■ 意外にあるVHS to DVD市場 VHSをDVDにするというニーズは意外にあるもので、以前お送りした「DaViDeo for VHS」も、意外にアクセス数があった。だいたいこのコラム、平均するとハードウェア物は人気があってもソフトウェア物は人気がないのが通常なのである。もっともあれは「DaViDeo」という名前で興味を持った人も多かったのかもしれない。 さて、あの時の実験ではMotionJPEGのキャプチャがうまくいかなかったのだが、やはり使用したカード(NOVAC PrimeTV 7133)が悪かったようで、後日別カード(PROLINK PixelView PV-CX881PL)で試したところ、あっさり動作した。本来ならば同じ製品の別カードを用意して、個体の問題であるのかを調査すべきだったろうが、そこまでやって報われなかったらどうしようとか考えると、気持ちが萎える。いくらWDM対応カードならいいとはいえ、やっぱり相性とかいろいろあるとめんどくさいよなぁ。 そんなわけで、ちゃんと動作保証のあるハードウェアとソフトウェアの組み合わせが望ましいのは言うまでもないわけだが(ちなみに、PrimeTV 7133はDaViDeo for VHSの互換性リストに○がついていた)、ちょうどそんな折、キャプチャカードと編集ソフトのセット商品がユーリードから発売されることになった。10月24日発売の「Video Converter with VideoStudio7」がそれである。 この製品は、PCカードタイプのMPEGエンコーダと、「VideoStudio7」を組み合わせたもので、ノートPCでも簡単にVHSからのキャプチャができるようになっているのが特徴だ。実際に最近のPCの売上ではノート型がデスクトップ型を上回るようになってきており、マーケティング的にも割と正しい判断かなという気がする。 また、一部のメーカー製デスクトップ機ではPCカードスロットを備えた物もあり、いちいち中を開けてカードの抜き差しをするまでもなく簡単に付けたり外したりできるという点でも、メリットは大きい。 店頭予想価格で26,800円前後と言われるこのVideo Converter with VideoStudio7、早速試してみよう。
■ ハードウェア込みでも構成はシンプル まず注目のキャプチャカードだが、一応ユーリードのステッカーが貼られているものの、中身は「SKNET MonsterVR_Mobile」」と同等品。そういう意味では、エスケイネットの同製品をそのまま買うのに比べて、今回のVideo Converterがどれぐらいアドバンテージがあるのかがポイントだろう。
付属のケーブルは、PCカードのコネクタから分岐してビデオ入力端子となっている。Sビデオ、コンポジットと、音声LRのメス型コネクタだ。ケーブル長は15cmほどだが、分岐したケーブルが細身で柔らかいので、それほど取り回しに困ることもないだろう。 CD-ROMには、Video Converterカードのドライバが入っており、VideoStudio7のインストール時に一緒にインストールされる。またこのパッケージのVideoStudio7には、Video Converterカードに対応するためのプラグインも同梱されている。
VideoStudio7は、見た目は市販のバージョンと変わらないが、一部機能強化されている。もちろんVideo Converterカードに対応していることは言うまでもないが、自社開発のMPEG-4エンコーダが搭載され、ISO標準のMPEG-4ファイルが作成可能になった。もちろん以前からの機能として、DVDビデオの作成もできる。
■ ハードウェアキャプチャの品質は良好 では実際に使ってみよう。Video Converterカードからの入力を生かすために、いくつかの設定が必要だ。最初はファイルメニューの「キャプチャプラグインの切り替え」で「Ulead Video Converterプラグイン」を選択する。それから「キャプチャ」ウインドウのオプションで、ビデオソースを「ビデオ」なり「S-ビデオ」に切り替える。基本的にはこれだけでキャプチャのセッティングが完了。この簡単さは、ハードウェアとセットでのメリットと言えるだろう。 悩ましいのは「ビデオフォーマット」の設定で、ここでは映像のビットレートを選択できる。デフォルトでは6Mbps CBRで、最高は8Mbps CBRが選択できる。ここでは極力無駄のない設定にしておきたいところだが、VideoStudio7内では録画時間とビットレートの計算はできないので、別途なんらかのユーティリティを使って計算する必要がある。
ちなみに、映画にありがちな120分程度だと、5Mbpsあたりがちょうどなのだが、残念ながらビットレートをマニュアルでは調整できない。このあたり、いくらVHSからDVDを作りましょうという製品であっても、所詮はビデオ編集ソフトの1機能を利用しているのに過ぎないのが丸見えなわけで、もう少しDVD作成に特化した配慮が欲しいところだ。
キャプチャは非常に単純で、VHSのようなレガシーデバイスからのキャプチャであるから、それこそテープtoテープのダビングと変わりない。再生側であるVHSをスタートさせてから、「ビデオをキャプチャ」ボタンをクリックするだけだ。あとはリアルタイムキャプチャなので、そのままテープをまるごとキャプチャすればいい。エンコード品質は、リアルタイムとはいえハードウェアエンコードなので、それほど悪くはない。
あらかじめキャプチャ時間を設定しておけば、キャプチャの自動停止も可能。また信号が乱れたり無信号になると勝手にキャプチャが止まるので、おそらくテープ1本まるごとほっといても、テープエンドで勝手に止まるだろう。 映像の編集は、そりゃあ元々ビデオ編集ソフトなだけあって、長尺のキャプチャからのCMカットなどはやりやすい。わざわざVideoStudio7を使うメリットを生かすには、やはりタイムラインを利用したほうがいいだろう。長いクリップを簡易的に分割する「ビデオを展開」という機能を併用して、CMポイントでおおざっぱにクリップを分割しておき、そのあとタイムラインを使ってトリムすると効率がいい。もっとも最初からタイムラインだけで作業したほうが、作業としてはシンプルだ。
VideoStudio7は、言ってみれば普通のビデオ編集ソフトなので、エフェクトを書けたり文字をオーバーレイしたりする機能もある。 しかし、ことVHS to DVD作業においては不要だ。フィルターで映像の補正をするという使い方も可能ではあるが、補正に向いているフィルターは少ない。強いて上げれば「コントラスト」と「シャープ」ぐらいだろうか。
だがそれも、VideoStudio7上で映像を再生すると、解像度が1/4ぐらいにガクッと落ちてしまうので、効果が確認しづらい。このあたりももうちょっと踏み込みが足りないところだ。
■ DVD化はいまいち
DVDのライティングは、「完了」ウインドウへ進んで「ディスクを作成」ボタンをクリックする。するとDVD書き込みに関するウィザードが別ウインドウで出てくるが、これは同社のDVD MovieWriterとほとんど同じ画面だ。考えようによっては、VideoStudio7にDVD MovieWriterの簡易バージョンが入っていると考えてもいいだろう。 実はこの書き込みウィザード、DVD MovieWriterとほぼ同機能なので、ビットレートをマニュアルで設定できる。だが、キャプチャ時にMPEG-2で録っているのに、いくらピッタリだからといってさらに時間をかけて再エンコードする意味はない。 ところがうまい話はないもので、例え容量内のビットレートで録画していたとしても、数カ所のCMカットを行なうと、自動的に全体が再エンコードになってしまう。こうなると、せっかくハードウェアエンコーダでMPEG-2キャプチャする意味はほとんどない。 DVD書き込みに関しては、まさにDVD MovieWriterと同じなので、詳しい手順は割愛する。その代わり、新機能のMPEG-4の書き出しを見てみよう。
MPEG-4への書き出しは、「ビデオファイルを作成」ボタンをクリックし、「カスタム」を選択する。プリセットにはDVやDVD、RealVideoやWMVなどがあるのだが、自慢のMPEG-4がないのはいただけない。ただし今評価中のバージョンは9月25日にビルドされたものなので、リリースされるバージョンでは何らかの変更があるかもしれない。
ま、ともかく現状は「カスタム」を選択して、オプションでいろいろと設定を行なう。まずオプションの「全般」タブでは、フレームサイズがデフォルトで320×240ドットになっているが、どうもこのあたり、MPEG-4で保存というよりも、ストリーミングの延長線上と位置付けているように思える。もちろん設定を変更すれば、640×480ドットや720×480ドットも可能だ。
続いて「圧縮」タブでは、映像のビットレートを決めることができる。どうやら1passしかできないようだが、DivXと同じビットレートにして映像を比較してみよう。オーディオのほうはAACに固定のようで、変更できるのはサンプリング周波数だけだ。ビットレートも128kbpsから変更できないが、AACならこれぐらいのビットレートでさほど不満はないだろうと思われる。
エンコード速度は、リアルタイムとまでは行かないまでも、DivXとほぼ同程度である。画質は若干MPEG-4のほうが低ビットレートでブロック感は感じるものの、絵の崩れは頑張って持ちこたえている。Iフレームの挿入頻度がDivXよりも高いのではないかと思われる。ファイルサイズはMPEG-4のほうが大きくなるが、画質はDivXに迫るものがある。
■ 総論 基本的にVideoStudio7がなんでもできるソフトだということはわかる。しかし本格的にビデオ編集でもすりゃあ別だが、VHS to DVDが目的の人にとっては、いくら値段的に折り合いが付いたといっても、使わない機能を沢山背負い込むことになる。 またDVDライティング機能との連携も、せっかくハードウェアエンコードしたのに、整理するつもりで編集すると延々再エンコードで待たされるようでは報われない。一番肝心の部分がこれでは、VHS to DVDをうたった製品としてどーよ。 自社製MPEG-4エンコーダによる書き出し機能は新しい試みだ。ISO準拠フォーマットなので、一応互換性の面でもとりあえずは安心できるような気がする。だが気がするだけで、実際にこれを再生できるのがQuicktimeだけというのも、ちょっと引っかかるところではある。実際にISO準拠MPEG-4が再生できるハードウェアが出てくれば、もう少しメリットも見えてくるのだが、現状では互換性に関して、判断のしようがないというのが正直なところだ。 ただ品質面では、ファイルサイズが若干大きくはなるものの、画質はDivXとさほど遜色ない出来となっており、なかなか頑張っている。エンコード速度もほぼ同程度だ。これからMultiPassなど細かい機能が充実するのであれば、期待できるのではないだろうか。 Video Converterという製品のメリットを上げるとすれば、ハードウェア込みなので、キャプチャ時の心配がいらないところだろう。とりあえずキャプチャから出力まで、どこまで簡単にできるかを模索した製品ではある。 だが、全体的には、複数製品の寄せ集め的な印象は拭えない。VHS to DVDという市場規模が見えない部分に対して資本投下できないのはわかるが、もう少し的を絞った機能や連携が欲しい。個人的にハードウェア設定のイージーさから期待した製品ではあったのだが、ソフトウェアとしてはやっぱりVideoStudio7そのまんまだったということで、ちょっとがっかりである。
□ユーリードのホームページ
(2003年10月22日)
[Reported by 小寺信良]
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