■ モバイルビューワー元年? 新年の挨拶もそろそろ聞き飽きたと思われるこの頃ではあるが、皆さんは良いお正月を迎えられただろうか。もう既にいつものペースに戻っておられる方も多いことだろう。当Electric Zooma! もちゃっちゃといつものペースに戻ることにする。といいつつコレを書いてるのは正月2日だったりするわけで、今日の筆者は既にラスベガスの空の下、のハズなのである。 さて、昨年の総集編では、ソニー「MSV-A1」はレビューのタイミングを逃したなーんて書いたわけだが、SONY様がそれを読んだのかどうかは知らないが、突然そのMSV-A1をお借りすることができた。 昨年あたりから徐々に盛り上がりを見せているモバイルTVビューワー市場だが、パナソニックは独自のマーケティング戦略により「D-snap」で視聴するという、カメラ + ビューワーという路線を打ち出している。カメラというのは、意外に稼働率が低いもので、使わないときはテレビでも見れば? という提案にはさすが「家電王」らしいお得感がある。 一方ソニーも昨年からモバイル戦略を前面に打ち出しており、ベガに録画機能を付けたり、録画してクリエで見ようというメモリースティックビデオレコーダ「PEGA-VR100K」があったり、VAIO部隊がHDDプレーヤーを出したりと、全社的に様々な部署がモバイル視聴に対して取り組む姿勢を見せている。 そんな中、自前でチューナを搭載したレコーダ兼ビューワーという製品のMSV-A1は、どういう位置付けになっていくのだろうか。早速使ってみよう。
■ 見た目はケータイライク まず全体の製品構成を見てみよう。メインのビューワー本体は、携帯電話ライクなルックスの折りたたみ式。ただし開いてみると横幅が広く、最近のケータイとはビミョーに異なる。画面サイズは2.5V型のTFTカラー液晶で、560×220ドットという変則的なタイプを採用している。だが動画サイズは最高で320×240ドットのQVGAだという。 操作ボタン類は非常にシンプルで、上部にはPOWER、MODE、MENUの3つ、センターに十字キー、あとはStopとRecボタンのみ。右サイドにはメモリースティック Pro DuoスロットとDC IN、左サイドにはヘッドフォン端子がある。また両脇には放熱用のスリットが開けられている。
ボディ下部にはクレードル接続用端子があり、その両脇にも放熱口と思われる穴が開いている。さらに底部にも放熱口がある。なんだかボディが穴だらけだ。 折りたたんだ上面はパールホワイト塗装で、質感としてはなかなかいい。この面にもいくつかのスリットが付けられており、液晶部分の放熱を行なっていると思われる。なおこの本体にはスピーカーは内蔵されておらず、音を聴くにはヘッドフォンを接続する必要がある。
付属ヘッドフォンのユニット部はそれほど特徴的なものではないが、コネクタが特殊な形状をしている。これはヘッドフォンケーブルにTVアンテナを兼用させるため、特殊な構造になっていると思われる。 クレードルを見てみよう。本体を寝かせてセットするタイプで、本体と接する部分に放熱用の穴が開いている。この部分にはファンが仕込まれており、本体をセットした状態で電源を入れると、ファンが回って本体の放熱を助けるようになっている。ボディサイズの割には結構耳障りな音だ。よほど放熱がキビシイらしい。
クレードル背面には、DC IN、アンテナ入力、AV入力端子がある。充電はクレードルでも本体でもできるわけだ。付属のアンテナケーブルも変わっていて、先端が分配器を兼ねているので、既存の結線に挟み込むような形で接続することができる。
■ TV視聴は良好だが……
まずテレビモードだが、いわゆる普通のポータブルテレビと同等の機能だ。本体内にチューナを持っているので、移動中でテレビを視聴することができる。電波の入りやすい屋外では、受信状態はかなり良好で、チャンネルごとの差も少ない。やはり特殊構造のヘッドフォンアンテナが効いていると思われる。 ただしバッテリ駆動している状態では、どんなに映りが良くても録画ができない。録画はクレードル装着時しかできないのである。消費電力を見ると、テレビ視聴と再生時は3Wだが、録画時は5.8Wと、ほぼ倍にまで跳ね上がる。このためモバイルでの録画ができないのかもしれない。あるいは、クレードルにファンが内蔵されていることを考えると、もしかするとエンコーダはクレードル側に搭載しているかも。 まああんまりモバイルで録画するケースは少ないだろうが、スリップ再生とかはできても良さそうなものである。最初から全く録画すらできないとなると、何だよオイってな話になりがちだ。
クレードルに装着しての視聴は、アンテナ線からの入力を見ることになるので、当然ながら良好。手動で録画するには、視聴中にRECボタンを押す。録画モードと録画時間を設定したのちもう一度RECボタンを押すと、録画が開始される。録画モードは3段階だ。
モードボタンを押すと、予約録画ができる。年月日や開始、終了時刻、チャンネルを設定するという、レガシーな指定方法だ。繰り返し録画はできるが、1件しか登録できない。毎日のニュースなどを録画するにはこれでもいいだろうが、ドラマやバラエティなどのファンにとっては、せめて3件ぐらいの予約ができて欲しいところだ。
では録画された映像を見てみよう。モードを動画再生に切り替えると録画された映像のリストが表示される。画面上部にはハイライトされた番組の詳細、録画時間や録画モード、録画日が表示され、横のサムネイルは簡易動画表示となって番組の内容が確認できるようになっている。 テレビ視聴時にはちゃんと30fpsで表示されていたのだが、録画された映像は最大15fpsなので、そのギャップは大きい。またコンスタントに15fpsで再生できるわけではなく、かなり引っかかりながらどうにかこうにか再生できているという感じだ。画質面では、高画質モードでなら鑑賞に堪えるが、標準ではかなりブロックノイズが目立つ。長時間モードに至っては、何が映っているかがかろうじてわかる程度で、実用性はかなり厳しい。 本来ならばちゃんとした録画サンプルを掲載するところだが、本機でAVの外部入力を録画しようとすると、「コピーガードにより録画できません」とアラートが出て、録画できない。もちろんコピープロテクトのかかった画像を入力しているわけではなく、普通にDVカメラ(ソニー製)で撮影した映像のアナログ出力である。
こういう仕様なのか、それともたまたまこの機材の故障なのかは判然としないが、もしかしたら後日詳細が判明するかもしれない。そのときは改めて動画サンプルを追加することにしよう。 なお、MSV-A1で録画した動画ファイルをメモリースティックスロット経由でWindows XP搭載パソコンにコピーしたところ、QuickTime 6.4で再生できた(拡張子.MQV)。 最後に静止画再生モードだが、あいにく筆者の手元および編集部にはメモリースティックDuoで記録できるデジカメなどがないので、動作確認ができなかった。マニュアルによると、このモードで表示できるのは、デジカメ撮影時に記録された160×120ドットのインデックス画像のみということなので、画質的にはダメそうだ。ちょっとした内容確認ができる程度だろう。
■ 総論 MSV-A1は、PC技術組み込み製品という感じではなく、単純にハードウェアでガシガシ動くタイプの、割とレガシーな製品のようだ。基本的にはポータブルテレビであり、それに録画機能が付いたという意味では、ベガがメモリースティックに録画できるというのと同じようなノリだと言える。 しかし録画のクオリティを見ると、ブロックノイズは目立つし、やはり15fpsを下回るレートでは物足りない。どうも業界的には、MPEG-2は30fpsで、MPEG-4は15fpsで、という流れになりそうな感じだが、もちろんMPEG-4で30fpsをやったって悪くはないわけで、MPEG-4エンコーダ/デコーダのさらなる性能向上が望まれる。 べつの見方からも考えてみよう。一般にこのようなモバイル製品は、メモリーメディアの販促という側面も含んでいる。例えばパナソニックのD-snap「SV-AV100」には、512MB SDメモリーカードが付属するなど、思い切った普及戦略が見られる。一方このMSV-A1にもメモリースティックDuoが付属するが、標準で16MB、初回限定でさらに32MBと、あくまでもオマケの領域を出ないのは残念だ。 本機はメモリースティックではなくDuoやProにしか対応しないということもあって、ちょっと購入には二の足を踏む。というのも、メモリースティックはいつの間にやらラインナップが非常に煩雑怪奇なものになってしまっており、価格的なアドバンテージもほとんどない。我々が欲しいのは、1メディアオールマイティな世界なのである。 MSV-A1については、単体で動作し、すべての人にモバイル視聴を、というコンセプトは理解するが、録画品質があまりにも低い。鑑賞に値する高画質で、とまでは欲張らないが、せめて普通の人が標準モードで見て「あ、いいじゃん、十分十分。」と思える画質であって欲しい。残念ながら筆者はこれに、45,000円前後という価値は見いだせないなぁ。
□ソニーのホームページ (2004年1月7日)
[Reported by 小寺信良]
|
|