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“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”

【年末特別企画】

Electric Zooma! 2003年総集編
~2003年もやっぱり、どエライことでしたSpecial~


■ 今年もやってきました総集編!

 いつのまにか今年もぐぐっと押し迫り、もう総集編の季節である。2001年3月からスタートしたElectric Zooma!も、この総集編で138回目となる。AV Watchが始まった頃は、AV機器ってのはサイクルが遅いので楽できるかと思ったものだが、いざやってみれば毎週毎週ネタはあるものだ。

 本コラムは他人から見れば、とりあえずモノ借りてきてなんかお気楽にやっつけられると思われているフシもあるのだが、実は意外に手間がかかっている。AV機器のレビューというと、専門雑誌などで旧来からある機能横並びスタイルというのが定番だが、こういう横並びのテストは月刊誌のペースなら可能だが、週刊ペースでは難しい。

 そこでZooma!では、1つの製品を実際に日常生活の中で使ってみて、その中から出てくる良さや不便さを取り上げていくという短期集中方式を取っている。だから土日かけて機材を使ってみて、それから月曜日に書くというサイクルになっており、意外に手間と時間がかかっているのである。

 また世の中そうそう思いどおりにはいかないもので、実際に使ってみたらダメダメだった、ということもある。そういうモノをとりあえげても悪口ばっかりになっちゃうのでボツにして、Zooma!担当編集者が必死で別のモノを探してくるという段取りになっている。そういう意味ではこの138回の積み重ねは、担当の苦闘の歴史でもあるわけだ。若くしてハゲないことを心より祈るばかりである。

 さてさてそんな激動の2003年であったが、Electric Zooma!で扱った製品を見ながら、今年のトレンドを振り返ってみよう。



■ ビデオレコーダ篇

 今年最もにぎわったAV製品といえば、やはりビデオレコーダだろう。年末年始商戦の目玉をこれに据えている量販店も多い。

 まず東芝のRDシリーズは、昨年末のXSシリーズで一気に普及価格帯まで価格を下げ、大きくシェアを伸ばした。そして今年はXシリーズで高画質化という方向性を打ち出し、XSシリーズとの差別化を図ってきた。さらにそのXSシリーズも機能強化し、新デザインで攻めてきた。

 開発者インタビューでは、価格競争になってしまうと、なかなかデザインまでコストが回せなくなるところが悩みのようであったが、XS31以降の新デザインはなかなか綺麗で頑張ったと思う。今後の課題としては、増えた機能がすべて「クイックメニュー」にぶち込まれて煩雑になった操作性を、どこの段階で整理するかだろう。

東芝「RD-X3」開発者インタビュー 東芝「RD-XS41」 東芝「RD-X4」

 PanasonicのDIGAシリーズは、新製品投入のタイミングが春・秋で、年末年始商戦には新製品で参戦しないという方法を取っている。今年春には、総勢5モデルという思い切ったバリエーション展開で、「家電界の巨人」の貫禄を見せつけた。機能面でも、時短プレイ、外部入力自動録画、追っかけ再生2画面表示など、使い勝手優先の機能をいち早く実装した。またレコーダー低価格路線に火を付けたのも、DIGAシリーズであった。

 さらに秋モデルでは、「MPEG-4録画でモバイル試聴」という新提案を打ち出した。同社にはケータイだけでなく、D-snapというラインもあるため、このような思い切った展開もできるというわけだろう。

Panasonic「DMR-E80H」 Panasonic「DMR-E200H」

Pioneer「DVR-710H-S」

 DVD-RAM勢が強いレコーダの中で、DVD-RWを推すPioneerもかなりのシェアを確保している。早くからDVD単体レコーダを出してきた同社だが、この秋にはDVD単体レコーダも含め一気に5モデルをリリースするなど、積極的な動きを見せた。

 最上位機種の「DVR-710H-S」では、同社の高級DVDプレーヤーに搭載の技術を盛り込むなど、画質面で東芝のRD-Xシリーズと真っ向勝負に出た。また東芝、Pioneerとも、高速ダビング中の操作が可能という、マルチタスクで動く設計にした点でも拮抗している。

 一方、自らを周回遅れと認めたSONYの逆襲が始まったのも、今年の特徴だろう。昨年鳴り物入りで船出した「コクーン」シリーズは広く認知されたものの、それを理解できる顧客の指名買いしかないという苦しい状況に落ち込んだ。ナビゲーション機能を先走りすぎたという反省もあり、この冬にはもっとわかりやすいコンセプトで「スゴ録」シリーズを展開。親しみやすく値頃感のあるラインナップで巻き返しを図る。

 またクリスマスシーズン滑り込みセーフで、話題のPSXをデビューさせた。モノとしての仕上がりも良く、春までには相当のシェアを奪回することだろう。だが、ただでさえコクーンとスゴ録のつじつま合わせに四苦八苦している状態で、さらに別ラインの製品をどう位置づけていくのか、今後の舵取りに注目したい。

SONY「NDR-XR1」 SONY「RDR-GX7」
SONY「スゴ録 RDR-HX10」 SONY「PSX」

Victor「DR-MH5」の開発者インタビュー

 来年のトレンドとしては、SONYスゴ録やVictorが打ち出した「高品質な再エンコード」は、高画質保存派に広く受け入れられるだろう。

 というのも、映画を保存するにメディア4.7GBじゃ、ビットレートって市販DVDの半分じゃん、ということにみんなが気づいてきたからだ。

 これを打開するための工夫として生まれてきた方法は、歓迎されるだろう。

 12月からスタートした地上デジタル放送は、番組内容がガラッと変わるわけでもなく、意外に肩すかしといった船出だった。しかし来年度からアナアナ変換も予算アップで加速するなど、国の対策も進む。また第二東京タワーも生まれるかもしれないということで、来年以降話題性もアップしそうだ。

 地上デジタル対応機器のロゴマークまで完成したが、4月にSONYから出たっきりで他メーカーからまったく音沙汰のないブルーレイレコーダや、新規格HD DVDレコーダはどうなるのだろうか。来年はこのあたりの展開にも期待したい。

地上デジタルテレビ放送が12月1日にスタートした 地上デジタル対応機器用ロゴ SONY「BDZ-S77」


■ ビデオカメラ篇

Canon「FV M1」
 ビデオカメラというのは、興味のある人とない人がきっぱり別れる分野である。それはすなわち、撮るものがある(彼女、妻子がいる)か、ないか(彼女なし子供なし、当然結婚の予定もなし)という圧倒的な差は、どんな企業努力をもってしても埋められないという現実を目の前に突きつける。これ以上ビデオカメラを売りたければ、おねーちゃんバンドルで売るしかないっていうぐらい飽和しちゃっているのである。

 だがDVカメラの世界でも、今年新しいトレンドが生まれたということは知っといて損はないだろう。Canonの「FV-M1」に代表されるハイエンドモデルでは、1CCDメガピクセルのメリットを生かして、ワイドモードでの大幅な画質向上が成された。従来のハイエンドモデルは3CCDと相場が決まっていたものだが、原色フィルタの採用とメガピクセル撮影による補完で、1CCDハイエンド機という流れが出てきた。

Victor「GR-HD1」
 テレビがワイド対応だから、ワイドモード撮影は比較的コンシューマでも取っつきやすい。今後デジタル放送対応テレビの伸びが順調であれば、それに追従する形で注目されていく機能だろう。さらにもう一歩進んで、DVでもHDで撮っちゃおうというカメラも出てきた。Victorの「GR-HD1」は、DVの新しい展開を生み出した逸品だ。

 画質面や再生系はもう少し煮詰める必要があるとは思うが、初号機にしては十分な完成度を持っていると思う。この規格はメーカー4社で「HDV規格」として確定したので、来年あたり対応のカメラが各社から出てくると期待する向きもあるだろう。

 だがメーカーの事情はそうもいかない。特にSONYはプロ用HDカメラの市場、Canonはプロ用レンズ市場がある。HDVでものすごくいいものを作ってしまったら、DVカメラの時のようにプロの下位市場を食ってしまう恐れがあるため、製品投入には様子見感が強い。だが逆に言えば、DV市場でシェアを落としているVictor、Sharpには巻き返しのチャンスだ。

 ここにきて、DVカメラが高画質化する方向に動き始めたのには理由がある。ローエンドユーザーに対しては、メモリ記録型ビデオカメラの性能が上がってきているからだ。画質的にもDVカメラのローエンドモデルに迫るのは時間の問題で、そうなるとローエンドDVカメラの存在価値がなくなってしまう。

 Panasonicは早くからD-snapを立ち上げ、メモリ記録カメラの可能性を示唆してきた。PC系メーカーもこれに追従し、いくつか注目の製品も登場した。だが従来のCMOS式では十分な画質が得られず、どちらかといえばトイカメラ的な位置から脱却できずにいた。

 だがPanasonicが仕掛けたのは、DVカメラと同じくCCDを搭載して、メモリにMPEG-2で高画質記録するというスタイルだ。湯水のごとくメモリを使う動画記録で、同社が押さえるSDカードの売り上げも見込める。もともと初期のD-snapから、メディアの販促物的な側面を持っていたわけだが、これが第二フェーズに入ったと見てもいい。メディア覇権戦争のトドメ的凄みを感じさせる。

 ところが今年初めのCESでは、2003年中に1GBメモリの市場投入というロードマップを掲げていたものの、未だ影も形も、噂さえも聞かないのはどういうわけだろう。静止画だけなら512MB差し替えでも撮れるが、動画は連続性のあるものなので、メモリ単体の容量が問題になる。せっかくのコンセプトも、ハードウェアとメディアの足並みが揃わなければ、前進できない。

 だがそんな状況で、さらに前進するデバイスが登場した。SANYOの「Xacti C1」は、SDカードにMPEG-4で動画を記録するカメラだ。AV100に比べて同じメモリで2倍撮れる。とりあえず最高画質で20分撮れれば、なんとかなるだろう。静止画も320万画素と、申しぶんない。また静止画もと動画をシームレスに撮れるのも新しい。

 実は筆者もこのレビューのあと個人的に購入し、便利に使っている。筆者の場合、取材に出かけたときにインタビューをWEBモードの動画で撮り(2時間撮れれば十分だ)、掲載用写真もそれで撮っている。特に数人同時のインタビューの場合、ボイスレコーダではあとで聞き返したときにどれが誰の発言だかわからなくなって、あとで大変なことになってしまうのだが、動画を補助的に使うことでこの状況が完璧に改善された。このカメラのキモは、なにげに三脚用ホールがあることだったりする点かもしれない。

アイ・オー・データ
「MotionPix AVMC211」
Panasonic「SV-AV100」 SANYO「Xacti C1」


■ ポータブルビューワ篇

SONY「MSV-A1」
 そして、筆者が個人的に期待しているのが、ポータブルビューワ市場だ。デジタル放送の普及が進めば、デジタルラジオや1セグテレビ、モバイル放送といった移動視聴文化が息を吹き返す可能性がある。だがその前にアナログ放送のメリットとして、録画した動画を通勤時間に見るという機能は、公共交通機関の発達した大都市圏では重宝されると思う。

 このような動きは、今年から手探りといった感じで各メーカーから製品が出てきている。既存の製品をうまく組み合わせた例では、PanasonicのDIGAとD-snapシリーズがある。既に存在するラインナップに機能を付加することで、お互いの相乗効果を狙ったものだ。

 かたやSONYからも同社の「モバイルムービー」戦略の一環としていくつかの製品が出てきている。先に登場したのは、同社のクリエで動画を見ようという、メモリースティックビデオレコーダだ。これも既存製品と組み合わせて使う例だが、単体で録画が可能な「MSV-A1」という製品もある。これもいつかレビューしてみようと思いつつ、残念ながらタイミングを逃してしまった。

 そんな中、WPCで参考出品されたかと思ったらすぐに製品が出てきたのが、HDDプレーヤーの「PCVA-HVP20」だ。動作保証は一応VAIOのみだが、それ以外のPCとも組み合わせて使えることは案外知られていない。MPEGしか再生できないが、価格も5万円前後と、魅力的だ。

 一方で動画だけでなく、音楽や写真も見られるマルチAVプレーヤー「Cinema To Go」は、輸入製品ながら久々に面白いと思わせるプレーヤーだった。作りも頑丈で良かったのだが、残念ながら価格が若干高めということで、今のところゼイタク品のような扱いになってしまっている。

 ポータブル市場で小型HDDの採用が活発化してくれば、シリコンメモリベースのプレーヤーは、リムーバブルのメリットを生かした使用シーンを提案しない限り、苦しくなってくるだろう。

SONY「PCVA-HVP20」 ARCHOS「Cinema To Go」


■ 総論

 来年の動向だが、テレビだけではなくラジオやモバイル放送などがスタートし、いろいろなデジタル放送サービス元年となりそうな気配だ。Zooma!でも、そのあたりの新しいAVの楽しみ方を積極的にレポートしていきたいと思っている。

 その一方で、従来のアナログ放送対応のレコーダ市場やPCデバイス、プレーヤーなどもまだまだ生き残るはずなので、しつこく追いかけていきたい。さらに今年はほとんど趣味の世界への突入したアナログオーディオも、機会があればまたやってみたいものだ。

 では2003年のElectric Zooma! は、これにて終了である。来年もまた、よろしくお付き合いのほどを。

□Electric Zooma!バックナンバー
http://av.watch.impress.co.jp/docs/backno/zooma.htm
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(2003年12月24日)


= 小寺信良 =  テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「ややこしい話を簡単に、簡単な話をそのままに」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンピュータのフィールドで幅広く執筆を行なう。性格は温厚かつ粘着質で、日常会話では主にボケ役。

[Reported by 小寺信良]



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