■ コンポーネントビデオ信号を高画質アナログRGBに変換
PC用ディスプレイはCRTも液晶も1,024×768ドット以上の解像度が当たり前で、一般的な家庭用テレビと比べればかなり高解像度。価格も安い。例えばCRTディスプレイならば21インチクラスは1,600×1,200ドット以上の解像力を持ちながら8万円前後で購入できる。 また、比較的ユーザーの近くに設置されるというPCディスプレイの性質を考えれば、19インチ以上の画面サイズがあれば、結構な大画面といえる。そうなれば様々なAV機器をPCディスプレイで楽しみたいという願望も自然と出てくるわけで、ビデオ信号からPC用のRGB信号に変換する機器、いわゆる「アップスキャンコンバータ」が、各社から発売されてきた。 ただし、多くの製品がコンポジットビデオ信号やSビデオ信号を変換するものであり、画質的に限界があった。色信号、輝度信号が混合されているコンポジットビデオ信号はクロスカラーやドット妨害が避けられないし、Sビデオ信号では480p以上の高解像度ビデオ信号が入力できない。 やはり、画質を重視すれば入力に利用したいのは、コンポーネントビデオ信号ということになる。コンポーネントビデオ信号を高品位にRGB信号に変換できれば、映像機器のすべてがPC用ディスプレイに接続できることになり、文字通りの「デスクトップシアター構築」も現実味を帯びてくる。 かなり対象ユーザーが限定されるものの、一部の人にとっては待望の製品が先日ロジテックから発売された「LDC-RGB1」だ。 ■ 設置性と接続性 LDC-RGB1のデザインは非常にシンプル。まさに質実剛健といった感じで、前面パネルには入力ソースの種別を示すインジケータLEDと、入力切り換えボタンがあるだけ。 サイズは170×150×47mm(幅×奥行き×高さ)。ちょうどPC用の内蔵DVD-ROMの大きさぐらいで、重さは750g。パッケージには専用スタンドが付属し、縦置きが可能。
背面パネルはD端子入力が2系統、アナログRGB出力端子が1系統、そしてパススルー用のアナログRGB入力端子が1系統実装されている。 よってAV機器はLDC-RGB1に2台まで直接接続可能。2つあるD端子入力には「Din1」、「Din2」という名称が付けられており、前面パネルの入力切り換えボタンを押すことで、入力を切り換えられる。なお、LDC-RGB1にはコンポーネントビデオ入力端子は実装されていない。もちろん、コンポーネントビデオも、市販の変換アダプタケーブルなどを用いればLDC-RGB1に入力することができる。
アナログRGB入力端子には、普段使っているPCを接続する。AV機器の映像を出力しないときは、入力切り換えを[RGB]ポジションにすることでPCの映像をパススルー表示ができる。 パススルー表示の際のPCの画質劣化が気になるところだが、1,280×1,024ドット、1,600×1,200ドットといった高解像度の映像を、パススルー表示して見ても目立った劣化はなかった。 なお、LDC-RGB1にはDVI端子は実装されていないため、デジタルRGB出力は行なえない。液晶ディスプレイ等との組み合わせを考えている人は、この点に留意しておきたい。 ■ 画質チェック LDC-RGB1がサポートする映像モードについて整理しておこう。 LDC-RGB1は解像度変換(スキャンコンバート)機能は持っていないため、インタレース映像の480iの出力には対応していない。実際にLDC-RGB1に480i映像を入れ、水平同期周波数15.75kHzのアナログRGB入力に対応したCRTモニタに接続してみたが、映像は全く表示されなかった。 LDC-RGB1は水平同期周波数31.5kHz以上の映像入出力に対応するので、480p/720p/1080iの3種類の映像フォーマットに対応する。1080pは水平同期周波数67.5kHzなのだが、LDC-RGB1は対応していない。もっとも1080p出力に対応した民生AV機器はあまりないので、この制約に困るユーザーは少ないだろう。 なお、対応フォーマット以外の映像を入れたときはLCD-RGB1からはブランク出力しかされない。よって映像機器がデフォルトで480i出力となっている場合は、一度テレビに出力し、その映像機器の設定画面で出力フォーマットを480p以上に設定してからLCD-RGB1を利用する必要がある。 ・DVDプレーヤー(DV-S747A) 480p出力可能なプログレッシブDVDプレーヤーを接続すると、LCD-RGB1からは640×480ドット相当の解像度で映像が出力される。
AV機器からのビデオ映像出力は、テレビのオーバースキャンを前提とした映像信号であり、テレビでは表示されない領域にコピーガード信号などが挿入されている。LCD-RGB1はこうした信号もアナログRGB映像信号に変換してしまうため、出力映像の最上部に白い線が表示されることがある。 実際に市販のDVDビデオなどを再生すると、画面最上部に白線が一本常時描かれてしまっていた。 こうした白線を黒で塗りつぶすような機能はLCD-RGB1には搭載されていないので、気になる場合には、ディスプレイ側の表示位置や表示サイズを調整して画面外に追い出すしかない。 ただ、DVDプレーヤー側をアスペクト比16:9出力に設定して、4:3のディスプレイ側で縦方向に圧縮して表示させた場合(いわゆるV圧縮)は、この白線を画面外に追い出すことは不可能だ。簡易的なものでよいから、なにかこれを隠す機能が欲しかったと思う。 実際の変換映像の画質は良好。発色に不自然さもなく、優秀だ。画面の揺れなどもない。ただし、PC用CRTディスプレイはユーザが近くで作業することを前提に輝度設定、コントラスト設定がなされているので、テレビで見る映像とは違って見えるのも事実。 ただし、これはLDC-RGB1のせいではなくCRTディスプレイ側の問題だ。よりテレビライクな画作りで映像を楽しみたいユーザーは輝度、コントラストを引き上げた方がよい。それが面倒だというならば、「周囲の照明を消して見る」というのも効果的だ。 また、色温度も通常PCディスプレイは8,500K以上に設定されている場合が多く、色合いが冷たい感じになりがち。これもディスプレイ側で6,500Kくらいまで下げると、テレビで見慣れた発色に落ち着くだろう。 ・BSデジタルチューナ(TT-D2000) スキャンコンバートが行われないので、1080iのハイビジョン映像はインタレース信号のまま出力されることになる。とはいえ、1,920×1,080ドットという高解像度ということもあってか、チラツキはほとんど感じない。 プロジェクタ等で、ハイビジョン映像を少ないパネル解像度へスキャンコンバートして簡易表示する機能があるが、LDC-RGB1からの映像は画素情報間引きがないという点で、インタレースのままながら高精細感は圧倒的に上となっている。 もちろん、発色に関しての不満も無し。映像の揺らぎ等もない。弱点はやはりDVDビデオの時と同様、映像上部に制御信号が可視化されて白い線が出てしまっているところだ。 ・ゲーム機(Xbox) コンポーネントビデオ端子出力あるいはD端子出力に対応した現行ゲーム機にはプレイステーション 2、Xbox、ゲームキューブがある。
なお、プレイステーション 2はプログレッシブ対応ソフトは「鉄拳4」など、わずかしかない。また、Xboxも工場出荷状態では480i出力設定になっており、480p以上の出力を行なう場合には設定変更する必要がある。その初期設定メニュー画面は480i出力されてしまうため、LDC-RGB1を利用する際には、あらかじめ設定を行なわなければならない。 なお、Xboxは接続されている専用映像出力ケーブルの種類を検出する機能があり、たとえばコンポジットビデオケーブルでテレビと接続した場合は、コンポーネントビデオ信号設定用の設定項目が表示されない。もし、LDC-RGB1しかコンポーネントビデオ信号を受け付ける機器を持っていなかった場合、事実上480p以上への出力設定変更できないことになる。LDC-RGB1を購入しようとしているXboxユーザーは、この点に注意しておいたほうがいいだろう。 一方、ゲームキューブの方は、ジョイパッドのBボタンを押しっぱなしで起動することで480p出力が可能になるのでXboxのような面倒はない。 その画質は、各ピクセルがぼやけることなく、くっきり見えており、PCのゲーム映像のように出力された。AV機器の時のような画面上部の白線も出ない。 ■ まとめ~画質に文句はないが使い勝手に改善の余地あり? 出力映像の画質に関しては全く不満はなく、価格相応の画質は得られていると思う。 改善してほしい点は、画質以外の部分にある。それは制御信号が白い線となって表示されてしまうところと、そして480i入力が未対応という点だ。前者はちょっとしたロジックの追加でなんとかなるはずなので、次期ロットでは何らかの対策を期待したい。 後者は一筋縄ではいかない。480iを480pに変換するというのはスキャンコンバータの範疇であり、もし対応するとなるとIP変換ロジックの搭載、フレームバッファ(メモリ)の搭載などが必須となり、価格上昇に結びつく。とはいえ、機器の性質、そしてその利便性を考えると「480iは未対応」というのはやはり寂しい。 もし、上位バージョンの開発の予定があるのではあれば、上記2点の課題を克服しつつ、DVI出力に対応したり、アナログRGB→D端子出力のような逆方向変換機能の搭載にも期待したい。 □ロジテックのホームページ (2003年2月21日)
[Reported by トライゼット西川善司]
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