■ やっぱり出ちゃうんです おかしいなぁ。2003 International CESで確かに日本での発売は予定していないって言ってたんだヨォ。ホントだヨォ。 そんなわけで弁解がましく始まった今回は、国内初のDVD+RW対応レコーダとなる「RDR-GX7」を取り上げる。DVD+RW対応とはいっても搭載ドライブはDVD±RWなので、記録メディアはDVD-R/RWとDVD+RWの3種類となる(DVD+Rは非対応)。 DVDレコーダの国内市場は、黎明期にはPioneerのDVD-RWレコーダしかないという状況がしばらく続いたが、その後東芝、PanasonicがDVD-RAMをメインにした製品攻勢をかけ、今やかなりのシェアを占めるようになった。むろんDVD-RはランニングコストとDVDプレーヤーへの架け橋という面で欠かせない存在ではある。 しかしここに来てSONYがようやく重い腰を上げて、DVDレコーダ市場へ参入しようとしている。SONYは今まで録画機としてはHDDレコーダを中心に展開してきたわけだが、先日のDVD搭載CoCoon「NDR-XR1」ではDVD-R/RWを採用した。そして今回はDVD±RWと、-RW、+RW双方のRW系をプッシュしつつある。 SONYとしてはこのRW両対応のコンセプトを「デュアルRWコンパチブル」と説明しており、今後は自社製DVD±ドライブを採用した製品はこのコンセプトを継承しそうだ。一時はRAMで決まりかと思われた録画機メディア決戦は、これでまたわからなくなってきた。 CoCoonシリーズとは違ってHDDを搭載しない、純粋なるDVDレコーダSONY RDR-GX7。その実力を試してみよう。
■ 直線的で上質のデザイン
まずはいつものように外観からチェックだ。CoCoonとは別プロジェクトの製品ということだけあって、デザイン的なキーワードがかなり違っている。 全体的な印象として受けるのは、CoCoonがオーガニックな柔らかいデザインテイストであるのに対し、GX7は直線的要素で構成されていることだ。ボディ材質も、CoCoonが樹脂製パネルを多用しているのに対し、GX7は全体が金属質。しかし極端に厳つい感じはなく、ヨーロピアンテイストとも言うべきシンプルで質の高いデザインだと言えるだろう。 正面左側はチャンネルや時間表示部、中央にドライブベイがあり、右側にディスク操作ボタンとステータス表示LEDがある。ボタン類は小さいが、操作中は該当ボタンの周りが各色で光るなど、芸の細かい造りだ。
正面下部を開けると、左側にDVとアナログAV入力端子、左側には設定変更用のボタン類が並ぶ。文字はすべて記号か英語表記で、全体から受けるリニアなイメージを壊さない。
背面に回ってみよう。地上波とアナログBSのRF入力が左側に集中、入力は前のもあわせると3系統ある。出力は通常のAV出力2系統のほか、映像はD1/D2端子、デジタル音声はオプティカルとコアキシャル端子がある。入出力ともに数としては十分だろう。
右側には電源ファンがあるが、さすがに無音とはいかないまでも、動作音はかなり静かだ。DVDの鑑賞にも、これなら問題ないレベルだろう。
リモコンを見てみよう。操作系としてはブルーレイレコーダ「BDZ-S77」あたりから採用された、メニュー操作用ジョイスティックと映像操作用ジョグレバーが別になっているタイプだ。しかしボタンデザインや操作感は従来製品とも微妙に違って、本体のテイストと合わせてある。普通リモコンみたいなものは共通にした方がコストダウンになるのだが、細かいところまでコダワリを感じさせる。
■ デュアルゆえのややこしさ では録画機としての使い勝手を見ていこう。録画できるメディアは先ほども紹介したが、GX7の特徴は、DVD-R/RWとDVD+RWの3種類のメディアが使えるという点だ。それにビデオフォーマットとVRフォーマット組み合わせると、以下のようになる。
ビデオフォーマットは、DVDプレーヤーに対して再生互換が高いことで知られるが、最近では「-VR」フォーマットでも再生できるプレーヤーも出てきている。「+」(プラス)、「-」(マイナス)とも作成に面倒がなく、メディアへの追記が簡単なVRフォーマットこそ、もっと業界全体で推進すべきだと思うのだが、ここに来てまた-と+のVRで微妙に使い勝手が違うという問題が出てきている。
一方で-VRのほうは、ファイナライズが必要かどうかは再生機側の機能に依存するので、自動的には行なわない。その代わり記録データの任意の部分で分割や削除ができるので、GX7上での編集機能は高い。 同じVRフォーマットでもこのような違いがあるが、純粋にメディアの違いでも機能差が出る。今後デジタル放送が主流になってくると、CGMS(コピージェネレーションマネージメントシステム)が導入されるだろう。BSデジタルでも採用されている、コピーワンスのプロテクションだ。現状ではこれが録画できるのは、CPRMに対応しているDVD-R/RWのほうだ。DVD+RWではまだこのあたりの対応が遅れており、メディアが対応しない限りデジタル地上波の録画は難しいだろう。コンテンツに対してメディアをどう選んで、どう使いこなすかは、ユーザーのスキルにかかっている。
録画モードはプリセットしかないが、段階は結構こまかくて6段階ある。これはメディアの種類やフォーマットに関係なく全種類使用できる。
録画品質という点では、筆者は以前からCoCoon「CSV-E77」や「NDR-XR1」などの製品で、割と厳しい評価をさせて頂いている。しかしGX7は、これらの製品よりも明らかにクオリティが上がっており、まるで別物。MPEGエンコーダを始め、録画系の回路の出来が全然違うようだ。CoCoonの時は、録画モードはHQでなければ辛いほどだったが、GX7では狭いDVDメディアに直接入れることを考えてか、SP以上ならばOKといったクオリティに仕上がっている。 さらにGX7では、再生系にもかなり力を入れている。録画時にもNRやTBCは効くのだが、再生時にはかなりキメの細かい設定が可能だ。画質パラメータとしては、以下のようなものがある。
上記のパラメータはすべてOFF+3段階に強度が調整可能だ。そのほかに再生画質調整として、コントラスト/明るさ/色の濃さ/色あいの4項目が調整できる。
とりあえず録るだけ録って、あとでじっくり画質調整ができるというのはなかなか気が利いている。モニタの特性と合わせながら、またコンテンツの質を考えながら適切な値を設定するわけだ。NRをMaxでかけるとさすがに多少残像を感じるが、プログレッシブ出力と組み合わせれば、高い効果が期待できる。残像を取るかノイズを取るかは、自分で判断すればいい。
■ 充実のDV編集機能 もう1つGX7のユニークな機能として、DVカメラ映像の編集機能がある。DVカメラの映像をDVDにできるデッキはいくつかあるが、ざっくり録って不要部分のカットができる程度、言うなれば普通にテレビ録画したファイルに対して行なえるのと同じことができる程度に留まっている。 しかしGX7では、録画・編集機能には3つのモードがある。まずワンタッチダビングは、単にテープの内容を丸ごとメディアに書き込むだけ。プログラムダビングは、テープ上で使いどころを指定して、それ通りにメディアに記録する。ディスク編集ダビングは、いったんテープの内容をディスクに録画し、ディスク上で編集する。ただしこのような編集機能を使うためには、使用メディアはDVD-RWでVRフォーマットにする必要がある。 GX7らしい使い方としてはプログラムダビングかディスク編集ダビングを使うことになるだろうが、実際にテープを転がしてリストを作っていくプログラムダビングは、技術的には見るべきところがあるのかもしれないが、方法論としては前時代的だ。そこでディスク編集ダビングを試してみた。 まず最初は、自動的にテープの内容がディスクにダビングされる。ここである程度テープの範囲指定ができるといいのだが、テープ頭まで巻き戻して録画してしまう。止めたいところでは任意に止められるのだが、テープ長によって画質モードの選択が必要になる。 ダビングが終わった後シーンを自動分割させると、編集ソフトのような感じで各シーンのサムネイルが表示される。これはDVカメラのスタート、ストップ地点でのタイムスタンプのギャップで分割するという、DV編集ソフトのキャプチャ機能によくあるアレだ。ただし50カット以降は1個のクリップとして扱われてしまうので、細かくキメ撮りしているような人には向かない。もっともそんなにキメ撮りしているぐらいの人なら、別途ちゃんとした編集環境を持っていると思うが。 取り込んだあとは、いらないシーンを削除したり、トリミングしたり、順番を入れ替えたりという作業をリモコンで行なえばいい。
さてここで筆者は大きな勘違いをしていたのだが、こうやって編集したディスクそのものが完パケになるものだと思っていたら、実は違うのである。このディスクは単に編集を便利に行なうための「ヤリクリ」として存在するだけで、要するにこの作業で得られるのは、編集した後のプレイリストなのである。 編集結果を完パケ化するためには、このプレイリストを使って、もう一度オリジナルのDVテープから別のディスクにバッチキャプチャを行なう必要があるのだ。早い話が、プログラムダビングのリストを一所懸命作っていたということになる。なーんだ、と思ったのは筆者だけだろうか。やはりこのあたりが、1メディアしか持たないレコーダの限界なのかもしれない。
■ 総論
例えDVDプレーヤーとの再生互換が低くても、コンシューマユースとしては、筆者は必ずしもDVD-RAMを否定しない。家人が使うのであれば、たとえDVDプレーヤーで見られなくてもレコーダで自己録再さえできれば何の問題もない。追記だ編集だといってフォーマット云々をいちいち教えなくてもいいのは楽ちんだ。またメディアがケースに入っているのも、子供がアメ玉くっつけたの猫がその上で昼寝したのなんのといった騒ぎを経験してみれば、安心していられる造りだ。 そんな中、DVD±RW 1ドライブのみというマニアックな仕様をひっさげたGX7の登場は、コンシューマ市場に対してはかなりの冒険である。もちろんDVDレコーダ/プレーヤーとしてみれば、画質にこだわった造りは好感が持てるし、基本性能は高い。しかし、再生互換以外にもうちょっと両RWメディアをサポートというアドバンテージが欲しかった。実際に使ってみると、-RWと+RWでできることが違う点に振り回されがちだ。 また画質設定に関しても、多くのパラメータがあってチューニングできるのだが、逆に言えば、いろいろな判断をユーザー側に任せている部分が多分にある。映像に対する目や、機能の意味を理解できるスキルがないと、めいっぱいの性能を引き出すのはなかなか難しいだろう。 それから根本的なところだが、単純な番組録画であっても、やはりHDDのような大きなバッファがないと使いにくいのではないか。今さらVHSみたいにメディア入れて2時間録れるだけ、みたいなマシンの面倒を見ていられるほどオレの人生暇かというと、世の中既にそういうペースではなくなってきているのだ。 何度も言うが、基本的な質は高いレコーダではあるので、これで今後HDD搭載のような展開が見られたり、CoCoonシリーズと緩やかにマージしていくといった動きが出てくるのであれば、かなりいいものになってくる可能性はある。
とりあえず現状のGX7は、DVDレコーダ黎明期である欧米ではそれなりにインパクトがあるかもしれない。マニアならともかく、日本の平均的なユーザーにはどうかなぁ、というのが率直なキモチだ。
□ソニーのホームページ (2003年5月28日)
[Reported by 小寺信良]
|
|