~ USB 2.0対応オーディオインターフェイス「UA-1000」など ~ |
5月19日に行なわれた発表会の様子 |
今回登場したのは、3月にフランクフルトで開催された「musikmesse2003」で発表されたものが中心。ハードウェア、ソフトウェア合わせて8製品をリリースしている。
その中でも目玉は、USB 2.0に対応し、10 IN/10 OUTを実現したオーディオインターフェイス「UA-1000」。ソフトウェアではCakewalkが開発したソフトシンセのワークステーション「Project5」。それらを中心に、今回の新製品を紹介する。
■ USB 2.0対応の10 IN/10 OUTオーディオインターフェイス「UA-1000」
musikmesse2003で参考出品され、大きな注目を浴びていたUSB 2.0対応オーディオインターフェイス「UA-1000」が正式に発表された。発売は6月下旬で、店頭予想価格は85,000円前後の見込み。これまでIEEE 1394を採用したマルチチャンネルのオーディオインターフェイスはいくつかあったが、USB 2.0対応はこのUA-1000が世界初となる。従来のUSB 1.1では、転送速度の限界から24bit/96kHzの場合、2chでは録音のみ、または再生のみしかできなかった。しかし、転送速度が最大480MbpsのUSB 2.0を使っているため、24bit/96kHzでも独立で10chの同時録音再生を実現している。
UA-1000 | 背面 |
写真を見るとわかるとおり、1Uのラックマウント型のモジュールで、フロントに4つのアナログ入力、リアに8つのアナログの入出力(うち入力4つはフロントと切り替え)、さらにリアにはS/PDIFのコアキシャル入出力とオプティカル入出力を装備。このオプティカル入出力は、切り替えでADATの入出力としても利用できる。またWORD CLOCKの入出力や、MIDI入出力も1系統だけ搭載。スペックは非常に強力だ。
フロントの4つの入力は、UA-5などと同様にフォーンおよびキャノン兼用の端子となっており、ファンタム電源にも対応。またマイクプリアンプも装備している。
もちろん、ドライバ側もASIO 2.0およびWDMに対応している。ただし、USB 2.0ということもあって、利用できるのはWindowsのみとなる。Macintoshでは使用不可能。またUSB 1.1でも使うことができない。
□製品情報
http://www.roland.co.jp/products/dtm/UA-1000.html
■ ソフトシンセ・ワークステーション「Cakewalk Project5」
Cakewalk Project5 |
Project5には5種類のソフトシンセが搭載されている。具体的にはバーチャル・アナログ・シンセサイザーの「PSYN」、デジタルサンプラーの「DS864」、アナログ・モジュレーター・ドラムシンセサイザーの「nPLUSE」、ドラムサンプラーの「VELOCITY」、グルーブ・サンプラーの「Cyclone DXi」。さらにエフェクトとしてボコーダー機能をはじめ、さまざまな顔を持つマルチエフェクトの「Spectral Transformer」、オートメーション対応のテンポ同期ディレイやリバーブ、コーラス、フランジャー、イコライザ、コンプレッサ……といろいろなエフェクトも同梱されている。
PSYN | DS864 | nPLUSE |
VELOCITY | Cyclone DXi | Spectral Transformer |
このようにたくさんのソフトシンセやエフェクトが集まっているのだが、ソフトシンセはDXi、エフェクトはDirectX対応のプラグインとして入っているところがProject5のポイント。つまり、Project5はプラグインの集合体ともいえるものなので、ほかのシーケンスソフトなどがProject5と同時にインストールされていれば、そのソフト側で、Project5の各モジュールをそのまま使うことができる。
もちろんProject5自身もシーケンス機能を持っているので、それで曲を作っていくこともできるし、必要あればMIDIとは別にオーディオトラックも扱うことができる。
さらに面白いのは、DXi/DirectXというプラグインとともに、VSTおよびVSTiも利用できるようになっている点。その秘密は、Project5に「VST-Dx Adapter」が入っているためだ。このソフトはもともとFXPansionが開発し、主にシェアウェアの形態で配布していたアダプタソフト。これを使うことで、VSTおよびVSTiをDirectXおよびDXiとして利用することができるようになる。FXPansionを今年3月にCakewalkが買収したため、ここにバンドルされている。またReWire接続も可能など、思いつく機能はすべて入れ込んだというのがこのソフトの特徴だ。
なお、製品発表の5月19日より、SONARおよびProject5の紹介も行なう日本語のCakewalkサイトがオープンした。ちなみに、筆者も執筆に参加したSONARの解説書「MASTER OF SONAR」(BNN新社)も発行され、Project5の解説書「MASTER OF Project5」(同)もProject5の発売後に発行される。興味のある方は手に取っていただけると幸いだ。
□製品情報
http://www.roland.co.jp/products/dtm/CW-P5.html
■ UA-3Dにエフェクト機能や2種類のADを搭載した後継機「UA-3FX」
UA-3FX |
UA-3Dとサイズもほぼ同じで、やはりUSBからの電源供給だけで動作するコンパクトなオーディオインターフェイス。24bit/48kHzまで対応し、従来どおりアナログ端子としてRCAのライン入出力×2、標準フォーンのライン入力×2、ミニジャックでのマイク入力とヘッドフォン出力を備え、デジタル入出力はオプティカルとなっている。
UA-3Dではサンプリングビット数が16bitだったので、ダイナミックレンジが大きく広がったことになる。またドライバも従来の標準ドライバに加え、新にWDMとASIO 2.0に対応した。
さらに、機能面でも大幅な向上が見られる。その1つがAFテクノロジーを搭載したこと。これは「アダプティブ・フォーカス・テクノロジー」の略で、レコーディング時の音質を向上させるために、2種類のADコンバーターを切り替えながら動作させるというもの。カタログには「繊細な音はどこまでも繊細に、ダイナミックな音はよりダイナミックに」と書かれているが、それを実現するために2つの24bitADコンバータを内蔵し、入力信号をもとに内蔵DSPがどちらのADコンバータを使うか判断して切り替える。
もう1つは、3系統11種類のエフェクトを搭載したこと。リバーブ、コーラス、ディレイ、ディストーションといった一般のエフェクトに加え、マスタリング・エフェクトとしてノイズ・サプレッサー、エンハンサーが加わったり、センター・キャンセルといったものもある。
ノイズ・サプレッサーやエンハンサーはなかなか効果的で、ラジカセなどでカセットテープに録音したアナログ音源が、かなりキレイな音になる。またセンター・キャンセルを使うとボーカルを消してカラオケを作るといったことが簡単にできる。
これらのエフェクトは再生時に使うことも、録音時に使うこともでき、また手元のWAVファイルなどを再生させながら、このエフェクトをかけて、それをレコーディングしてしまうといった使い方も可能だ。
□製品情報
http://www.roland.co.jp/products/dtm/UA-3FX.html
■ USB対応のフィジカル・コントローラ+オーディオインターフェイス「UR-80」
UR-80 |
このUR-80、一目見て気づく人もいるかもしれないが、EDIROLが「RolandED」というブランド名だった頃の製品「U-8」にソックリだ。U-8の紺色に対して、こちらはシルバーに変わっているほか、パネル上部のボタン、つまみが一部違っているだけのように見える。ただ機能的にはだいぶ異なる製品になっている。
まず、U-8はバンドルされていたレコーディングソフト(SingerSongWriterのカスタマイズ版)で使うことを前提に設計された製品であったのに対し、UR-80はSONARやCubaseSXほかさまざまなDAWソフトで利用する汎用的な製品になっている。フィジカル・コントローラ+オーディオインターフェイスという概念そのものは同じだが、オーディオ・インターフェイスとしては24bit/96kHzに対応するとともに、アナログ入力端子もUA-1000のフロントにあるものと同様、フォーンとキャノンのコンボタイプが2つとなった。もちろんファンタム電源対応で、Rolandの「VS-2480」と同等のマイクプリアンプを内蔵している。
デジタル入出力はオプティカル、コアキシャルそれぞれの入出力も装備し、MIDIインターフェイスも1系統のみ入出力を持っている。ただし、U-8にあった内蔵のエフェクトは削除され、フットスイッチなどもなくなっている。
ドライバ面ではWDM、ASIO 2.0、CoreAudioに対応し、WindowsでもMacintoshでもすぐに使うことができる。さらに、WindowsとMacintoshのそれぞれに対応したソフトシンセ「HyperCanvas 1.5」もバンドルしている(ただし、Mac OS Xには非対応)。HyperCanvasはDXi、VSTiに対応しているので、多くのDAWソフトのプラグインとしても利用可能だ。
□製品情報
http://www.roland.co.jp/products/dtm/UR-80.html
■ 61鍵・27操作子を持ったMIDIキーボード「PCR-80」
USBからの電源供給で動作するとともに、27の操作子でさまざまなコントロールが可能なMIDIキーボード「PCR-80」が8月に発売される。店頭予想価格は3万円前後の見込み。
PCR-80 | PCR-Editor |
49鍵のPCR-50、32鍵のPCR-30に続き、61鍵となったのがPCR-80。これらはキーボードのほかに、8つのロータリー・ノブ、8本のスライダー、9つのボタン、2つのペダルの計27操作子があり、これらに対して、コントロールチェンジ、RPN/NRPN、システム・エクスクルーシブなどのMIDIメッセージを自在にアサインできるようになっている。これによって、SONARやCubaseSXなどのDAWソフトをPCR-80からコントロールできるようになる。
なお、このアサインをもっと簡単にできるようにするためのユーティリティ「PCR-Editor」がRolandのサイトで公開済みで、これがあれば既存のPCR-30/50のユーザーも含めて便利に使うことができそうだ。
□製品情報
http://www.roland.co.jp/products/dtm/PCR-80.html
■ SONARとSI-24のバンドルパック「SONAR Perfect Solution SI-24モデル」
SI-24 |
SONAR 2.2に「SI-24」、それにオーディオインターフェイスとして「RPC-1」、さらにソフトシンセである「HyperCanvas」をセットにしたもの。SI-24はこれまで単独販売はされていなかったが、「Studio Package Pro」という製品にバンドルされていた。これはMacintosh用のパッケージで、Logicの特別版「Logic RPC Pro」とSI-24、RPC-1のセット品という構成。このパッケージのソフト部分がSONARに変わったものと考えていいだろう。
SI-24はUR-80と同様に、オーディオ・インターフェイス+フィジカル・コントローラという構成だが、SI-24のほうが上位に位置付けられている。というのも、こちらのフェーダーは12トラック+1マスターフェーダーの13本で、いずれもモータードライブ内蔵のムービングフェーダーとなっている。
また、入出力も24bit/96kHzで8系統用意されている。これだけあると、当然USB 1.1では動作しないため、PCIバス接続のRPC-1を使う。RPC-1は、R-BUSというRoland独自規格に対応したインターフェイス。このRPC-1とSI-24をセットで使うことで、SI-24をオーディオインターフェイスとして使うことができるようになっている。
□製品情報
http://www.roland.co.jp/products/dtm/CWS-SI24.html
■ コンパクトなMIDI音源SD-20やアナログ・コンパクト・ミキサーM-10Eも登場
そのほかにも、MIDI音源として「SD-20」、アナログのコンパクトなミキサー「M-10E」も登場した。SD-20は6月発売で店頭予想価格は33,000円前後、M-10Eも6月発売で店頭予想価格が14,000円前後の見込みとなっている。SD-20はこれまで単独発売されていなかったが、DTMのエントリーパッケージである「ミュージ郎ネットスタジオ」にバンドルされていたコンパクトなMIDI音源だ。USBからの電源だけで動作するため、手軽に扱えるのがメリット。
GM2に準拠した音源で、32パート64ボイス、660音色、23ドラムセットというスペックだから、エントリー用としては十分過ぎる仕様。各音色の質もなかなかなもので、S/PDIFのオプティカル出力も装備しいて、使い方によっては非常に高品位なレコーディングも可能になる。
SD-20 | M-10E |
一方のM-10Eは、ステレオ5ch(10入力)のアナログミキサー。従来Rolandブランドで出していたMX-5という製品とほぼ同じものの色違いだ。たいした機能はないが、複数の音源やオーディオインターフェイスを持っている場合、とりまとめてヘッドフォンで聞くといった場合には非常に便利な製品である。
□製品情報(SD-20)
http://www.roland.co.jp/products/dtm/SD-20.html
□製品情報(M-10E)
http://www.roland.co.jp/products/dtm/M-10E.html
以上、計8製品を紹介したが、今回の新製品もなかなか面白い。また、UA-1000については借りることができ次第、詳細にレポートしたい。
□ローランドのホームページ
http://www.roland.co.jp/
□関連記事
【4月14日】【DAL】RolandとBossが発表した新製品
~VariOSの「OPEN SYSTEM MODULE」の持つ意味が明らかに~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20030414/dal96.htm
(2003年5月26日)
= 藤本健 = | ライター兼エディター。某大手出版社に勤務しつつ、MIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL」(リットーミュージック)、「MASTER OF REASON」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。 |
[Text by 藤本健]
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