■DVDレコーダ普及ターム発動 ついこないだまで「HDDやDVDレコーダもようやく一般に認知され始め……」なんて書いてたのだが、恐ろしいことに世の中的にはもう普及価格帯モデルの話になっているらしい。 そうなんだよナ、実はこないだも訳あって量販店のビデオデッキ売り場をうろうろしてたのだが、中学生の娘一人に小学生の息子一人いますみたいな、いわゆる普通のお母さんがDVDレコーダ買いに来ているシーンに大遭遇した。店員さんとのやりとりをこっそり聞いていたのだが、「テープに比べてDVDという新しいメディアに録るといろいろ便利」、ということはすんなり受け入れられているようだ。しかしHDDに録るメリットというのが、なかなか説明が難しい。 そうだよなぁパソコン使ってない人にとってはHDDって謎だよなぁ。取り替えられない記録箱とか言われても、それがいいモノなのか判断できんよなぁ(笑)。 ココを読んでいる人ならパソコンを使ってるだろうから、その辺を今更説明するまでもないと思うが、みなさんもアレだぞそのうち彼女奥さん子供を筆頭に、母親親戚おばさん飼い犬飼い猫に至るまで、HDDってなんなのよ説明してちょうだいっと問いつめられる日がきっと来る。そのときのために今から簡単な喩えを考えといた方がいいぞ。 そんなわけで、こないだまではマニア御用達のハイエンド機が主流であったDVD/HDDレコーダだが、昨年末に東芝が普及価格帯の「XSシリーズ」をリリースしたあたりから、市場は次の普及タームへ突入した。同じDVD-RAM勢としてPanasonicがどんなモデルを投入してくるのか注目されていたわけだが、3月から4月にかけて総勢5モデルを投入するという思い切った作戦が発表になった。全部出そろった暁には、量販店のレコーダコーナーもずいぶんにぎやかになることだろう。 さて今回のElectric Zooma!では、その中でも注目度が高いであろう「DMR-E80H」(以下E80H)を、発売に先がけてお借りすることができたので、このレポートをお送りしよう。まだ製品版ではないということで、仕様が変更される可能性があることをお断わりしておく。
■ 見た目はシンプル Panasonicではこの春、DIGAシリーズとして5モデルを投入するわけだが、多機能を誇った前モデルDMR-HS2の事実上の後継機は、DMR-E90Hになる。一方E80Hは、E90Hに比べてDV端子やPCカードスロットを持たず、純粋にDVDとHDDのバイブリッド録画に割り切ったという位置づけになる。しかしテレビ用レコーダとしては、最も本命のモデルだろう。 実物を箱から取り出してみると、想像したよりも奥行きが短かい。ファンを外に飛び出させているところも、この印象を強くした要因だろう。
フロントパネルのデザインはHS2などの系統とは違っているが、どこかで見覚えがあるような感じだ。シルバーを基調として、黒いラインを中心に凹ませ、鋭角な感じを持たせている。ボタン類がこのセンターラインにも収まっており、ボタン数の割にはすっきりした印象。シンプルなデザインは大幅なコストダウンに繋がるものだが、みんなが期待していたモデルなだけに、もうちょっと個性が欲しかった。まあこれも普及モデルの宿命というやつかもしれない。 背面に回ってみよう。出力は通常のAV出力が2系統にプラスして、D1/D2出力と光デジタル音声出力端子がある。ラインAV入力は背面に2つ、前面に1つの合計3系統だ。チューナはアナログ地上波のみである。ライン入力が比較的豊富なのは、BS、CS、今後のデジタル地上波などからの入力を考えると、使い勝手がいいだろう。
リモコンは従来モデルから一新されて、アルミパネルのすっきりしたデザインのものとなった。ボタン類が綺麗に整理され、なかなか上品だ。 記録メディアは、DVD-RAMとDVD-R。内蔵HDDは80GBと平均的な容量。あまり目立たない機能だが、DVDオーディオの再生をサポートしているのはこの手のレコーダとしては珍しい。今回のラインナップで、DVDオーディオの再生をサポートしているのはE60とE80Hだけである。案外こんなところから「いつのまにか再生できるようになっていたDVDオーディオ」といった普及が始まるのかもしれない。ただし出力は2chステレオに限定されている。
そういえばPanasonicは、DVDプレーヤーではWindows Media Audioの再生を積極的にサポートしていたと思うが、DIGAシリーズではサポートしていない。単にコストの問題か、はたまたプレーヤーとレコーダでは方針が違うのか。
■ 使いやすさを重視した設計
では実際の操作性を見てみよう。基本的にソフトウェアとしてはHS2からの流れそのままだと言えるが、いくつかの新しい取り組みが見られる。 その1つが、1.3倍速再生だ。音声のピッチはそのままに、早口での再生となる。早く寝なくちゃ明日辛いんだけど一応これは見とかないと、みたいなときに重宝する。 実は筆者は昨年7月に、DVD関連メーカーが集まって行なわれた「記録型DVD会議」で講演したことがあるのだが、提案として「今後HDDレコーダで大量に録画するものを効率的に見るために時短プレイ搭載は必須」みたいなことを喋った。いやタネを空かせばちょうどその時忙しくて、スーパーチャンネルで毎日放送される「StarTrek Voyager」の録画を見るのが全然追いつけていなかったのである。そのときの提案をPanasonicが取り入れてくれたのであれば、うれしいことだ。 ただこの機能を使うときは、再生ボタンを1秒の長押しという操作になる。急いでみたいというときにこの操作性は、気持ち的にちぐはぐな感じを受ける。誤動作を防止する措置なのかもしれないが、スパッと使えるインターフェイスの方が良かっただろう。 また、追っかけ再生時には、2画面表示することもできる。追っかけ再生画面を背景にして、現在放送中のシーンが手前のウインドウに小さく表示される形となる。これがどうしても必要かというと意見の分かれるところだが、E80Hを使っていると、今見てるのは放送中なのか追っかけ再生なのか混乱する時がある。そういうときに確認のために使ったり、追っかけ再生とはこういうことですよ、ということをわかってもらうためにも使える機能ではないだろうか。
そういえばもう1つ便利な機能が搭載された。Line1に繋いだ映像ラインのビデオ信号に応じて自動的に録画してくれる、EXT Linkだ。CSチューナなどにはタイマーでスケジュールが組める機能があるが、EXT Linkはその映像信号を待ち受けて同時に録画できる。今まではCSなどの録画といえば、チューナと録画機両方にタイマーをセットしなければならなかったわけだが、これらの外部入力に対する連動機能は、今後重視されていくだろう。 ただ現状の外部入力自動録画機能では、そういった待ち受け前に人間が本体のボタンを押して待機させなければ、連動の録画ができない。ほかの人が使ってそのままだった、なんて状況では働かないのである。また待機中は、ほかの予約録画のスケジュールが入っていても動作しない。このあたり、ちゃんとした予約までとは行かないまでも、録りっぱぐれのない動作条件指定みたいなことが整理されると、目玉機能として立派に成立するだろう。 80GBというHDD容量は、家族でE80Hを使おうと思ったら若干少なく感じるかもしれない。その時のために、予約時に「自動更新」という機能を利用できる。これは毎週あるいは毎日録画する番組は、前に録画したエリアに上書きするというモードだ。まだ見ていない先週の番組は消えることになるが、未視聴番組だらけになって身動き取れなくなるということがなくなる。このあたりもなかなか使いやすくできている。
■ 画質サンプルは追って掲載
E80Hでは、画質モードと録画時間の関係は、右表のようになっている。 肝心の画質面だが、録画時には3次元Y/C分離、再生時には3次元NR、ブロックNR、モスキートNRといったノイズリダクション機能が利用できる。 また出力機能として、今回D2までサポートされた。すなわちコンポーネント接続によるプログレッシブ出力である。ただこのあたりは、まだちゃんとチューニングされていないようだ。
画質調整などもいろいろパラメータがあるが、まだ動いていないようなので、画質に関する評価はここでは差し控える。なお、録画サンプルは、製品発売後に追加する予定だ。
■ 総論 HDD/DVDレコーダの最大の強みは、HDDでバンバン録画し、取っときたい物DVDに高速ダビングで保存、というルートが確立されているというところだ。アンケートなどの調査によると、実際にDVDに保存している例は少なくて、HDDにしばらく残しておいたら面倒だから消しちゃう、という人も少なくないらしい。 PanasonicのDIGAシリーズは、同じDVD-RAM系ではあるものの、東芝のRDシリーズとはあきらかに袂を分かった方向に進化しつつある。すなわち高品質というよりも、多機能であったりシンプルであったりという方向性だ。細かいところを見ていくと、機能としてもう1つツッコミどころがあるんじゃないかという気がするものの、子供からお年寄りまでまんべんなく使っていただきましょうみたいなマメさがDIGAにはある。 今回もDIGAシリーズ本体にはネットワークを絡みの機能はなく、EPGで録画みたいな機能を標準搭載していない(オプションのブロードバンドレシーバーによる携帯電話などからのEPG予約は可能)が、やはり未だに新聞のテレビ欄を見ながら録画するユーザー層を下の方からすくい上げて徐々にレベルを底上げしていくみたいな狙いがPanasonicにはあるのだろう。もちろんこれはこれで必要だし、大いに評価できるところである。自分で使わずに、自分の親兄弟に使わせるとしたら、RDよりもDIGAのほうがわかりやすいだろう。 さて気になるのが価格だが、今のところ大手量販店では予価として9万円台半ば、ネット系通販では既に7万円台という値段が付いている。これは十分普及価格帯と言える魅力的な価格だ。 昨年末から年明けにかけて、東芝とPioneerが大躍進と伝えられるHDD/DVDレコーダだが、春商戦はPanasonicの本格参入でまた一波乱ありそうな気配だ。
□松下電器のホームページ (2003年3月26日)
[Reported by 小寺信良]
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