■ ついに実現した真の「コードレステレビ」 シャープの「LC-15L1」は、15V型ディスプレイと、IEEE 802.11b採用の「スマートリンク送信部」からなるワイヤレス液晶テレビ。最大の特徴はディスプレイ部に、無線LANの受信部に加え、リチウムイオンバッテリを内蔵したこと。これにより、ディスプレイ部にアンテナ線、電源ケーブルを接続することなく映像を楽しめるのがポイント。つまり、送信部からの電波が届く範囲なら、「コードレステレビ」が実現することになる。 また、BSアナログチューナの内蔵や、計3系統の外部入力(S映像2系統、コンポジット3系統)、オンタイマー、オフタイマーの装備など、テレビとしての機能も充実。確かに、ロッドアンテナを備えた「携帯テレビ」はこれまでにもあったが、IEEE 802.11bによる安定した受信や、外部入力などの充実を考えると(エアボードを除けば)、従来のワイヤレステレビとも、携帯テレビとも異なる新形態の製品といえる。 バッテリ持続時間はバックライトの調光モードで異なり、調光モード「暗い」で約3時間、「標準」で約2時間、「明るい」で約1時間30分となっている(すべてカタログ値)。充電はクレードル方式ではなく、ディスプレイ部に接続したACアダプタから行なう。
実際に「標準」で地上波を視聴したところ、電源ONから3時間22分でバッテリ切れの警告が表示され、3時間32分で強制的に電源断になった。通常の番組視聴やDVD鑑賞なら、実用上問題ない持続時間だろう。ただし、フル充電には約5時間もかかる(カタログ値)。なお、充電用のACアダプタは部品扱いで取り寄せることもできる。 本体デザインは、今回もインダストリアルデザイナーの喜多俊之氏によるもの。左右に張り出したスピーカー部がこれまでの同シリーズにない特徴だが、上部のハンドルと調和するためか、意外にも一体感は高い。また、前面の仕上げも高級で、15V型ながら所有感は高い。 スタンドは、本体背面に取り付けられた「セットスタンド」に加え、取り付け式の「テーブルスタンド」が付属する。テーブルスタンドへのセット時は画面が高くなるため、複数人で視聴するときに便利かもしれない。
■ さすがに重いディスプレイ。外部入力は2系統装備 ディスプレイ部の重量は、テーブルスタンド取りけ時で6.2kg。バッテリを搭載している分、前回掲載した17V型ワイドの「KLV-17WS1」より重く、持ち上げるとき、思わず掛け声が出てしまうほど。お年寄りがLC-15L1を持ってたまま階段を上るのは、少し難しいかもしれない。とはいえ、ゴム引きされた頑丈なハンドルが付いているので、部屋間の移動程度なら問題ないレベルだ。 スマートリンク送信部には、ビデオ1、ビデオ2、ビデオ3入力(デコーダ入力)を配置している。ビデオ1のみS映像/コンポジットの排他仕様で、ほかの映像入力はコンポジットのみ。また、ビデオ2入力はモニタ出力/BS出力を兼用している。加えて、S映像/コンポジットのビデオ1出力(スルー出力)、BSのビットストリーム出力、検波出力などが並ぶ。
ディスプレイ部の入出力端子は、S映像/コンポジット排他の映像入力が1系統。メニューでは「ビデオ(本体)入力」という名前で、スマートリンク送信部の入力系統としっかり区別されている。また、ヘッドフォン端子も本体に装備。ただし、すべての端子が背面のカバー内に配置されているため、気軽にアクセスできないのが難点だ。ヘッドフォン端子だけでも前面に配置してほしかった。 なお、スマートリンク送信機に接続した機器を、離れた場所からその機器のリモコンで操作できる「リモコンリンク機能」も搭載している。ソニーの「ワイヤレスベガ」や、東芝の「液晶“FACE”ワイヤレス」にもある機能で、これにより、別室でのDVDプレーヤーの操作や、ハイブリッドレコーダの編集などが可能になる。LC-15L1では、2系統の外部機器を操作可能。
■ 画質は良好。家庭内モバイルテレビはとても快適
画質モードとして、「標準」、「映画」、「ゲーム」、「標準(固定)」を選択できる。このうち「標準(固定)」以外の3モードはユーザーに解放され、「映像」、「明るさ」、「色の濃さ」、「色あい」、「画質」の各項目が調整できる。「映像」はコントラストに相当し、60段階で調整可能。「画質」はシャープネスに当たる。 S映像でDVDビデオの再生映像を直接入力してみたところ、パネルサイズが比較的小さいこともあってか非常に精緻な表現が得られていた。ダイナミックレンジも広く、細かく調整することで、黒浮きや輪郭の崩れも解消できた。AQUOSシリーズでもどちらかといえば傍流の製品だが、画質に関するポテンシャルは高く、手は抜かれていない。 受信状況のチェックは、前回の「KLV-17WS1」同様、マンションの1室、約78m2の3LDKで行なった。スマートリンク送信部も、前回と同じくリビングに設置。結果としては、今回も全部屋で安定した受信が可能だった。もっとも、普段使っているIEEE 802.11bの無線LANルータも全部屋で受信できているので、驚くほどのことでもない。 スマートリンク送信機から受信した映像は、輪郭、彩度、階調性の面でさすがに直接入力を下回る。とりわけ、スポーツ中継や歌番組など動きの多い映像の場合、画面全体がブロックノイズで覆われてしまうのに閉口した。少なくとも、大リーグ中継の打球を追えないという点で、IEEE 802.11a採用モデルのKLV-17WS1に劣っている。逆に、ドラマやニュース、バラエティなどは、慣れればそれほど違和感なく視聴できた。 実際に、ディスプレイ部をベランダやキッチン、クローゼットなど様々な場所に持ち運んで見たが、コードレスということもあり、非常に快適だった。特に、テレビを流しっぱなしで移動できるのが良い。番組の流れに取り残されることなく、別の場所に移動できるメリットは大きいと感じる。また、ディスプレイ部が15V型と小型のため、移動した先での設置も簡単。「テレビを見ること」という概念すら変わってしまいそうだ。 なお、キッチンで炊事をしながら視聴をしたところ、オーブンレンジでの調理を開始すると「電波が届きにくくなっています」とのメッセージが表示され、5秒に1度の割合で、2秒間ほど静止することがわかった。オーブンレンジまでの距離は約2m20cm。5mほど離したところで、受信状態は多少良くなった。広めのキッチンなら問題ないのかもしれない。IEEE 802.11bの仕様上、仕方がないこととはいえ、活用範囲という面では少しもったいない。
■ テレビ依存症なら、検討に値すべき製品 コードレスで各部屋を移動できる気持ちよさは、これまでのワイヤレス液晶テレビにはない魅力。それまで見ていた番組の続きを番組と共に別室へ持ち出す感覚は、私にとって初めてコードレス電話を使ったときと同じ感激だった。視聴場所が増えるので、ハイブリッドレコーダなどと同様、テレビ依存の強い人にとっては、生活の自由度を高めるための切り札的な製品ともいえる。 また、直接入力の画質も良く、サブテレビとしての利用価値も高い。アンテナ線の引き込みがない部屋に対し、「本体にDVDプレーヤーとゲーム機を接続、テレビの電波は別室のスマートリンク送信機から」という使い方も現実的だ。ただし、4:3パネルなので、シネマスコープ収録のDVDビデオだと、画面の半分近くが黒帯になってしまう。ワイドパネルモデルの登場を強く望みたい。 あとは、コンポーネント入力があれば汎用性が高まるはず。コスト面からも、今回は用途をテレビ視聴に絞ったのだろう。それでも、定価で175,000円という価格設定は、15V型の液晶テレビとしてはかなり高価に感じる。軽量化も含め、今後の製品展開にも期待したい。
□シャープのホームページ (2003年5月15日) [AV Watch編集部/orimoto@impress.co.jp]
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