■ ファミコンみたい? なメディアプレーヤー 「MTPlayer MP20-HDD」は、単体でのMPEG再生が可能なプレーヤーユニット。2.5インチHDD用のHDDケース「MTHDD25」を使ったHDDカートリッジと組合わせて利用する。 MTPlayerは、本体に加えHDDケース「MTHDD25」が1つ付属する。HDD自体は同梱されない。パソコンでキャプチャしたビデオやオーディオを、USB 2.0でパソコンからHDDケースに転送。そのカートリッジをテレビなどに接続したMTPlayerに差し込むことで、ビデオやオーディオの出力が可能となるというもの。 最近では、バーテックスリンクの「MediaWiz」に代表されるように、Ethernetを利用し、パソコン上のファイルをネットワーク経由で再生するメディアプレーヤーが人気を集めている。それらに比べると、オールドスタイルにも感じる。形はいにしえの“ファミリーコンピュータ”風で目新しいのだけれど、どう使うと便利なのか今ひとつ見えてこない。
■ HDDカートリッジを利用したメディアプレーヤー
MTPlayer本体は、HDDカートリッジスロットを上面に備えるほか、十字ボタンとHOME/SETUP/STOPボタンを装備する。前面にはメモリカードスロットを備え、コンパクトフラッシュ、SDメモリーカード、MMC、スマートメディア、マイクロドライブ、メモリースティックからの読込みが可能となっている。 背面の出力端子は、S映像、コンポジット、アナログRGB(D-Sub15ピン)、アナログ音声(ミニジャック)を装備。また、後日発売予定のコンポーネント変換ケーブルを利用することで、コンポーネント出力にも対応する。外形寸法は162×30×111mm(幅×奥行き×高さ)。専用のリモコンが付属する。 カートリッジの「MTHDD25」は、シンプルなアルミボディのHDDケース。本体とHDDケースのインターフェイスは専用のものだが、コネクタ形状はコンパクトフラッシュと同様。HDDケースの専用コネクタの横にはUSB 2.0端子を装備する。電源はUSB経由で供給するが、2.5インチHDDの中にはUSBから供給される500mAの電流だけでは動かないものもあるので、2つのUSB端子から給電するための分岐ケーブルも付属している。
■ 機能はシンプルで、ビデオ再生クオリティは良好 MTPlayerにカートリッジを挿してみると、周囲から「ファミコンみたい」という声が……。2.5インチHDDの奥行きが長く、しかも、無骨なアルミ仕上げなのでモノリス的な雰囲気で遠目には結構格好いい。しかし、アルミ仕上げのカートリッジに比べ、プラスチックベースのMTPlayerの質感の安っぽさがやや目立つ。
HDDカートリッジは、パソコンからは通常の外付けHDDとして認識され、データの転送が行なえる。早速カートリッジをMTPlayerに挿して、背面の電源を投入する。抜き差しするときは必ず背面の電源を切り替える必要があるのははやや面倒なところだ。
本体を起動すると、HDDのみの場合は、[VIDEO]用のメニュー画面が立ち上がり、CFやSDメモリーカードなど、複数の記録メディアを挿入している場合は、メディアの選択画面が現れる。
どの記録メディアを利用している場合でも、基本的に[VIDEO]、[MUSIC]、[PHOTO]など種類別にメニュー画面が用意される。メニュー画面の呼び出しは、リモコンの[VIDEO]、[MUSIC]、[PHOTO]から行なえ、各コンテンツはこのメニューから選択して、再生できる。メディアの識別は、各メディアファイルの拡張子を見て、.mpgや.m2pなどであれば[VIDEO]に、といったように振り分けているようだ。 また、HDDのフォルダ階層をそのまま表示するフォルダモードも用意されているため、パソコンでメディアファイルをフォルダ分けして管理しているユーザーにとってはわかりやすい。ただし、MTPlayerでは日本語ファイル表示に対応していないので、あまり使い勝手がいいとはいえない。 やや気になるのが、リモコンの操作感。レスポンス自体は悪くないのだが、指向性が強く、きちんとMTPlayerの赤外線受光部に向けて操作しないと、うまく動作しない時があり、ストレスを感じる。
・ビデオ
[VIDEO]の場合、動画/音声付のサムネイルで一覧表示してくれるので、どのようなコンテンツが入っているかすぐにわかる。 再生クオリティはまずまずで、5Mbps以上のMPEG-2ファイルであれば、29型のCRTテレビでもかなり満足いく画質を得ることができる。また、15MbpsのMPEG-2ファイルも特に問題なく再生できた。 リピート再生や任意のファイルを選択しての連続再生も可能。MPEGファイルの早送り、巻き戻しなどは、2/4/6/8倍速が選択できる。動作自体はなかなか軽快だが、上記のようにリモコン操作感が今ひとつなのが残念なところ。 対応ビデオファイルは、公式には「MTVのプリセット設定で録画したMPEG-2/1」となっているが、TRANSGEAR 5000TVやDVR-ABN4/TVのDigiOn TVR L.E.でキャプチャしたMPEG-2ファイルも再生できた。なお、DivX再生もテストしてみたが、再生できず、拡張子を.mpgにしてもやはり再生不能だった。最近のMTVシリーズなどでは、DivXへの対応を積極的に行なっていることもあり、できればサポートしてもらいたいところだ。
フォルダモードでも利用してみたが、日本語ファイル名に対応していないので使い勝手が悪い。MTVシリーズでiEPG録画した時は、EPGサイトの番組情報が付与され、日本語ファイル名で管理される。同社製キャプチャカードの周辺機器と位置づけだと、やや中途半端な仕様に思える。基本的にはVIDEOメニューから操作するということなのだろうが、ファームウェアの改善などで、対応してほしいところだ。 また、HDDのファイルフォーマットがFAT32のため、4GB以上のMPEGファイルを再生する場合には、付属のソフト「MpegClipper」で分割し、そのファイルを連続再生するなどで対応する。
・音楽
リモコンの[MUSIC]ボタンを押すことで、音楽の再生にも対応する。再生形式はMP3のみで、WMAには対応しないが、WAVEについては拡張子を.mp3とすることで再生ができた。 MUSICモードでは、ファイル名の数字/アルファベット順に一覧表示される。また、リピート再生機能や、7種類のイコライザ機能を装備している。
また、日本語にも対応していないので、邦楽などでは[????]と文字化けしてしまう。オーディオジュークボックスとして利用するには、やや機能不足という感じだ。
・静止画
静止画の表示にも対応する。対応形式はJPEGで、対応最大解像度は5,120×3,840ドット。サムネイル表示機能や、スライドショー機能も搭載する。 変わったところでは、音楽つきのスライドショー機能を装備している。MUSICモードのファイル順に音楽を再生しながら、スライドショー表示するというシンプルなもの。任意の曲を選択することができないので、あまり使いどころはないかもしれない。 また、CFやSDなどのメモリカードからの画像読込みにも対応するが、HDDに比べて読み込み速度が遅いので、XGA(1,024×768ドット)以上の画像を利用した場合、読み込み時間がかかり、スライドショーなどは実用範囲外といったところ。また、メモリカードからHDDへのコピー機能が無いのも残念だ。
■ もう一歩進んだトータルソリューションを期待 機能的にはシンプルで、パソコンでキャプチャしたMPEGファイルをHDDカートリッジに転送し、それをテレビに接続したMTPlayerで再生するだけだ。 最近ではバーテックスリンクの「MediaWiz」やオンキョーの「NC-501V」など、ネットワークビデオレシーバ的な製品に注目が集まっているが、ネットワーク系の製品では、HDDにコピーしたり、カートリッジを取り付けたりする必要が無い分、手間は少なくすむ。MTPlayerではやや面倒な作業が生じるわけだが、それに対する対価というか、メリットがあるか? といわれると、ネットワークの配線に悩まされないとか、パソコンとテレビが離れた場所にあっても利用できるとかいった程度で、ややウリが弱いようにも感じる。 価格的にも本体とHDDケースのセットで約2万円弱、30~40GBのHDDが約1万円~15,000円と、合計3万円強の初期投資が必要で、HDDを既に用意しているユーザーでもネットワーク系の製品と比較して、安いわけでもない。製品の自体は、シンプルでよいのだけれど、ユーザーにメリットを感じさせるようなソリューションとしての成熟度が今ひとつに感じる。もう少しユーザーの利便性を向上させるような提案が欲しかったところだ。 □カノープスのホームページ (2004年1月16日) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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