■ 「アドバンスト・コレクターズ・エディション」とは?
今回も再販作品を紹介。購入したのは「レッド・オクトーバーを追え!」。7月25日に発売されたDVD-BOX「ジャック・ライアン アドバンスト・コレクターズ・エディション・ボックス」にも収められており、単品価格は3,980円。 BOXにはほかにも「パトリオット・ゲーム」、「今そこにある危機」が含まれており、UIP配給のいわゆる「ライアン三部作」を集めたものとなっている。 3作品とも従来版が発売済みだが、非スクイーズ収録で、画質の評判も芳しくない。それだけに今回の再販が「スクイーズ収録、かつDTS音声を追加」と聞いたときは思わず小躍りしたものだ。 中でもレッド・オクトーバーの画質の悪さには以前より閉口していた。ボロボロの輪郭や画面中を舞う圧縮ノイズが気になってしようがない。大好きな作品なだけに、購入直後は食欲をなくすほどがっかりしたものだ。 今回の再販版はパッケージを一新。トールケースを採用するところは同じだが、素材を黒から青の半透明に変更。また、ディスクもピクチャーディスクとなった。ジャケットデザインにも一部手が加えられているので、在庫品の旧盤と並んでいた場合でも、間違えることはないだろう。 ディスクは旧盤と同様、片面2層の1枚組。本編仕様の変更のほか、ジョン・マクティアナン監督のコメンタリートラックと、28分のメイキング映像が特典として収められている。旧盤には劇場予告編くらいしか特典がなかったので、これもファンにはうれしい進化だ。また、地味だったメニューも、今風のやたらと派手なものに変わっている。
■ 潜水艦映画に駄作なし 冷戦下のソ連、ムルマンスク近郊のポリャルヌイ水路。核ミサイルを搭載した新鋭原子力潜水艦レッド・オクトーバーが、大西洋へ出航した。指揮をとるのは名艦長マルコ・ラミウス(ショーン・コネリー)。スクリュー音を追跡する米潜水艦ダラスの前で、レッド・オクトーバーは静かにその姿を消した。米国に近づく見えない潜水艦が、米ソ関係に緊迫をもたらす。しかし、CIA分析官のジャック・ライアン(アレック・ボールドウィン)は、ラミウスの目的を米国への亡命と推理した。 それを裏付けるかのように、全力を挙げてレッド・オクトーバーを追うソ連艦隊。その間にも米東海岸へと近づくレッド・オクトーバー。米国、ソ連、ラミウスの思惑が交差する中、亡命を信じるライアンは、独力でレッド・オクトーバーを追跡中のダラスに乗り込む。 原作はトム・クランシーの同名ポリティカルサスペンス。その後、彼の一連の作品が「パトリオット・ゲーム」、「今そこにある危機」と映画化されたのはご存知の通り。最近では、自身が製作総指揮を務めた「トータル・フィアーズ」がシリーズ最新作となっている。 個人的に、ライアンシリーズで最も気に入っているのがレッド・オクトーバーだ。潜水艦映画といえば、息詰まる駆け引き、見えない敵への緊張感、極限状況での決断といった具合に、密閉空間というシチュエーションを活かしたドラマ性の高さが魅力。中でもこの作品は、人と人の駆け引きがスリリングかつクールで、何度見ても感心してしまう。思わず一挙手一途に注目してしまうショーン・コネリーはもとより、スコット・グレン、サム・ニール、ジェームズ・アール・ジョーンズといった脇役陣も渋い活躍を見せる。 監督は「プレデター」、「ダイ・ハード」を手がけたジョン・マクティアナン。撮影監督は、「ダイ・ハード」、「ブラック・レイン」を撮り、その後「スピード」を監督することになるヤン・デ・ボン。このコンビの息は本作でもぴったり。ヤン・デ・ボンの撮影は、今見てもほとんど古さを感じさせない。ダラスが海面から飛び出すシーンを筆頭に、大画面で見ると鳥肌モノの映像が多い。また、海中の潜水艦や魚雷などのCGはILMが担当。現在の基準から考えるとさすがに原始的だが、当時はそのリアルさとスピード感に息を呑んだものだ。
■ スクイーズ化の効果は高いが…… 新盤で最も気になるのが、スクイーズ化で画質がどれほど変わったかだ。まず、曇り空で目立っていたノイズがきれいに消えている。旧盤では、空、雪山など、白っぽいものすべてに圧縮ノイズがまとわり付いていたが、新盤ではほとんど気にならない。 また、艦内のノイズも低減したほか、原色をはじめ色のキレが良くなった。べたっとしていた赤や青の光にも、透明感が感じられる。輪郭のくずれもほぼなくなり、全体的に茶色がかっていた黒もしっかり沈んだ。そのため、コントラストも少しだけ上がったに見える。画質については大幅に向上したといって良い。特に、輪郭のすっきり感は、スクイーズ化によるところが大きい。 ただし、高画質化したといっても、印象は「3年前の高画質」といったところか。最近の作品に見られるような、きりっとした輪郭ではない。薄暗い部分が煮詰まったようにベタっとしているのも気になる。また、階調も増えてはいるものの、それほどきめ細かくはない。平均ビットレートは、旧盤が6.51Mbps、新盤が6.60Mbpsだった。数値的にほとんど変化はない。
潜水艦映画といえば、敵の接近を知らせるアクティブソナー音、水圧にきしむ船体など、音響効果も重要な要素だ。艦内が狭いので、大抵全方位から音が反響する。この作品でも効果音は秀逸で、第63回('90年度)のアカデミー音響効果編集賞を受賞している。 もともと、旧盤のドルビーデジタル5.1ch(448kbps)に不満はなかったが、新盤のDTSでは音の切れが良くなり、迫力が増加した。特に、レッド・オクトーバーがダラスに向けて発したアクティブソナーの音がすごい。旧盤でもすごかったが、巨大な音波がぶつかったときの衝撃を全方位から味わえる。また、艦内の環境音にも改めて感心するなど、臨場感は抜群だった。ただし、セリフの抜けは旧盤も新盤も今ひとつ。 なお、新盤のドルビーデジタル5.1ch(448kbps)と旧盤のドルビーデジタル5.1chの違いは判別できなかった。
■ ぼやき系コメンタリーに思わず苦笑 特典で追加されたのは、ジョン・マクティアナン監督のコメンタリーとメイキング。 コメンタリーでのジョン・マクティアナンは物静かで、あまりコメントするタイプではない。ところどころで「ここは本当はこうしたかった、いやこうなるはずだった、だとしたらどうだったでしょう、ねえお客さん」といった完全なぼやき系。久しぶりに作品を見て、やりたかったことを思い出しているようだ。作品に対する変わらない情熱に感心した。 もちろん、キャスティングや撮影の裏話も忘れてはいない。大御所ショーン・コネリーが船酔いでセリフをとちる話や、パナビジョンカメラ2台を海中に落としてしまったという間抜けな話など、笑えるエピソードも多い。 一方メイキングは、公開当時のものではなく、スタッフ、キャストともすっかり中年・熟年の姿で登場。エンドクレジットによると2002年の作品となっている。出演者は、製作のメイス・ニューフェルド、マクティアナン監督、ヤン・デ・ボン、ショーン・コネリー、アレック・ボールドウィンなど。映画化権取得までの道のり、キャスティング、CGなどを解説している。初めて聞く内容も多く、個人的には大変楽しめた。 特に特撮の解説は比較的詳細で、全長180mにおよぶレッド・オクトーバーの迫力を、模型を使っていかに再現するかが語られられている。最近のCG全盛のアクション映画と比べるのも一興だろう。なお、メイキングはスクイーズで収録され、画質も良好だ。
■ もう少しがんばってほしかった画質。とりあえずファンは買いかも 残念なのはやはり画質。最近作と同等のクオリティでよみがえるのかと期待していただけに、若干肩透かしをくらった状態だ。とはいえ、画質の悪いDVDの見本のような旧盤に比べると、格段にきれいになっているのは確か。熱心なファンなら買い替えをお勧めする。新しい特典も満足できる内容だった。 最近、高画質を謳った再販シリーズが増えてきたが、そうなると旧盤との交換サービスなども一考してほしいところだ。中古DVDの買取環境が整いつつあるものの、ここまで再販が増えると、発・販元主導による一律価格での交換システムがあってもいいのではと思う。私の場合、旧盤にしかない特典を惜しむあまり、ほとんど手元に残しているのが現状だが。
□パラマウントホームエンタテインメントのホームページ
(2003年7月29日) [AV Watch編集部/orimoto@impress.co.jp]
|
|