~ プロも驚くバンドルソフト「SonicStage Mastering Studio」 ~ |
SonicStage Mastering Studio |
しかも、ハイエンドからローエンドまで5月14日に発表された全モデルにバンドルされるという、ちょっと耳を疑いたくなるような事態が起こっている。今回は、そのソフト「SonicStage Mastering Studio Ver.1.0」を紹介したい。
■ プロも驚くブランドネームが、すべてのバイオに搭載された
ソニーから5月14日、新型バイオが一挙に発表された。その全機種に搭載されたのが新ソフト「SonicStage Mastering Studio」。実は、このソフトの詳細を聞けば聞くほど、とんでもないソフトであることが判明した。
最初この名前を聞いたとき、ATRAC3関連のソフトの新しいものなのだろうと思った。SonicStageは、Net MDの関連ソフトとしても、コンシューマ向けに大々的な宣伝をしているソフトでもあるからだ。
ところがMastering Studioは、SonicStageとはほとんど関係のないソフトで、「SonicStage」というブランド名だけを統一させたとのこと。つまり、Mastering StudioはATRAC3やATRAC3 plusを扱うソフトではなく、24bit/96kHzのWAVファイルに対して、マスタリングを行なうソフトである。当初は、「バイオのバンドルソフトなのだから、まあオマケのソフト程度のものだろう」と思っていたが、どうやらそんな単純な話ではないようだ。
というのも、このソフトの実態が、プロの間でも定評のあるソフトの機能をふんだんに取り入れた「プロ仕様といい切れるマスタリングソフト」だからだ。キーワードをいくつかあげると、以下のようになる。
まあ、そういったソフトはこれまでもにもいろいろあったが、SonicStage Mastering Studioは機能的にはそれらと同様でありながら、エンジンにプロ仕様のものを用いることで、強力なソフトに仕上げているのが特徴だ。
■ 自動トラック分割など作業は簡単
A4サイズのハイエンドノート「バイオノートGR」の中位モデル「PCG-GRT77/B」を使って試してみたところ、確かに使い方自体はそれほど難しいものではなかった。流れとしては大きく3ステップ。ステップ1で入力を選択し、ステップ2で録音の実行、そしてステップ3でCDもしくはWAVファイルとしての出力というだけ。ごく簡単に操作すれば、基本的にそれぞれのステップにおいて1回か2回、クリック操作をするだけでいい。
入力の選択 | 録音の実行 | CD-R/RW、あるいはWAVファイルへの出力 |
簡単に流れを追うと、まずステップ1の入力の選択においてはバイオ本体内蔵のマイク入力、ライン入力を選択できるほかASIOデバイスを選択できるようになっている。ASIOドライバ対応のデバイスなら何でもOKだが、ソニーとしてはEDIROLの「UA-5」を推奨機器としており、これのみがサポート対象となっている。
EDIROLのUA-5が推奨デバイスになっている(クリックすると全体を表示します) |
次のステップ2では録音を行なうわけだが、ここも基本的にはすべて自動で行なってくれる。LPレコードやカセットテープなどを録り込む場合、単に録音開始ボタンを押すだけで自動的にトラックを分けて録音してくれる。このトラック分けに関しては、音量レベルや曲間時間を設定することで、そのタイミングをより細かく調整できるのだが、大抵はデフォルトのままでうまくできてしまう。
あとはステップ3としてCD-Rに記録するか、WAVファイルで書き出すわけだが、必要あれば、その前に編集作業を行なうことができ、ノイズリダクション処理や、前出のエフェクトによる処理もできる。
分割点設定 | ノイズリダクション | 音量レベルや曲間設定でのトラック別けも可能 |
■ 市販ソフトと同じWAVES。SONY OxfordはDSPボードの必要なし
エフェクトは計4種類が予め入っているのだが、WAVESのエフェクトとしては、低域をブーストするための「WAVES Renaissance Bass」、ステレオ感を作り出すための「WAVES S1 Stereo Imager」、強力なリミッター/コンプレッサである「WAVES L1 Ultra Maximizer」の3種類。わかる人ならわかるとおり、実際市販されているものとまったく同じもの。またもう1つのエフェクトであるSONY Oxfordイコライザは3バンドのパラメトリックEQだが、これもなかなか強力。市販されているものは5バンドのものだが、今後有償アップグレードを予定しているそうだ。
Waves Renaissance Bass for VAIO | Waves S1 Stereo Imager for VAIO | Waves L1 Ultramaximizer for VAIO |
ちなみにWAVESのエフェクトも、SONY Oxfordも国内ではメディア・インテグレーションが販売している。WAVES製品はいくつかのエフェクトがセットになって売られており、これら3つのセットというものは存在しないが、実際にそろえれば10万円は越えてしまう。またSONY OxfordもWindows用の5バンドのものが74,800円という価格になっている。
ただし、SONY Oxfordの市販ソフトはTC PowercoreというDSPボードが入っていることが前提。つまりCPUだけでは動作しない。それに対し、SonicStage Mastering StudioではCPUだけで動作し、さまざまなエフェクトと組み合わせて使用することも可能と、使い勝手の面では市販品を上回る。
Sony Oxford EQUALISER for VAIO |
これまで業務用機材に入っているだけでPC用ソフトとしては存在していなかったが、それが今回SonicStage Mastering Studioの一機能として登場。同様の考え方のソフトとしてはCubase SXなどに入っているApogeeのUV22やLogicやSamplitudeに採用されているPOW-rなどがあるが、SBMはまさにこの世界の本家といえるものだ。
■ 単体発売、アップグレードの予定はなし
ここまで概要をお伝えしたが、このソフトはここで説明してきたように、LPやカセットテープをCD化する用途で使えるが、ほかにもいろいろな使い方が考えられる。たとえば「SACDやDATなどCDよりも高音質なソースをCDにコンバートする」、「MP3など音質の劣化してしまった素材を元に近い高品位のデータに変換する」、「すでにホームレコーディングなどを行なった素材をマスタリングしてできる限りきれいな音質でCDに記録する」、など。ただし、単体での販売を希望するユーザーも多いと思うが、残念ながらバイオのバンドルソフトとしてリリースするのみで、今後も市販の予定はない。また古いバイオユーザーにもアップグレードパスは残されていないようだ。また、WAVESの各ソフトやSONY Oxfordなどは内部的にはVSTプラグインとして組み込まれているが、外部ソフトからこれを利用するためのようなアップデートは用意されていない。あくまでも流れは一方通行になっているようだ。
なお、WAVESやSONY Oxford、SBMなど主要な技術については、追って詳細なレビューを予定している。
□ソニーのホームページ
http://www.sony.co.jp/
□バイオのホームページ
http://www.vaio.sony.co.jp/
□製品情報(SonicStage Mastering Studio Ver.1.0)
http://www.vaio.sony.co.jp/Products/Software_03q2/SonicStageMasteringStudio/
□関連記事
【5月14日】ソニー、TV機能が強化された「バイオノートGR」(PC Watch)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0514/sony2.htm
(2003年5月19日)
= 藤本健 = | ライター兼エディター。某大手出版社に勤務しつつ、MIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL」(リットーミュージック)、「MASTER OF REASON」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。 |
[Text by 藤本健]
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