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第104回:プラグインにもなるノイズリダクションソフト
~ Biasの「Sound Soap」を試す ~


 米Berkley Integrated Audio Software(Bias)から、「Sound Soap」というノイズリダクションソフトが発売された。Windows、Macintoshのハイブリッドである上にスタンドアロン、VSTプラグイン、DirectXプラグインに対応する。

 本連載では以前もノイズリダクションソフトを比較しているが、今回もそれと同じ実験を行ない、このソフトの実力をチェックした。



■ VST、DirectXプラグインとしても使用可能

Windows版Sound Soap
 米国のBerkley Integrated Audio Software、通称Biasをご存知だろうか? Mac用の波形編集ソフト「Bias Peak」や、DAWソフトの「Bias Deck」で、Macユーザーには比較的有名な企業だ。特にBias PeakはMac用の波形編集ソフトの代表ともいえ、そのライト版である「Bias Peak LE」はCD-Rライティングソフトの「Toast with Jam」などにもバンドルされていたため、使っているユーザーも少なくない。

 ただWindows用には、これまで「vbox」というVSTプラグインを統合して利用するユーティリティが出ていたくらいで、あまり馴染みはないかもしれない。しかし、今回登場したSound Soapはvboxと同様にはじめからMac OS XとWindows XP用のハイブリッドとして発売された。国内では日本語のマニュアルをつけた形でM-AUDIO Japanが販売を行なっている。価格はオープンプライスで、店頭販売価格は約13,000円

 このソフト、Windows XPで使う場合はスタンドアロンとVSTプラグイン、DirectXプラグインの3通りで使うことができる。またMac OS Xの場合にもスタンドアロンとVSTプラグインのそれぞれで使えるようになっている。試しにスタンドアロンで動作させてみたほか、Cubase SX上でVSTプラグインとして、SoundForge 6.0上でDirectXプラグインとして動作させてみたが、問題なく動いてくれた。どの場合も基本的にはまったく同じ画面だ。Sound Soapは、この画面しかないソフトともいえる。


■ 音楽用というよりビデオ用?

 Sound Soapで除去可能なノイズは大きく分けて「ブロードバンド(広帯域)ノイズ」、「50Hz、60Hzハムノイズ」、「低周波の轟音ノイズ」の3種類。

 このうちブロードバンドノイズというのは、ルームノイズ、テープのヒスノイズ、ロードノイズ、エアコンノイズなどを指している。ハムノイズは電源のブーンという音、低周波の轟音ノイズというのは、英語で書くとRumble Noise。これは、通常40Hz、あるいはそれ未満に発生する一種の低周波ノイズとのこと。マイクロフォンで収録された風きり音などのノイズ、DVなどのオーディオトラックに含まれる自動車などの背景音である。

 ここまでの内容を見ておやっと思ったのは、音楽用というよりもビデオのオーディオトラック用と感じたこと。実際、ターゲットユーザーを見てみると「ホームムービーやプロフェッショナルなオーディオエンジニアとビデオエディタなど多種多様なユーザーのためにデザインされています」と書かれている。

 今回の実験にも利用するレコードのプチプチ音であるクリップノイズ、クラックルノイズに関してはサポートされていない模様で、この実験でSound Soapを評価するのはあまり正しい方法ではないのかもしれない。

learn noiseボタン
 とはいえ、やはり従来どおりの実験をしていくわけだが、実際に実験に入る前に、画面の構成やユーザーインターフェイスなどについて簡単に見ておこう。

 画面中央下側にある「learn noise」と書かれたボタン。これがオールマイティーボタンともいえるもので、ここをクリックするとオーディオ信号とノイズ信号を見極め、上部の左右にあるNoise TunerとNoise Reductionそれぞれのレベルを自動設定するようになっている。

 Noise Tunreと、Noise Reductionはそれぞれ手動でも設定できるのだが、前者はヒス・バックグラウンドノイズ帯域を調節するもの、後者はそのノイズリダクションの量をコントロールするものだ。使い方としてはlearn noiseボタンを使って大雑把に設定し、各パラメータでもう少し細かく設定するという流れになる。

 ハムノイズおよび轟音ノイズに関しては、上記とは別途用意されている。ハムノイズに関しては見てのとおり、50Hzまたは60Hzを選ぶだけ。轟音ノイズについては、ハムノイズ設定の右側にある「Remove Rumble」というボタンを押せばいい。

 なお、これらノイズリダクションとはやや別ものとなるが、Remove Rumbleのちょうど反対側の左サイドに「Preserve Voice」というボタンがある。これは人間の音声の周波数範囲以外を削除するというもので、会議やインタビューなどを録音した音から人の声以外を削除するときに利用できる。


■ 各ノイズを用意して実験。ヒスノイズに効果あり

 まずはヒスノイズから検証した。learn noiseボタンは、ノイズだけの状態の音のときに利用すると効果的とあったので、それを試してみた。ボタンを押すと、自動的にNoise TunerとNoise Reductionが働き、ノイズが結構きれいに消える。

 それぞれのパラメータを手動で少し調整してみたが、それほど改善はされず、かえって音質が悪くなってしまったので、デフォルトの状態で作った音を保存した。それでもオリジナルのサウンドに比較すると、音質は劣化しており、やや妙な感じになってしまっているが、これだけのノイズリダクションをかけているので、仕方ないところだろう。

 Windowsの場合、これはWAVファイルとなるが、このままだとファイルサイズが大きいためMP3に変換したものを参考用として掲載した。

サンプル
オリジナル original.mp3(469KB)
オリジナル+ヒスノイズ hiss.mp3(472KB)
オリジナル+ハムノイズ hum.mp3(472KB)
オリジナル+クラックルノイズ cracle.mp3(472KB)

適用結果
ヒスノイズ hiss.mp3(472KB)
ハムノイズ hum.mp3(472KB)
クラックルノイズ cracle.mp3(472KB)

※オリジナルに各ノイズを乗せた後、Sound Soupでノイズリダクションを適用している。

 一方、ハムノイズの方はというと、これがちょっと苦戦した。単純に「Remove Hum」の設定を50Hzにすればいいだけかと思ったのだが、どうもそれではうまくいかない。結局Noise TunerとNoise Reductionのパラメータを併用したものの、50HzにしてもOffにしてもほとんど違いを感じられなかった。

 出来上がった音を聞くと、ハムノイズはかなり除去できているが、50Hzにしても60Hzにしてもほとんど差がないところは、ちょっと納得のいかない。また、ハムノイズを消すと、ヒスノイズの場合よりもさらに音質が劣化している。もしかするとサンプル版を使ったためのバグだったのかもしれないが、もし実験に問題があるようなら、また改めて報告したいと思う。これについても、同じく結果をMP3で掲載した。

 最後のクラックルノイズに関してだが、これについてはそもそも設定がなかったため、轟音ノイズということで扱ってみた。結果的にはある程度プチプチ音は緩和されたが、基本的には効果はあまりないといえるものだった。

 サンプル曲【Arearea】マキシシングル:唄わなきゃ
 AreareaはRINO(ボーカル)、YUKI(ピアノ)の2人からなるポップスユニット。最新アルバムは2001年10月発売の「ユケオトメ」。公式サイトでは各曲をMP3形式で視聴できる

Arearea (C)REALROX
http://www.arearea.net/


 以上が、Sound Soapの結果だ。試しに、おそらく本来の使用目的であろう、インタビュー録音を使ってPreserve Voiceボタンを使ってみたところ、比較的キレイになった。そうした使い方にも結構利用できそうではある。

 インターフェイスもシンプルであり、スタンドアロンでもプラグインでも利用できるので、柔軟性の高いソフトといえるだろう。

□Biasのホームページ
http://www.bias-inc.com/
□関連記事
【2002年5月29日】【EZ】EDIROL 「音楽CD制作スタジオ」のノイズリダクション機能をテスト
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20021111/dal77.htm
【2002年7月8日】【EZ】機能充実のノイズリダクションソフト
~MAGIX Audio Cleaning!~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20020708/dal61.htm

(2003年6月16日)


= 藤本健 = ライター兼エディター。某大手出版社に勤務しつつ、MIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL」(リットーミュージック)、「MASTER OF REASON」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。

[Text by 藤本健]


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