~ 最新バージョンのVer.7.1をテスト ~ |
Samplitudeメイン画面 |
基本的にSamplitudeは、マルチトラックでオーディオのレコーディング、編集ができるDAWソフトだ。
24bit/192kHzのオーディオデータを扱えるSamplitudeは、DAWソフトとしてみたとき、基本的機能はCubaseやLogic、SONARなどとそう大きく変わるわけではない。トラックの編集機能やミキシング機能、エフェクト機能、波形編集機能など一通り思いつく機能はほぼ揃っている。
Windowsで使えるオーディオインターフェイスは基本的にどれでも使えるし、MIDIインターフェイスやフィジカルコントローラなどいろいろ使えるので心配はない。
DAWソフトは、ものによって波形編集機能が非常に弱いものがあるが、Samplitudeは昔から波形編集機能は充実しており、それは7.0以降も同様。
ミキシング機能 | 波形編集機能 |
シーケンス機能 |
なお7.0以降のSamplitudeはProfessional(138,000円)と、Classic(69,800円)という2つのラインナップとなっている。スペック的にはオーディオのトラック数がProfessionalで999、Classicが64までとなっており、Professionalでは5.1chのサラウンドも扱えるようになっている。
なおMIDIについては7.0になって強化されているが、機能的にはオマケ程度のもので、CubaseをはじめとするMIDIシーケンスソフトあがりのソフトと比較にもならない貧弱なものだ。再生するのであれば問題ないが、これでMIDIのレコーディングや編集などは基本的にできないと思っておいたほうがいいだろう。
■ Ver.7になってVSTやASIOをサポート
では、1年以上のブランクを経て再登場した今回のSamplitudeは以前のものと比較してどんな点が強化されたのだろうか? 具体的には以下のようなものがあげられる
などだ。
VSTプラグインをサポート |
まず目立つのは、やはりVSTおよびVSTインストゥルメントのサポートと、ASIOドライバのサポートだろう。
これまでSamplitudeで扱えるエフェクトは標準で用意されている機能とDirectXプラグインのみであった。標準のエフェクトはなかなか定評があり、ノイズリダクション機能についてはかなり優れたものだ。この辺の機能はほとんど変化していないが、ついにこれらに加えてVSTもサポートした。
まあ、VSTのサポートは世の中全体の流れといってもいいだろう。また、MIDI機能がある程度強化されたことと合わせて、VSTインストゥルメント=ソフトシンセも扱えるようになった。
一方、ASIOドライバのサポートも大きなポイントだ。これにより、どんなオーディオカードでも最高のパフォーマンスで扱える。なお、ドライバによってはASIOよりもWDMのほうがいい結果となるものもあるが、SamplitudeはWDMにも対応しているので問題ないだろう。
ASIOドライバに対応 | リアルタイム・ルームシミュレーターの搭載 | ボコーダー機能 |
一方、リアルタイム・ルームシミュレータ機能も評価の高いものの1つだ。ディレイをベースに作り出す一般のリバーブとは大きく異なり、インパルス・レスポンス ファイルと呼ばれる3次元のサウンドサンプルをもとに畳み込み演算(Convolution technology)を行なうことで空間のシミュレーションを実現するもの。このインパルス・レスポンス ファイルはいくつかがインストーラにも入っているほか、Webからほかの空間をシミュレーションするためのデータをダウンロードすることが可能となっている。
ボコーダーもちょっと面白い機能。最近はボコーダーのプラグインなども増えてきているが、テクノ系のサウンド作りには欠かせないツールといえるだろう。
■ CD用ソフトとして評価される理由
さて、このSamplitudeは以前よりCD用のマスタリングソフトとして評価が高い。このことについては以前も紹介したことがあったが、最近はプロのレコーディングエンジニアでも使う人が増えてきているようだ。
彼らの使い方はSamplitudeをDAWソフトとして使うというよりも、CD-Rのライティング専用ソフトとして用いている。たとえばProToolsでレコーディングした素材をラフに8トラック程度にミックスダウンし、そのデータをSamplitudeに持ってきて、ここでマスタリング作業を行ない、CD-Rに焼くというもの。こうすることで、普通のCDライティングソフトではできない作業が行なえるのとともに、とにかく音がいいという。
まずほかの多くのソフトでできない機能、もしくは煩雑で行ないにくい作業というのは、ライブのCD化という作業に集約される。通常ライブをレコーディングする1つのオーディオファイルになるため、これを曲ごとにトラックを分けてCDにするためにはWAVファイルを分割する必要がある。しかし、普通は曲間には空白ができてしまうし、もし曲間を繋ぐと、拍手などの部分もトラックとして曲の中に入ってしまう。
しかし、SamplitudeであればWAVファイルの分割やトラックギャップの調整といった面倒な作業はいらない。波形を見ながら曲の先頭、最後にポインタを打っていくだけでOKだ。面倒なCUE SHEETなどを作る必要もないし、必要があれば、ポインタを打った結果からCUE SHEETを書き出すことも可能なのだ。
形を見ながら曲の先頭、最後にポインタを打っていくだけで、ライブCDの作成などが可能に |
ディザリング機能 |
一方、音質という面で評価が高いのがディザリング機能だ。これは24bitをCD用の16bitに変換させる際に用いる機能で、これをオンにすることで、よりスムーズな波形となり高音質を保つことができる。従来のSamplitudeでは独自のディザリング機能が用いられていたが、7.0以降で搭載されたのはPOW-rというアルゴリズムのもの。これはLogic Audioにも搭載されている機能なのだが、非常に音質がいいと言われている。
価格的にはちょっと高価なソフトではあるが、使ってみる価値は十分にあるソフトだ。特にCDライティングにこだわりを持っているユーザーは、試してみてほしい。
□フックアップのホームページ
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□製品情報
http://www.hookup.co.jp/software/sam7/samplitude7.html
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(2003年5月12日)
= 藤本健 = | ライター兼エディター。某大手出版社に勤務しつつ、MIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL」(リットーミュージック)、「MASTER OF REASON」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。 |
[Text by 藤本健]
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