■ USBメモリープレーヤーってやたらと多くない? 最近やたらと製品数が増えていると感じるのが、USBメモリ型のシリコンオーディオプレーヤー。元々数年前からPC用外部ストレージとして普及しているUSBメモリに、オーディオプレーヤー機能を組合わせたスタイルなので、「御社はメモリメーカーですよね?」という会社まで市場に投入しており、まさに雨後の竹の子状態。 あまり各社製品に差がないような気がしていたのだが、最近は液晶ディスプレイの搭載などで高機能化、差別化を図るメーカーも増えてきている。そんなわけで今回は、クリエイティブメディアの最新USBメモリープレーヤー「NOMAD MuVo NX」と、シーグランドの「オトモ・カプセル」をテストした。実売価格はMuVo NX 128MBが約17,800円、オトモ・カプセル 128MBが約14,800円といったところ。 両製品とも、液晶ディスプレイ搭載のUSBメモリープレーヤーで、WMA/MP3の再生に対応。さらにMuVo NXでは、ボイスレコーディング機能や同社製スピーカーへのUSBオーディオ出力「M-PORT」対応などの機能を搭載。 一方の「オトモ・カプセル」は、付属の「ドレスアップシール」で、ボディデザインを自由に変更できる。いずれも一風変わった特徴を持った製品だ。 ■ 差別化を図った本体仕様 MuVo NXは、バッテリ部と、USBメモリの2ピース構成のオーディオプレーヤで、ブルーとホワイトの2色のバッテリーパックが同梱されている。イヤフォンやインストールCDのほか、アームバンドも付属する。
一方のオトモ・カプセルは、MuVo NXよりやや大きめのUSBメモリ部と、バッテリ部から構成される。バッテリ部は、クリアーホワイトとなっているが、付属の8種類の「ドレスアップシール」により、デザインを変更できるのが特徴。また、ネックストラップや延長ケーブルも付属する。
本体を比べてみると、36.7×16×74mm/約43gのMuVo NXの方が小型・軽量で取り回しは楽だ。MuVo NXにも首かけストラップ用のホールがついているので、首掛けが嫌いで無い人は、首から下げるという利用法が一番適しているとだろう。 液晶はMuVo NXが2行、オトモ・カプセルは4行表示が可能となっており、オトモ・カプセルのほうが見やすい。ただ、オトモ・カプセルはシールを貼らないと、全面クリアホワイトのプラスチックのためとても安っぽい。シールを貼っても安っぽさは変わらないが、おもちゃっぽい印象にはなる。対してクリエイティブは品質感は高くないものの価格相応の風格は感じられる。
■ 転送時の注意 ともに、USBストレージクラスに対応し、直接パソコンのUSBコネクタに指し込むだけで、データだけでなく、オーディオの転送も可能。扱いは簡単だ。25.1MBのMP3ファイルの転送時間はともに約45秒。
ただしMuVo NXは、現在MP3のID3タグの文字コードがUnicodeのみの対応となっており、Windows環境で利用されるShift-JISには対応していない。そのため、Unicode以外で日本語ID3タグを入力したMP3ファイルは文字化けしてしまう。付属ソフト「MediaSource」の文字コード変換機能を利用して転送すれば、Unicode変換されて、日本語ID3タグの表示も可能となる。 クリエイティブでは、ファームウェアアップデートにより、Shift-JIS対応を行なうとしているので、早急な対応を期待したい。 MuVo NXでは、MediaSourceにより、MP3/WMAファイルの作成が行なえるが、オトモ・カプセルには特にエンコードユーティリティなどは付属しない。また、MediaSourceでは、USBメモリの容量にあわせて、MP3/WMAを問わず転送元のファイルから低ビットレートWMAに変換する「SmartFit」機能も搭載している。 ■ ヘッドフォンの品質はともにイマイチ。操作感は良好 付属のヘッドフォンで試聴。MuVo NX、オトモ・カプセルともどもお世辞にも高そうには見えない品質のものだが、実際どちらも性能はイマイチ。特にMuVo NX付属のものは、低域の質感が独特で、再生レンジも狭いため、独特の音になってしまう。オトモ・カプセルのものもMuVoよりクセはないが、デザイン的にはより安っぽい。ヘッドフォンは好みのものに交換したほうがいいだろう。
ヘッドフォンを変えて聞いてみると、若干オトモ・カプセルのほうがセパレーションがよく、クリアな印象だ。もっともあまり大きな差は感じないし、ポータブル用途には十分なクオリティを有していると思う。ともにイコライザ機能を備えており、MuVo NXはNormal/Rock/Classical/PoP/Jazz/Castum EQの6種類を、オトモ・カプセルではFLAT/JAZZ/CLASSIC/ROCK/POPの5種類が用意される。 操作系はどちらも似ており、操作ダイヤルとボリュームボタン、再生/停止ボタンを備えている。ダイヤルの長押しで、イコライザ設定やリピート設定などが行なえ、リピートオールやシャッフル再生などが可能なのも同じだ。オトモ・カプセルでは4行表示のため前後トラックの確認もでき、視認性/操作性とも2行表示のMuVo NXに比べ、やや上回る。 両製品ともに再生中に電源をOFFにしても、再生曲やボリュームの状態は保持される。MuVo NXの前モデルMuVoでは曲リジュームに対応していなかったので、前作から比べるとかなり使い勝手が向上したといえる。また、MuVo NXでは設定メニューから「Skip Folder」を選択することで、フォルダ階層の移動も可能となっている。 さらにマイクを内蔵し、ボイスレコーダとしても利用できる。記録形式は、モノラル/ADPCM形式。試しに記者発表会の模様を録音してみたが、テープ起こしにもきちんと使えるクオリティ。付加機能としては十分な性能を有している。 MuVo NXのもうひとつの特徴としてM-PORTへの対応も挙げられる。M-PORTは同社製のスピーカーシステムなどとUSB接続するだけで、オーディオ出力を可能にする独自の規格だ。 今回M-PORT対応の「I-TRIGUE L3450」と接続して利用したが、特に何の問題も無く、MuVo NXからオーディオ再生が行なえた。なお、試しにオトモ・カプセルを接続してみたが、こちらは再生できなかった。
■ 価格とデザイン、付加機能を総合的に判断 両製品ともUSBストレージとしても利用でき、プレーヤーとしての操作感もこなれており、特に不満に思うことも無い。どちらも製品としてはうまくまとまっており、購入の決め手となるのは、価格と付加価値のバランス、あとはデザインの好みといったところになるかと思う。 オトモ・カプセルでは「ドレスアップシール」によるデザインの変更が可能なところ、クリエイティブではボイスレコーディング機能に価格分の魅力を感じるか? といったことがポイントとなるだろう。 個人的には3,000円程度の価格差であれば、仕事柄ボイスレコーディング機能は欲しいし、M-PORTの取り組みにも興味があるのでデバイスとして面白いと思うのはMuVo NX。ID3タグのShift-JIS対応は早急に行なって欲しいと思うが、液晶ディスプレイの追加やボイスレコード対応、曲リジュームサポートなどの、前モデルMuVoの不満点をことごとく修正してきており、この市場の進歩の速さをうかがわせる。 □クリエイティブメディアのホームページ (2003年8月29日)
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