはどれなのか? 「週刊 買っとけDVD!!」では、編集スタッフ各自が実際に購入したDVDタイトルを、思い入れたっぷりに紹介します。ご購入の参考にされるも良し、無駄遣いの反面教師とするも良し。「DVD発売日一覧」とともに、皆様のAVライフの一助となれば幸いです。


■ 制作費150億円。実売2万円近い戦争超大作

バンド・オブ・ブラザース
DVDコレクターズ・ボックス
ボックス
DVDコレクターズ・ボックス I
価格:7,600円
発売日:2002年11月20日
品番:ASBP-2260
仕様:片面2層×3枚(本編2、特典1)
収録時間:本編約257分

DVDコレクターズ・ボックス II
価格:11,400円
発売日:2002年12月20日
品番:ASBP-2261
仕様:片面2層×3枚(本編3)
収録時間:本編約383分

画面サイズ:ビスタサイズ(スクイーズ)
音声:1.英語(ドルビーデジタル5.1ch)
    2.英語(DTS)
    3.日本語(ドルビーデジタル5.1ch)
字幕:日本語/英語
発売元:アミューズピクチャーズ株式会社
販売元:アミューズソフト販売株式会社

 「バンド・オブ・ブラザース」は、'44年6月のノルマンディ上陸作戦から'45年5月のドイツ降伏まで、ヨーロッパで戦った米軍の空挺師団を描いた全10話のTVドラマシリーズ。TVドラマシリーズといっても、制作陣も制作費も凄い。製作総指揮はスティーヴン・スピルバーグ、トム・ハンクスの2人で、米国の大手ケールブテレビ会社HBOとの共同製作により、総制作費は約150億円。

 これらのスタッフに加え、全10話、合計10時間40分に及ぶ本編というだけで、充実度が最初から予想されるわけだが、価格的にも結構ヘビーだ。DVD版では、「ボックス I」と「ボックス II」の各3枚、あわせて6枚のディスクからなり、本編が5枚(10話)プラス特典ディスク1枚という構成になっている。

 ボックスセットは初回限定生産で、価格はボックス Iが7,600円で、ボックス IIが11,400円と、あわせて2万円近くなってしまう。1枚あたりの単価で考えれば、約3,000円でむしろお手ごろともいえそうなのだが、そうそう2万円も払えるものでもない。

 そんなこんなで、ボックス Iの購入はしばらく躊躇していたのだが、画質、音質やストーリーも高評価。そして、ボックス IIの発売直前ぐらいには既にボックス Iの入手は困難との声も聞かれ始めた。

 となるとやはり押さえておきたい気持ちが高まり、ボックス IIが発売された12月20日過ぎに購入を決意したのだが、ボックス Iは大手量販店では軒並み品切れ。結局ボックス Iは、自宅近くの値引き無しの小売店で購入、ボックス IIは無事に大手量販店で捕獲できた。税込みであわせて18,000円強の投資となるが果たしてそれに見合うだけの価値はあるか?




■ 第二次世界大戦時のエリート部隊「E中隊」の3年を描く

 ストーリーは、第二次世界大戦中の'42年から'45年までの3年間、米陸軍101空挺師団第506パラシュート歩兵連隊の中の「E中隊(Easy Company)」の戦いを中心に展開する。

 同隊は敵の背後を急襲することを目的に特別に編成された、いわばエリート部隊。トコア基地の新兵訓練から、ノルマンディーへの降下、オランダでの「マーケット・ガーデン作戦」、ドイツ軍の反撃にあう「バルジの戦い」、ベルヒテスガーデンの攻略、ユダヤ人強制収容所、そして終戦間際のヒトラーの山岳の隠れ家「イーグルズ・ネスト」における終戦までの模様が描かれている。

 ストーリーについては、ほぼ史実の通りなので細かくは書かないが、それぞれのエピソードが、個々の登場人物をきちんと描きつつも、情感を排し、淡々と現実を描くというスタンスで作られている。

 戦闘シーンや訓練シーンなど、細部まで再現することを目指して作られており、2話のパラシュート降下シーンや7話の砲撃シーンなど見所も多い。また、戦場で使い物にならない上官に叛旗を翻す場面や、衛生兵を描いた1話があるなど、軍の内部での様々な力関係や役割ごとにエピソードが紹介されており、戦闘だけでなく、戦場で変わっていく力関係や信頼関係が巧みに描かれているのもストーリーに引き込まれるところ。激戦の連続であったE中隊は、犠牲者もひときわ多かったというが、皮肉交じりにそれぞれの兵士が粛々と作戦を進めつつ、その死までも淡々と描写されていく様が、戦闘の悲惨さをより一層際立てている。


■ 画質は良好。DTSフルレート収録の音声は迫力満点

 映像は、フィルムを英CINESITEによりハイビジョン化され、TV番組用とはいっても、画質は総じて高クオリティだ。ときおり暗部ノイズが目立つシーンもあるが、デジタル化によりショットごとに細部の調整も可能になったとのことで、画質的には厳しいと思われる夜明けや室内のシーンでも大きな破綻はなく、映像に没頭できる。ビットレートは7.2Mbps~8.66Mbpsと総じて高い。

 メイキングで「1940年代のカメラで1940年代を撮っているように色彩を抑え、現実感を出した」と語られるとおりに、ややくぐもった色彩の映像が、本編の余韻を一層深いものにしている。高画質DVDといえば「くっきり」とした映像が好まれる昨今であるが、本作の場合はこうした画質に対する明確な意図を持ったアプローチが功を奏していると言えると思う。

 また、2話のノルマンディ降下における圧倒的なパラシュート降下シーンでCGが大々的に導入していることが、メイキングで詳しく解説されているのだが、メイキングを見るまで、それらを全く違和感なく見ていたため改めて驚いた。逆に、映像で気になったのは、終盤9話目の強制収容所と10話目の山荘のシーンにおいて、合成が顕著にわかってしまうこと。特に山荘のシーンは、戦時の緊張感の緩んでいることとあいまって、余計に画面の細部が気になってしまうのでやや残念だ。

 音声は英語がドルビーデジタル5.1ch(448kbps)と、DTS(1,536kbps)。日本語がドルビーデジタル5.1ch(448kbps)で、DTSで視聴した際の音声は、映像に増してすばらしく、戦闘シーンや降下シーンなどでの音響は圧倒的。全編を通して音声のクオリティは高いが、特に、7話の砲撃を受けるシーンの音声はすばらしい。

 敵に包囲されたバストーニュの雪の降り積もる林の中。防寒服や食料などありとあらゆるものが不足し、前線を守るというE中隊でも最大の被害を出したシーンだが、ありとあらゆる方向から木がきしみ地鳴りが起きる様が再現されており、兵士たちが追い詰められていく感触が音響だけでも伝わってくる。フルレートのDTSで収録されているので、ぜひDTSで楽しみたいところ。


■ 兵器データベースやドキュメンタリーなどなど特典も充実

 特典ディスクには、メイキングや資料データベースのほか、「The Men of Easy Company」と題したドキュメンタリーが収録されている。戦争を生き抜いたE中隊の面々が当時の状況を語るというもので、さまざまな戦闘中の苦労や、そうした状況下でも楽しもうとしていたエピソードが語られる。

 例えば、ライフ誌に掲載されたパラシュート部隊の記事を読んでエリート部隊に憧れた、というエピソードなど、当時の若者気質をにじませる内容でとても興味深い。また、一度視聴したあとだと、「“あのシーンに出ていた若者”の現在」が確認できるし、実際のシーンと符合して当時の模様が語られると、なんともいえぬ説得力がある。登場人物の多くは亡くなっているが、実際に登場する語り手の印象は本編に登場する俳優の印象に非常に近かったのが驚きだ。また、本編ではあえてカットされていた登場人物たちの思いが吐露されるところも胸を打つ。いずれもE中隊にいたことを本当に誇りに思っていたことがよくわかる。

 メイキングも充実しており、さまざまな制作時エピソードなどが語られている。4週間かけて設営された雪のセットの話や、俳優たちが実際に受けた訓練の模様、パラシュート降下シーンのCG利用などについて解説が行なわれる。

 また、本編を離れても楽しめるのが資料データベース。特に兵器関連のデータベースの出来がよく、例えば「M1919マシンガン」の項目を開くと「キャリバー30とも呼ばれる30口径の軽機関銃……」といったテキストの説明と写真が表示されるほか、登場シーンを見ることができる。15~20秒程度の短い映像ながら、実際の使用シーンとつき合わせて見ることができるのは資料的にも面白い。もう少し収録数を増やしてもらえると完璧だったのだが、十分楽しむことができる。

 ちょっと気になるのがボックスセットの構成。ボックス I/IIともにデジパック仕様で、ボックス IIには2巻を収録できる専用の収納ボックスが付属する。それはいいのだが、ボックス Iにも1巻用の収納ボックスが付属しており、ボックス II付属の収納ボックスを利用すると1巻用の収納ボックスの使い道がなくなってしまう。このあたりもう少し考えていただきたかったところではある。

ボックス Iに付属する収納BOX ボックス Iのパッケージ ボックス IIのパッケージ
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■ 高クオリティのドキュメント。在庫があれば買い

 本編では、「バンド・オブ・ブラザース」を「男たちの絆」とベタに訳しているが、ドライに描かれた戦争長編として、とてもよくできている。残酷なシーンも頻出するが、戦争映画ファンを超えて様々な人に受け入れられる作品と感じた。

 スピルバーグもインタビューで、E中退の元兵士たちと話して印象に残ったこととして、「高い理想のために戦っていたわけではないということ。世界を救おうとしたのではなく、戦友のために戦ったのです」と述べている。実際のフィルムでも、政治には翻弄されつつも、政治的な物語とは別の次元の個人の物語として描かれており、ストーリー的にも抵抗なく入っていくことができた。

 画質、音質とも高クオリティで、2万円近い金額を出したとしても十分満足できる作品だ。ボックス Iで257分、ボックス IIで383分という本編の長さは、一気に見るにはややつらいが、それでも一度見出すと止められず、ボックス1を一度見ているにもかかわらず、ボックス II購入時に再度最初から2日間かけて見直してしまった。

 なお、ボックスセットは初回限定生産のため、既に品薄傾向が顕著だ。ボックス Iは入手困難となっているが、12月下旬に都内のショップを覗いたところ、ターミナル駅以外の小売店などでは幾つか確認することができた。オークションサイトなどでは、定価を超えた価格での取引が行なわれているようだが、できれば、必要としている人にきちんと届いて欲しいと思う。

●このDVDについて
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総投票数1,809票
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23%
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9%

□アミューズピクチャーズのホームページ
http://www.amuse-pictures.com/
□製品情報
http://www.amuse-pictures.com/bob/index.html
□WOWOWのバンド・オブ・ブラザース公式ホームページ
http://www.wowow.co.jp/bob/
□バンド・オブ・ブラザースDVDのページ
http://www.bandofbrothers.ne.jp/
□関連記事
【8月12日】アミューズ、DVD「バンド・オブ・ブラザース」を11月22日より発売
―DVD-BOX仕様で2回リリース、ボックス IIは12月20日発売
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20020812/amuse.htm

(2003年1月14日)

[AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]



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