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[週刊] デバイス・バイキング
Windows Media 9対応の低価格5.1chシステム
ヤマハ「CTS-20USB」
発売日:2002年11月下旬
標準価格:43,000円
実売価格:33,000円

■ 最近新製品の少ない低価格5.1chシステム

 5.1ch環境黎明期(2~3年ぐらい前?)には各メーカーから発売されていた低価格5.1chシステム。AV Watch創刊からまもない頃の、Electric Zooma!の第2回第3回では6製品の聞き比べをしているし、各メーカーとも結構力を入れていた。

 最近では、ティアックから「PL-S3500」などが出ているが、以前と比べると3万円前後のエントリー向け5.1chシステムの新製品は少なくなったような……。DVDプレーヤーとセットのシステムや5万円超の製品は各社から新製品が発表されているようなので、トレンドはそっちに行ったのかな? などと感じていた。

 そんなときにひょっこり発売されたのがこのヤマハの「CTS-20USB」。以前より「TSS-1」など、低価格5.1chシステムをリリースしている同社だが、本機では、シネマDSPの追加や、USB端子を搭載し、PCからのスピーカーごとの出力設定が可能になるなど、地道に進歩している。


■ 特徴はPCとの連携とシネマDSP

 「CTS-20USB」は、縦長のアンプユニットと5.1chスピーカーのセットで構成されるサラウンドシステム。同時にヤマハは、TSS-1の後継機といえる「TSS-10」を発表しているが、こちらは従来モデルの「TSS-1」にドルビープロロジック IIデコーダを追加し、ゲームの5.1ch再生にフォーカスしたモデル。

 「CTS-20USB」は、「TSS-10」の機能に加え、ヤマハのお家芸ともいえる「シネマDSP」機能を追加。さらにUSB端子を装備し、PCとの接続を可能とした上位モデルとなっている。価格は43,000円で、実売では約33,000円。TSS-10は標準価格35,000円で、実売24,000円程度。USBとシネマDSPに8,000円出せるかというのは微妙なところだが、触って面白そうな機能でいえば当然「CTS-20USB」。

 まずアンプユニットは出力が、サテライト6W×5ch、サブウーファが18Wの合計48W。音声入力は、アナログを1系統、光デジタルを2系統装備。出力はアナログ1系統、光デジタル1系統となっている。また本体前面にヘッドフォンジャックを装備している。

 ドルビーデジタルやDTSに加え、ドルビープロロジック IIデコーダも内蔵。ヘッドフォン用のバーチャルサラウンドシステム「サイレントシアター」機能も搭載している。

アンプユニット 背面。光デジタル入力×2、光デジタル出力×1、USB、アナログ入出力などを搭載する

 サテライトスピーカーは、口径5cmのフルレンジユニットを搭載する密閉型。外形寸法、70×118×95mm(幅×奥行き×高さ)、重量は0.4kgと、小型のスピーカーでフロント/センター/サラウンドともに共通のものが5個同梱される。付属のスピーカーケーブルは、フロント/センター用が3m、サラウンド用が10mとなっている。

 サブウーファは、YST(ヤマハ・アクティブサーボ・テクノロジー)方式を採用し、13cm口径のウーファを搭載する。外形寸法および重量は、220×222×224mm(幅×奥行き×高さ)、3.3kg。

サブウーファ フロント/サテライトスピーカー 電源はACアダプタ

付属のリモコン

 TSS-1にはなかったリモコンも、ボリューム設定や、モード、入力切替などが行なえるシンプルなものが付属する。

 早速セットアップを開始すると、各スピーカーをアンプの専用端子に接続し、DVDやCDプレーヤーなどをデジタル入力に接続するだけなので、5分とかからず完了。セッティングしている時間より、パッケージを開けて取り出している時間のほうが長いくらいだった。



■ DVD視聴にはかなり使えるが、音楽再生にはやや不満

入力系統や信号、DSPモードなどをインジケータで表示する

 まず、DVDプレーヤーと光デジタル接続すると、本体前面の、入力ソースを示す[DIGITAL 1]のLEDが点灯した。入力にあわせて、[USB]、[ANALOG]、[DIGITAL 2]と点灯する仕組みだ。

 モードセレクト用のLEDは、ドルビーデジタル音声を入力すると本体前面の[ドルビーデジタル」マーク横のLEDがオレンジに点灯、DTS音声を入力すると[DTS]が、シネマDSP利用時には[DSP]のLEDがオレンジに点灯する。なお、2chソースの入力時で、ドルビープロロジック II利用時には、「PL/PLII」のLEDが、ムービーモードの場合は赤色に、ミュージックモードでは緑色に点灯する。

・DVDを見てみる

 ということで、早速、DVD「ウインドトーカーズ」で、DTS音声を選択して再生した。フロントスピーカーがサラウンドスピーカーと同サイズということで、当初不安だったが、期待していた以上にしっかりサラウンド感が出る。音もくっきり聞き取れ、飛行機の爆撃シーンでの移動感や、砲撃シーンの音響などはかなりうまく再現されている。テストのつもりで軽く再生しただけだったのだが、最後まで見てしまったほどだ。「これで充分!」ってのが正直なところ。

 ただ、バックグラウンドで音楽が強く流れている場面などでは、ややスピーカーの力不足を感じた。DTSデモディスク7を再生すると、テーマソングをバックに自転車で空を飛ぶ、「E.T.」の有名なシーンでは、オーケストラのボリューム感というか雄大さが足りない印象。上下、左右移動などはうまく再現できるが、音楽再生にはちょっと不満が残る。

前面下方にシネマDSPロゴを配している。

 また、本機の特徴とも言える「シネマDSP」は、「MOVIE」、「GAME」、「LIVE」の3つがビデオ向け、「JAZZ」、「HALL」、「CHURCH」、「4ch STEREO」の4つがオーディオ向けと位置づけられており、計7モードが用意される

 ビデオ系の「MOVIE」、「GAME」、「LIVE」は、その名の通りにソースに合わせて利用できるプリセット。MOVIEではかなりサラウンド感が強調されるので、ちょっと広がりが欲しい時などや、前述の「E.T.」のシーンのようにボリューム感が欲しい時には重宝する。GAMEは低域をブーストするので、低音の強い音楽ソースだと気持ちよくウーファがなってくれた。基本的にビデオ系のプリセットはなかなか使える印象。

 一方のオーディオ系では、音にコシがなくなるものが多く、あまりいいと思えるプリセットが無かった。特に[CHURCH]は、強烈なリバーブがかかりボーカルもののCDを聞くと「1人コーラスグループ」化してしまう。

・CDを聞く

 DVD視聴時のパフォーマンスには満足したので、オーディオCDを聞いてみる。DVDプレーヤーからデジタル入力すると、デフォルトでドルビープロロジック IIモードになるので、ステレオソースも基本的に5.1ch化されることになる。

 全レンジで音圧が低めで、ガッツが無いというか、いかにも小型スピーカーを無理やり鳴らしているような感触が強い。ウーファで中低域をカバーして何とかいい具合に再生しているが、オーディオ再生専用にするのは厳しいかなという印象。

 試しに2.1chで聞いてみると、如実に2本のフロントスピーカースピーカーの力不足を感じる。ボリュームを上げると音割れなど出るので、もう少し大きめのフロントスピーカーでも良かったのでは? 基本は5.1chシステムなので、とにかくデジタル入力のCD-DAの場合、プロロジック IIで5.1ch化して聞くのが正解だろう。

 ちなみに、アナログ入力にも対応しているほか、ヘッドフォン用のバーチャルサラウンドシステム「サイレントシアター」も搭載している。ヘッドフォンでシネマDSPの効果を再現する機能で、ヘッドフォンを接続すると自動的に切り替わる。

 サイレントシアターをONにすると、オーディオ再生時には、サラウンド感というよりは各モードで若干奥行きが出るようなニュアンス。DVD再生時も同様だが、前述の「E.T.」のシーンなどでは上下のサラウンド感も感じられた。


■ PCとの連携機能は秀逸。WMA9のマルチチャンネル再生にも対応

 また、本機の大きな特徴の1つでもあるUSBを介したPCとの連携は、専用ユーティリティによって行なう。対応OSは、Windows 98 SE/Me/2000/XP。

 Windows XP搭載のノートPCに接続したところ、ドライバ無しで認識され、CD-ROMからウィザードに沿って作業を行なうだけでユーティリティのインストールが完了。ユーティリティを利用することで、各チャンネルごとの音量設定やイコライザ設定、距離設定などが可能となる。インターフェイスもわかりやすく、事細かに設定したい人には結構面白い機能だろう。

 シートポジションの変更ではあまり効果を感じなかったが、各チャンネルごとに音量設定ができるのは、かなり役立つ。ダイナミックレンジ設定も可能で、深夜視聴用のモードも用意されている。

CTS-20USB Control Softwareのステータス画面。現在出力されているフォーマットやスピーカーが確認できる。ちなみに6chのWMA9(48kHz)を出力したところ[PCM]と表示された DSP-EDIT画面。ルームサイズやシートポジションの設定が行なえる。ADVANCED Settingではエフェクトレベルの調整も可能 SPEAKER画面、各チャンネルごとの音量設定やセンタースピーカーのディレイタイム調整が行なえる
ダイナミックレンジ調整画面。深夜視聴用に小音量でも聞きやすくした[MIN]、[STANDARD]、[MAX]の3タイプが選択できるほかマニュアル設定も可能 イコライザは7バンドで、5種のプリセットが用意される

USB経由での5.1ch出力時にはOS側のスピーカー設定をあらかじめ行なっておく必要がある

 また、CTS-20USBは、Windows Media 9の5.1chオーディオ再生にも対応しているのも特徴。Windows Mediaのページからファイルをダウンロードして再生してみると…… おや、2.1chしか鳴らない。と思ったら、USBスピーカーの設定が5.1chになっていなかったのが原因だった。

 Windows Media Player9の[ツール]から、あるいはコントロールパネルから辿って[サウンドとオーディオ デバイスのプロパティ]ダイアログボックスを表示。そこで、[スピーカーの設定] の [詳細設定]をクリックし、スピーカーの種類で[5.1 サラウンド サウンド スピーカー]を選択して、ユーティリティのUSBモードでUSB 6chを選択すると無事5.1chが始まった。

 公開されているピンボールやインディカーのデモを視聴してみたが、簡単に5.1ch再生が行なえた。マイクロソフトは、熱心にキャンペーンを行なっているが、今後のWindows Mediaの普及状況は未知数。ただ、「Super 9 Weeks」キャンペーンなどに加わっているメンバーを見ると今後の拡大には結構期待がもてそうなだけに、将来性を買うという意味では結構重要な機能かもしれない。


■ 完成度の高いパッケージ

 とにかく簡単にセッティングできるメリットは大きいし、約3万円強という価格を考えると、遊べる機能と性能のバランスがうまく取れた製品だと感じる。ただ、約8,000円安い「TSS-10」でもプロロジックIIのデコードに対応しているし、シネマDSPは別にいらないかな~という感じでもある(ヘッドフォンのサイレントシアター機能は付いていて欲しいが)ので、ちょっと悩みどころだ。

 個人的に気になったのはフロントスピーカーの再生能力。どこまで音質を求めるかは人によるだろうが、フロントスピーカーをもう1、2ランクあげてもらえると、DVD視聴にも使えるオーディオシステムとして、使用シーンが増えると思うのだが……。

 ともあれ、低価格5.1chシステムとしてよくできたパッケージであることには間違いない。PCベースでのDVD視聴をメインにしている人や、5.1ch入門機のほか、リビングにホームシアターを持っているけれども自室のセカンドシアター用に使いたい人など、幅広い要求を満たす製品に仕上がっていると思う。

□ヤマハのホームページ
http://www.yamaha.co.jp/
□製品情報
http://www.yamaha.co.jp/product/av/prd/cinema_st/cts-20/
□関連記事
【2002年9月25日】ヤマハ、シネマステーションに新モデル3機種
―DVD一体型システムや、PCとUSB接続可能なモデルも
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20020925/yamaha.htm
【2001年3月14日】【EZ】3万円前後の低価格5.1chシステム聴き比べ
~ 第1弾:ヤマハ、ソニー、テイアック ~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20010314/zooma02.htm
【2001年3月21日】【EZ】3万円前後の低価格5.1chシステム聴き比べ
~ 第2弾:NEC、クリエイティブ、オンキヨー ~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20010321/zooma03.htm
【2001年2月27日】【魁】dts対応機器もここまでお手軽になりました
魔窟に最適な5.1chシステム「ヤマハ TSS-1」
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20010227/saki03.htm

(2003年2月14日)

[ AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]


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