~その2:M-AUDIOのエントリーカード「Revolution 7.1」~ |
Revolution 7.1 |
M-AUDIOの「Revolution 7.1」も、Ego Systemsの「Prodigy 7.1」と同様、VIA Technologiesのオーディオコントロールチップ「Envy24HT」を搭載したオーディオカードだ。その意味では、近いコンセプトのカードといえそうだが、実際のところどうなのだろうか?
まず、端子からチェックしてみると、Revolution 7.1の外部接続の端子はProdigyと一見同じように見えるがよく見ると、デジタル入力が装備されていない。アナログ出力は7.1ch分ということで、ステレオミニジャックが4つ並んでおり、デジタル出力はRCAピンジャックで用意されている。
また、Prodigy 7.1の場合、デジタル端子はドライバの設定によりS/PDIFと切り替えでAES/EBUを用いることができたが、Revolution 7.1はS/PDIFのみ。さらに、Prodigy 7.1が装備するPC内部のCD-ROMなどと接続するための端子も、Revolution 7.1にはない。
Revolution 7.1の外部接続の端子 | Revolution 7.1のコントローラチップ。「Envy24HT」の刻印が見える |
では、実際にドライバを組み込んで使ってみる。ドライバを組み込むと、タスクトレイ上にM-AUDIOのロゴのアイコンが現れるので、これをダブルクリックして起動すると、Revolution 7.1のコントロールパネルが現れる。DeltaシリーズやAudiophileなどM-AUDIOを代表するオーディオカードのコントロールパネルとは明らかに違う雰囲気であることが一目でわかる。
最初にスピーカーの設定画面が現れているが、上部のボタンで切り替えることによってヘッドフォン、ステレオ、5.1ch、6.1ch、7.1chと変化させることが可能。また、用意されているのはこの5つだけでなく、これらボタンの下のプルダウンメニューを用いることで、さまざまな設定を選択できる。具体的にはAltec Lancing、Cambridge、Creative Labs、Harman Kardon、Klipsch、Logitech、Monsoon、S4 MidiLandなどサラウンドスピーカーメーカーのセット名から選ぶことになる。
アナログでの接続方法はProdigy 7.1と同様であり、各端子がライン出力となっているので、そのままアンプ内蔵スピーカーやアンプ経由でスピーカーにつなげばいい。
スピーカーセットアップ画面 | Revolution 7.1のコントロールパネル |
スピーカーセットアップでステレオを選択 | サラウンドスピーカーメーカーのセット名で設定可能 |
■ 各チャンネルのバランスとASIOドライバ、WDMドライバ
7.1chでは8つのミキサーフェーダーを利用したレベルコントロールが可能 |
では、コントロールパネルのほかの画面での設定はどうなっているのだろうか?
Output Mixerタブをクリックすると、ステレオなら2つ、7.1chなら8つのミキサーフェーダーが現れ、ここでレベルをコントロールできる。なお、全体のボリュームは画面下のMaster Volumeで操作する。
では、Revolution 7.1をASIOドライバを用いて利用する場合、これらフェーダーとはどのような関係になるのだろうか?
ASIOを使った場合、アプリケーション側からは常に8chのポートが見えるようになっており、それぞれ独立して出力することができる。通常はサブウーファ接続のチャンネルも普通のチャンネルとして認識され、実際そこから普通に音を出すこともできる。
ただし、8chすべてで音を出すためには、コントロールパネル側で7.1chの設定にしておかなくてはならないようだ。たとえば、ステレオの設定において3~8chで音を出すと、本来の3~8chの端子からは音は出力されず、すべてフロントの左右のチャンネルからのみ音が出るようになる。なお、ASIOドライバ利用時のレイテンシーの設定は、Input Otherタブの画面でできる。
CubaseSXでのVST出力ミキサー画面 | ASIOドライバ利用時のレイテンシーの設定 |
このことはカーネルストリーミング対応のWDMドライバを使った場合も同じだ。つまり、MMEドライバを使った場合、たとえばWindowsのコントロールパネルのオーディオデバイスの設定画面では1つのポートしか見えないが、WDMドライバ対応アプリケーションであればステレオ2ch×4が見えるというわけである。なお、Prodigy 7.1でも本来Revolution 7.1と同じようにカーネルストリーミング対応のWDMドライバが扱えるはずだが、手元の環境ではどうもうまく動作してくれなかった。
SONAR2のWDMドライバでの設定画面 | オーディオデバイスの設定画面では1つのポートしか見えない |
■ SRSサラウンド機能を搭載
Revolution 7.1のコントロールパネルにはもう1つSurround Soundというタブがある。ここには、Sensaura/Game ModeとSRS Circle Surround IIの2つのモードが用意されているが、通常はNo Surround Processingが選択されている。Sensaura/Game ModeはEAXやA3Dなどと近いゲーム用のサラウンドモード、SRS Circle Surround IIは音楽や映画など普通のステレオやモノラルサウンドをサラウンド化するものだ。
SRS Circle Surround II |
SRS Circle Surround IIをオンにすると、さらにいくつかのパラメータが設定できるようになる。音を出してみると、設定によってかなり立体的なサウンドが作り上げられるのがわかる。これはProdigy 7.1にはなかった機能だ。逆にProdigy 7.1にあったパッチ機能やVSTプラグイン機能などは用意されていない。
では、このSRS Circle Surround IIは前述のASIOやWDMを使った場合有効なのだろうか? 実際に試してみたところASIOを使った場合は完全に無効で、どんな設定をしても素のままで音が出力された。一方、WDMの場合は有効であり、SONAR2から出力した音にはSRS Circle Surround IIがかかった状態で出力された。
■ Prodigy 7.1とRevolution 7.1の音質を比較する
さて、ここまで2つのカードの機能面を見てきたが、ノイズレベルや周波数特性などについても、今までと同じ方法で比較した。
まずは、入出力を直結し、何も音を出していない状態で、レコーディングした際のノイズレベルを見てみよう。これを見ると、Prodigy 7.1が-75dB程度、Revolutionでは-68dB程度のノイズがある。ここからもわかるように、これらのカードはこれまで見てきた多くのカードと比較しても、かなりノイズレベルは大きい。単純に2つを比較すればProdigy 7.1のほうがいいという結果ではあるが、五十歩百歩という感じではある。
レコーディング時のノイズレベル | |
Prodigy 7.1 | Revolution 7.1 |
スペックを見ると、Prodigy 7.1では出力で106dB、入力で102dB、Revolutionでは108dBのダイナミックレンジがあると書かれているが、こんなにノイズレベルが大きいと、スペック表記は無意味といってもいいだろう。
では、音質のほうはどうなのか? 1kHzのサイン波を出力したものを入力した際のスペクトラムを見てほしい。これを見ると、特に高周波や低周波が出ているという感じではないが、ともかくノイズレベルが大きいことが気になる。またノイズのスペクトラムはかなり均一に存在しているようだ。
1kHzのサイン波を出力したものを入力した際のスペクトラム | |
Prodigy 7.1 | Revolution 7.1 |
次に、スウィープ信号を見てみた。こちらは2つとも見事にソックリな形となった。同じ-6dBの信号を低音から高音へスウィープしているはずなのだが、このグラフを見ると、高音になるにしたがい、ほぼ直線で減衰しているのだ。これが再生系の問題なのか、録音系の問題なのかは、この結果だけではわからないが、レコーディング用途という意味で考えると、質のほうはほとんど期待できそうにない。
スウィープ信号 | |
Prodigy 7.1 | Revolution 7.1 |
以上、7.1ch対応の2つのカードについて見てきた。両者とも、Ego SystemsとM-AUDIOというプロユースのオーディオインターフェイスも出しているメーカーの製品が出した、コンシューマー向けのサウンドカードという位置付けだ。
機能的には双方ともに面白く、7.1chが低価格で使えてしまうという面でも魅力的だ。ASIO 2.0対応のドライバが利用できるなど、性能面でも満足いくものとなっている一方、音質という面ではあまり期待できるものではなさそうではある。
まあ、この点については、入出力端子を見てもある程度想像はつく。プラスティックのステレオミニジャックが用いられている点であまり期待してはいけなかったのかもしれない。ただ、音質テストの結果からすれば、端子の問題だけではなさそうで、オーディオコントロールチップであるEnvy24HT自体に問題があったのかもしれない。
一方、カードの安定性という面ではRevolution 7.1のほうがよかった。Prodigy 7.1はドライバの途中にVSTプラグインを噛ませられたり、ルーティングの設定を変更できるなどユニークではあったが、ちょっとしたことでマシンが落ちてしまったり、WDMドライバがうまく動作しないなど、まだまだ不安定という感じではあった。この辺はドライバのアップデートなどによって改善していくのだろう。
今後、Envy24HT以外のチップを使った7.1chのカードが登場してくるのか気になるところだが、また新しいものが登場してきたら取り上げたい。
□M-AUDIOのホームページ(2003年4月28日)
= 藤本健 = | ライター兼エディター。某大手出版社に勤務しつつ、MIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL」(リットーミュージック)、「MASTER OF REASON」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。 |
[Text by 藤本健]
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