■ 1分あたり約15円でお買い得(?)なDVD
今までこのコーナーで取り上げたDVDは映画がほとんどだが、今回は趣を変えて、TV番組をまとめた「働くおっさん人形」のDVDを紹介したい。 働くおっさん人形は、TVで放送されている時も気になる番組ではあったのだが、早朝の放送ということもあり途切れ途切れにしか、見ることができなかった。 また、今回発売されたDVDの本編収録時間は190分と実に3時間以上に及び、価格も2,857円と安い。1分あたりに直すと約15円で、かなりお買い得な価格となっている。 そんなこともあって、発売前から購入は決意していたのだが、地味めなタイトルということもあり、発売当初はあまり店頭で見かけなかった。 で、くまなく探してまで買うというほど欲しいわけでもなかったので、すっかり忘れていた。しかし、1週間ぶりにぐらいにDVD屋を覗いていみたら、結構目立つ場所に置かれていたので、早速購入した。 こういうタイトルは売り上げランキングの上位には入らないだろうが、じわじわと人気が出てロングセラーになるのではないかと、ひそかに思っている。
■ どこにでもいそうで、どこにもいない、おっさん5人 働くおっさん人形は、2002年10月から2003年5月の日曜早朝(5時15分)に関東地区をメインにフジテレビ系で放送されていた10分番組。番組内容を簡単に説明すれば、松本人志が日本の働くおっさんをインタビューする「ヒューマンドキュメントバラエティ」ということになる。 出演者は松本人志以外は、どこにでもいそうで、どこにもいない、少なくとも今までに出会ったことのないような5人のおっさん達。この5人の素人のおっさんが月変わりで登場し、別室から松本人志がインタビュー形式で質問などを投げかける。 その過程で、おっさんが顔でラップを破ったり、タコに吸い付かれたり、いったい何個の洗濯バサミがつくのかなど色々な挑戦をするほか、一瞬だけおっさんの夢の職業が叶えられたりもする。 「働くおじさんへの応援歌」がコンセプトで、「松本人志が世の中の働くおじさんに贈るシュプレヒコール」ということになっているが、その実、松本人志の素人いじり。とも思えるが、実際に見ると、ちょっと違っていて、あまりにおっさん達のキャラクタが強すぎので、おっさんの面白さに圧倒されるのだ。 出演するおっさんは、以下の5人(以下、敬称略)。このほかに、おっさん5人が一同に介した「おっさんスペシャル」も収録する。
当然のことながら、おっさん達の面白さだけでなく、松本人志のインタビューの呼吸のとり方のうまさ加減が際立つ。もちろん、これを企画して構成しているだけでも、すごいのだが……。 個人的には、どうでもいいような小さな嘘をつく福田浩司に、ハマってしまった。例えば、もう、以下のやり取りの、間合いのよさは、まるでプロの漫才師のようだ。
松「昨日の夜とかは何食べました?」 福田浩司編は全編こんな感じで、特に最後の霊を見たという話で、絶妙なタイミングでかぶせていき、最後に嘘だと認める展開には、爆笑させられた。
■ チャプタが設定されていないのが残念 DVDは、各おっさん5人分とスペシャル、特典でタイトルが分かれている。そのため、DVD Bit Rate Viewerのグラフが6個になってしまったので、グラフはまとめて別ページに掲載した。 DVD Bit Rate Viewerで見た、平均ビットレートは全タイトルとも5Mbps弱と低めだが、そもそも画質を云々するようなDVDでもないだろう。それに、基本的に固定カメラで撮影されているので、圧縮で汚くなっているという感じもない。ただ、民生用DVで撮影したような、淡い色彩が少し気になったぐらいだ。なお、音声はドルビーデジタル2ch(192kbps)で収録されている。
映像特典としては、DVD「働くおっさん人形」のCM集、中野さんの新曲のプロモーション映像を2曲分収録している。どちらも、かなり面白いので必見だ。 ただ、残念なのは、基本的に全体タイトルともチャプタが設定されておらず、「このおっさんのこのエピソードが見たい」といった時に不便なこと。また特典として、各おっさんの直筆プロフィールが静止画で収録されているのはうれしいのだが、そのプロフィールの文字が薄くてかなり読みづらいの気になった。 封入特典としては、各おっさんのサインを縮刷したシートが入っている。そして、その裏に放送終了後に届いたという野見さんからの企画証(原文ママ)が掲載されている。45歳のおっさんが書いた、その内容、というより字は必見である。こんな、45歳のおっさんがいることに、いろんな意味で改めて感動した。
■ お笑いマニア必携のDVD! 個人的には、ダウンタウンは、今や伝説の番組となった「4時ですよ~だ」から見ている。2丁目劇場には行ったことはないが、NGK(なんばグランド花月)には、ちょくちょく行っていたので、舞台で漫才するダウンタウンも、何度か見たことがある。 当時から、他の漫才コンビとは一線を画しており、特に豚の花子のネタは絶品だった。ちなみに、最初のころから台本は松本人志が書いていたという。 その後、東京に進出してレギュラー番組を持ち、さらには松本人志が書いた本がベストセラーとなり、一時期、松本人志は「天才」ともてはやされた。ただ、個人的には、そのころは、マニアックな難しい笑いを、多くの人に向かってやっていて、あまり好きではなかった。 しかしここ数年、肩に力を入れず、わかる人だけにマニアックな笑いを提供するようになってきた。働くおっさん人形は、その流れの中にある作品といえるだろう。この作品を見れば、松本人志が天才かどうかわからないが、他の人が考えないことを考える人であることはわかる。 ただ、残念なのはスタッフの笑い声は邪魔なこと。できれば、松本人志とおっさんの一対一のバトルが見たかった。スタッフが後ろで笑っていると、テレビの向こう側だけで盛り上がっているようで、好きになれないのだ。 とはいえ、お笑いマニアなら笑いの一つの形を知るために、見ておかなければならない作品であることは間違いない。
□R&C Japanのホームページ (2003年8月19日) [AV Watch編集部/furukawa@impress.co.jp]
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