■ DIGITAL PIONEERで「Dioneer」なんです 昨今のMP3/WMA対応CDプレーヤーは、サポートするフォーマットも増え、本体も普通のポータブルCDプレーヤー並みに薄型、軽量化してる。それに伴い、目を引く新機能を搭載した新商品も出にくくなっている。そんな最中、久々に衝撃の新製品が登場!! 編集部でも大いに話題となった。
そのプレーヤーの名は「D・COOL」。CD-R/RWに対応し、CD-DAに加え、MP3とWMAの再生が可能。薄型のボディやスッキリしたデザインも目を引くし、米SRS Labsが開発した音質改善技術「WOW」回路を搭載するという特徴もある。しかし、最大のインパクトはメーカー名の「Dioneer(ダイオニア)」。えっ? と、思わず某日本の有名AVメーカーと聞き間違えそうな名前である。 「Dioneer」は韓国のメーカー。以前から、マルチコーデックCDプレーヤーやシリコンオーディオ、デジタルビデオ機器、データストレージなどを開発、製造していたという。そして、丸紅インフォテック株式会社が日本での総輸入販売代理店として独占契約。今回の「D・COOL」が日本初お目見えの製品となる。
社名の由来(?)は「DIGITAL PIONEER」の略で「Dioneer」とのこと。正式な会社設立は2001年7月で、説明されると「デジタル業界のパイオニア的存在を目指す」という気概が感じられなくもない。現に同社は日本市場参入にあたり、日本語のWebサイトも公開しており、サポート体制も整えている。その心意気を受け、とりあえず購入してみた。価格は秋葉原の量販店で16,799円(税抜き)。スペックを考えるとお手頃な値段だろう。
■ 見た目は良いが、触ってみると……
本体はチタン製を思わせるカラーリングだが、残念ながら上蓋以外の素材はプラスティック。塗装は薄めで、触ってみると「すぐに角から剥げてきて、地肌が見えそうだなぁ」と心配になる。案の定、使い始めて数日しか経っていないのだが、頻繁に使うリモコンのクリップ部分が早くも剥げてきた。外見的な高級感はあるので、もう少し質感も向上して欲しいところ。
本体には液晶ディスプレイはなく、中央にミラー素材を使用した円形の出っ張りがある。七色に光るホログラム仕様のロゴマークと合わせて、とても綺麗なデザインなのだが、いかんせん指紋や汚れがつきやすい。常に光を反射しており、本体を手に持った時にどうしても触れてしまう部分なので、妙に汚れが気になってしまった。
しかし、特筆すべきは16.5mmという薄さ。16mmという松下の「SL-CT800」には及ばないが、iRiverの「iMP-350」や「iMP-400」の16.7mmより0.2mm薄くなっている。この薄さなら鞄のちょっとした隙間にも入るし、頑張ればコートのポケットにも入るだろう。外形寸法は134×143×16.5mm(幅×奥行き×高さ)。なお、重量も本体のみで172gと軽く、気軽に持ち歩ける。 充電池はGPブランドのガム型ニッケル水素電池(1450mAh)を2個同梱する。連続再生時間は公称で最大10時間だが、使ってみたところ8時間弱で電池が空になった。使い方にもよると思うが、30時間を越える連続再生時間を持つ製品が出ていることを考えると、スタミナ不足の感は拭えない。ただ、上着のポケットの中に入れたまま充電を忘れてしまうサイズではないので、個人的にはあまり気にならなかった。
本体には再生、早送り、ボリュームコントロールなどの基本的な操作ボタンを用意。また、ステレオミニのラインアウトも装備する。本体の動作音はディスクの読み込み時に多少の音がするが、再生中は非常に静か。本体に耳を寄せれば、かすかに音が聞こえる程度だ。
■ 微妙な違和感を感じるリモコン 次に目を引くのは大きなリモコン。スティックタイプのリモコンと、四角いリモコン2つを合わせたほどのサイズで、一見するとこれだけでMP3プレーヤーとして音楽再生ができてしまうのではと思える。 サイズが大きいだけあり、ELバックライトを搭載した液晶は128×64ドット。4ライン表示が可能だ。この特徴を生かすべく、英語に加え、漢字を含む日本語、ハングル語、中国語などの表示も可能。ID3タグのバージョン1/2.3.0をサポートするほか、後述するがMP3ファイルの歌詞表示にも対応している。 タイトル名のスクロール速度もカスタマイズできるなど、マニアックな要素も持ってる。液晶の表示という点に関しては何の問題もなく、情報量の多い4ライン表示はとても快適だ。しかし、操作性には若干の疑問を感じた。
上記のように右のジョグのプッシュには「決定」という意味があるのだが、CD内部にアクセスし、実際にフォルダ表示の画面になると、プッシュの持つ機能が突然ブックマーク機能に切り替わってしまう。つまり、「ナビゲーション」→「ディレクトリモード」とプッシュボタンを押し、フォルダが表示され、そのままフォルダの中に移動しようと続けてプッシュボタンを押すと、そのフォルダ全体をブックマークしたことになってしまうのだ。 フォルダの内部を表示するためには、下のジョグで横に移動する必要がある。もちろん、下のジョグの横移動を使って「ナビゲーション」→「ディレクトリモード」→「目的のフォルダ内部」と移動することもできるのだが、フォルダ内の音楽ファイルがズラッと表示されても、今度は右のジョグを使って上下移動しなければ目的のファイルに到達できない。 つまり、ルートディレクトリ以外に収録した音楽ファイルにアクセスするためには、必ず2つのジョグを操作しなければならない。さらに困ったことに、目的の音楽を選択しても、独立した「再生ボタン」を押さない限り再生されない。以上のような理由で、ナビゲーションモードを片手で操作するのはかなり大変で、基本的にリモコンを両手で操作しなくてはならない。
また、極めて個人的な意見として、リモコンのクリップの向きがシックリこない。クリップでリモコンを服に付ける場合、ヘッドフォンが上になるように縦につけると、操作ボタンが左手方向に偏ってしまう。デザイン的には胸ポケットに横向きに付けても良いのだが、コードも横に曲がってしまい邪魔になる。クリップを反対向きにするか、45度傾けて欲しかった。
■ SRS「WOW」の効果は!? 調整も楽しめる音質 いよいよ音質のチェックだ。音質面の最大の特徴は、SRSの「WOW」を搭載したこと。WOWとは、米SRS Labsが開発した音質改善技術のことで、ステレオ信号で自然な立体音場を再現する「SRS技術」と、パイプオルガンの重低音再生技法を電気的に応用した低音再生技術「TruBass」、音像を縦方向に移動させ楽器や声の輪郭を明確にする「FOCUS」技術の3つから構成される。 主に臨場感の向上や、音の定位の明瞭化、低音の増強などが期待できる。よって、低音の再生が難しいポータブルオーディオ機器、その中でも特に音が痩せがちなMP3/WMAなどの圧縮音楽フォーマットには有効な技術といえる。Windows Media Playerにも搭載されているので、ご存知の方も多いだろう。
まず、「SRS」と「TruBass」は工場出荷時設定でオンになっている。素の音が知りたいので、どちらのエフェクトも外して……と思ったのだが、ここで一瞬詰まった。エフェクトの切り替えボタンを押しても「SRS + TruBass」→「SRSのみ」→「TruBassのみ」→「SRS + TruBass」となるだけで、両方を外すことができない。結局、ユーザー設定の「イコライジングモード」に移行し、すべてのバンドをフラットにすることで「素の音」とした。 MP3とWMAに加え、普通のCDも試聴したが、どれも共通した印象で「素直な音だな」という感想を持った。ノイズがほとんど無いのも嬉しい。しかし、音抜けは今ひとつでこもりがち。分解能もやや足りず、細かい音の表現は今一歩だ。音場というか、全体的にスケールも小さく感じられる。 「SRS」と「TruBass」をオンにすると、途端に音抜けが良くなり、高音の伸びが感じられる。スケールも広がり「気持ち良く音楽を聞けるなぁ」という感じ。音像の頭内定位が嫌な人にはかなり効果的だろう。だが、分解能は変わらず、高い音が強調されるだけで、細かい音はかき消されてしまう。 一度エフェクトをオンにした音を聞いてしまうと、素の音質はどうしても痩せて、こもりがちに聞こえてしまう。だが、誇張も無く、素直な音なのでエフェクトを外した方が良いと思う人もいるだろう。前述のようにイコライザも搭載しているので、ユーザーが音質をカスタマイズすることも可能だ。 なお、「SRS」と「TruBass」も、各10段階の調整ができるのだが、調子に乗って数値を上げていくと、音が広がりすぎてわけがわからなくなる。特に「SRS」は効かせすぎると高音から音が割れる傾向があるので注意。女性ボーカルのサ行や、JAZZ、クラシックのシンバルなどに顕著だ。使用するイヤフォンや聞く音楽にもよるだろうが、イヤフォンを使用する場合、SRSの効果はせいぜい3か4までが実用の限度だろう。
また、音質とは関係ないのだが、MP3ファイルの歌詞表示に対応している点も面白い。付属のリモコンは4ライン表示で、漢字も問題なく表示できるため、カラオケの練習などに最適だ。ただし、半角スペースは文字化けしてしまうので、歌詞ファイルを作成する際は注意が必要だ
なお、歌詞データはMP3ファイルに内包するタイプのみサポートし、テキストファイルや拡張子「lrc」、「kra」などの外部ファイルの読み込みはできない。歌詞入りMP3ファイルの作成方法は、同社のサポートページに詳しく紹介されている。また、製品の言語設定が工場出荷時に韓国語になっているため、日本語で歌詞を表示させるためには、システムの言語を日本語に設定する必要がある。
■ まとめ メーカー名から受ける印象で「いったいどんな製品なんだ!?」と身構えてしまったが、実際に使ってみると良く出来たプレーヤーだった。細かい点を見ていけば不満なところもあるが、価格を考えると薄さ、デザイン、カスタマイズ性、機能の面でほとんど不満は感じない。MP3/WMA対応ポータブルCDプレーヤー購入の際は、選択肢の1つに加えても面白いだろう。 要望としては、このデザインの方向を追求しつつ、もう少し使う素材を高級にした上位機種をラインナップに加えてほしい。また、ファームウェアのバージョンアップにも対応しているので、音質や操作性などは今後のブラッシュアップにも期待したい。説明書ではファームのアップデートでAACやMP3PROにも対応予定としている。 なお、韓国の同社サイトでは、すでに下位機種と上位機種と思われる製品もラインナップに加わっている。同社が今後日本で発売する次の製品も楽しみだ。
□丸紅インフォテックのホームページ
(2003年1月31日)
[ AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]
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