それらをつらつらと見ていくと、KOSSの「QZ50」(売価49.99ドル)に特に惹かれた。KOSSの製品は日本でも多くの種類が入手できるが、これは見たことがない。ノイズキャンセリング機構をハウジングに内蔵しているのが特徴で、外付けユニットがないのがうれしい。
そうなると、QZ50の日本でのライバルはソニーの「MDR-G94NC」になりそう。共通点は「ネックバンド式」、「ハウジングが小さい」、「ノイズキャンセリング機構を内蔵する」といった点。まずは帰りの飛行機内で、帰国後は地下鉄通勤時に使用する算段で購入してみた。
ヘッドフォンの分類としては、ネックバンドタイプの密閉型になる。ただし、ボーズの「QuietComfort2」のように耳を覆うタイプではなく、パッドが耳たぶや耳の上側を抑えるタイプだ。Web上の製品情報を見ると、インピーダンスは32Ω、30Hz~20kHzの周波数帯域となっている。 つくりは全体的に安っぽく、デザインも垢抜けていない。あくまでも個人のセンスになるが、これをつけて外出することに抵抗を覚えるかもしれない。
コードは左側の片出しで、パッケージには1.2mとある。プラグは3.5mm径のステレオミニジャック。金メッキじゃないステレオミニジャックを久しぶりに見たような気がする。
電源は単4電池1本で、左側のハウジングにセットする。ノイズキャンセリングのON/OFFスイッチも左側にあり、慣れればヘッドフォンをつけたままON/OFFできるようになる。また、ONにするとLEDが点灯。LEDは正面を向いており、相当明るく輝く。人前だとちょっと恥ずかしいかも知れない。 電池の持ちは必要十分だろう。片道20分の通勤においても、行き帰りとも使用して1週間以上利用できた。楽曲や周囲の状況によっても変わると思うが、通常の使用だと、移動中に切れるといったことはないだろう。
ノイズキャンセリングについては、問題なく作動した。スイッチを入れると暗騒音がすっと引くのがわかり、楽曲の音圧が上がる。航空機内でも「ゴーッ」という騒音が大幅に低減され、ノイズキャンセリングの恩恵を受けることができた。 ただしハウジングの小ささからか、QuietComfort2に比べて遮音性は低い。そのため、キャンセリグの度合いはQuietComfort2より低く感じる。 また、かけごこちも今ひとつ。ネックバンドなので締め付けのきつさはある程度予想していたが、ハウジングの重さもあってか、かなりギュッと締められる。そのため、私の場合は1時間ほどで耳の周りが痛くなった。その割には良くずれるのは、ネックバンドの機構上、仕方ないとはいえ、ストレスがたまる。 キャンセリングONのときの音質は、中低音に量感があり、ロックやポップス向きに感じた。高域に軽くシャーっというノイズが混じるものの、聴取を妨げるほどでもない。ただし、ベースの微妙なうねりが感じられるほどの繊細さはない。
それよりも、中域から高域にかけて問題を感じた。全体的に解像が甘いのだ。ピアノはすべて丸くなり、輪郭がぼやける。サックスのブレスノイズもなくなるので、やけにスムーズに聞こえてしまう。ボーカルも少し遠くに聞こえる。今ひとつ切れがなく、価格相応の音といえる。 もっとも、ノイズキャンセリングヘッドフォンに厳密な音再現力を求める方が無理な話かもしれない。実際のところ、MDR-G94NCよりはだんぜんしっかりした音が出ているのだが……。
珍しさと同時に「毎日通勤で使えるかな」と考えての購入だったが、いまのところ常用するにいたっていない。見た目の悪さとかけづらさが主な理由だが、それを上回るほどの音質が得られれるならば使っていたと思う。長距離出張の機会でもあればまた使ってみようと思うのだが、向う数カ月はなさそう。ひょっこり帰省でもしてみようか……。
□KOSSのホームページ(英文) (2004年2月5日)
[orimoto@impress.co.jp]
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