■ 手軽に使えるUSB 2.0モデル パソコンでのTVキャプチャが一般的になってまだ2、3年のことだと思うが、その間にもいろいろな製品の波があった。初期の頃は、PCIタイプとUSBタイプが均衡を保っていたものだが、カノープスの「MTV1000」出現以降、PCIタイプは高画質をウリにすることで、TVキャプチャの主流となっていった。 一方でUSBタイプは、セッティングの手軽さは十分に認知されていたものの、転送速度がネックとなり、画質に限界があるということで一時は下火になった。しかし2002年秋ぐらいからUSB 2.0に対応した製品が出始め、転送レートもPCIタイプと遜色ないということで、再び注目されるようになってきている。 そんな中、以前からキャプチャ製品に注力しているアイ・オー・データから、USB 2.0対応の外付けTVキャプチャ製品が登場した。「GV-M2TV/USB2」(以降M2TV)は、USB 2.0による高ビットレート対応がウリだが、USB 1.1に接続してもそれなりに動いてしまうという柔軟性を持った製品だ。一般にマシン側にも高スペックが要求されるUSB 2.0キャプチャ製品の中では、動作範囲の広い製品と言えるだろう。 ソフトウェアの面でも従来モデルから大きな改良が図られたというこの新モデル、さっそくテストしてみよう。
■デザインはかなりいい まず製品の外観から見てみよう。M2TVの本体は、白を基調にしたスマートさが目を引く。同社の旧モデル「USB-MPG2TV」などは、まあコストパフォーマンスはいいんだろうけど形がなぁ、というデザインであったのに対し、M2TVはかなりカッコいい。こういう形のインテリジェントビルとかどっかにありそうな感じである。 設置は縦置きのみで、足となっているアクリル部分は本体から外れないため、横向きにはできない。左右両面に吸気口、そして右側面にはファンがあり、電源投入と同時に回り出す。ファンノイズが割と高音なので、机の上などに置いておくと気になるが、テレビやパソコンのそばなどちょっと離れたところに設置すれば問題ないだろう。
前面のなめらかに窪んだところに汎用のアナログAV入力端子がある。一方、常時結線しておく端子類はすべて背面だ。上からアナログAV出力、USB端子、電源、RFコネクタとなっている。このAV出力があるところが、M2TVの大きなのポイントと言えるだろう。 電源はバスパワーではなく別に取るわけだが、PCの電源と連動して自動的に本体電源のON/OFFが行なわれる。繋ぎっぱなしのまま、特に意識することなく使えるようになっているのは便利だ。
本体前面には赤外線受光部があり、付属のリモコンでの操作も可能だ。このリモコンは、mAgicTV/RCという従来製品用アップグレードパッケージとして販売されているもの、あるいはPCIモデルの最上位機種「GV-MPG3TV/PCI」に付属のものと同じである。 なお同じUSB 2.0対応でも他社製品との違いが気になる人は、アイ・オーのサイトにガッツンと比較表が出ているので、チェックしてみると面白いだろう。
■ 改善点の多いソフトウェア アイ・オーのTVキャプチャ製品には、以前からオリジナルの「mAgicTV」というソフトウェアが付属していたが、M2TVでは新たに「mAgicTV4」という新バージョンが付属する。 「mAgicTV4」は、大きく分けて3つのアプリケーションから成り立っている。テレビ画面を表示する「mAgicTV」、ADAMS EPG+から取得した番組表を表示する「mAgicガイド」、ハードウェアの設定や予約録画を実行させる常駐型の「mAgicマネージャ」だ。 mAgicTVが、テレビ視聴のメインとなるアプリケーション。右側には放送局名と、現在放送中の番組名が表示される。この番組名はネットでの番組情報サービス「ADAMS EPG+」から取得したもので、放送電波内に含まれる「ADAMS EPG」には対応していない。
なおチャンネルを変えるには、この右側の放送局表示のうち、チャンネル番号の部分をクリックする。広いエリアを使っている、放送局名や番組名のところをクリックしてもチャンネルが変わらない。と思ったら、放送局名や番組名のところは、ダブルクリックで操作するようになっていて、なぜかチャンネル番号部分と操作方法が異なっている。 また大都市近郊ではかなりのチャンネルが受信できるため、チャンネルをスクロールする必要が出てくる。このとき番組表の下にある上下ボタンで、1つずつしか表示がスクロールできない。一応、デフォルトでマウスのホイールに割り当てられているが、もう一歩工夫がほしいところ。わかりやすいユーザーインターフェイスを目指したということだが、わかりやすくはあっても使いやすくはないというのが痛し痒しである。 またmAgicTVの特徴(M2TVの特徴とも言えるが)として、起動やチャンネル切り換えの速さは特筆すべきだろう。USBのTVキャプチャ機器では、レスポンスの悪さがネックになってきたわけだが、mAgicTVが起動してから画面が出るまで約3秒、チャンネル切り換えは1秒以内と、なかなか快適。 画質の設定は、プリセットとして「高画質」、「標準画質」、「長時間」の3つがあるが、それぞれ画面サイズやビットレート、CBR/VBR、オーディオサンプリングレートが選べるようになっている。ビットレートの可変範囲は大きく、720×480ドットでは2~15Mbps(VBR/CBR)となっている。参考までにデフォルト値を含めたサンプルをご覧いただこう。 肝心の画質だが、3次元Y/C分離やゴーストクリアといった補正機能がないことから、高ビットレートの割にはあまり画質が上がってこないというのが率直な感想だ。実際問題として、テレビ放送はアナログ波の伝送であるため、想像以上のノイズにさらされている。したがって高いビットレートはもっぱらこのノイズの再現に食われてしまい、画質自体が向上するという印象があまりないのが残念なところ。 8Mbpsを超える設定で高画質を楽しむのであれば、チューナに入る前のアナログ特性をもっと稼ぐ必要を感じた。また色の付いた文字のにじみは比較的目立つほうだ。やはり3次元Y/C分離がないのは痛い。
M2TVはビデオ出力を持っているが、ここは常時出力するわけではない。ライブ、タイムシフト、プレイ(録画したものを再生する)のときに、パソコンで見るかビデオ出力で見るかを選択するのである。両方に出力するモードがグレーアウトしているが、これは将来的にできるようになるのか、あるいは別ハードウェア用として存在するのかは謎である。
使い勝手から考えると、上記3モードに分かれていたからといって、特に便利だという印象はあまりない。本当ならばパソコン画面もビデオ出力も常時両方出た方が便利だろう。もしハードウェア的な制限でそれが出来ないのであれば、3つのモードに分けて決め打ちされるよりも、テンポラリ的に出力を切り換えられた方が便利。現状では出力を切り換えるのに、mAgicTVの設定を変えた後アプリケーションを再起動しなければならない。いくら起動が速いとはいえ、面倒だ。
■ 予約システムは平均的 続いて予約システムを見てみよう。「mAgicガイド」は、番組予約のフロントエンドとなるアプリケーション。番組表は、インターネットを通じてダウンロードする「ADAMS EPG+」を使用する。予約は、その番組をダブルクリックすることでウィザードが起動するという仕掛けだ。画質や定期録画設定など、一通りの機能は問題なく揃っている。
「mAgicガイド」で面白いのは、「キーワード登録」機能だ。ここにキーワードを登録しておくと、設定したメールアドレス宛にキーワードに引っかかった番組情報を送信してくれる。試しにキーワードを登録したところ、以下のようなメールが届いた。
設定できるキーワードは3つまでと、ちょっと少ない。送信タイミングは1日1回定期的に「ADAMS EPG+」にアクセスした後となる。これで外出先でも気になる番組をチェックできるというわけだ。ただこのメールがダイレクトに予約システムと連動するわけではない。外出先からメールによる予約は、Rec-Onでも採用されていた「reserMail」で別途行なう必要がある。 そのほか予約には、iEPGも利用可能だ。デスクトップには「インターネットTVガイド」へのショートカットが作られる。
ただ運用上で問題となるのは、連続した予約録画の間隔を3分以上空けないと、予約できない点。この制限自体はハードウェアの動作としては妥当だとは思うが、予約システムとしては、前の番組の録画を途中で切り上げて次の番組の録画体制に入るなどの処理を行なってくれてもよかっただろう。というのも番組表による予約では、番組時間枠いっぱいいっぱいの時間が予約されるが、実際には番組自体は5分ほど前に終了してしまっているケースが多い。要はそういった番組表と実際のギャップをうまいことやってちょ、ということなのである。 予約録画のスタート時にはmAgicTVが起動し、録画が実行される。その間はTIMEやPLAYといったボタンがグレーアウトしてしまうので、録画中に別の録画済み番組を見るといったことはできないのは残念だ。
■ 総論 GV-M2TV/USB2は、録画だけを考えればパソコン初心者を対象とした製品という印象。インストールや設定が簡単で、動作も速く、安定している。パソコンでテレビ録画というものに馴染みのないユーザーには、理解しやすい製品だろう。 バンドルソフトも豊富で、Ulead製品がぞろぞろ付いてくる。「PhotoImpact7SE」、「DVD MovieWriterSE」、「MediaStudio Pro6.5」だ。M2TVでは番組の静止画キャプチャもできるので、画面に落書きができるPhotoImpactが付属しているのだろう。その他にDVD-RAMへの録画対応として、「DVD-MovieAlbum3」が付属する。 細かいことを言わずに、手っ取り早く使えるTVキャプチャボックスとして割り切れば、買いやすい製品だ。実売では3万円台半ばで、本体デザインも良い。小型キューブPCと組み合わせて使うなどすれば、綺麗にまとまることだろう。 ただ今どきのキャプチャ製品にしては、予約録画実行中に録画済みの番組が見られなかったり、ビデオ出力に制限があったりするところが気になる。PCモニタとテレビモニタをどう明確に位置付けていくのか、せっかくビデオ出力があるのに、そのあたりがちょっと錬られていない感じがする。 他社製品がそれなりにガッと来る特徴があるのに比べれば、若干没個性的か? という印象は受けるのが惜しいところ。優等生的な製品なだけに、次回作ではこの基本性能のままもう一ひねりを期待したい。
□アイ・オーのホームページ (2003年1月29日)
[Reported by 小寺信良]
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