【バックナンバーインデックス】



[週刊] デバイス・バイキング
フランス製のDivX対応ポータブルHDDプレーヤー
クエスト「Jukebox Multimedia 20」
発売日:1月上旬
標準価格:オープンプライス
実売価格:59,800円前後

■ 動画再生対応のポータブルHDDプレーヤー

 アップルのiPodやクリエイティブのZEN、東芝のGIGABEATなど、HDDプレーヤー市場も大手の参入が相次ぎ、ポータブルオーディオデバイス選択時の有力な1ジャンルとなっている。そんな市場の中でも異色の存在と言えるのが、仏ARCHOSの「Jukebox Multimedia 20」だ。

1.5型液晶を搭載する

 20GB容量のHDDを搭載したポータブルプレーヤーだが、特徴的なのは、1.5型(237×234ピクセル)の液晶カラーディスプレイを搭載し、HDDに蓄積したオーディオデータのほか、動画や静止画の視聴が可能となっていること。

 対応する動画形式はMPEG-4 Simple ProfileおよびMPEG-4互換のDivX(CIF形式:352×288ピクセル/25fps)。静止画はJPEGとBMPの表示が可能で、音声は、MP3の再生に対応するほか、内蔵マイクによるMP3形式での録音もできるなど、オーディオ機能に特化した他のプレーヤーにない特徴を備えている。

 製品は、1月より発売されており、秋葉原の店頭価格は約6万円前後。今回は、日本代理店であるクエストから製品をお借りした。


■ 細かいところで仕上げの悪さが目立つ

 パッケージには、本体のほか、ヘッドフォン、ビデオ出力ケーブル、ACアダプタ、USBケーブル、ドライバや「MUSICMATCH Jukebox」が入ったCD-ROMが同梱される。大きさは持った感じではZENと同じぐらい。本体サイズは113×79×30mm(幅×奥行き×高さ)、重量は290g。HDDポータブルプレーヤーとしてはやや重めだが、大きさ的には手になじむ感じで悪くない。

 本体はプラスチック外装で4隅をラバーのクッションで覆ったデザイン。遠目に見るとなかなか高級感があるが、間近で見るとバリや、スキ間が目立つなど、細かい部分の仕上げはあまりよくない。また、本体の操作ボタンも黒いプラスチックで、質感が高いとはいえない。

同梱品 iPodとの比較 Jukebox Multimedia 20のパッケージ

 入出力端子は、本体左側にAV出力端子とライン入力を、右側にUSB端子を装備。また、本体下部には拡張モジュール用の専用端子が用意されている。なお、拡張モジュールはデジタルカメラモジュールやCFカードモジュールなどが用意されている。

液晶下のファンクションキーと十字キー、再生ボタンから構成されるシンプルなインターフェイス 左側面にライン入力と、AV出力を装備 右側面はUSB 1.1端子がある
本体下部のラバーカバーを外すと、拡張スロットが利用できる 背面


■ 操作性は良好。液晶表示には不安が……

液晶下部に表示されている[Setup]、[File]といった機能は、液晶部の下に備えられたファンクションボタンで操作できる

 操作ボタンは、F1/F2/F3の3つのファンクションキーと十字キー、十字キー中央の再生/停止ボタンと電源ON、OFFボタンが前面に配置されている。

 電源ONボタンを長押しして電源を入れると、約5~6秒程度で起動する。電源を切る時もOFFボタンの長押しで行なう。ホールドボタンなどは特に用意されていない。本体操作は、十字キーと再生/停止ボタン、ファンクションキーを組み合わせて行なう。ファンクションキーは液晶下部に表示される「Setup」、[File]といった機能が割り当てられるなど、初めて使う人でもわかりやすいインターフェイスとなっている。

 [Setup]メニューからは、液晶の輝度やバックライトの強弱の設定が行なえるほか、音質設定や、ビデオ出力/内蔵液晶出力の切り替えなど様々な設定が可能。

 電源を投入して真っ先に気になったのが、液晶ディスプレイの表示で滲みやちらつきが目立つこと。操作には影響は無いのだが、[Setup]といった操作画面の文字や、ディレクトリ表示時のファイル名などで、文字の端が滲んでとても見にくい。この表示品質できちんとした動画再生ができるのだろうか? と若干不安になった。


■ 転送速度はまずまず。ファイル名の日本語表示は非対応

ファイル名の日本語表示には対応しない

 Jukebox Multimedia 20は、USBストレージクラスに対応しており、Windows Me/2000/XPでは、PCとUSB端子で接続すると自動的にUSBストレージとして認識される。Windows 98 SE用とMac OS 8.6/9.x用のドライバも用意されている。データをコピーすれば、Jukeboxへの転送が行なえる。

 Windows XP上で626MBのMP3ファイルをドラッグ&ドロップでコピーした際の転送時間は11分20秒。インターフェイスがUSB 1.1ということを考えれば、妥当なところだろう。

 なお、サブフォルダを作成することもできるが、フォルダ名やファイル名の日本語表示には対応しない。また、USBストレージとしてPCと接続した際には、切断時に、一度本体の電源を落とす必要がある。

 付属のMUSICMATCH Jukebox 6を用いてのMP3データ転送や、プレイリスト転送も行なえる。プレイリストは本体でも作成できるが、PCで作業を行なったほうが効率的だろう。なお、MUSICMATCHは、自動アップデートでVer.7.5にすることができる。その際デバイスの認識用のプラグインが見つからなくなってしまうが、MUSICMATCHのサイトで(型番は違うが)「Archos 6000 Jukebox」を選択することで、本機でも利用できた。なお、MUSICMATCH Jukeboxを含む付属ソフトウェアは日本版ではなく、選択できる言語は、英語またはフランス語などの5カ国語となっている。


■ ポータブルプレーヤーとしての実力は?

・動画機能

ビデオの選択画面

 対応する動画形式はMPEG-4 Simple ProfileおよびMPEG-4互換のDivX(CIF形式:352×288ピクセル/25fps)。まず、352×288/320×240/320×160ドットなど様々な解像度のDivX 5.0.2コーデックの動画を再生してみたが、正しいアスペクト比で再生され、フレーム落ちも感じられない。設定画面などで気になった滲みは再生時には見られれず、画質について不満を感じることはなかった。ストーリーを追いながら映画を見るぐらいの用途であれば、十分こなしてくれそうだ。

 液晶の輝度はあまり高くないが、オフィスの蛍光灯下ぐらいの明るさであれば十分視聴可能だ。ただし画面が小さいので、映画の字幕を読むにはかなり困難。長時間の映画視聴などでは、目が疲れてしまう。2.5型ぐらいであれば、字幕まで確認できると思うのだが、この辺は製造コストや駆動時間などとのトレードオフなのだろう。

 操作時に一時停止はできるが、停止ができないなと思っていたら、電源OFFボタンが再生停止とのこと。OFFボタンを押すことでフォルダ画面に戻ることができた。また、[Setup]の[Play Mode]で、[Startup Resume On]に設定しておけば、一度電源を切っても再投入後に、一時停止した所から再生が再開される。

 基本的にJukebox Multimedia用の動画ファイルは、付属のソフト「MPEG4 Translator」を行なって変換する。「MPEG4 Translator」は実際にエンコードを行なう「VirtualDub」と、DivXコーデックを利用して、Jukebox 20専用ファイルを作成するフロントエンド的なソフト。付属のCD-ROMで全てのソフトをインストールし、VirtualDubのセットアップ画面でIntall handlerを選択、レジストリ登録を行なった後、MPEG4 TranslatorでVirtualDubの場所を指定するとインストールが完了する。

 その後は、AVIファイルを選択し、出力先を決定すると、アスペクト比を保ちながら自動的にJukebox 20用の最大解像度に設定し、エンコードが行なわれる。本体のスペック的には、MPEG-4 Simple Profileに準拠した動画再生が可能とのことだが、バンドルされるソフトを使う限りでは、変換できるのはDivXのみとなる。

MPEG4 Translator VirtualDubのエンコードステータス VirtualDubのエンコード画面

 なお、VirtualDubは、最新版がVirualDubのサイトで公開されており、そちらの利用も可能。また、DivXはバンドル版が旧バージョンのVer.5.0.2となっている。最新版のVer.5.0.3にアップデートし、同じソースを使ってMPEG4 TranslatorからVer.5.0.3のデータを作成、テストしたが5.0.2同様に再生できた。なお、別途用意した720×480ドットのDivXファイルは「Image size too big」とのメッセージが出て再生できなかった。また、Sigma DesignのRMP4を使って作成した352×288ドットのビデオも、「Cannot Play video data!」との表示が出て、再生できなかった。

 VirtualDubの設定方法などについて付属の日本語マニュアルでは記載が無かったり、MPEGファイルなどはあらかじめAVI化しておく必要があるなど、Jukebox Multimedia用の動画ファイルの作成は結構手間がかかる。もう少し簡単で、柔軟な変換手段を用意して欲しかった。

・オーディオプレーヤー機能

オーディオ再生時

 オーディオプレーヤーとしては、MP3の再生に対応。ちょうどHDDが20GBとiPodの上位モデルや初代ZENと同じ容量のため、「動画も再生できるオーディオプレーヤー」としての実力も気になるところ。

 まず、操作していて気になったのは、曲送り/戻り時のレスポンスの悪さ。十字キーの左右ボタンで曲送り/戻りができるのだが、曲をとばそうとするとそのたびにHDDにアクセスし、1~2秒後に曲送りが行なわれる。他のHDDプレーヤーと比較してもかなり遅いので、何曲も続けて飛ばしたい時はストレスを感じる。

 付属のヘッドフォンは、最近は余り見かけなくなったネックバンド式のもの。音質はあまり良くないので、オーディオプレーヤーとしての利用がメインとなるのであればかなりつらい。


付属のヘッドフォン

 特に中域から低域の薄さは顕著で、ソニーのMDプレーヤー「MZ-E10」の付属イヤフォンや、SennheiserのMX500などと比較してみたが、どちらからも大きく水をあけられている。ポータブルプレーヤーの付属品の最低ランクよりは1、2ランク上のヘッドフォンという印象。Jukebox 20を主にオーディオプレーヤーとして利用するのであれば自分の好みに合ったものに変更したほうがいいだろう。

 同じヘッドフォンを利用して本体をiPodと比較してみたが、音の分離がよく素直な印象のiPodに比べると、高域の解像感がだいぶ劣るが、低域はかなり良く出ておりコシのある音となっている。コンプをかけたような密度感が低域で強く、ロック系やベースの強いソースであればハマりそうだ。

 また、MP3録音機能も搭載している。ライン入力への信号を録音でき、ステレオ音声に対応。ビットレートは30~160kbps(VBR)。ライン入力はアナログ/デジタル両対応とのことで、録音設定からもアナログ/デジタルが選択できるが、デジタル録音の方法がどこにも記載されていない。CDプレーヤー側の同軸デジタル出力とステレオミニで接続するなど幾つかの方法を試してみたが、デジタル録音できなかった。なお、デジタル/アナログのほか、内蔵マイクによる録音も選択できる。単体でボイスレコーディングができるというのはなかなかポイントが高い。

・静止画表示

 JPEG/BMP画像の再生にも対応している。データフォルダ内のJPEG/BMP画像を液晶に縮小表示できる機能で、最大解像度についての記載は無いが、1,600×1,200ドットのJPEGデータを展開すると3秒程度待たされる。使いやすさを考えるとこのあたりの解像度までで利用したほうがいいだろう。

JPEG/BMPの静止画表示が可能 詳細表示も行なえる

 バッテリ駆動時間は、MP3再生時で約8時間としているが、MP3を約2時間連続再生した際も、4段階ある目盛りは減らなかった。公称値に近いバッテリ駆動ができると思われる。しかし、動画再生時には1時間ほど再生したところで、最初の目盛りが減り、さらに40分ほどで、最後の1目盛りとなっていた。


■ 不満点も多いが、目新しさで勝負

 一通りの機能を使ってみたが、操作性は良好で、あまり戸惑うことなく操作できたのはポイントが高い。しかし、動画を見るにはやはり液晶が小さすぎる。「携帯ビデオプレーヤー」としては力不足と感じる。オーディオプレーヤーとしてもリモコンが無かったり曲送りに時間がかかるなど不満は多いが、シャッフル再生やリピート再生をはじめ、音質設定機能など、一般的な機能は備えているので、それなりに使えそうだ。

 HDD 20GBのiPodの実売価格が59,800円、Zenが44,000円程度ということを考えると、Jukebox Multimediaの6万円という価格も妥当に感じる。オーディオレコーディング機能や、動画再生に付加価値を感じる人であれば、選択肢として面白いと思う。

 インターフェイスがUSB 1.1だったり、ファイルの日本語表示ができないなどのほかにも、細かい作りこみの部分では不満の残るところも多い。しかし、「なんでも一台に詰め込んだ意欲的な製品」で、いろいろいじれる「奥深さ」という意味では、かなり魅力の多い製品だ。目新しい機能と成熟のバランスをどこまで求めるか? ということが購入するポイントになるだろう。

□クエストのホームページ
http://www.qst.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.qst.co.jp/news/release/021106.html
□ARCOHSのホームページ(英文)
http://www.archos.com/
□関連記事
【2002年11月6日】クエスト、液晶ディスプレイ搭載の20GB HDDストレージ
--本体のみでMP3やDivXの再生に対応
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20021106/quest.htm
【1月11日】今秋見つけた新製品(AKIBA)
http://www.watch.impress.co.jp/akiba/hotline/20030111/ni_i_mb.html#jukeboxmm20

(2003年2月7日)

[ AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]


00
00  AV Watchホームページ  00
00


Copyright (c) 2003 Impress Corporation All rights reserved.