■ この手の製品は燃えるねぇ 一時はメモリータイプのMP3プレーヤーもずいぶん流行ったものだが、最近では差別化を図るためにユニークな機能を積極的に搭載し、ミュージックプレーヤーという領域に止まらないマニアックな領域に向かって成長しつつある。ボイスレコーダやラジオなど、同じ音声系の機構は早くから搭載されていたが、液晶モニタを生かして写真が見られるようになったりと、映像系も徐々に取り込み始めている。 その一方で映像系のデバイスもこのあたりの技術をベースに多機能化してきており、古くはセイコーエスヤードの「Meism」、Panasonicの「D-Snap」、シャープの「MT-AV1」など、ポータブルテレビとMP3プレーヤーの多機能性を合体させたような機能を持つものが多く生まれてきた。 NHJのMPEG-4 Multimedia Player V@MP「MPM-101」も、そんな流れの中から生まれてきた製品と言えるだろう。小型の筐体にテレビ受信、テレビ録画、動画・静止画カメラ、MP3プレーヤーといった機能を凝縮させている。今回は、そのMPM-101(実売45,000円前後)をお借りすることができたので、さっそくその機能をチェックしてみよう。
■ 質の高いボディ 最初はいつものようにボディチェックである。ボディは樹脂製ではあるが、チタンっぽい塗装が綺麗で、安っぽさはない。ただ前面背面に配置された丸いポツポツのデザインは滑り止めという意味もあるのかもしれないが、日本人には多少クドいかなという気もする。
ニュースリリースの写真では気が付かなかったのだが、実はこのMPM-101、本体が2つに分離するのだ。メインとなるのがモニタが付いている方で、もう1つの方は「テレビチューナ/カメラパック」(以下カメラパック)という扱いになる。 本体のほうにバッテリやSDメモリーカードスロットがあり、録画した番組を見るだけとか、MP3を聴くだけという時には、この本体だけで動作する。テレビを録画したり、カメラで撮影したりというときには、このカメラパックを本体と合体させる。カメラパック単体では動作しない。本体には一応6MBのフラッシュメモリを内蔵しているが、これはまあ写真や動画を撮るといった時のちょっとしたバックアップ用として考えるべきだろう。本格的な使用では大容量のSDメモリーカードを使用することになる。
合体するからには両方に金属接点があるわけだが、この辺が執拗に念入りに作られている。カメラパック側の凸型接点は、スライドカバーで保護されており、合体するときは指で押し下げて接点を露出させる。本体の方は凹型接点だが、ここにはゴムカバーが付けられるようになっている。合体するとこのガムカバーがいらなくなるわけだが、それをカメラパック側に収納するための溝が掘られている。 また本体底面にはクレードルと接続するための接点があり、ここにもゴムカバーがある。クレードル接続するときはこのゴムカバーがいらなくなるのだが、これもクレードル側に収納するための溝がある。 次に外部端子類を見てみよう。まず本体だが、左側面に端子類が集中している。上からUSB、ヘッドフォン、AV出力、DC入力端子だ。ここには一連の端子用カバーが繋がっているので、イヤホンで音声を聞きたいだけなのに全部剥がれてぺろんぺろんする。ここだけがナゼかほかの部分とテイストが違うみたいだ。カメラパックの方は、右側にアンテナ入力端子があり、RF線を付属の変換ケーブルで接続できるようになっている。
クレードルは、充電台以上の機能がある。下部に小さなスピーカーがあり、テーブルにおいてミニテレビとして使えるようになっている。背面にはDC入力とUSB端子、オーディオ出力がある。
■ テレビ品質にはかなり満足 MPM-101のメインは、テレビ関係の機能だ。カメラパック部にあるロッドアンテナは伸ばせば50cmぐらいになるが、感度としては一般的なポータブルテレビと変わらない。一通り映るが、まったくノイズなしとはいかない、といった程度だ。RF入力による視聴なら、当然だがかなり綺麗。画面自体はそう大きくないものの、液晶の品質も良く、解像度やコントラストもしっかりしており、満足できる。 そしてMPM-101では自前でチューナを持っているので、本体のみでタイマー録画が可能だ。D-SnapやMT-AV1では、AV入力に対しての自動録画まではできたが、これはテレビ番組を録画するには、ビデオの予約録画などと連動させる必要があった。しかしMPM-101ではそのようななーんかすっきりしないガチャガチャしたセッティングが必要ない。
画質設定としては、スーパーファイン、ファイン、ノーマル、エコノミー、ロングの5種類と豊富。圧縮品質にはかなり気を付けているようで、エコノミーやロングでもそれほど画質が悪いという感じはしない。ただしエコノミーではコマ数を3fps、ロングモードでは2fps、激しいところでは1fpsぐらいまで落とすので、動画として認識できるかが微妙なところだ。普通に楽しもうと思ったら、少なくともノーマル以上で録るべきだろう。 本来ならばここで各画質モードのサンプルムービーを掲載するところだが、MPM-101で収録したMPEG-4ファイルはどうやってもPCでは再生できなかった。説明書にも、「本機以外では再生できない」との注意書きがある。一応ファイルのヘッダにはRMP4と書いてあるので、Sigma Designsのアレかと思ってコーデックなどインストールしてみたのだが、ダメだった。同様にRMP4でエンコードしたファイルをMPM-101に転送しても、再生できないようだ。PCと動画ファイルの連携ができればいろいろと使い方も広がると思うので、このあたりは有志の解析を待ちたい。 録画した番組視聴で気になった点は、オーディオの品質だ。OAのテレビ視聴では全く気にならないが、録画した番組の音声はS/Nが悪い。映像品質は良好なので、この点が残念だ。
■ カメラはいらなかったかも ではせっかくカメラパックもあることだし、これで撮影してみよう。デジカメとしてみると、面積はカシオのEXILIM並みと言えなくもないが、厚みはその3倍ぐらいある。撮像素子は有効画素510×492ドットのCMOS。光学ズームも何もない。解像度は静止画320×240ドット、動画はスーパーファインで320×240ドット、それ以下は240×160ドットだ。
静止画撮影では、本体液晶側のRECボタンを押すと撮れる。動画はRECボタンが撮影開始で、十字ボタンの真ん中を押すとREC PAUSEとなる。REC PAUSEで撮っていくと、1つのファイルで繋ぎ撮りになる。画角に関しては資料がないが、撮った感じでは35mm換算で50mm前後ではないかと思う。 CMOSと聞いたとたん多くの人は期待しないものだが、MPM-101の撮影品質も、かなり低い。静止画撮影では画質モード固定だが、光量のあるところではほとんど白飛びしてしまって、ちゃんとした絵を撮るのは無理だ。 動画の画質は、テレビ録画同様5段階から選べる。雰囲気的には8mmフィルムみたいな画質で味があると言えないこともないのだが、圧縮品質を云々する以前にいろいろ問題あるでしょという感じだ。また静止画はPCに接続して吸い上げることができるが、動画撮影はファイルを吸い上げてもPCで見ることができないので、何かに利用しようと思っても難しい。 サンプルの動画はアナログ出力をキャプチャして編集し、MPEG-2 3Mbpsでエンコードしたものだ。元々の画質があまりよろしくないので、とりあえずMPEG-2のエンコーダの影響はあまりないものと仮定して見てほしい。 まあデバイスとしていろいろできますというところをアピールする意味では、カメラ撮影もできたほうがインパクトはあるだろうが、この品質では最近のケータイのほうがよっぽど綺麗に撮れるぐらいなので、使い道はあんまりないだろう。
■ 総論 総合的に評価すると、V@MP MPM-101は、製品としての品質はかなりいい。ボディの造りも丁寧だし、映像品質も高い。MP3再生はそれほどいろいろな機能が付いているわけではないが、単にメディアにMP3ファイルをコピーするだけで聴けるため、面倒がない。予約録画まで単体で完結できるデバイスなので、運用上も制限が少ない。 ただ惜しいのは、せっかくUSBストレージクラスで本体がマウントできるのに、対PCで映像のやりとりができないところだ。テレビ録画はMPM-101本体でしかできず、PCで録画した番組をなんらかの形にエンコードして持ち出して見るということができない。筆者はポータブルなテレビビューワーというジャンルは、このあたりの連携がうまくいけばかなりプレイクすると思っている。 もしかしたらなにか抜け道がありそうな気がするのだが、現状では自分で撮影した動画でさえもPCで見られないというのは、機能として矛盾がある。もっともキビシイという意味では撮影クオリティ自体がかなりキビシイのだが、これが動画ファイル転送可能なエクスキューズとして機能するのであれば、付いている意味もあろうかというものだ。 それから操作性だが、もうちょっと色気というか、面白みのあるメニューだと良かっただろう。現状ではまるでBIOS画面みたいである。またメニューの階層の深さの割には、操作ボタンが少なすぎるようにも感じる。一発でトップに戻るボタンとか欲しくなってしまうのだ。内蔵フラッシュメモリの残り全部使ってもいいから、もう少しソフトウェアの整理というか、ブラッシュアップが必要なのではないかと感じる。
個人的にはチューナ部はクレードルに内蔵して、もっとシンプルな薄型のレコーダ兼ビューワーで十分だったような気がする。あまり大きく構えないで、毎晩ニュース番組を録って翌朝通勤時に新聞代わりに見るといった軽い用途なら、普通のサラリーマンでもちょっと欲しくなるデバイスになったのではないかと思う。
□NHJのホームページ (2003年6月18日)
[Reported by 小寺信良]
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